上 下
57 / 58
第2部 第ニ章 黄金郷を求めて

2-2-44.アーサー王の復讐

しおりを挟む
第四十四話
アーサー王の復讐

 白いガレオン船は、思っていた。
 私を傷つけた!
 許すまじ!


***


 アガーテの前には、数人の海兵がいた。
 剣の勝負では、海兵では相手にならなかった。
 しかし、後ろの兵に銃や弓を持たれると話が変わってくる。

 私たちも、負けじと弓などで後ろの兵を威嚇していた。

「もたもたするな。相手は少数だ」
「ハッ、大佐ッ」

 と言っていらところに、被弾したロイヤルマストの破片が落ちてきた。

 なんと、大佐と呼ばれる男の胸は、マストの破片が貫通していた。

 誰もが目を見開いた!
 その時、アガーテが踊り出た。
 また、海兵が駆られたのだ。

「おい、大佐が殺られた」
 敵のトップをやったのか?
 なら退却するのか?


 いや、大佐の代わりは、いくらでもいるようだ。
 64門鑑から、誰か来るようだ。
「阻止しろ」というも、敵もそうはさせまいとする。

 少しずつ、削られていく!
 そんな感じだ。

「中佐、こちらへ」

 その時、私はもう、気がおかしくなっていたのだろうか?

 はるか彼方から、大砲の音が聞こえたような気がした。
“ドォーン”と、カルバリン砲の音がしたような。
 空耳だろう。

 また、“ドォーン”としたような。
 苦笑するしかないな。
 先程まで、目の前で大砲を打ちまくっていたのだ。耳に音がごベリ付いたのだろう。

 すると、隣の64門鑑のロイヤルマストが見張台ごと、吹っ飛んだ。
「はぁ? なんだ?」

“ドォーン”
“ドォーン”
 また、
“ドォーン” と。

 中佐は自艦に戻って行くのを、海兵たちが見て、慌てている。
「俺たち、どうすれば?」

 なので、
「お前らも、戻りやがれ!」と蹴り飛ばしてやったわ!
 ガハハ!

 遥か彼方から、ガレオン船と小型船がこちらへ向かってくるようだ。

 スペイン海軍の戦列艦たちが動き出す。

「一体、誰が?」
「キャプテン、あれはイリーゼ支店長の船です。“アーサー王の復讐”号です」

 はあ?
 “アーサー王の復讐”号って、イリーゼさん、貴女は誰の味方なんだよ!

 しかし、ガレオン船はその“アーサー王の復讐”号しかなく、後はスループ船のように見える。
 戦列艦相手に大丈夫なのだろうか?

 しかし、スペイン海軍とは、学習しないのだな。
 いつも、カルバリン砲によるアウトレンジ攻撃で撃たれている。

 大口径のカノン砲しか積んではイケないのだろうか?
 そして、カノン砲の射程に入る頃には、帆がボロけている。
 当然、速度は落ちる。

 そこに、小型で高速のスループ船が一斉に散らばった。

 なんと、一隻のスループ船が、戦列艦の前を蛇行している。
 さらに、戦列艦の速度が落ち、他のスループ船の砲撃を食らっているでは!

 他のスループ船は、時計回りと時計回りと反対周りの二隻の船が砲撃している。

 たった10門しか積んでいない小型船に戦列艦が四苦八苦している。

 やがて、スループ船は数を増やし、時計回りと反対周りというより、8の字に動いているようだ。
 そうやって、装填の時間を稼いでいるのだ。

 すると、一隻のスループ船が、こちらに近づいてきた。
 マストの修理とダブルカノン砲の砲弾の補給をしてくれた。

 助かる。

 補修程度とはいえ、ロイヤルマストが使えれば、動かせる。

 しかし、補給をしても砲術長のジャスミンが倒れている。
 これでは、正確な射撃が出来ない。

「なら、オレがやります」と、スループ船の男が手伝ってくれるようだ。

 これまた、助かる!

「修理完了です!」
「よし! Zukunft号、発進だ」

 私は、白いガレオン船が、やる気になっているのが、手にとるように分かった。

「ふふふ、もうこの船も私と一体なのね。これもマルよ」

 すると、100門鑑がもたついているのが見えた。

 そして、私は、吠えた!
「獲物はあれだ、100門鑑だ」と。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

処理中です...