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最終章 魔人と闘う空手家
69.プリンスオブホワイト
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69
プリンスオブホワイト
オレたちは、プリンスオブホワイトの街へ入った。
「そうだ。ビリー。お前にプレゼントがある」
「プレゼント?」
「ああ、帽子とマントだ」
「真っ白だ」
「良かったら来てみてくれ」とオレが言うと、
「どう?」と、ビリーが帽子とマントを羽織った。
その姿で馬車の御者台に座らせて、街を進むと、やはり、街の住人がビリーを見ている。
「ハヤト! なんだか街の人が、こっちをみているんだけど」
「やはりそうか」
「どういうことじゃ」と毒堀が聞いてくるので、
「実は、この街はプリンスオブホワイト、つまり、『白い王子』が街を救い城を建てたという伝説があるらしい」
「ほう」
「なので、このピンチを『白い王子』が救いに来たと! さすれば、街の住人も勇気づけられると!」
「そうなのか」
と、オレと毒堀が話していると、住人から物が投げられた。
「ふざけるな! 帰れ!」
「マジか!」
オレは慌てて、ビリーを御者台から回収し、荷台の中に入れた。
まったく、気の荒い連中だぜ!
幸いにも、ビリーは何のことかわかっていない。何故、物を投げられたのか。
「すまない。ビリー。このことは忘れてくれ……」
さて、ギルド支部に到着した。
各地からのハンターが集まっていたようだが、通信妨害のせいだろうか、西部地区のハンターのみ集まっていた。
先日の安田が既に来ていた。
「蒼井さん」
「おぉ、安田君じゃない。いつ来たんだ?」
「昨日、船で来ましたよ。港町ギルドがこの街までの直行便を出してくれて」
なんと、ヤシアーと大違いだ。
国道をバトルしながら来た我々とは大違いだな。
しかし、スロープシティーから国道を使って西に進んでいた馬車は、途中からどこへ行ったんだろうか?
その答えは、安田が教えてくれた。
「あぁ、それなら、“たこの街”から、フェリーですよ」
それで、あの辺りで馬車の数が減ったのか……
***
この日、昼過ぎから、支部長と担当者から状況説明が行われた。
この街の地図が前に張り出されていた。
この街の地形は、こうだ!
今いるギルドは、街の南側。地図では下になる。
このさらに下は、港になり、安田たちはここからギルドに来たということだ。
そして、街のど真ん中を上下に大きな街道が一本伸びており、これが、城まで続く。
城の左右には山があり、この山は八の字型に末広がりになっているため、城を抜けないと北側には行けない。
その左右の山の左側が大きな山で、ライトコピーの山だ。
城をぐるっと左から取り囲むようにそびえ立っている。
だが、すでに、ここは魔物が住んでいるようだ。
そして、城から下側の街へは、地下道が無数にあるらしく、城を攻められても、逃げれるように作ったそうだ。
現状は、ライトコピーの山、城、地下道が魔物に抑えられており、地下道が続く国道より北側は魔物のテリトリーと化している。
「で、魔人様は、どこにいるんだ?」とオレは聞いてみた。
担当者は、俯いてしまった。
どういうことだ?
「それが分かっていないのだ」と支部長が答えた。
どこにいるのかわからないのなら、闘えないではないか?
