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第一章《旅立ち~試験》編
第八話 乗合馬車の乗客
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ザンザの街へと到着するとカカニアよりも広い景色に圧倒された。
きっとこれでも大した大きさではないのだろう、王都はもっと広いのだろう、と頭では分かっているがカカニアから出たことがないため、何もかもが新鮮だった。
「王都への馬車はすぐ出るようだぞ? もう乗るか?」
「え、そうなの? 乗る乗る!」
街の物珍しさにキョロキョロとしている間に、ガルドさんが王都行きを調べてくれたようだ。
あ、ちなみにガルドさんのことはおっさん呼ばわりはやめました。だってね、そこはね、ほら、分かるでしょ、ねぇ? って誰に言ってんだって感じだが、まあガルドさんを尊敬しちゃった訳ですよ! かっこいいイケオジ! 俺が女なら惚れるね!
え? あんな一言だけでちょろい奴だって? うっ。ま、まあそれは良いじゃん。それくらい俺には心から嬉しい言葉だったんだよ。何が変わる訳でもないし、俺が強くなる訳でもない。それでもあのときのガルドさんの言葉には自信をもらえた。それだけで良いんだよ。
馬車は街の大通りに面したところに停まっていた。御者らしき男が客と金のやり取りをしている。順番に並び男と話すと王都行き千ルアだと言われる。た、高っ! ま、まあ王都だもんな。ここから結構な距離もあるもんな。仕方ないか……。
ちなみに朝食などで食べるパン一つで十ルアくらいだ。家を出るときに今まで貯めていた金は全て持って来た。さらには父さんが少しばかり持たせてくれた。だからしばらくは生活に困らないくらいの金はあるつもりだ。
しかし一気に千ルアかぁ、痛いなぁ。まあ仕方ないが。王都は物価も高そうだし、なるべく早く給料をもらえるように頑張らないと野垂れ死にしそうだな。
『キーアも乗る!』
「は? お前は飛べるんだから飛べよ」
『やだ』
「やだってお前……」
頭に乗ったままのキーアを引き剥がそうと引っ張るが、キーアは俺の頭をがっしり掴み離さない。
「んぎぎぎ……、おい! 離せってば! 禿げるわ!!」
『やだ!』
「お、お前!! ドラゴンのくせに!!」
ゼーゼー言いながら問答を繰り広げたが、どうやっても俺の頭から離れないキーアにうんざりし、そこへ御者の男が容赦ない一言を放った。
「ドラゴンを馬車に乗せるなんて聞いたことないが……そのドラゴンも乗せるなら追加五百ルアね。子供料金で勘弁してやるよ」
「ご、五百……こ、この似非ドラゴンがー!!」
俺の心の叫びが響き渡った……。
げっそりしながら御者の男に金を払い馬車へと乗り込む。
馬車の中には家族連れらしき人々と、俺と年が近そうな男女が一人ずつ。それと俺たち三人と一匹。
比較的に人数が少ないため馬車の中は快適だった。
両脇に据えられた長椅子に座り荷物を下ろす。全員乗り込んだことを確認すると、御者は誰かに話しかけ、出発の声を掛けた。
馬車が進む横には馬に跨った一人の男。どうやら護衛のようだな。剣を携え、いわゆる冒険者風のような恰好をしていた。
ザンザの街から離れて行くと徐々に道は悪くなり、ガタガタと揺れる。平地が広がり見渡す限り何もない。遠目に森が見えるが、ただひたすら平地が続くのみだ。途中川を渡り、谷間を渡り、のんびりした馬車の旅。
たまに鳥の鳴き声が聞こえたり、ドラゴンの鳴き声が聞こえたり……ドラゴン!?
