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第二章《仕事》編

第九十四話 国境警備隊帰還!

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 大きな声で呼び手を振ると、それに気付いたフェイたちは嬉しそうに手を振った。そしてゆっくりと地上へと降り立つ。

「おかえり!! みんな!!」

「「「ただいま、リュシュ」」」

 一年ぶりにみる三人は竜騎士が板についてきたからか、凛々しく頼もしい姿、自信に満ちた表情だった。

「みんな無事で良かったよ。国境はどうだった?」

 ウキウキと聞いたら皆の顔が曇った。ん? なんだ?

「ごめん、リュシュ、ゆっくり話したいところだけど、今は先に報告に行かなきゃならないんだ」
「あぁ、無事帰還した報告か」
「いやまあ、それもあるけど、それだけじゃなくてね……」

 フェイがそう言うとアンニーナもネヴィルの表情も曇った。どうしたんだろうか。国境でなんかあったのか……。


「おい! 行くぞ!」


 先輩竜騎士だろう人が大きな声で三人を呼んだ。

「はい! ごめん! リュシュ、またあとで!」

 それだけ言うと三人は先輩竜騎士の元まで駆け寄り、そして帰還した八人はいずこかへと報告へ向かった。

「…………うーん、なんなんだろうな」

「さて、リュシュ! ぼーっとしてないで竜たちの身体を拭いてやって」
「あ、はい!」

 竜たちにまず水をぶっかける。さすがに怒られそうだから顔には掛けないけど。
 身体中に水を掛け終わると、竜専用の石鹸で身体中をゴシゴシと磨いていく。国境にいる間は身体を洗ったりするには手間がかかるため、ほとんどしてもらえないそうだ。
 精々身体を拭いたりするくらい……というわけで、ゴシゴシと磨いていると黒く汚れた泡となっていく。

『あぁ、気持ち良いなぁ、久しぶりだ』
『だよなぁ、あっちじゃ全く洗ってもらえないし』
『うんうん』

 身体を洗っている最中、竜たちの愚痴というか話し声が聞こえて来る。竜騎士たちへの愚痴なのか環境への愚痴なのか、その口ぶりが人間臭くておかしかった。

「ハハ、みんなお疲れさん。おかえり」

『あ、お前、リュシュか! 落ちたやつ!』

 グサッ。まだそんな風に言われてるのか……。

「ちょっと、もういい加減その言い方やめてくれない?」

 ムッとしながら訴えると竜たちはゲラゲラと笑った。
 分かってんだか、分かってないんだか……ちぇっ。


 ゴシゴシとしっかり磨いたあとは再び水をぶっかけ泡を落としていく。泡が落ちた竜たちは見違えるほどに、鱗が艶やかに光っていた。
 顔も含め、布で丁寧に拭いてやるとさらに一層輝いていた。

 竜たちもすっきりとした顔になり、俺はというと八匹洗う作業に疲れぐったりとした。


 ◇◇◇


「国境警備隊八名帰還致しました」

 畏まってそう言葉にした竜騎士とその後ろに七名の竜騎士たち。合計八名の竜騎士は王の間でクフィアナと謁見をしていた。

「おかえり、無事に勤めご苦労。なにか変わったことはあったか?」

 クフィアナは竜騎士たちに尋ねた。

 横に立つマクイニスに立ち上がることを許可され、八名の竜騎士は跪いた姿勢から立ち上がり、真っ直ぐにクフィアナを見詰めた。

 フェイやアンニーナ、ネヴィルは目の前にいる美しい女王に釘付けとなった。真珠色の美しい髪に銀色の瞳。演習場でも近くで見たことはあるのだが、他の竜騎士たちもたくさんいるなか、こんなにはっきりと姿を見ることが出来たときはなかった。
 ただただ美しさに感動し、しかしながらとてつもない力を秘めているのだろう、と畏怖の念をも抱くのだった。

「ハッ! 我々がこちらへ戻る少し前になるのですが、ナザンヴィアからなにやらきな臭い噂が流れて来ました」

 その報告にクフィアナ、マクイニスの表情がピクリと動いた。

「ナザンヴィアにいる情報屋の話ですが、どうやら今現在ナザンヴィアでは王位継承問題で揉めているらしく、第一王子派と第二王子派でかなり不穏な空気になっているようです。
 第一王子派はドラヴァルア攻めを画策しているようで、それに反対している第二王子派と対立しているとか」

「王位継承問題にドラヴァルア侵攻か……」

 クフィアナはボソッと呟き溜め息を吐いた。

「分かった、一年間ご苦労だった。しばらくはゆっくり休んでくれ」

 そう告げると竜騎士たちは王の間をあとにした。

「なんだか面倒臭いことになってきたな……」
「あの国はいつまで経っても……」

 マクイニスは隠すことなく不機嫌な顔をする。クフィアナは苦笑するが、しかしマクイニスの気持ちも分かる。ナザンヴィアはいつまで経っても争いごとが好きなままだ。


「クフィアナ様……」

 王の間へと顔を出したビビが声を掛けて来た。

「ん? ビビ、どうした?」
「ラヴィリーグ様がお話があると……」
「…………分かった」

 そう返事をすると王の間に現れたのは銀髪に青い瞳の一人の青年と、それに付き従う一人の屈強な中年の男だった。
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