上 下
27 / 56
第一章

27.第一歩

しおりを挟む
「それじゃあどうしたいか決まったら教えてくれ、ゴードン!」

ガチャッ

「お呼びでしょうか。」

国王様が声をかけるとゴードンさんが扉を開けて現れた。

「しばらくはサラにはカナリーゼとジルをつける。2人に伝えておいてくれ。」
「かしこまりました。」

カナリーゼはリゼさんだよね。ジルって?

「あの~…」
「ジルは私の息子でございます。」
「ゴードンさんの!?」
「はい。親の私が言うことではないかもしれませんが、きっとサラ様のお役に立つでしょう。」
「ジルはゴードンの息子だけあってとても優秀で、信用できる。」
「そうなんですね」

ジルさん…か。どんな人かな?

「それと、いつまでも部屋から出ないのは体によくないだろう。この部屋があるフロアは今、人が入れないようになっている。まだ、ほかの人に見られるのはまずいが、フロアから出なければ部屋の外に出てもいい。」
「本当ですか!」

正直なところ本ばかり読むのは飽きてきたところだ。散歩程度でいいから体を動かしたい。

「では、またなサラ。」
「じゃあね♪」
「はい。お話聞かせてくださりありがとうございました。」
「結論は急がなくていい。よく考えて決めるのだぞ。」
「わかりました。国王様、王妃様、おやすみなさい。」

ガチャッ
2人とゴードンさんが出ていき、ライトさんと私だけになった。

「サラ、今日は疲れただろう?俺ももう戻るからしっかり休めよ」
「はい。……ライト兄様、本当にありがとうございました!」
「!!」

ライトさんには感謝ばかりしている。ありのまま思った言葉を口にするとライトさんは少し驚いているようだ。

「おう!いつでも頼っていいからな!」
「はい!」
「じゃあおやすみ、サラ」
「おやすみなさい。」

ガチャッ
そうやって話し合いは終わった。1人になると一気に力が抜けて、また椅子に座り込む。たくさんのことを一度に聞きすぎたかもしれない。

(話しをまとめよう)

私が産まれる少し前から内戦が起こり、国王様たちは私を逃がすために、たまたまこの国に来ていたお父さんたちに私を預けた。その後も国王様は日本にいたほうがいいと判断してお父さんたちに再び預けたってことだよね?
お父さんが私について話しに来ていたとも言っていたな。国王様も私のこと気にしていてくれたみたいだし、国王様たちはこれから私がどうすることを望んでいるんだろう。

コンコンッ

「はい」

ガチャッ

「失礼致します。サラ…様、お着替えをお持ちしました。」
「あっ!」

そういえばドレスのままだった。さすがに1人では脱げも着れもしないだろう。

「ありがとうございます」
「いえ、お手伝い致します。」

リゼさんのおかげであっという間に着替え終わる。ドレスは窮屈だったから、とても開放感がある。

「明日の朝もお召し物をお持ちします。」
「ありがとうございます。……そういえば、またしばらくお世話になるみたいで、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」

リゼさんは相変わらずの表情で一礼をし、扉に近づいていく。

「おやすみなさいませ。」
「おやすみなさい」

バタンッ
扉が閉まるのを見届けると自然と足がベッドへ向かう。寝転がると昨日と同じようにすぐ眠れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

処理中です...