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第五章 アイルランドの女海賊と海賊団結成

5-13.来て頂いても困ります 1

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 わからないのなら、聞くしかなかろうに。
 なら、直接本人に聞くのみだ。

 私たち四人は、馬車に乗り、城壁の外に出て行くことにした。
 ローズマリーの花屋を目指して。

 ローズマリーの店は、通りに面しているが、エディンバラの特徴を組んでいた。
 それは、路地が多いということ。
 通りから横に入れる路地があり、人が一人と半分ぐらいの広さだ。
 日本でも大阪や京都に、この様な通りがあるのと同じだ。

「ここだわ!」
「ここね」と、私とエマリーが言うと、店内に入ることにした。

「いらっしゃいませ」と、美少女が駆けてきた。
 ローズマリーだ!

「ローズマリーさん。突然に申し訳ありません」とイリーゼが前に出て詫びた。
「いえ」
 この何気ない会話。
 私には無理だ。

 伯爵嬢の私が、こちらから「申し訳ございません」と言って出るのは、ご法度だろうし、相手が話しづらくなってしまう。
 その辺もわかっているのか、どうかはわからんけれど、イリーゼは難なくこなしている。
 この辺りに、この娘の頭の良さを感じる。

 さて、皆、挨拶を終え、エマリーがローズマリーに今後の話を聞くことにした。
「状況は分かったけれど、貴女は、どうしたいの? 復讐?」
「とんでもない」
「おそらく、城壁内の花屋ではないのかしら」と、エマリーが言うと、ローズマリーは、やや俯いて考えているようだ。

「それより、教会から冠婚葬祭の花の依頼が来るまでに、畑を何とかしたいわ」
「でも、また、お嬢さんの畑が荒らされたら……」とはヤスミンだ。
 ああ、この娘はヤスミンの話は聞きやすいのか、すんなり反応をしている。
 私が、余計なこと言うと、まとまる話もまとまらない。
 黙っておこう。
 しかし、これだけは確認したい。
「ねぇ、エマリーにヤスミン。犯人は間違いなく城壁内の花屋なの? 城壁外の他の花屋は、ありえない訳?」というとヤスミンが答えてくれた。

「ええ、お嬢さま、この城壁外で近くに花屋はありません。城壁の反対側の花屋が、わざわざ、城壁をぐるりと回って、やって来る必要がありません。
 商売敵ではありませんから。商圏の外なんです。
 競合しているのは、近くの城壁内の花屋だと思うのです」

 そして、エマリーが補足する。
「まあ、おそらく新教徒が主流のエディンバラに、フランスからメアリー女王が帰ってきて、旧教徒を保護したのだから、新教徒のうっ憤もたまったのも原因でしょうね」と、言うと。
「私もそう思います。異教徒は厳しいですから」と言うローズマリーの言葉は、『新教徒が旧教徒に対し厳しい対応』をしているという意味だと、私は勘違いしていた。
 まったく異なることで、彼女が「厳しい」と言ったのではなかった。

「エマリー、ギルドが無いということは、城壁内で花を売っても問題ないのか? 同じ領主の領地内だ」
「この街のしきたりがどうなのかは、分からないわ。でも、同じところに税金を払うのだから、領主様は困らないと思うのだけれど」

 領主!

 そう、私が目指しているそれは、何をしているのかというと。
 一つは、税金を集めている。
 その税金で統治をするのだけれど、領主はその領地の裁判長でもある。
 中には、「領主様に裁いて欲しい」という住民もいる。
 その領地は、領主と住民が上手く行っているのだろう。

 しかし、裁判長と言っても、今の様な法律が細かいわけでもなく、「うるさい」だの、「汚い」だのと言った苦情が大半で、親方が徒弟を殴るのも普通だし、21世紀の裁判とは異なるのではないだろうか。
 あとは武力を確保して、領地領民を護るのも仕事だ。
 なので、かなり忙しい。

 裁判長の領主が、「異教徒に何をしても良い」と言えば、それでまかり通ってしまう。※1
 ところが、議会はそうでもないのだ。
 色んな議員がいる。

 そう、先日の議員のご婦人だ!



※1 旧教徒と新教徒は、同じキリスト教でも異教徒。
 嘗ての宗教会議で異端とされたネストリウス派など、すべて異教なのだ。
 にも拘らず、自分達の危機には、ネストリウス派のプレスタ―ジョンが助けに来てくれるという伝説を信じているのが、旧教徒たちなのだ。
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