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第二章 握力令嬢、修道女になる

2-13.ヴィルは女騎士

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 その日は、いつも通り起床し、朝の礼拝が始まった。
 すると、司祭様から「シスター・ヴィルヘルミーナ。貴女は残ってください」と言われた。
「う~ん、先日、孤児院を救ったので、何か褒めて頂くに違いない」と、心の中でつぶやき、一つ二つ、頷いた。

 すると、このドイツ騎士団城の館に着いた初日に、修道服を渡した修道女のシスター・クラーラが私に言った。
「シスター・ヴィルヘルミーナ。では、貴女の修道服は洗濯して返していただきます」
「???」
「さあ、お脱ぎなさい」
「いや、その裸になれと?」


***


「今日こそは、ヴィルヘルミーナを見つけるわ」と、クレマンティーヌの名も知らぬ部下がドイツ紙騎士団城の周りを徘徊している。

「修道女は、昼になると東門が外出することが多いので、その中のデカ女を見つければ良いと言う話だわ」
「そうね。レア! 私は森で花を摘んでくるから、それを東門前で売るということで見張りましょう」
「分かりました。アレクサンドラ様」
 アレクサンドラは、本当に近くの森で売り物の花を摘みに行ったのだけれども、「あぁ、アレクサンドラ様は飲み過ぎたので、今頃になって、あれなんでしょう。あれね」とレアと言う、名もない部下は、苦笑しているのでした。

***

「アン! 人前で裸にされるわ!」
「お嬢様ッ。これは我が家の一大事です」
「お二人とも、お静かに!」と先輩シスターが静粛を促した。

「はい、シスター・クラーラ。服を脱げとは、いかなる理由でありましょうか?」

「単に、シスター・ヴィルヘルミーナには、修道女をやめて頂くように、正式に、司祭様と総長様からお達しがありました」
「「えっ」」
「シスター・クラーラ。それはあんまりではございませんか。先日、私は盛式誓願を終えたばかりです」と、私はシスター・クラーラに抗議した。
 アンも「ウンウン」と頷いている。

「いえ、司祭様の話では、『こちらの手違いだ』とのことです。実は、辺境伯様は、端から『ヴィルヘルミーナ嬢には、女騎士にして欲しい』と言う話だったそうです。何かの手違いで修道女ということになっていたようです」

 女騎士?
 私が!

 誰だ、修道女より似合うとか思ったのは!
 長男か? 辺境伯自身か?

「ということで、今日から騎士団と共にして頂きます」
「はい、失礼いたします。当騎士団の団長をしております。 ディートハルトです」
「ディートハルト卿、後のことはお任せいたします」と、シスター・クラーラは、一礼した礼拝堂を後にした。

「アン……」
「お嬢様……」

 私たちは、今後、どうなるのだろうか?
 騎士ですか?
 馬には乗れますし、剣の素振りはよくしておりますが、ランスやら他の武器となると、今一つ、よくわかっておりませんし、プロの騎士と対人稽古となると、私の実力は、どの程度なのでしょうか?

 団長の説明を受けて、その後、部屋に戻り着替えて、騎士の稽古に参加することになった。

 そして、母の死以後、初めて馬に乗った。
「あぁ、馬って、こんなに高かったかな……」

 この日は、馬に乗っての行軍訓練を行った。

「三年ぶりの乗馬なので、お尻が痛いわ。アン」
「では、ワタクシ目が、お嬢さまのお尻に、軟膏を塗って差上げますわ」
「いや、それは……」
「なにも恥ずかしがらずに、ワタクシはお嬢様のおしめも変えて差し上げたのですから。ワタクシは平気ですッ。お嬢様のすべてを知り尽くしておりますので」
「いえ、私が平気ではないのですわッ」

――すべてを知り尽くしているって、何なのよ! アンってば!
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