ティー・クリッパーの女王

SHOTARO

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第三章 踊るように笑え

25.ドーバー再び

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  ヴィレム達は、ライン川を下りロッテルダム支店に着いたころには、夜も白けてきた。
 夜通し船で下って来たのだ。

 交代だったとはいえ、四人の顔には疲れも見えている。
 だが、急がないといけない。
 会長からは「キャンセル料の500ポンドしか支払わない」と言われているのだ。これではクリッパー船は作れないのだから。

「あぁ、船長。クリッパー船の製造はキャンセル。キャンセルしたことはイギリス中の商人に知られる。なんてこった」
「せめてもの救いは、この仕事はアムステルダム支店が受け継ぐので、ムンバイ側には迷惑はかけないということでしょうか。残念ですが……」
「クソ。仕方がないのか……まずは、支店の社員に説明をする。その後、すぐにフィッツジェラルド工場長のところへ行ってくる」
 と言う支店長は、なんだか苦しそうだった。

 さて、支店では朝礼が行われ、この日、ムンバイ行きの仕事はアムステルダム支店が引き継ぐことが支店長から告げられた。

 今回の仕事は「副船長では納得がいかない」と思っていたヘニーは、複雑な気持ちであった。
 自分が船長としてムンバイに行くのが、最も気持ちの良いことではあったが、もし、この仕事でも副船長であったり、また、まったく仕事を与えられないことがあれば……

 しかし、すべては無と化したのだ。
 それは、我が支店が受注した仕事をアムステルダム支店に取られること等、別問題に感じた。
 なので、すべての社員が落ち込んでいるにも拘らず、ヘニーは安堵していた。
 いずれ、オレが船長として……

「なので、私はすぐにドーバー港へ行く。準備をしてくれ。ヴィレム」
「分かりました」と、ヴィレムが答えると朝礼は解散となった。

 そして、ヴィレムは運ぶ積荷が無いので、大型の貨物船ではなく二本マストで高速移動ができるスクーナー船を準備した。
「ヴィレム、スクーナーとは良い趣味をしているな」
 支店長が「良い趣味」と言ったのは、今、アメリカでは人気の船だが、実はオランダ発祥の船なのだ。
 しかし、ヴィレムは、「支店長、この船が最も少ない人数で稼働できます」と答えたので、支店長は、ウンウンと頷くことで、満足しているという意思を示した。

 とにかく今は急ぐのだ。

 そして、支店長とヴィレムはフィッツジェラルド工場へ向かった。
 その工場では……
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