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第2部 第ニ章 黄金郷を求めて

2-2-29.夢のワークワーク島

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第二十九話
夢のワークワーク島


 私は、本題を切り出す事にした。
「黄金郷の事なのですが」
「ワークワーク島、または、ジパング。伝説の黄金郷だね」と、エルハルト氏が口にすると、バーナーが下を向いてしまった。
 “インドのヴィルヘルミーナ”さんもだ。

 どうしたのか?

「実は……」と切り出したのは、バーナーだ。
「数年前に、行ってきたんだ」

 なに?

 さすが海賊の孫だな! 既に黄金郷へ行ってきたのか。
 だが、何故、下を向いているんだ?

「黄金郷には、黄金はなかった」
「えっ?」

 私は、深呼吸をして、改めて聞くことにした。

「どんなところでしたの?」
「激しい戦争をしていたので、一部しか回れなかったよ」
「そう、戦争を……」

 夢の黄金郷が戦争を……

「ミーナ、どうするの?」と、クリスティアーネが尋ねるも、
「うん、なんとも」としか返答できなかった。

 さらに、エルハルト氏が付け加えた。

「黄金郷は、実は黄金は輸入しているんだ」
「えっ? 端から黄金など無いと?」
「黄金は無いが銀なら山程ある。実は大量の銀がヨーロッパに流れているんだよ。
 しかも、売りさばいているのは、オランダだ」

 またまた、驚いた。
 世界は、いつの間にか、小さくなっていたのか?

 何やら、オランダが生糸などを売り、ジパングが銀で買っているとか。

 となると、我らの手元にある銀も、元々は、ジパングのものかもしれない。

「それでも、自分の目で見てみたいわ」と言うと、皆、“やはり”そう言う思ったという感じで、笑っていた。

 さて、バーナーの話では、インドより東は、オランダとポルトガルの勢力圏が多い。

 そこで地図を見せてもらって驚いた。

「これは、海賊の巣では?」
「まさにその通りだよ。まともに行けば海賊の餌食だ」

 海賊の巣とは、今のシンガポール辺りのことだ。

 スマトラ島とマレー半島の狭く長い海路を進み、マレー半島を回る。
 マラッカ海峡かシンガポール海峡かを進むのだけど、自らゴキブリホイホイへ突っ込むのと同じだ。
 ここで、何もなければ、世界の海賊の休日と言うぐらいだ。

 それだけ狭く長い。
 さらに、隠れる島々も無数にある。
 地元の海賊がやりたい放題だ。

 また、浅瀬なので、大型船は難航する。
 そして、ガレオン船にとって浅瀬とは、対応できない唯一無二の弱点なのだ。

 このスマトラ島の東ルートの他には、西ルートがある。

 ここもスンダ海峡という海賊がいるだろう浅瀬の海峡を渡る。

 しかし、マラッカ海峡に比べると、それほど浅くなさそうだし、隠れる島も少ない。

 遠回りだが、こちらのような気がする。
「マルコポーロもイブン・バットゥータも鄭和もマラッカ海峡を通ったようだ」と、バーナーは付け加えた。

「しかし、彼らはガレオン船ではなかった」
「あぁ、それにマレー半島は、ポルトガルとオランダの争いが激しくなっている。お勧め出来ない」
 となると、スンダ海峡経由だ。

 しかし、このあたりの海は複雑だな。
 一度では、頭に入らんわ。

 そこからは、大琉球、つまり、今の台湾を経由して、長崎へ行くルートを取ることになった。

 ワークワーク島、別名、ジパング。
 どんな島なんだろう。
 今も、戦争は続いているのだろうか?

 不安は尽きない。

 次回の女海賊団は、「えっ、君は船を降りるのではなかったの?」
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