89 / 163
第二章《仕事》編
第八十七話 レグア
しおりを挟む
森のなかを進んで行くと徐々にひんやりと空気が冷たくなってきた。墓があった場所は明るいが、今いる場所は木々に覆われ木漏れ日が差し込むくらいで薄暗い。
しかしひんやりと静まり返っているからか、木漏れ日も相まって神秘的な雰囲気に感じる。
ひんやりとした空気が気持ち良い。思い切り深呼吸をした。そして気合いを入れて周りを見回す。
なにか手掛かりになるようなものはないかと、キョロキョロと辺りを見回すがこれといってなにもない……当たり前か……。
「はぁぁあ、なにもないか……」
歩きながら溜め息を吐いた。
そのときバサバサッと頭上から大きな音がし、ビクッとする。見上げると大きな鳥が飛んで行く姿が見えた。
「ビビらせるなよな」
思わず短剣に手を掛けていたがそのまま短剣に手をやったまま歩き続ける。頭上から目線を動かしたときになにか違和感がした。
「? なんだ?」
なんだろうな。違和感を探るためにじっくりと周りを見回す。ん?
「リュシュ、どうした? こっちは特になにも手掛かりになりそうなものはなかったよ」
「ディアン、あれ」
「?」
指差したほうをディアンが見た。
俺が指差したものは森のなかのありふれた木々。
先程頭上を見上げ、そこから視線を戻したときになぜか違和感を感じた。それはなぜか。
「木が切られている!」
「あぁ」
周りを注意深く見てみると、枝が落とされた木や、奥のほうには切り株も見える。明らかになにかの刃物で切られている上に、切り落としたはずのものがない。
おそらく獣たちとは無関係な誰か人間が切り落とし、それを持ち帰ったのだろう。
「ということは、この付近に誰かがいたということだな」
切り落とされた切り口がまだ新しそうだ。そんなに以前のものではない、ということは最近この付近にいたということだ。
ディアンと顔を見合わせ、さらに奥を探索してみる。
注意深く周りを確認しながら進んで行くと、小川が現れ、そのすぐそばに小さな小屋があった……。
「「小屋だ!!」」
ディアンと顔を見合わせた。
「行ってみるか?」
「あぁ」
ですよね。ここまで来て確認しないとかありえないよな。で、でも大丈夫……だよな。きっとレグアさんだろ……強力な獣とか出て来ないよな……。
恐る恐るビビりながら小屋に近付いて行く。
玄関前に近付いた瞬間、バーンッと扉が開き……
「うぉぉぉおおお!!」
唸り声とともに巨大な熊!?
いや、でっかい男が襲ってきた!!
「ぎゃぁぁああ!!」
斧を振り上げ、目の前に振り下ろされる。
「レグアさん!!」
ディアンが叫んだ。
振り下ろされた斧は俺たちの頭上で止まり……は、しなかった。
思い切り振り下ろされ、俺とディアンの間、ちょうど真ん中を勢いよく風を切るように振り下ろされた斧は地面に突き刺さった。
「ひぃぃぃぃいいいいい」
こ、これ、下手したら死んでるやつぅ!! よ、良かった、死んでなくて……。ちょびっと涙が……い、いや、これ、仕方ないよな! 俺が泣き虫だからとかではない! はず!
さすがのディアンも少し顔が引き攣っていた。
「あ? 俺の名前呼んだか?」
呆然としディアンも俺も動けなかったが、振り下ろした斧を地面から引き抜き、レグアさんは俺たちを見下ろした。
熊みたいな巨体に俺たちよりも頭二つ分ほど高い背。深緑色の髪に薄茶色の瞳。かなりのいかつい顔に鋭い目付き、ぶっとい腕にはたくさんの傷が見える。怖っ!
「あ、あの、俺たちレグアさんに会いに来ました。レグアさんですよね?」
「はぁあ!? 確かにレグアだが、俺になんの用だ」
眉間に皺を寄せるとさらに一層怖い顔になる!
女の子のために育成課を辞めたほどの人が……こんないかつい人だったとは……いや、まあ人は見掛けじゃないんだろうけど……でもさぁ……なんというか……。
「俺たち城で働いている治療師のディアンとこちらは育成課のリュシュです。レグアさんは昔、城の育成課にいたんですよね?」
「……それがどうした」
育成課にいたのは大昔のはずだが、レグアさんは中年男性くらいの見た目だ。凄いな竜人。長生きなのは聞いていたが、見た目もあまり歳を取らないんだな。
「育成係で野生の卵を孵化させた経験があるとお聞きしました」
「んあ? なんだそりゃ」
ん? 違うのか?