「まあ、名誉欲の深い奴らじゃ。城の上の方にいるじゃろ」と毒堀が言った。
さらに、毒堀は、「で、支部長。ハンターや国軍兵士を集めて、どう闘うのじゃ。策はあるのか?」
「二手に分かれてもらう。一つは、討伐隊。もう一つは、南側の街の護衛だ」
なるほどな。全員討伐にってしまったら、街は無防備になる。
「討伐隊は、山と城と地下の三か所を責める必要がある。同時という訳にはいかない」
「では、どこから攻めるのか、もう決まっているのか?」と聞いてみた。
「まずは山からと考えている」
「ほう」と毒堀が答えた。
「だったら人は要らんじゃろう」
「あぁ、要らんよな」
「そうね」
「まさか、ハヤト!?」
「お前たちは何を言っているんだ?」
「簡単なことだ、いきなり、燃やせばよい。山と城を」
「おい、何を言っているんだ。山も城も。そんなことをしたら街は復興できないでは」
「魔物に入られた時点で、手遅れと言うものだ」
「そうじゃ」
「で、毒堀。どんなもやし方が良い?」
「アルキメデス砲を用意してきた。今日あたり、港に着くはずじゃわい」
「どうやって使うの?」とビリーが興味津々だ。
「なぁに、太陽の光を鏡で集めて、燃やすんだ。デカい鏡を四枚も用意したので、ライトコピーの山もプリンスオブホワイト城も、アッと言う間に消し炭じゃわい。わははは」
「おい、街のシンボルの城まで燃やすわけにはイカン」
「だから、魔物に取られた時点で負けなんだよ。魔物に燃やされるか? オレたちで燃やすかだ」
「魔物たちは燃やすとは言っておらん」
「壊されるのも同じだ。人も守れ、城も守れ。そんなうまくはイカンだろう。どれかリスクを負え!」
「おい、誰か。このおかしい奴を何とかしてくれ!」と担当者が騒ぎ出した。
すると、地元のハンターが数人寄ってきた。
「どうした?」
「この男が『城を燃やせ』と言っている」
「おい、マジか?」
「冗談きついぜ」
「街のシンボルを何と思っている」
「何とも思っていないさ。魔物から守れなかった時点でアウトだ。守れなかったこの街のハンターが悪い」
ハンターたちが沈黙した。
「燃やすのが嫌なら、城攻めはこの街のハンターだけでやれ。見ておいてやる。山は燃やすが良いな」と、オレが言うと解散となった。いや、出て行ったのが正しいか。
そして、アルキメデス砲が到着したと、連絡があったのは1時間後だった。
次回の空手家は、アルキメデス砲で城も焼いちゃえ!
プリンスオブホワイト
オレたちは、プリンスオブホワイトの街へ入った。
「そうだ。ビリー。お前にプレゼントがある」
「プレゼント?」
「ああ、帽子とマントだ」
「真っ白だ」
「良かったら来てみてくれ」とオレが言うと、
「どう?」と、ビリーが帽子とマントを羽織った。
その姿で馬車の御者台に座らせて、街を進むと、やはり、街の住人がビリーを見ている。
「ハヤト! なんだか街の人が、こっちをみているんだけど」
「やはりそうか」
「どういうことじゃ」と毒堀が聞いてくるので、
「実は、この街はプリンスオブホワイト、つまり、『白い王子』が街を救い城を建てたという伝説があるらしい」
「ほう」
「なので、このピンチを『白い王子』が救いに来たと! さすれば、街の住人も勇気づけられると!」
「そうなのか」
と、オレと毒堀が話していると、住人から物が投げられた。
「ふざけるな! 帰れ!」
「マジか!」
オレは慌てて、ビリーを御者台から回収し、荷台の中に入れた。
まったく、気の荒い連中だぜ!
幸いにも、ビリーは何のことかわかっていない。何故、物を投げられたのか。
「すまない。ビリー。このことは忘れてくれ……」
さて、ギルド支部に到着した。
各地からのハンターが集まっていたようだが、通信妨害のせいだろうか、西部地区のハンターのみ集まっていた。
先日の安田が既に来ていた。
「蒼井さん」
「おぉ、安田君じゃない。いつ来たんだ?」
「昨日、船で来ましたよ。港町ギルドがこの街までの直行便を出してくれて」
なんと、ヤシアーと大違いだ。
国道をバトルしながら来た我々とは大違いだな。
しかし、スロープシティーから国道を使って西に進んでいた馬車は、途中からどこへ行ったんだろうか?
