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第二章《仕事》編

第三十七話 ロナス商会

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 アンニーナと並び歩いている間に先程の子供竜の話をすると、やはりアンニーナも爆笑だった。くそぅ、なんか俺こんなことばっかりだな……。

「フフフ、アハハ、あ、ごめん、いや、なんというか、フフ、リュシュって本当に竜に好かれるわね、フフフ」

「なんか褒められてる気がしないんだけど……」

 じとっとアンニーナを見ると、なんとか笑いを堪えようとするが堪えきれていないアンニーナだった。

「ご、ごめん、フフ」
「もう無理に我慢しなくていいよ、どうせ俺は竜にもてあそばれる運命なんだ」

 拗ねてみた。いやでもあながち外れてもいないよな。キーアと一緒に行動するようになってから目立つし、竜たちに絡まれるし、人間には笑われるし、なんだこれ。
 はぁぁ、と小さく溜め息を吐いた。

「まあいいじゃない、育成課で長宝されそうじゃないのよ。天職になるかもよ?」
「天職なぁ、竜に絡まれるのが?」
「竜と仲良くなれるってことじゃない、私からしたら羨ましいわよ」
「本当にそう思ってる?」
「ん? う、うん、思ってるわよ?」

 そう言いながら目を逸らすアンニーナ。おい。
 しかも俺は竜騎士になりたいんだよ。いや、まあ、育成課はちゃんと頑張るけどね、それはもちろん。

「まあまあ、ほら、ロナス商会に着いたみたいよ?」

 アンニーナが指差した建物。演習場から城門とは反対側に歩いた先にある三階建てのかなり大きな建物。
 他の城施設に比べると小さいのだろうが、それでも街で見かける建物よりかは、明らかに巨大な建物だった。
 三階の屋根部分には旗が掲げられていて、そこには船が描かれていた。

「あれってロナス商会のマークか何か?」
「そうみたいね、ロナス商会の旗が掲げられているからすぐに分かるって言われたし」
「なんで船? こんな内陸で?」
「ロナス商会は元々港町ヤナで大きくなった商会らしいわよ?」
「へぇぇ」

 アンニーナも詳しくは知らないが、と付け足した。ヤナの街かぁ、噂では聞いたことあるけど、カカニア以外の街は話で聞くくらいしか知らないしな……。


 巨大な建物の入口はこれまたかなりの大きさで重たい扉だった。扉を開けると眩しいくらいの灯りが煌々と灯され、店内はとても明るい。

「いらっしゃいませ、なにをお探しですか?」

 扉を開け足を踏み入れると、奥から一人の男が近寄って来た。スラっと背が高く、上品な服装に丸眼鏡、髪もビシッとセットされた茶髪に茶瞳の男。

「えっと、あの、その」

「私たち今日からの新人で、どんなものがあるのか見せてもらいに来たんです」

 俺がしどろもどろになっているとアンニーナがさらっと受け答えしてくれた。な、情けない……。

「あぁ、新人の方々ですか、おめでとうございます。ロナス商会ではあらゆるものを取り扱っておりますので、もしもお探し物が見つからない場合はお取り寄せも出来ますので、どうぞお声掛けください」

「ありがとう」

 男はニコリと笑うと「どうぞ、ご自由にご覧ください」と口にし、店の奥へと戻った。

「アンニーナ、凄いな、俺、田舎者だからあんなかしこまった対応されたら固まってしまう」
「アハハ、そう? 大したことないけど、褒められるのは嬉しいわ」


「あれ? アンとリュシュじゃないか、お前たちももう説明終わりか?」

 二階へと続く階段からディアンが降りて来た。

「ディアン! ディアンも来てたのね」
「あぁ、俺もなにがあるのか見ておきたくて」
「二階や三階にも商品があるんだよな?」
「あぁ、二階は衣裳関係と武器防具、三階には文具や家具や魔導具やらだったな」

 一階は眺めて見た感じ食料品や日用品が主なようだった。二階や三階にはそれ以外のものといった感じか。

 アンニーナとディアンは一緒になってあれこれ言いながら商品を見て回る。くそぅ、デートみたいじゃないか、羨ましい!

 俺はというと仕方がないので一人でうろちょろと。

 一階の食料品には嗜好品のようなものがメインで置いてある感じだな。まあ基本的には寮の食堂で食事は心配ないもんな。だからか、酒や酒の肴、茶葉やジュース、甘味や軽く食べられそうな携帯食など、そんなものが中心に置かれている。
 酒や茶葉は壁一面の棚にびっしりと。携帯食は整然と並べられ、甘味などの色鮮やかなものは可愛らしく目を引くように並べられていた。

 カカニアでは見たことがないような食べ物もいっぱい置いてある。さすが王都だな。どんな味なのか全部試してみたくなる! これからちょっとずつ買っていってみようかな、とちょっとウキウキしてきてしまった。

 二階へと階段を昇ると、まず目に付いたのは壁一面に並べられた武器や防具だった。
 短剣から片手剣、長剣、槍や鎖鎌なんてものもある。防具も盾やアームガード、グローブ、脛あてやらマントやら、全身の武器防具が揃えられる品揃えだ。
 衣裳も男女様々な服が並べられ、その横には靴や鞄が並べられていた。
 カカニアから出て来てくるために荷物を極力減らして来たので、服はあまり持って来ていない。ここでこれだけのものを揃えてくれているのは有難いな。追々服も買い揃えていこう。うんうん。

 さらに三階へと昇るとこれまた整然と綺麗に区画を分けられ並べられていた。
 お、文具だ。そういえば手紙を書こうと思ってたんだよな。
 そう思い文具の棚を見る。

 綺麗な装飾のペンや小物入れ、封筒や便箋も上品なものばかり。な、なんか俺には似合わないな……。
 家具は見本を置いているようだった。注文をすると取り寄せてくれるらしい。各区画に店員さんが立っていて説明をしてくれる。小柄な可愛い女の子たち……竜人ばっかり見てたから、やたら小さくて可愛く見える!

 魔導具は石が多く置かれていた。その宝石たちに魔力を注ぎ創られたものが魔導具として加工される。一から魔力を注ぎ創るにはかなりの高額になるらしく、本来多くの人々は既製品を買う。そのためすでに出来上がっている魔導具は効能が書かれ売られていた。

「さすがに特注品は買えないから縁がないよな、ハハ」

 綺麗な石だなぁ、と眺めるだけでその場を後にする。

 文具区画で封筒と便箋を選び会計をした。ついでにどうやって手紙を出したら良いのかも聞いてみる。

「お手紙や荷物などは一階一番奥にありますカウンターへお越しください。そこでお手続き出来ますので」

 店員の女の子が会計をしながらそう教えてくれたので、一階に戻り一番奥とやらを探した。

「配達のご依頼ですか?」

 先程の男がカウンターに現れた。
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