慌てて外に目をやり見上げると、空をドラゴンが飛んでいた。人が乗っているようにも見える。竜騎士か! かっこいいなぁ。
『あれ! キーア、あれになりたい!』
「ん? あぁ、キーアは竜騎士のドラゴンになりたいんだったな」
『うん!!』
膝の上に乗ったキーアは嬉しそうに翼を広げた。
「うおぃ! 邪魔だ! 翼を広げるな!!」
慌てて翼を押さえ付ける。
「小さいドラゴン可愛い……」
「ん?」
背後から声が聞こえたかと思い振り向くと家族連れの子供が目を輝かせていた。
「お兄ちゃんのドラゴンなの? 触っても良い?」
「ん、あー……」
俺のドラゴン……なのか? 成り行きで連れて行くことにはなったが、俺のドラゴンなのかは疑わしいな。
「キーア、あの子が触っても良いか、って」
『? 触る?』
「うん、撫でても良いかってことじゃないか?」
『良いよ~』
「あー、キーアは俺のドラゴンていうか……友達だな。優しく触ってやってくれ」
子供にそう言うと、嬉しそうに頷くとこちらにゆっくり近づき、俺の隣に座った。
そっと手を伸ばしキーアの頭を撫でる。
キーアは気持ち良かったのか、目を細め喉を鳴らしている。
子供は嬉しそうにキャッキャしている。よし、キーアは任せた! と、子供の膝にポンとキーアを置くと、子供もキーアも驚いた顔をしたが知らぬ顔。ふー、膝が解放された!
横ではヴィリーがクスクス笑ってやがる。ガルドさんは瞑想でもしてるのか腕を組み、神妙な顔で目を瞑ったままだし。
「子供ドラゴンを連れているなんて珍しいな」
そのやり取りを見ていた向かいに座る男が声を掛けて来た。
「ん? あー、まー……ね……」
俺だって連れていたくて連れている訳ではない。微妙な返事になった。
「そのドラゴン、小さな傷がたくさんあるがどうしたんだ?」
「え? あ、あー、なんか俺と会う前に怪我したらしくて、よく知らないんだ」
これは嘘ではない。実際キーアが襲われるところを見た訳ではないしな。
「ちょっと見せてくれないか? 治療してやりたい」
「え? 治療?」
きっとこれでも大した大きさではないのだろう、王都はもっと広いのだろう、と頭では分かっているがカカニアから出たことがないため、何もかもが新鮮だった。
「王都への馬車はすぐ出るようだぞ? もう乗るか?」
「え、そうなの? 乗る乗る!」
街の物珍しさにキョロキョロとしている間に、ガルドさんが王都行きを調べてくれたようだ。
あ、ちなみにガルドさんのことはおっさん呼ばわりはやめました。だってね、そこはね、ほら、分かるでしょ、ねぇ? って誰に言ってんだって感じだが、まあガルドさんを尊敬しちゃった訳ですよ! かっこいいイケオジ! 俺が女なら惚れるね!
え? あんな一言だけでちょろい奴だって? うっ。ま、まあそれは良いじゃん。それくらい俺には心から嬉しい言葉だったんだよ。何が変わる訳でもないし、俺が強くなる訳でもない。それでもあのときのガルドさんの言葉には自信をもらえた。それだけで良いんだよ。
馬車は街の大通りに面したところに停まっていた。御者らしき男が客と金のやり取りをしている。順番に並び男と話すと王都行き千ルアだと言われる。た、高っ! ま、まあ王都だもんな。ここから結構な距離もあるもんな。仕方ないか……。
ちなみに朝食などで食べるパン一つで十ルアくらいだ。家を出るときに今まで貯めていた金は全て持って来た。さらには父さんが少しばかり持たせてくれた。だからしばらくは生活に困らないくらいの金はあるつもりだ。
しかし一気に千ルアかぁ、痛いなぁ。まあ仕方ないが。王都は物価も高そうだし、なるべく早く給料をもらえるように頑張らないと野垂れ死にしそうだな。
『キーアも乗る!』
「は? お前は飛べるんだから飛べよ」
『やだ』
「やだってお前……」
頭に乗ったままのキーアを引き剥がそうと引っ張るが、キーアは俺の頭をがっしり掴み離さない。
「んぎぎぎ……、おい! 離せってば! 禿げるわ!!」
『やだ!』
「お、お前!! ドラゴンのくせに!!」
ゼーゼー言いながら問答を繰り広げたが、どうやっても俺の頭から離れないキーアにうんざりし、そこへ御者の男が容赦ない一言を放った。
「ドラゴンを馬車に乗せるなんて聞いたことないが……そのドラゴンも乗せるなら追加五百ルアね。子供料金で勘弁してやるよ」
「ご、五百……こ、この似非ドラゴンがー!!」
俺の心の叫びが響き渡った……。
げっそりしながら御者の男に金を払い馬車へと乗り込む。
馬車の中には家族連れらしき人々と、俺と年が近そうな男女が一人ずつ。それと俺たち三人と一匹。
比較的に人数が少ないため馬車の中は快適だった。
両脇に据えられた長椅子に座り荷物を下ろす。全員乗り込んだことを確認すると、御者は誰かに話しかけ、出発の声を掛けた。
馬車が進む横には馬に跨った一人の男。どうやら護衛のようだな。剣を携え、いわゆる冒険者風のような恰好をしていた。
ザンザの街から離れて行くと徐々に道は悪くなり、ガタガタと揺れる。平地が広がり見渡す限り何もない。遠目に森が見えるが、ただひたすら平地が続くのみだ。途中川を渡り、谷間を渡り、のんびりした馬車の旅。
たまに鳥の鳴き声が聞こえたり、ドラゴンの鳴き声が聞こえたり……ドラゴン!?
慌てて外に目をやり見上げると、空をドラゴンが飛んでいた。人が乗っているようにも見える。竜騎士か! かっこいいなぁ。
『あれ! キーア、あれになりたい!』
「ん? あぁ、キーアは竜騎士のドラゴンになりたいんだったな」
『うん!!』
膝の上に乗ったキーアは嬉しそうに翼を広げた。
「うおぃ! 邪魔だ! 翼を広げるな!!」
慌てて翼を押さえ付ける。
「小さいドラゴン可愛い……」
「ん?」
背後から声が聞こえたかと思い振り向くと家族連れの子供が目を輝かせていた。
「お兄ちゃんのドラゴンなの? 触っても良い?」
「ん、あー……」
俺のドラゴン……なのか? 成り行きで連れて行くことにはなったが、俺のドラゴンなのかは疑わしいな。
「キーア、あの子が触っても良いか、って」
『? 触る?』
「うん、撫でても良いかってことじゃないか?」
『良いよ~』
「あー、キーアは俺のドラゴンていうか……友達だな。優しく触ってやってくれ」
子供にそう言うと、嬉しそうに頷くとこちらにゆっくり近づき、俺の隣に座った。
そっと手を伸ばしキーアの頭を撫でる。
キーアは気持ち良かったのか、目を細め喉を鳴らしている。
子供は嬉しそうにキャッキャしている。よし、キーアは任せた! と、子供の膝にポンとキーアを置くと、子供もキーアも驚いた顔をしたが知らぬ顔。ふー、膝が解放された!
横ではヴィリーがクスクス笑ってやがる。ガルドさんは瞑想でもしてるのか腕を組み、神妙な顔で目を瞑ったままだし。
「子供ドラゴンを連れているなんて珍しいな」
そのやり取りを見ていた向かいに座る男が声を掛けて来た。
「ん? あー、まー……ね……」
俺だって連れていたくて連れている訳ではない。微妙な返事になった。
「そのドラゴン、小さな傷がたくさんあるがどうしたんだ?」
「え? あ、あー、なんか俺と会う前に怪我したらしくて、よく知らないんだ」
これは嘘ではない。実際キーアが襲われるところを見た訳ではないしな。
「ちょっと見せてくれないか? 治療してやりたい」
「え? 治療?」
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