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第3章 山賊女王の街
42.出発の朝
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出発の朝
さて、翌朝、出発するため、ギルドの受付に挨拶をしに行った。
「マスター、すっかり世話になってしまった。それと、魔人には気を付けてくれ。どこに潜んでいるかもしれないので」
「ああ、気を付けるよ。お前たちも気をつけてな」
「「お世話になりました」」と礼を言うと、宿のあったギルドから出て、馬車を借りるスター商会まで歩いて行った。
「護衛付きで30万か……」と、ぼやいてしまったが、まあ、これもギルドが支払ってくれるので、心配はないが。
そう考えながら歩いていると、スター商会が見えてきた。
ビリーとアニーは、豪華な馬車に乗れると思っているのか、ウキウキしているようだ。いつもより口数も多いような気がする。
何故か、横綱も、さかんに尻尾を振っている……
すると、
“バリーン”
“ガシャーン”
という音が、何度も聞こえた。
音は、なんとスター商会からだ!
すると、複数人の男たちが、血の付いた剣やナイフを振り回しながら出てきたと思いきや、仲間の馬が待っている方向に走って行ったではないか!
「こら待て!」と、言いながら商会の関係者らしき男が走り出てきた。
手には、市街地では使用禁止となっているクロスボウを手にしてた。
”バシュゥ”という音と共に、矢が放たれたが、誰にもあたることが無かった。
そして、クロスボウは連射性が低いため、この男は、次の矢を装填することを諦めたようだ。
「会長ぉッ」という大きな声が、オレたちのいるところまで聞こえた。
「「「???」」」
オレたちが、スター商会に行くと、そこには、矢が数本刺さり、肩から斬られたメイ・スターがいた。
「ハヤト……」とアニーが言った。
誰の目にも手遅れと言う感じがしたのだろう。
ある受付の女性従業員が、我々に気が付いたようだ。
「お客さん!」
と、呼ばれたがなんと返事をして良いのやらわからず、三人とも頷き、それ以上のことは出来なかった。
とにかく、ここにいても、邪魔なだけだろう。
「店の外にいるので、後で声をかけて欲しい」とだけ言って、退出することにした。
すると、しばらくして、武装した男たちが、出て行った。
「奴らは、相手が誰か、わかっているのだろうか?」と、アニーの方を見るも、「さあ?」と言った具合だ。
まあ、ストーンカットの町とは、街道をめぐり抗争をしているし、この街の中でも街道を独占していることに不満を持っている者はいるようだ。
つまり敵だらけなのだろう。
すると、先ほどの受付が不安そうな顔で、店から出てきた。
「お客さん、申し訳ございません。今、血の気の多い者が出て行ってしまい。馬も護衛も足らなくなってしまいました。値引き等はさせていただきますので、準備出来次第ということで、宿で待っていただきたいのです。
こちらからご連絡はさせていただきますので」と、説明を受けた。
「では、ギルドにいるので、連絡を頼むよ」と、ここは下がることにした。
その頃になると、スター商会の周りは騒がしくなっており、シェリフも数人やってきた。
聞き耳を立てて聞いているが、誰がやったかわからないらしい。
「私は、ストーンカットのなんちゃら一家かと思ったけど、違うのかしら」
「どうしてなんだよ。アニー?」
「だって、新しい街道を作るんでしょう。やつらも主導権を取りたいでしょう」
