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第二章《仕事》編
第三十三話 人手不足
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「あぁ、ちょうど良かった。新しくここで働くことになるリュシュだ」
女の子は俺に近付くとマジマジと見た。背が高いからビビるけど……、やっぱ可愛いなぁ、近付かれるとドキドキしてしまう。
顔を近付けないでくれ! 緊張しているのがバレちゃうじゃん!
「んー、でもこの子人間じゃないの?」
「あぁ、人間だ。しかーし! なんと!! 竜と会話出来るんだ!!」
声高らかにログウェルさんに宣言され、めちゃくちゃ恥ずかしくなる。
ちょっと! そんな大袈裟に言わないでくれよ! ただ会話出来るだけじゃん! そんなの自慢にもならない!
「あ、あ、あの……ちょっと、そんな大袈裟に……」
そう言いかけたところで、その女の子は目を輝かせて俺の手を握り締めた。うはっ! 女の子に手を握られてしまった! いや、うん、て、手を握るくらい初めてじゃないよ、うん、本当に、嘘じゃない……よ?
「ほんとにー!? うっそー!! めっちゃ頼りになるじゃなーい!! 嬉しいー!!」
女の子は俺の手を握り締めたまま、ぴょんぴょんと飛ぶように喜ぶ。
お、おぉ、めちゃくちゃ喜ばれてる……な、なんで?
「だろ!? いやぁ、もうほんと有難いよ!!」
「え、あ、あの、俺、本当に会話が出来るだけですよ? 力も体力もないし、その、魔法も使えませんよ?」
な、なんだか自分で言ってて情けなくなるが、まあ本当のことなんだから仕方ないよな。黙っているべき内容ではないし。
「ん? あぁ、それは団長に聞いたよ。大した問題じゃない! そんなことはどうにでもなるさ! それよりも会話が出来るということが一番価値がある!!」
「そ、そうなんですか?」
「あぁ! なんせ竜たちはまあ我儘でな! まあ、俺もそうだったんだが、アハハ!」
「そうそう、本当に我儘……」
女の子もログウェルさんの言葉に頷く。
いや、あんたたちも元ドラゴンなんだよな。それを差し置いても我儘に困ってんのか? ん? でもそれがなんの関係があるんだ?
「竜ってのはプライドが高くて我儘なやつが多くてなぁ。世話をするには会話が重要なんだよなぁ」
「はぁ」
「まあ会話が出来ても反抗されることは多々あるんだが、会話が出来ない人間だとなおさら言うことを聞かなくてな。世話をするのにめちゃくちゃ苦労するんだ。だから人間たちはどんどん辞めて行ってしまってなぁ。いまや一人しかいない。あとはみんな竜人だけだ」
「え、そうなんですか?」
ログウェルさんと女の子は顔を見合わせ物凄い深い溜め息を吐いた。
「「はぁぁぁぁあ」」
「そうなんだよ! 人間がすぐ辞めてしまうもんだから、採用試験の受験者すら募集しなくなってしまった上に、しかも竜人もプライドが高いままだから竜の世話をしようとするやつがなかなかいないし……、慢性的に人手不足なんだよ!! ほんっとにめちゃくちゃ困ってたんだよ!! だからリュシュが来てくれることになって泣いたよ、俺は!!」
ログウェルさんに肩をガシッと掴まれ、ガクガクと揺さぶられる。う、うおぉ、脳みそ揺れるわ!!
「ちょ、ちょっと!! 力抑えてくださいよ!!」
「あ、すまん、アハハ」
アハハじゃねー! 竜人なんかに揺さぶられたら半端ないわ!
「いやぁ、本当にあたしも嬉しいー!! リュシュ最高!! 来てくれて感謝~!」
女の子も興奮状態で抱き付いて来た。うぉぉぉお!! なんか良い匂い! 柔らかい! む、胸が!! 思わず鼻を確認。
「いや、ちょっと、は、離れてください……」
だ、駄目だ……一応許嫁がいた身として他の女の子と触れ合ったことなどない俺からするとヤバい!! この子的には軽いハグなんだろうが、駄目だー!! 俺には喜んで良いのか拷問なのか分からーん!!
女の子の肩を掴み、グイッと身体を離し鼻を確認……良かった……え? いや、まあ、気にしないで。
「アハハ、ごめんごめん、嬉し過ぎて思わず抱き付いちゃった。あたし、ルーサ、よろしくね! リュシュ!」
「あ、はい、よろしくお願いします……」
「もう! 敬語なんかで話さないでよ! 普通に話してくれて良いよー!」
「は、はい……じゃなくて、うん、ありがとう。よろしく、ルーサ」
「フフ」
ルーサは嬉しそうに笑った。やっぱ可愛いな……。
しかもこんなに俺のことを必要としてもらえるなんて。嬉しいな……。今俺の人生で一番最高潮に幸せなときかもしれない。ガルドさんに認めてもらえたことも嬉しかった。さらに人から必要とされることがこんなに嬉しいことだとは。ちょっと泣きそうだ。カカニアを出てから俺の人生は動き出したんだな。なんて幸せなんだ。
「育成課のメンバーはまた今後紹介するとして、とりあえずはまず寮の説明とそれから仕事の説明だな」
「寮?」
「あぁ、城で働く人間は全て寮に入居出来るようになっている。育成課と竜騎士はこの演習場のすぐ近くに、他の部署のものたちは城内部に寮があるんだ。まずはそこに案内しよう。明日から移って来ると良い」
「おぉ!」
やった! これで宿の心配をせずに済む!!
女の子は俺に近付くとマジマジと見た。背が高いからビビるけど……、やっぱ可愛いなぁ、近付かれるとドキドキしてしまう。
顔を近付けないでくれ! 緊張しているのがバレちゃうじゃん!
「んー、でもこの子人間じゃないの?」
「あぁ、人間だ。しかーし! なんと!! 竜と会話出来るんだ!!」
声高らかにログウェルさんに宣言され、めちゃくちゃ恥ずかしくなる。
ちょっと! そんな大袈裟に言わないでくれよ! ただ会話出来るだけじゃん! そんなの自慢にもならない!
「あ、あ、あの……ちょっと、そんな大袈裟に……」
そう言いかけたところで、その女の子は目を輝かせて俺の手を握り締めた。うはっ! 女の子に手を握られてしまった! いや、うん、て、手を握るくらい初めてじゃないよ、うん、本当に、嘘じゃない……よ?
「ほんとにー!? うっそー!! めっちゃ頼りになるじゃなーい!! 嬉しいー!!」
女の子は俺の手を握り締めたまま、ぴょんぴょんと飛ぶように喜ぶ。
お、おぉ、めちゃくちゃ喜ばれてる……な、なんで?
「だろ!? いやぁ、もうほんと有難いよ!!」
「え、あ、あの、俺、本当に会話が出来るだけですよ? 力も体力もないし、その、魔法も使えませんよ?」
な、なんだか自分で言ってて情けなくなるが、まあ本当のことなんだから仕方ないよな。黙っているべき内容ではないし。
「ん? あぁ、それは団長に聞いたよ。大した問題じゃない! そんなことはどうにでもなるさ! それよりも会話が出来るということが一番価値がある!!」
「そ、そうなんですか?」
「あぁ! なんせ竜たちはまあ我儘でな! まあ、俺もそうだったんだが、アハハ!」
「そうそう、本当に我儘……」
女の子もログウェルさんの言葉に頷く。
いや、あんたたちも元ドラゴンなんだよな。それを差し置いても我儘に困ってんのか? ん? でもそれがなんの関係があるんだ?
「竜ってのはプライドが高くて我儘なやつが多くてなぁ。世話をするには会話が重要なんだよなぁ」
「はぁ」
「まあ会話が出来ても反抗されることは多々あるんだが、会話が出来ない人間だとなおさら言うことを聞かなくてな。世話をするのにめちゃくちゃ苦労するんだ。だから人間たちはどんどん辞めて行ってしまってなぁ。いまや一人しかいない。あとはみんな竜人だけだ」
「え、そうなんですか?」
ログウェルさんと女の子は顔を見合わせ物凄い深い溜め息を吐いた。
「「はぁぁぁぁあ」」
「そうなんだよ! 人間がすぐ辞めてしまうもんだから、採用試験の受験者すら募集しなくなってしまった上に、しかも竜人もプライドが高いままだから竜の世話をしようとするやつがなかなかいないし……、慢性的に人手不足なんだよ!! ほんっとにめちゃくちゃ困ってたんだよ!! だからリュシュが来てくれることになって泣いたよ、俺は!!」
ログウェルさんに肩をガシッと掴まれ、ガクガクと揺さぶられる。う、うおぉ、脳みそ揺れるわ!!
「ちょ、ちょっと!! 力抑えてくださいよ!!」
「あ、すまん、アハハ」
アハハじゃねー! 竜人なんかに揺さぶられたら半端ないわ!
「いやぁ、本当にあたしも嬉しいー!! リュシュ最高!! 来てくれて感謝~!」
女の子も興奮状態で抱き付いて来た。うぉぉぉお!! なんか良い匂い! 柔らかい! む、胸が!! 思わず鼻を確認。
「いや、ちょっと、は、離れてください……」
だ、駄目だ……一応許嫁がいた身として他の女の子と触れ合ったことなどない俺からするとヤバい!! この子的には軽いハグなんだろうが、駄目だー!! 俺には喜んで良いのか拷問なのか分からーん!!
女の子の肩を掴み、グイッと身体を離し鼻を確認……良かった……え? いや、まあ、気にしないで。
「アハハ、ごめんごめん、嬉し過ぎて思わず抱き付いちゃった。あたし、ルーサ、よろしくね! リュシュ!」
「あ、はい、よろしくお願いします……」
「もう! 敬語なんかで話さないでよ! 普通に話してくれて良いよー!」
「は、はい……じゃなくて、うん、ありがとう。よろしく、ルーサ」
「フフ」
ルーサは嬉しそうに笑った。やっぱ可愛いな……。
しかもこんなに俺のことを必要としてもらえるなんて。嬉しいな……。今俺の人生で一番最高潮に幸せなときかもしれない。ガルドさんに認めてもらえたことも嬉しかった。さらに人から必要とされることがこんなに嬉しいことだとは。ちょっと泣きそうだ。カカニアを出てから俺の人生は動き出したんだな。なんて幸せなんだ。
「育成課のメンバーはまた今後紹介するとして、とりあえずはまず寮の説明とそれから仕事の説明だな」
「寮?」
「あぁ、城で働く人間は全て寮に入居出来るようになっている。育成課と竜騎士はこの演習場のすぐ近くに、他の部署のものたちは城内部に寮があるんだ。まずはそこに案内しよう。明日から移って来ると良い」
「おぉ!」
やった! これで宿の心配をせずに済む!!
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