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西日が肌に突き刺さる。
隣り合わせに歩く帰り道は、太陽に呑まれて赤に染まっていた。
煩わしかった蝉の声は、訪れる夜を感じ取って少しずつ大人しくなっていった。
「明後日って瀬那は補習?」
「そうだよ。お盆以外はずっと勉強漬け。そっちは?」
「一日暇」
「くたばれ」
「進学校は大変だね」
瀬那は湊に胡乱げな視線を送る。
湊は気にする様子もなく快活に笑って受け流した。
けれど、一歩、二歩と歩を進めるたびに、その笑みに寂しげな色が滲んでいく。
どうした、と尋ねると、湊はぽつりと零した。
「明後日の夏祭り、瀬那と行きたかったな」
「え?」
「でも補習で大変そうだし、体調のことも考えたら家でゆっくりしてた方がいいよね」
地元では毎年、夏祭りが開かれる。
規模は大きくないものの、くじ引き大会などのイベントや屋台の出店もあり、地元住民は毎年その日を楽しみにしている。
目玉イベントとして終盤には打ち上げ花火も用意されており、夏祭りのフィナーレを飾ってくれる。
今まで湊とも行ったことはあるが、他にも同行者はいた。
湊と二人っきりは、まだない。
「いいよ。行こう、夏祭り」
「え、でも」
「夏祭りくらいでへばんないし。余裕で行けるっつーの」
湊は返答に迷っているようだった。
行きたい気持ちと休ませるべきだという使命感で揺れているのだろう。
一番体調を気にするべき本人が行こうと言っているのだから、何を気にする必要があるのだろうか。
どんな状況であっても、オレは行きたい。
「行こうよ。オレも行きたい」
隣り合わせに歩く帰り道は、太陽に呑まれて赤に染まっていた。
煩わしかった蝉の声は、訪れる夜を感じ取って少しずつ大人しくなっていった。
「明後日って瀬那は補習?」
「そうだよ。お盆以外はずっと勉強漬け。そっちは?」
「一日暇」
「くたばれ」
「進学校は大変だね」
瀬那は湊に胡乱げな視線を送る。
湊は気にする様子もなく快活に笑って受け流した。
けれど、一歩、二歩と歩を進めるたびに、その笑みに寂しげな色が滲んでいく。
どうした、と尋ねると、湊はぽつりと零した。
「明後日の夏祭り、瀬那と行きたかったな」
「え?」
「でも補習で大変そうだし、体調のことも考えたら家でゆっくりしてた方がいいよね」
地元では毎年、夏祭りが開かれる。
規模は大きくないものの、くじ引き大会などのイベントや屋台の出店もあり、地元住民は毎年その日を楽しみにしている。
目玉イベントとして終盤には打ち上げ花火も用意されており、夏祭りのフィナーレを飾ってくれる。
今まで湊とも行ったことはあるが、他にも同行者はいた。
湊と二人っきりは、まだない。
「いいよ。行こう、夏祭り」
「え、でも」
「夏祭りくらいでへばんないし。余裕で行けるっつーの」
湊は返答に迷っているようだった。
行きたい気持ちと休ませるべきだという使命感で揺れているのだろう。
一番体調を気にするべき本人が行こうと言っているのだから、何を気にする必要があるのだろうか。
どんな状況であっても、オレは行きたい。
「行こうよ。オレも行きたい」
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