上 下
10 / 163
第一章《旅立ち~試験》編

第十話 王都到着!

しおりを挟む
「失礼かもしれないけど、貴方竜騎士になんかなれそうには見えないんだけど」

 いや、ほんと失礼だな。見た目で判断するなよ。いやまあ、見た目からして弱っちい俺が悪いのかもしれないけど。

「そういうあんたも竜騎士目指してんの?」
「そうよ」

「アンは子供の頃から竜騎士のためだけに訓練してたようなもんだしな。俺も敵わない」

 ハハ、と笑いながら男は言った。

「あ、まだ名乗ってなかったな、俺はディアン。こっちはアンニーナ」

 女を指差し言った。

 ディアンはニ十歳。深紅の髪が目立つ端正な顔立ち。くそっ、どいつもこいつもイケメンだな、おい。ドラゴンの研究を含め、治療師を目指すために王都へ。

 アンニーナは十九歳。紺色の髪に灰色の瞳で髪をポニーテールにまとめ上げ、大きな瞳だがきりっとしたかっこいい女だ。胸もデカい……いや、これはなし!
 竜騎士を目指すために王都へと向かっているらしい。

 十八歳から竜騎士の試験は受けられるはずなのに、何故十九歳になってから挑戦なんだと質問すると「この馬鹿のせいだ」とディアンを指差しうんざりした顔をした。

「ディアンが自分の治癒能力をもっと上げてからじゃないと王都へは行かない、とか言うから!」

「ハハ、だってまだまだな状態で行っても役に立たないじゃないか」

「でもそのせいで私は一年遅れたんだよ!」

「ん? でも別に一緒じゃなくても、アンニーナだけで先に行けば良かったんじゃ……」

 そう言うと横から思い切りヴィリーに肘で小突かれた。

「痛てっ、何すんだよ」

 ヴィリーを見るとめちゃくちゃ可哀想な子を見るような顔で見られた。なんだよ、おい。

「べ、別に待たなくても良かったけど、ディアンが寂しいかと思って待ってあげたのよ!! 弟みたいなもんよ! 一人じゃ心配じゃない!!」

「いや、アンのほうが年下だろ」
「う、うるさいわねー!! 一人じゃ寂しいだろうと心配してあげたんでしょ!!」

「それってアンニーナが寂しいだけじゃ……」

 と言ったところでまたしてもヴィリーに激しく小突かれた。ぐふっ。
 アンニーナは若干涙目になりながら顔を真っ赤にして怒ってしまった。あれ、まずった?

 ヴィリーに「馬鹿だな」と小さい声で注意されました。

 女心……分からん。


 自己紹介やらを終えて、アンニーナの機嫌も直ってくると、ディアンがアンニーナの武勇伝を教えてくれた。
 これまたアンニーナが怒り出すのではとヒヤヒヤしたが、恥ずかしそうにしながらもアンニーナはちょっと自慢気なようだった。
 やはり竜騎士を目指すとなるとそれなりに武勇伝くらいあってもおかしくないか。俺がなさすぎなんだよな。



 途中、昼食休憩を挟み、さらに馬車で走ること半日。夜中にようやく王都へと到着したのだった。

 夜中だったためせっかくの街並みは全く分からず。翌朝から堪能するか、と、早々に諦め、夜中でも泊まることが出来る宿屋に案内され、そこで皆夜を明かした。

 翌朝、宿屋のエントランスに皆集まると、家族は自分たちの親戚の元へと行くと言い去った。子供はこちらに振り返り大きく手を振ってくれていた。

「また会えたらよろしくな、じゃあな。竜騎士頑張れよ」
「ありがとう、またな」

 そう言いヴィリーとガルドさんとは固い握手を交わし別れた。ちょっと泣きそうになったのは秘密だ。



「さて、リュシュはどうすんの? 試験までまだ少し日にちあるけど」
「うーん、そこんとこ何も考えてなかったんだよなぁ。アンニーナたちはどうすんの?」

「俺たちは親戚の家があるからそこに泊めてもらいつつ、訓練しながら試験まで待つつもりだ。リュシュも来るか?」

「え!! 良いの!?」

 あまりに有難い申し出に前のめりで詰め寄ってしまった。ディアンが引き攣っていた。

「あ、あぁ、一人増えたところで大した差じゃないと思うしな。ただ店の手伝いをさせられるとは思うが」
「店?」
「俺の親父の弟の家なんだけど、飲み屋なんだよ」



 ディアンの叔父さん宅を目指しながら初めての王都をディアンとアンニーナに案内してもらうことになった。

 キーアが嬉しそうに羽ばたこうとするが、さすがに街中を子供といえどドラゴンが飛び回るのはいかがなもんかと思い、仕方がないから頭に乗せてやった。いや、重いんだけどさ。出来れば飛んで欲しいんだけどさ、変に飛び回って問題起こされても面倒だしな。

 昨夜馬車で通り抜けた王都への入口は、巨大な壁に囲まれ大きな門が兵士によって守られていた。
 対応した兵士は俺よりも頭一つ分ほど背が高く服の上からも分かるほどの筋肉質な身体つきをしていた。
 これはもしや竜人か!? と思わずまじまじとその兵士を見てしまったことは仕方ないだろう。顔付きも精悍で短い髪に鋭い目付き。見るからに強そうだなぁ、と感心しっぱなしだった。それに比べて俺は……。自分の腕や脚、腹回りを見てがっかりとしたのだった。

 巨大な門をくぐり抜けた先には目の前に道幅が半端なく広い大通りが一直線に伸び、聞けば城まで続いているということだった。
 両脇に街並みが並ぶが、どの建物もカカニアでは見たことがないほど、高い建物ばかりだ。
 カカニアでは精々三階建てほどくらいまでしか建物はなかった。しかしこの街には五階以上の建物が山程ある。完全にお上りさん状態で建物を見上げ溜め息が漏れる。

 そして、何よりも俺の興味を引いたもの、まさに圧巻。

 街の空を多くのドラゴンが埋め尽くしていたのだった。
しおりを挟む
感想 106

あなたにおすすめの小説

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。 レベル、ステータス、その他もろもろ 最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。 彼の役目は異世界の危機を救うこと。 異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。 彼はそんな人生で何よりも 人との別れの連続が辛かった。 だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。 しかし、彼は自分の強さを強すぎる が故に、隠しきることができない。 そしてまた、この異世界でも、 服部隼人の強さが人々にばれていく のだった。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...