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第四章 ヴィルヘルミーナ、海へ!
4-4.アルビダ女海賊団
しおりを挟むエマリーがやって来た。
船でやって来たのだ。
どうも、キャラベルとかいうらしい帆船だ。
私には、よくわからん!
商船としては、メジャーな船らしい。
彼女が言うには、この船でスカンジナビア半島へ行こうという。
そう、ここからスカンジナビア半島は見えている。
すぐそこだ!
そして、スカンジナビア半島と言えば、有名な女海賊団の話がある。
それは、五世紀に活躍した「アルビダ女海賊団」だ。
伝説なのか、史実なのか?
それは、人それぞれの解釈だが、スカンジナビア半島では事実とされているようだ。
その話と言うと!
ゴート族の王にはアルビダと言う娘がいた。あまりにも美しいため、王は娘を極力隠していたそうだ。
そこに、王は、デンマークの皇太子であるアルフ王子と婚約をさせたが、アルビダは結婚を断り続けた。
すると、アルビダは女友達と共に水夫のカッコをして、突如、家出をしてしまった。
その後のアルビダは、海賊となりバルト海を狩場としていた。
ある時、アルビダ女海賊団は、船長を喪った海賊団に出くわす。
何日も、付け回し襲撃を掛ける女海賊団の勇敢さに降参した海賊は、「新しい船長になって欲しい」と嘆願し、アルビダ海賊団は勢力を伸ばしていった。
そんなある日。
デンマーク王が、海賊の取締りを行うことにした。
その隊長が皇太子のアルフだ。
アルフは、海賊船を見つけ攻撃を仕掛ける。
アルフたちデンマーク軍は、海賊船に乗り込んだ。
すると、海賊の女船長が出てきた。
なんと、アルビダだった。
アルビダは、アルフの勇敢さに惚れ、正体を明かしたのだ。
その後の二人は、陸に戻り、結婚をして幸せに暮したとさ。
嘘だぁ。そんなの絶対、嘘だ。
それまでの略奪行為は許されたのか?
まあ、これがイタリアのオペラにもなっているんだわ。
その恋の舞台が、このバルト海。
「そんな王子様はいないのぉ」
「エマリーさん、海賊はいても王子はいないと思います」と、ヤスミンがエマリーの願望にリアルに返しているわ。
なんか、先日のバスティアーン様を思い出した。
さて、伯父上の許可も取って、なじみの商会がバルト海のクルーズに招待してくれたということで、出かけることにした。
アンナとマリーも誘ったけど、来なかったわ。
ケーニヒスベルクの内海のビスワ湖の東側がケーニヒスベルクの街なのだけれど、西側に行ってみたかったので、エマリーに頼んでみた。
西側に付くと、ノガト川を遡り、少し進むと、マリーエンブルク城があった。
今は、ポーランド語でマルボルク城と言い、ポーランド王の避暑地になっているようだ。
このマリーエンブルク城は、タンネンベルクの戦いで敗退したドイツ騎士団が籠城した城でも知られている。
赤茶色の城壁がなんとも哀愁を感じる。
バルト海に出ると、ドイツ騎士団国が滅ぼした海賊の根城、ゴットランド島へ。
バルト海では、最も大きな島になるので、かなりの大きさだ。
ケーニヒスベルクに来た際は、潮風が気持ち悪いと思ったけれど、今は、心地よさを感じる。
まあ、仲間とくれば楽しいということだろう。
しかし、スカンジナビア半島って、かなり入り江が入り組んでいるようだ。
入り江の奥までは、はっきり見えない。
そして、入り江の奥に湖などあったりと、また、好奇心を誘う。
「でも、入り江に近づいたらダメよ」とエマリーが言う。
「海賊の根城ということもありますからねぇ」
「それは、勘弁願いたい」
すると、入り江の奥から、光が見えた。
"ドーーーン"と言う音と共に水柱が立った。
「海賊だわ」
マジかよエマリー!
どこぞに頼もしい王子様はいないのか?
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