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第2部 第ニ章 黄金郷を求めて

2-2-39.金色に輝く時

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第三十九話
金色に輝く時


 一年ぶりの屋代島だ。

 子供たちが多いのも変わらない。
 私のことを「デカい」と言ったガキもいるわ!
 ふふふ。

 しかし、あの時と何か違う。何かが。
 見えている風景が違う感じがする。

 さて、村上殿には、伏見の酒を献上した。
 ご満悦のようで安心した。

「ずっと気になっておりました。村上殿が敵の子供を養子にしてきたことを」
「……」
「京の都では、住職に『マルだ』と言われました。では、マルとはなんぞやと?」
「ほう、マルとは?」
「すべて同じ、敵も味方もすべては同じ。海という言葉で繋がっていると。
 そして、未来は子供が担うことで、マルが完成すると」

「その心は?」
「『唱うれば、仏も吾もなかりけり。南無阿弥陀仏。なむあみだ仏』
 そして、子供らは金色に輝いておりました」※1
 その時、村上元信殿は、ピシャリと膝を叩いて、
「御意に、御意に……」と、何度も何度も頷いておられた。


 私は、これでこの国から、立ち去る事ができると思った。
 何故なら、金色の宝を得たことが、分かったのだから。

 そして、一行は長崎へ戻ることにした。

「ミーナ、先の話は、どういうことなのかな?」
「うーん、金色の宝が海賊にはあったという事かな。
 彼らは、ずっと、それを守り続けてきた。これからも、ずっと」
「そうか……」


 そして、長崎に戻ると!

「ええぇ、これは……」
「ミーナちゃん、お帰りなさい」
「クリスちぃ。これは……」

 皆、自由に好き勝手やっている。とはいえ、悪さではない。
 趣味に走っているんだよ。趣味にだ(汗)

「お頭、お帰り。アン、お迎えお疲れさん」と、ジャスミンが元気よく挨拶をしてくれたが、頭の上には、ちょんまげもどきを結っているでは……

「ああぁ、なんじゃ、その頭は?」
「どう? 格好良い? ここの職人と話しているうちに、私も真似てみたんだ」

 何やら、ジャスミンは、ここの鍛冶職人の細やかな技術に興味を持って、たたら製法とやらを、苦労して学んだという。
 あの刀を作る製法というから驚きだ。

 これも、大坂で刀を買って送ったのが、キッカケらしい。
 ふむ!

 そして、アナとヘマは、ここの代官に気に入られて、店を出しているらしい。
 さらには、名前までもらったとか!

 スペインから来たので、
 西 阿南子と西 戸馬子だ。※2

「キャプテン。この国に残っても良いでしょうか?」
「ここでは、私達を同性愛者と偏見で見る者は少ないです。
 むしろ、料理の腕を純粋に評価してくれます」

 まあ、名前も店も代官から、頂いたのだ。良いのじゃないかな。

 まあ、船の料理は、アンナとアガーテのメイドが二人いるので問題無い。

 そして、アンを始め、何故か傾奇者が多くいる。
 女物の着物をマントの様に靡かせ、ギターを弾いている。
「まあ、自由でよいか」

 クルー達も、ジパングを堪能したようだ。
「また、来たいよね」と言っているが、その後、うちのクルーの中で、ジパングに来たものはいない。

 この国が鎖国してしまうからだ。
 そのことが、すごく残念でならない。

 さて、ガレオン船に、宇治茶に刀に淡水真珠をたんまり詰め込んで、まずはインドまで帰ることになる。

 一路、インドへ!

 さて、インドでは……


※1 一遍上人が心地覚心禅師から印可を受けた際の歌。

※2 スペインは漢字で書くと、イスパーニャで西班牙と書いて西と略す。
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