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第二章

37.約束

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今日初めてしっかりとお話ししてわかった。サラ様は失礼な態度をとっている私に対してすら、仲良くなりたいと言ってくれるほど広い心を持っていて、楽観的なライト様と慎重なミラ様を合わせたような人である。私をたくさん褒めてくれたけれど、悪いところまで見られているのだろうか。もし、サラ様が人のよいところと悪いところの2つの面を見ることができ、考え、判断する…そんな能力をうまく国のために使うことができるなら、それは王族としてふさわしい才能だろう。
いつの間にかサラ様のことが気になっている自分がいる。この方は将来どんなことをするのだろうか。これから起こるかもしれない可能性に、少し期待する。

(近くで見てみたい……はっ!)

自分はこんなにも単純なやつだっただろうか。少し褒められて認めてもらえたからといって……、しかしサラ様に惹かれているのは、ミラ様の見た目をしているからではないと自分でもわかっている。これはサラ様自身の魅力なのだろう。

「リゼさん?」

ずっと下を向いて黙っている私を不思議に思ったのかサラ様が私に声をかける。

(ダメだ!ミラ様を裏切るようなことはできない。しかし……)

自分の中で葛藤が起こる。この気持ちは、専属侍女になって欲しいとミラ様に言われたあの時の心境と同じだ。

「……サラ様は、もしずっと側にいると約束した相手と離れ離れになって、その相手が新しく自分以外の人とそんな約束をしたらどう思いますか?」
「えっ?う~ん、そうだな……」

いきなり変な質問をしたせいで困らせてしまった。こんな質問にも真剣に考えてくださっている。ある程度考えがまとまったのか口を開く。

「別にいいんじゃないですか?」
「へ?」

意外な言葉に思わず声が出た。

「裏切られたとか、思わないんですか?」
「どんな理由で離れ離れになったのか、2人がどんな関係だったのかはわからないけど、互いに大切な人であったことは確かですよね?」
「たぶん…そうだったと思います。」

ミラ様にとってもそうであったと信じたい。

「なら、大切な人にまた大切にしたい人ができたことを喜ぶと思います。確かに約束は守るべきですけど、人の一生を縛るものではないと思うんです。絶対に守らなければいけない約束ってルールとかで、個人間でする約束は違うんじゃないですか?…って説明になってないですかね。」

サラ様は困ったように笑う。言いたいことは少しわかった。サラ様はきっと同じような状況になったとき、相手に遠慮してしまうのだろう。ミラ様もきっと……。

「だから、リゼさんも気にしすぎなくていいと思いますよ。」
「!!…………。」
(お見通しでしたか。)
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