「まあ、ここはシェリフに任せて、ギルドに戻ろう。出発が遅れそうだし」
と言うと、オレたち三人はギルドに戻ることにした。
そして、ギルドの受付にこのことを話すと、ギルドマスターがオレたちのところにすっ飛んできた。
「ハヤト、今の話を詳しく教えてくれ!」
「あぁ、オレが見たところ、メイの命は長く無い。マスターも別れを言いに行くなら、早い方が良い」というと、本当に行ってしまった。
マスターの頭の中には、子供のころのメイの姿が、いつまでも残っているんだろうな。
そして、その日の夕方に、メイ・スターは亡くなった。
51歳だそうだ。
マスターが告別式に出席するらしいが、心配なのでオレたちもついて行くことにした。喪服はギルドが貸してくれた。
告別式に参加した人の多さが、彼女の権力の大きさを示していたのだろう。数百人は参加している。
そして、メイ・スターの墓には、
『悲しむなかれ。涙するなかれ。同情するなかれ。この中には宝石等は入っていない』と書かれていた。
そこで、耳にしたことは、襲撃犯は知らないやつらしい。
今まで、馬場を襲撃していた、ストーンカット町のハットフィールドでもなく、同業者でもなく、裏社会の者でもない。
見たこともない奴らだという。
オレは、ジムやサンダンス達のことを思い出していた。
奴らは、街の中に入り込んでいたが、この死後の世界には、様々な悪が潜んでいるのではないのかと思うと、暗い気持ちになってきた。
メイの土葬も終わり、さらに三日遅れで出発することになった。
この街を出て、途中のゴー・デビル山を越えると、N州からO州へと境界をまたぐことになる。O州は、この手紙を届けるギルド地方支部があり、また、アニーの審査試験を受けるスロープシティーのある州になるので、アニーともお別れになるな。
建設中の長い隧道の一部を通り抜けると、山からは巨大な平野が見えた。
この先にスロープシティがあるようだ。
まだまだ、標高が高いので、眺めが良い。
しかし、馬はこの勾配は大変だな。
そして、ストーンカットの町に出た。
ここからは、平野になり、ストーンカットからスロープシティー行きの直行馬車が出ている。
その停留場まで、スター商会の馬車を利用した。
まあ、確かに、護衛に馬場の確保に、この勾配の往復を考えると30万タ―ラ―は妥当かもしれない。受付が気を利かせて、1割引きにしてくれたが。
結構よい馬車も使っていたし。
そして、オレたちは、いよいよ、明日、スロープシティーに着く。
次回の空手家は、スロープシティーのギルド地方支部に着きます。
さて、翌朝、出発するため、ギルドの受付に挨拶をしに行った。
「マスター、すっかり世話になってしまった。それと、魔人には気を付けてくれ。どこに潜んでいるかもしれないので」
「ああ、気を付けるよ。お前たちも気をつけてな」
「「お世話になりました」」と礼を言うと、宿のあったギルドから出て、馬車を借りるスター商会まで歩いて行った。
「護衛付きで30万か……」と、ぼやいてしまったが、まあ、これもギルドが支払ってくれるので、心配はないが。
そう考えながら歩いていると、スター商会が見えてきた。
ビリーとアニーは、豪華な馬車に乗れると思っているのか、ウキウキしているようだ。いつもより口数も多いような気がする。
何故か、横綱も、さかんに尻尾を振っている……
すると、
“バリーン”
“ガシャーン”
という音が、何度も聞こえた。
音は、なんとスター商会からだ!
すると、複数人の男たちが、血の付いた剣やナイフを振り回しながら出てきたと思いきや、仲間の馬が待っている方向に走って行ったではないか!
