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今度こそ否定しようとしたけど、その後すぐ監督からミーティングするぞー! って声が掛かったからその話は一旦終わった。
帰り際になんとか森谷君の誤解を解こうと思ったけど、着替えたら我先にと帰ってしまったから結局そのままだった。
ちなみに森谷君以外のレギュラー陣も僕らの話を聞いていたようだけど誰も何も言わなかったので、きっと全員が誤解しているに違いない。
今から部活だけど、ちゃんと否定できるかな……。
万年ベンチ組で2年の僕が、3年生を含むレギュラー陣を前にして『僕とキヨは付き合ってないです!』と声高らかに宣言できるのか。
あ、別に僕じゃなくてキヨに言ってもらえばいいのか。
大体誤解されたのだってキヨのせいなんだし……、うん、ここはキヨになんとかしてもらおう。
「よしっ」
いつもより少し気合いを入れたあと、教室にあるシンプルな壁時計をちらりと見上げた。
もうすぐキヨが迎えに来る時間だから、その時に……すると。
「おい小林、女子がお前のこと呼んでるぞ」
「え?」
いきなりクラスメイトに呼ばれて、ドアの方を見ると知らない女子二人組が立っていた。
なぜか僕のことをぎらぎらと睨んでいる。幾度となく覚えがある、このパターンは……。
僕を呼んだクラスメイトの河田君が近付いて来て、僕の肩をポンと叩きながら小さく囁いた。
「どう見ても告白じゃなさそうな雰囲気だよな。水沢のファンか? 俺、急いで水沢呼んできてやるよ」
「あ、でも……」
キヨはいつも僕を迎えに来てくれるから、少し待ってればキヨが直接あの子たちに何か言ってくれると思うんだけど。
──そう言おうとしたら。
「おーい小林! 水沢今日日直だから先に部活行っとけってさー!」
廊下から大きな声で僕にそう伝えてくれたのは、キヨと同じクラスのサッカー部員だった。
「あ、そーなんだ、ありがと……」
「マジかよ。どうする? 小林」
「と、とりあえず僕行くよ、こういうの慣れてるから、大丈夫」
「……分かった。じゃあ俺はなるべく早く水沢を呼んできてやるから、それまでがんばれよな! 本妻の余裕を見せつけてやれ!」
「うん?」
ホンサイ?
ホンサイノヨユウって……なんだ?
何を見せつけるの?
それにしても、今までほとんど話したこともなかった河田君がこんなに僕のことを気にかけてくれるなんて。
僕とキヨが仲良いってことも知ってるみたいだし……って、それはクラスみんなが知ってるのか。
キヨはどこにいても目立つから。
「ちょっと! 呼んでるんだから早く来なさいよ!」
「は、はい……」
どこに連れて行かれるんだろう、部活が始まるまでには帰してほしいんだけど……。
レギュラーじゃなくても練習内容は一緒だから、遅れたら監督にこっぴどく怒られるんだ。
怒られるのは嫌だし、僕が部活に間に合わなかったらキヨは自分が迎えに行かなかったせいだと思ってしまうかもしれない。それはもっと困る。
……考えすぎ、だろうか?
帰り際になんとか森谷君の誤解を解こうと思ったけど、着替えたら我先にと帰ってしまったから結局そのままだった。
ちなみに森谷君以外のレギュラー陣も僕らの話を聞いていたようだけど誰も何も言わなかったので、きっと全員が誤解しているに違いない。
今から部活だけど、ちゃんと否定できるかな……。
万年ベンチ組で2年の僕が、3年生を含むレギュラー陣を前にして『僕とキヨは付き合ってないです!』と声高らかに宣言できるのか。
あ、別に僕じゃなくてキヨに言ってもらえばいいのか。
大体誤解されたのだってキヨのせいなんだし……、うん、ここはキヨになんとかしてもらおう。
「よしっ」
いつもより少し気合いを入れたあと、教室にあるシンプルな壁時計をちらりと見上げた。
もうすぐキヨが迎えに来る時間だから、その時に……すると。
「おい小林、女子がお前のこと呼んでるぞ」
「え?」
いきなりクラスメイトに呼ばれて、ドアの方を見ると知らない女子二人組が立っていた。
なぜか僕のことをぎらぎらと睨んでいる。幾度となく覚えがある、このパターンは……。
僕を呼んだクラスメイトの河田君が近付いて来て、僕の肩をポンと叩きながら小さく囁いた。
「どう見ても告白じゃなさそうな雰囲気だよな。水沢のファンか? 俺、急いで水沢呼んできてやるよ」
「あ、でも……」
キヨはいつも僕を迎えに来てくれるから、少し待ってればキヨが直接あの子たちに何か言ってくれると思うんだけど。
──そう言おうとしたら。
「おーい小林! 水沢今日日直だから先に部活行っとけってさー!」
廊下から大きな声で僕にそう伝えてくれたのは、キヨと同じクラスのサッカー部員だった。
「あ、そーなんだ、ありがと……」
「マジかよ。どうする? 小林」
「と、とりあえず僕行くよ、こういうの慣れてるから、大丈夫」
「……分かった。じゃあ俺はなるべく早く水沢を呼んできてやるから、それまでがんばれよな! 本妻の余裕を見せつけてやれ!」
「うん?」
ホンサイ?
ホンサイノヨユウって……なんだ?
何を見せつけるの?
それにしても、今までほとんど話したこともなかった河田君がこんなに僕のことを気にかけてくれるなんて。
僕とキヨが仲良いってことも知ってるみたいだし……って、それはクラスみんなが知ってるのか。
キヨはどこにいても目立つから。
「ちょっと! 呼んでるんだから早く来なさいよ!」
「は、はい……」
どこに連れて行かれるんだろう、部活が始まるまでには帰してほしいんだけど……。
レギュラーじゃなくても練習内容は一緒だから、遅れたら監督にこっぴどく怒られるんだ。
怒られるのは嫌だし、僕が部活に間に合わなかったらキヨは自分が迎えに行かなかったせいだと思ってしまうかもしれない。それはもっと困る。
……考えすぎ、だろうか?
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