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第二章《仕事》編

第四十一話 色

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「教育係以外の係には二人ずつ担当がいる。それはまた紹介する。育成係はさっき言った通りのつがいから卵、孵化してから少しの間の世話までだな」

 教育係は孵化して少し経った赤ちゃん竜から幼獣までの期間の世話。まあ所謂遊び相手らしい。
 好奇心の塊のような幼獣期を一緒に遊んで過ごす。後は餌や病気がないかなどの確認作業だったり。
 幼獣と呼ばれるほどの大きさまで育つと、身体も丈夫になる。したがって新人でも世話をしやすいとされる幼獣期の《教育係》なのだそうだ。

 訓練係はその幼獣期を一年過ごし成獣となった竜。身体はもう完全に大人の竜らしい。しかしまだまだ幼いやんちゃさの残る竜たちを人間に慣れさせるための訓練。ヒューイは今ここだな。
 騎竜になるための手綱や鞍に慣れさせるための訓練や、人間を乗せることに慣れるための訓練、人間が剣や魔法を振るうための訓練、などを行う《訓練係》。

 さらにそれらの訓練係を過ごし次の訓練に進むのが《強化係》。
 竜騎士となるための候補生とともに相棒候補との騎乗訓練。相棒を乗せたまま魔法を放つ訓練。
 そしてこの強化係では《竜人化》と《騎竜》とに分かれる。訓練を合格した竜たちは《竜人化試験》を受けることが出来る。

「竜人化試験?」
「あぁ、どんな試験内容かはまあそのときが来たら説明するが、竜が今後竜人になるか竜のままでいるかを選ぶための試験だな。そのときにリュシュが竜騎士になれるかどうかも決まるだろう」
「そ、そうなんですね」

 竜騎士という言葉を聞いて一瞬ギシッと身体が緊張した。

「まあそう緊張するな。そこまでいくには最低でも四年はかかる。のんびりいけ」

 そう言うとログウェルさんはアハハと笑った。

 四年か……長いな。でも普通に竜騎士の試験を受けたところで俺がそう簡単に受かるはずもないしな。育成課で頑張っていくしかないよな……。

「そうそう、それから竜と呼べってのはこの前言ったとおりだが、ディアンも聞いたか?」
「え、いや、そういったことは……」

 ログウェルさんがディアンに聞いたがディアンはなんのことだといった顔。その様子にログウェルさんは溜め息を吐き、船を漕いでいるシーナさんをじとっと見た。

「こいつのほうが余程いい加減だ!」

 そうブツブツと文句を言いながらも、ディアンに「竜」呼びの説明をしていた。ディアンは「なるほど」と呟き頷いた。それと同時に苦笑。あぁ、ディアンの苦労が目に浮かぶ。

「まあ、こいつはそういうの全く気にしないから、ドラゴンて呼んだり竜って呼んだりいい加減だけどな」

 やれやれといった顔のログウェルさん。なんだかんだと仲が良さそうな感じだな。

「おっと、そんなことじゃなくてだな、竜についてなんだが、竜の鱗は色でなんの魔力を持っているかが分かる」
「「色で?」」

「あぁ、竜の鱗の色は真紅、濃紺、深緑、といった感じだな。大体はそれらの三つの色だ」

「え、でも白……」

 あの白竜は? いるにはいるがいないと思え、とか訳分からないこと言われたけど。実際に白竜はいたんだし。その三つの色しかいないってのはどういうことだ?

「あー、だからそれはまあ置いといて」

 置いとくのかよ! うぅ、モヤモヤする。

「真紅の鱗は炎や風の魔力を、濃紺の鱗は水や氷の魔力を、深緑の鱗は雷や地の魔力を持っている」
「へぇぇ!」

 ディアンが目を輝かせていた。

「ということは、キーアは真紅だから炎で、ヒューイは濃紺の鱗だったから水や氷の魔力がある、ってことか……」
「そういうことだ」
「なるほど」

「それと、瞳の色で魔力の強さも大体分かる」
「「瞳の色?」」

「瞳の色が薄いほど魔力が強い。まあ竜の場合、成獣になるにつれ変化することもあるんだがな」
「へぇぇ」
「それは人間たちも同じはずだ」
「え!?」

 人間も同じ? ディアンと俺は顔を見合わせた。ディアンの瞳は薄茶色。これは薄い色だよな……。

「リュシュは金色だよな」
「え、あ、うん…………、金色!! そうだよ!! 俺の瞳、金色ってことは魔力が強いってことじゃないのか!! なんで俺には魔力がないんだよ……」

 最後は尻すぼみになってしまった。

「うーん、金色や銀色のやつはかなりの魔力持ちなんだけどな。まさか魔法が使えないやつがいるとは思わなかったからよく分からんなぁ」

 ログウェルさんは顎を撫でながら俺の目を覗き込む。

「調べたらなにか分かりますかね?」

 俺よりもディアンが聞いてくれた。

「どうだろうなぁ、今までこの国で魔法が使えないやつなんて聞いたことがないからなぁ。調べたところで分かるかどうか……」

 ガクッ。なんで俺だけ……。

「それを調べるのが我々だ!!」

 急に背中をバシーン!! と叩かれ前のめりになる。ぐふっ。
 驚いて振り向くと、さっきまで船を漕いでいたシーナさんが椅子から立ち上がり仁王立ち。腰に手をあてめちゃくちゃ偉そう……寝てたくせに。

「私は人間で瞳もほれ」

 そう言いながらグイッと顔を近付けられ焦る。ど、ドアップ! いや、ちょっと!
 メガネをクイッと上げたその顔はめちゃくちゃ美人。色白の肌にぷっくりとした唇……や、ヤバい……

「おい、どこ見てる、目だよ、目!」
「あがっ」

 ビクッとなり思わず変な声を上げてしまった。

「シーナさんの瞳はキラキラして綺麗……じゃなくて、濃紺……」

「そう、私の瞳は髪と同じで濃紺の瞳。暗い色だ」
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