その答えは、安田が教えてくれた。
「あぁ、それなら、“たこの街”から、フェリーですよ」
それで、あの辺りで馬車の数が減ったのか……
***
この日、昼過ぎから、支部長と担当者から状況説明が行われた。
この街の地図が前に張り出されていた。
この街の地形は、こうだ!
今いるギルドは、街の南側。地図では下になる。
このさらに下は、港になり、安田たちはここからギルドに来たということだ。
そして、街のど真ん中を上下に大きな街道が一本伸びており、これが、城まで続く。
城の左右には山があり、この山は八の字型に末広がりになっているため、城を抜けないと北側には行けない。
その左右の山の左側が大きな山で、ライトコピーの山だ。
城をぐるっと左から取り囲むようにそびえ立っている。
だが、すでに、ここは魔物が住んでいるようだ。
そして、城から下側の街へは、地下道が無数にあるらしく、城を攻められても、逃げれるように作ったそうだ。
現状は、ライトコピーの山、城、地下道が魔物に抑えられており、地下道が続く国道より北側は魔物のテリトリーと化している。
「で、魔人様は、どこにいるんだ?」とオレは聞いてみた。
担当者は、俯いてしまった。
どういうことだ?
「それが分かっていないのだ」と支部長が答えた。
どこにいるのかわからないのなら、闘えないではないか?
「まあ、名誉欲の深い奴らじゃ。城の上の方にいるじゃろ」と毒堀が言った。
さらに、毒堀は、「で、支部長。ハンターや国軍兵士を集めて、どう闘うのじゃ。策はあるのか?」
「二手に分かれてもらう。一つは、討伐隊。もう一つは、南側の街の護衛だ」
なるほどな。全員討伐にってしまったら、街は無防備になる。
「討伐隊は、山と城と地下の三か所を責める必要がある。同時という訳にはいかない」
「では、どこから攻めるのか、もう決まっているのか?」と聞いてみた。
「まずは山からと考えている」
「ほう」と毒堀が答えた。
「だったら人は要らんじゃろう」
「あぁ、要らんよな」
「そうね」
「まさか、ハヤト!?」
「お前たちは何を言っているんだ?」
「簡単なことだ、いきなり、燃やせばよい。山と城を」
「おい、何を言っているんだ。山も城も。そんなことをしたら街は復興できないでは」
「魔物に入られた時点で、手遅れと言うものだ」
「そうじゃ」
「で、毒堀。どんなもやし方が良い?」
「アルキメデス砲を用意してきた。今日あたり、港に着くはずじゃわい」
「どうやって使うの?」とビリーが興味津々だ。
「なぁに、太陽の光を鏡で集めて、燃やすんだ。デカい鏡を四枚も用意したので、ライトコピーの山もプリンスオブホワイト城も、アッと言う間に消し炭じゃわい。わははは」
「おい、街のシンボルの城まで燃やすわけにはイカン」
「だから、魔物に取られた時点で負けなんだよ。魔物に燃やされるか? オレたちで燃やすかだ」
「魔物たちは燃やすとは言っておらん」
「壊されるのも同じだ。人も守れ、城も守れ。そんなうまくはイカンだろう。どれかリスクを負え!」
「おい、誰か。このおかしい奴を何とかしてくれ!」と担当者が騒ぎ出した。
すると、地元のハンターが数人寄ってきた。
「どうした?」
「この男が『城を燃やせ』と言っている」
「おい、マジか?」
「冗談きついぜ」
「街のシンボルを何と思っている」
「何とも思っていないさ。魔物から守れなかった時点でアウトだ。守れなかったこの街のハンターが悪い」
ハンターたちが沈黙した。
「燃やすのが嫌なら、城攻めはこの街のハンターだけでやれ。見ておいてやる。山は燃やすが良いな」と、オレが言うと解散となった。いや、出て行ったのが正しいか。
そして、アルキメデス砲が到着したと、連絡があったのは1時間後だった。
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