「こら待て!」と、言いながら商会の関係者らしき男が走り出てきた。
手には、市街地では使用禁止となっているクロスボウを手にしてた。
”バシュゥ”という音と共に、矢が放たれたが、誰にもあたることが無かった。
そして、クロスボウは連射性が低いため、この男は、次の矢を装填することを諦めたようだ。
「会長ぉッ」という大きな声が、オレたちのいるところまで聞こえた。
「「「???」」」
オレたちが、スター商会に行くと、そこには、矢が数本刺さり、肩から斬られたメイ・スターがいた。
「ハヤト……」とアニーが言った。
誰の目にも手遅れと言う感じがしたのだろう。
ある受付の女性従業員が、我々に気が付いたようだ。
「お客さん!」
と、呼ばれたがなんと返事をして良いのやらわからず、三人とも頷き、それ以上のことは出来なかった。
とにかく、ここにいても、邪魔なだけだろう。
「店の外にいるので、後で声をかけて欲しい」とだけ言って、退出することにした。
すると、しばらくして、武装した男たちが、出て行った。
「奴らは、相手が誰か、わかっているのだろうか?」と、アニーの方を見るも、「さあ?」と言った具合だ。
まあ、ストーンカットの町とは、街道をめぐり抗争をしているし、この街の中でも街道を独占していることに不満を持っている者はいるようだ。
つまり敵だらけなのだろう。
すると、先ほどの受付が不安そうな顔で、店から出てきた。
「お客さん、申し訳ございません。今、血の気の多い者が出て行ってしまい。馬も護衛も足らなくなってしまいました。値引き等はさせていただきますので、準備出来次第ということで、宿で待っていただきたいのです。
こちらからご連絡はさせていただきますので」と、説明を受けた。
「では、ギルドにいるので、連絡を頼むよ」と、ここは下がることにした。
その頃になると、スター商会の周りは騒がしくなっており、シェリフも数人やってきた。
聞き耳を立てて聞いているが、誰がやったかわからないらしい。
「私は、ストーンカットのなんちゃら一家かと思ったけど、違うのかしら」
「どうしてなんだよ。アニー?」
「だって、新しい街道を作るんでしょう。やつらも主導権を取りたいでしょう」
「まあ、ここはシェリフに任せて、ギルドに戻ろう。出発が遅れそうだし」
と言うと、オレたち三人はギルドに戻ることにした。
そして、ギルドの受付にこのことを話すと、ギルドマスターがオレたちのところにすっ飛んできた。
「ハヤト、今の話を詳しく教えてくれ!」
「あぁ、オレが見たところ、メイの命は長く無い。マスターも別れを言いに行くなら、早い方が良い」というと、本当に行ってしまった。
マスターの頭の中には、子供のころのメイの姿が、いつまでも残っているんだろうな。
そして、その日の夕方に、メイ・スターは亡くなった。
51歳だそうだ。
マスターが告別式に出席するらしいが、心配なのでオレたちもついて行くことにした。喪服はギルドが貸してくれた。
告別式に参加した人の多さが、彼女の権力の大きさを示していたのだろう。数百人は参加している。
そして、メイ・スターの墓には、
『悲しむなかれ。涙するなかれ。同情するなかれ。この中には宝石等は入っていない』と書かれていた。
そこで、耳にしたことは、襲撃犯は知らないやつらしい。
今まで、馬場を襲撃していた、ストーンカット町のハットフィールドでもなく、同業者でもなく、裏社会の者でもない。
見たこともない奴らだという。
オレは、ジムやサンダンス達のことを思い出していた。
奴らは、街の中に入り込んでいたが、この死後の世界には、様々な悪が潜んでいるのではないのかと思うと、暗い気持ちになってきた。
メイの土葬も終わり、さらに三日遅れで出発することになった。
この街を出て、途中のゴー・デビル山を越えると、N州からO州へと境界をまたぐことになる。O州は、この手紙を届けるギルド地方支部があり、また、アニーの審査試験を受けるスロープシティーのある州になるので、アニーともお別れになるな。
建設中の長い隧道の一部を通り抜けると、山からは巨大な平野が見えた。
この先にスロープシティがあるようだ。
まだまだ、標高が高いので、眺めが良い。
しかし、馬はこの勾配は大変だな。
そして、ストーンカットの町に出た。
ここからは、平野になり、ストーンカットからスロープシティー行きの直行馬車が出ている。
その停留場まで、スター商会の馬車を利用した。
まあ、確かに、護衛に馬場の確保に、この勾配の往復を考えると30万タ―ラ―は妥当かもしれない。受付が気を利かせて、1割引きにしてくれたが。
結構よい馬車も使っていたし。
そして、オレたちは、いよいよ、明日、スロープシティーに着く。
次回の空手家は、スロープシティーのギルド地方支部に着きます。
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