はぁぁあ、と深い溜め息を吐いたレグアさんは頭をボリボリと掻くと、斧を担ぎ上げ小屋の中へと戻った。
「おい、来い」
扉からこちらを覗き見たレグアさんは俺たちを小屋の中へと促した。
しかしひんやりと静まり返っているからか、木漏れ日も相まって神秘的な雰囲気に感じる。
ひんやりとした空気が気持ち良い。思い切り深呼吸をした。そして気合いを入れて周りを見回す。
なにか手掛かりになるようなものはないかと、キョロキョロと辺りを見回すがこれといってなにもない……当たり前か……。
「はぁぁあ、なにもないか……」
歩きながら溜め息を吐いた。
そのときバサバサッと頭上から大きな音がし、ビクッとする。見上げると大きな鳥が飛んで行く姿が見えた。
「ビビらせるなよな」
思わず短剣に手を掛けていたがそのまま短剣に手をやったまま歩き続ける。頭上から目線を動かしたときになにか違和感がした。
「? なんだ?」
なんだろうな。違和感を探るためにじっくりと周りを見回す。ん?
「リュシュ、どうした? こっちは特になにも手掛かりになりそうなものはなかったよ」
「ディアン、あれ」
「?」
指差したほうをディアンが見た。
俺が指差したものは森のなかのありふれた木々。
先程頭上を見上げ、そこから視線を戻したときになぜか違和感を感じた。それはなぜか。
「木が切られている!」
「あぁ」
周りを注意深く見てみると、枝が落とされた木や、奥のほうには切り株も見える。明らかになにかの刃物で切られている上に、切り落としたはずのものがない。
おそらく獣たちとは無関係な誰か人間が切り落とし、それを持ち帰ったのだろう。
「ということは、この付近に誰かがいたということだな」
切り落とされた切り口がまだ新しそうだ。そんなに以前のものではない、ということは最近この付近にいたということだ。
ディアンと顔を見合わせ、さらに奥を探索してみる。
注意深く周りを確認しながら進んで行くと、小川が現れ、そのすぐそばに小さな小屋があった……。
「「小屋だ!!」」
ディアンと顔を見合わせた。
「行ってみるか?」
「あぁ」
ですよね。ここまで来て確認しないとかありえないよな。で、でも大丈夫……だよな。きっとレグアさんだろ……強力な獣とか出て来ないよな……。
恐る恐るビビりながら小屋に近付いて行く。
玄関前に近付いた瞬間、バーンッと扉が開き……
「うぉぉぉおおお!!」
唸り声とともに巨大な熊!?
いや、でっかい男が襲ってきた!!
「ぎゃぁぁああ!!」
斧を振り上げ、目の前に振り下ろされる。
「レグアさん!!」
ディアンが叫んだ。
振り下ろされた斧は俺たちの頭上で止まり……は、しなかった。
思い切り振り下ろされ、俺とディアンの間、ちょうど真ん中を勢いよく風を切るように振り下ろされた斧は地面に突き刺さった。
「ひぃぃぃぃいいいいい」
こ、これ、下手したら死んでるやつぅ!! よ、良かった、死んでなくて……。ちょびっと涙が……い、いや、これ、仕方ないよな! 俺が泣き虫だからとかではない! はず!
さすがのディアンも少し顔が引き攣っていた。
「あ? 俺の名前呼んだか?」
呆然としディアンも俺も動けなかったが、振り下ろした斧を地面から引き抜き、レグアさんは俺たちを見下ろした。
熊みたいな巨体に俺たちよりも頭二つ分ほど高い背。深緑色の髪に薄茶色の瞳。かなりのいかつい顔に鋭い目付き、ぶっとい腕にはたくさんの傷が見える。怖っ!
「あ、あの、俺たちレグアさんに会いに来ました。レグアさんですよね?」
「はぁあ!? 確かにレグアだが、俺になんの用だ」
眉間に皺を寄せるとさらに一層怖い顔になる!
女の子のために育成課を辞めたほどの人が……こんないかつい人だったとは……いや、まあ人は見掛けじゃないんだろうけど……でもさぁ……なんというか……。
「俺たち城で働いている治療師のディアンとこちらは育成課のリュシュです。レグアさんは昔、城の育成課にいたんですよね?」
「……それがどうした」
育成課にいたのは大昔のはずだが、レグアさんは中年男性くらいの見た目だ。凄いな竜人。長生きなのは聞いていたが、見た目もあまり歳を取らないんだな。
「育成係で野生の卵を孵化させた経験があるとお聞きしました」
「んあ? なんだそりゃ」
ん? 違うのか?
はぁぁあ、と深い溜め息を吐いたレグアさんは頭をボリボリと掻くと、斧を担ぎ上げ小屋の中へと戻った。
「おい、来い」
扉からこちらを覗き見たレグアさんは俺たちを小屋の中へと促した。
10
お気に入りに追加
547
あなたにおすすめの小説
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜
I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。
レベル、ステータス、その他もろもろ
最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。
彼の役目は異世界の危機を救うこと。
異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。
彼はそんな人生で何よりも
人との別れの連続が辛かった。
だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。
しかし、彼は自分の強さを強すぎる
が故に、隠しきることができない。
そしてまた、この異世界でも、
服部隼人の強さが人々にばれていく
のだった。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる