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第一章《旅立ち~試験》編
第二十九話 合格発表!
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控えの間、皆が緊張の面持ちで静まり返っている。
「アンニーナとフェイは合格間違いなさそうだな」
「そんなことないわよ、やっぱり駄目なんじゃないかと緊張する」
「そうなのか? 自信満々な感じに思ってたけど」
「そんなわけないじゃない、自信はまああっても……きっとそれだけじゃないだろうし」
「まあそうだよね。僕もそれなりにやれたと思っているけど、自信があるわけじゃないし」
フェイまでそんな弱気な発言をするとは。やはり皆不安な気持ちは一緒なんだな。まあそれでも俺よりは自信持てるだけのものがあると思うけど。
今日も食事が用意されていたが、誰も手を付けていない。緊張の時間を過ごし、出入口からヤグワル団長が現れた。ついに来た!!
「今から合格者を発表する! 名前を呼ばれたものはこの後説明があるから残れ! では、発表するぞ!」
皆がごくりと唾を飲み込んだような緊張感が漂った。
ヤグワル団長は手元の紙に視線を落とす。
「一人目! フェイ!」
ワッと全員がフェイを見た。やっぱりな、フェイは余裕で合格すると思ってた。
「「おめでとう、フェイ」」
アンニーナと俺がそう言うとフェイは嬉しそうに「ありがとう」と微笑んだ。うん、フェイは合格するべきだよな。こんな強いやつなかなかいないだろう。
「次のやつ……、二人目! ネヴィル!」
ネヴィル? どいつだ? キョロッと周りを見回すと「うおぉぉお!!」と雄叫びを上げるやつがいた。あれがネヴィルか。ちょっと年上そうだな。屈強な身体つきに深緑色の短髪、琥珀色の瞳。めちゃくちゃぶっとい大剣を持っている。つ、強そうだな。羨ましい。
「あの人、何年も試験を受け続けていたらしいわよ、他の受験者の子に聞いたけど」
アンニーナが小声で言った。へー、そうなんだ。そんな何年も挑戦するなんて凄いな。ようやくなれたんだな。諦めずに何年も挑戦……尊敬する。
「三人目! アンニーナ!」
「え! やったぁぁあ!! 良かった!! 嬉しい!!」
アンニーナはこそこそと俺と話しているときに、名前を呼ばれたものだからビクッとし、驚きの表情をし大いに喜んだ。めちゃくちゃ嬉しそうなアンニーナの姿を見ると俺まで嬉しくなる。うん、本当にそう思ってるよ。やっぱり友達が合格すると嬉しいんだよ。
「「おめでとう、アンニーナ」」
「ありがと!! 次はリュシュの番ね!」
「え、あー、ハハ……」
俺の番……なんて来るんだろうか……。と、ヤグワル団長に視線を戻すと、ヤグワル団長は持っていた紙から目を離した。
「以上だ!! 今回は三人の合格者! 以上で今年の試験は終了する!! 解散!!」
「「えっ」」
終わった…………。
終わってしまった…………。
無理だと、無謀だと、分かっていた……。そう、分かっていたんだ。
でも、それでも、やっぱり現実を突き付けられると相当なショックだ。
あぁ、俺は…………、俺はやっぱり…………駄目なんだな………。
茫然自失、まさにそれだった。何も考えられない……。俺は……これから……どうしたら良いんだ……。
「リュ、リュシュ……大丈夫?」
「リュシュ……」
他の受験者たちが溜め息を吐きながら控えの間を後にしていく。俺はというと立ち上がることも出来ず、椅子に座り込んだままだ。
アンニーナとフェイが心配そうに顔を覗き込んでくる。
あぁ、二人に心配をかけてしまっている。なんとか……、なんとか声を出さないと……。
「あー、ハハ……だ、大丈夫。二人ともこれからの話を聞きに行かなきゃだろ? 俺は大丈夫だから行って来いよ。俺は先に帰ってるから」
良かった、なんとか言葉に出来た。
「リュシュ……本当に大丈夫?」
「うん、大丈夫だから、行って来いよ」
精一杯笑顔で言った。
アンニーナとフェイは顔を見合わせ、「じゃあ」と言ってそっと俺から離れた。チラチラと振り返り俺をいつまでも気にしてくれている。ハハ、良い友達を持ったもんだ。家族といい、アンニーナやフェイやディアンといい、俺は周りに恵まれてるよ。
他の人々に馬鹿にされようが、婚約破棄されようが、こうやって俺の味方でいてくれる人たちがいるんだから。俺は幸せ者じゃないか。そうだよな、俺は幸せなんだよ。竜騎士だけが全てじゃない。俺自身を認めてくれる人たちがいるんだから、このまま生きて行けば良いんだよ。きっとそうだ。
茫然としたまま立ち上がった。ほら、まだ俺は動けるじゃないか。きっと俺は大丈夫。
鉛のように重い脚を動かし控えの間を後にした。もうすでに他の受験者たちの姿もない。
『リュシュ! 帰るのー? アンニーナとフェイはー?』
頭上からキーアの声がした。能天気な声に今は安心する。
「二人は竜騎士の説明を聞きに行ったよ」
『リュシュはー?』
「…………、俺は駄目だったから…………」
『駄目? なんで? なんで駄目だったのー?』
ヤバい、イラッとしてしまう。キーアの能天気さに安心したのに、その能天気さにイラついてしまう。駄目だ、怒鳴ってしまいそうだ。必死に我慢する。
「おい! お前、ちょっと待て!」
爆発しそうになる心を押さえ付けていると、背後からヤグワル団長がやって来た。
「な、なんですか?」
余程悲愴な顔でもしていたのか、ヤグワル団長は一瞬ぎょっとした顔になり、目線を逸らした。
「あー、お前、その竜を騎竜にするんだろ?」
「あぁ、そうでしたね」
すっかり忘れていた。それどころの気分じゃなかったし。
「俺について来い」
「はぁ」
もう完全にやる気が失せてしまい、なんとも間の抜けた返事になってしまった。
「アンニーナとフェイは合格間違いなさそうだな」
「そんなことないわよ、やっぱり駄目なんじゃないかと緊張する」
「そうなのか? 自信満々な感じに思ってたけど」
「そんなわけないじゃない、自信はまああっても……きっとそれだけじゃないだろうし」
「まあそうだよね。僕もそれなりにやれたと思っているけど、自信があるわけじゃないし」
フェイまでそんな弱気な発言をするとは。やはり皆不安な気持ちは一緒なんだな。まあそれでも俺よりは自信持てるだけのものがあると思うけど。
今日も食事が用意されていたが、誰も手を付けていない。緊張の時間を過ごし、出入口からヤグワル団長が現れた。ついに来た!!
「今から合格者を発表する! 名前を呼ばれたものはこの後説明があるから残れ! では、発表するぞ!」
皆がごくりと唾を飲み込んだような緊張感が漂った。
ヤグワル団長は手元の紙に視線を落とす。
「一人目! フェイ!」
ワッと全員がフェイを見た。やっぱりな、フェイは余裕で合格すると思ってた。
「「おめでとう、フェイ」」
アンニーナと俺がそう言うとフェイは嬉しそうに「ありがとう」と微笑んだ。うん、フェイは合格するべきだよな。こんな強いやつなかなかいないだろう。
「次のやつ……、二人目! ネヴィル!」
ネヴィル? どいつだ? キョロッと周りを見回すと「うおぉぉお!!」と雄叫びを上げるやつがいた。あれがネヴィルか。ちょっと年上そうだな。屈強な身体つきに深緑色の短髪、琥珀色の瞳。めちゃくちゃぶっとい大剣を持っている。つ、強そうだな。羨ましい。
「あの人、何年も試験を受け続けていたらしいわよ、他の受験者の子に聞いたけど」
アンニーナが小声で言った。へー、そうなんだ。そんな何年も挑戦するなんて凄いな。ようやくなれたんだな。諦めずに何年も挑戦……尊敬する。
「三人目! アンニーナ!」
「え! やったぁぁあ!! 良かった!! 嬉しい!!」
アンニーナはこそこそと俺と話しているときに、名前を呼ばれたものだからビクッとし、驚きの表情をし大いに喜んだ。めちゃくちゃ嬉しそうなアンニーナの姿を見ると俺まで嬉しくなる。うん、本当にそう思ってるよ。やっぱり友達が合格すると嬉しいんだよ。
「「おめでとう、アンニーナ」」
「ありがと!! 次はリュシュの番ね!」
「え、あー、ハハ……」
俺の番……なんて来るんだろうか……。と、ヤグワル団長に視線を戻すと、ヤグワル団長は持っていた紙から目を離した。
「以上だ!! 今回は三人の合格者! 以上で今年の試験は終了する!! 解散!!」
「「えっ」」
終わった…………。
終わってしまった…………。
無理だと、無謀だと、分かっていた……。そう、分かっていたんだ。
でも、それでも、やっぱり現実を突き付けられると相当なショックだ。
あぁ、俺は…………、俺はやっぱり…………駄目なんだな………。
茫然自失、まさにそれだった。何も考えられない……。俺は……これから……どうしたら良いんだ……。
「リュ、リュシュ……大丈夫?」
「リュシュ……」
他の受験者たちが溜め息を吐きながら控えの間を後にしていく。俺はというと立ち上がることも出来ず、椅子に座り込んだままだ。
アンニーナとフェイが心配そうに顔を覗き込んでくる。
あぁ、二人に心配をかけてしまっている。なんとか……、なんとか声を出さないと……。
「あー、ハハ……だ、大丈夫。二人ともこれからの話を聞きに行かなきゃだろ? 俺は大丈夫だから行って来いよ。俺は先に帰ってるから」
良かった、なんとか言葉に出来た。
「リュシュ……本当に大丈夫?」
「うん、大丈夫だから、行って来いよ」
精一杯笑顔で言った。
アンニーナとフェイは顔を見合わせ、「じゃあ」と言ってそっと俺から離れた。チラチラと振り返り俺をいつまでも気にしてくれている。ハハ、良い友達を持ったもんだ。家族といい、アンニーナやフェイやディアンといい、俺は周りに恵まれてるよ。
他の人々に馬鹿にされようが、婚約破棄されようが、こうやって俺の味方でいてくれる人たちがいるんだから。俺は幸せ者じゃないか。そうだよな、俺は幸せなんだよ。竜騎士だけが全てじゃない。俺自身を認めてくれる人たちがいるんだから、このまま生きて行けば良いんだよ。きっとそうだ。
茫然としたまま立ち上がった。ほら、まだ俺は動けるじゃないか。きっと俺は大丈夫。
鉛のように重い脚を動かし控えの間を後にした。もうすでに他の受験者たちの姿もない。
『リュシュ! 帰るのー? アンニーナとフェイはー?』
頭上からキーアの声がした。能天気な声に今は安心する。
「二人は竜騎士の説明を聞きに行ったよ」
『リュシュはー?』
「…………、俺は駄目だったから…………」
『駄目? なんで? なんで駄目だったのー?』
ヤバい、イラッとしてしまう。キーアの能天気さに安心したのに、その能天気さにイラついてしまう。駄目だ、怒鳴ってしまいそうだ。必死に我慢する。
「おい! お前、ちょっと待て!」
爆発しそうになる心を押さえ付けていると、背後からヤグワル団長がやって来た。
「な、なんですか?」
余程悲愴な顔でもしていたのか、ヤグワル団長は一瞬ぎょっとした顔になり、目線を逸らした。
「あー、お前、その竜を騎竜にするんだろ?」
「あぁ、そうでしたね」
すっかり忘れていた。それどころの気分じゃなかったし。
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