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オコネネ
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鳥の軟骨がカラッと揚がった所で、ピピとヨヨがどこからともなく飛んで来た。
目を瞑って嗅覚だけを頼りに近寄ってくる、嘴の上にあるお鼻をピクピクさせて、いい匂いがするうううう!!! って無事両肩に着地してきたよ。
おかしいなあ? さっきチェリーパイが焼けた時には見向きもせず庭でチョヤチョヤ剣術の練習してたじゃない?
「チェリーパイはいい匂いじゃないの?」
と、首を傾げて聞けば二人共黄色いヒヨコ羽をばたつかせて、色々言ってきた。
要約すると、いい匂いだったけど釣られて飛んできちゃうほどではないらいしい。
あまーいお菓子のいい匂いするけど、そんなのに気を取られていたんじゃ、あの片目の黒豹を子分にできないから稽古の続きだ!!! ってしてたのに、この匂いには勝てなくてでふわふわ来ちゃったって。
そーいえば、最近夕飯を一緒に食べる日が多くなった黒豹さんが見下し気味に二人に言ってたなあ。
「お前等、鶏肉なのに鶏肉が好物なのか」
その日はタツミがからあげ丼作ってくれて、美味しい美味しいって皆で食べてたんだ。
相変わらすお椀に首突っ込むスタイルで食事をしていた二人は、ご飯粒だらけな顔を上げると、
「は? 何しゃべってんだよこの片目野郎が、一丁前に斜め上から煽ってんじゃねえぞ。俺達をあげてからあげになる訳ねえだろ頭ぶっ壊れてんのか?」
って手羽先バサバサさせて威嚇して、隣で食べてるヒヨコも眼鏡にご飯粒つけながら「明日確実に殺してやります」って上手い事翼で中指立てるポーズして、ケンカ売ってた。
汚い言葉使わないのって一応叱っておいたけど、ああ、そうだ確か黒豹さんが家に来た時不意打ちして、返り討ちにあって庭の物干しに干物みたいに吊るされてたなあって思い出した。それを怒ってるのね。
それで、まあ、反論するんだから自分達がチキンだって気付いてないのかな。
視線をキッチンに戻して、フライバスケットをふーふ―しながら二人を見る。
アツアツだけど食べる? ってお箸であげたての鳥軟骨を一つ差し出したら嘴が摘まんで上向いて一飲みしてて、前向いた顔はうめええって頬染めてるんだけど、そんなんで味分かるのかな。丸呑みだったよね。
眼鏡のピヨにもくれくれされて、口に入れたら美味い、素材の味が生きてるう! とか言ってる。
二人はクルクル回って悶えてて震えながら、誰の何をあげたらこんなに美味しいものが作れるの? って聞いてくるけど、もれなく君達でいう所の胸の先と膝の部位なんだけどな。
本当に自分達が鳥だって気が付いてないのかな?
いや、知ってるのかな? そして大人になったらそのうちどっかいっちゃうのかな? ってじっと見てたけど、タツミ曰く、そういう成長の変化を魔力と理性の維持に回してるから、急に翼が大きくなって飛んでいっちゃう事はないんだって。
ピピとヨヨは特殊なヒヨコみたいだから過去の例がなく育てにくい、成長させてしまうと自我が保てなくなるかもしれなくて、この形に留めているって。
毎晩私がほっぺにちゅうして今日できた傷を癒やしてあげるの。ボロボロになった黄色い羽根が艶々になって、これで明日も力いっぱい遊べるね? そしたら今度はお腹の上に二人を乗せて、タツミがいいこいいこしてあげてる。場所は寝室でヒヨコが眠る八時前。
タツミの温かさと匂いにうっとりして目を瞑りながら薄く開いた嘴に、指先から緑色の炎を纏わせると呼吸と一緒にゆっくり吸わせてた。
魔力の補給だって言ってるけど、それが二人にどう作用しているのか、私は知らない。
寝かしつけてる帝王様が寝息を漏らす鶏冠を撫でながら言ってた。
「情けないけど、我が帝国の一小隊程度なら簡単に倒せてしまう戦力がこの二人にはあるんだ」
「?!」
「鍛え過ぎちゃったかな? 近隣に散らばる小国なら半日で堕とせるだろうね」
「へえ? ネネとどっちが強い?」
「ネネ」
らしいけど、私は剣も魔法も使えないので、彼らをぞんざいには扱えませんね。
「が、しかしそのぞんざいを自在に操るネネの姿を恐れるがいい! ぞんざいは我が手にあり! いっぱいタツミが持ってる本読んでぞんざいも自在も使えるようになったぞよ! 賢きかな!!!」
「ああ……もうちょっとぞんざいの使用例見ておこうか」
ちょっと間違えてるっぽけど、まあいいか。
それで、キッチンに場面が戻るよ?
今日の夕飯は私が作ってるの、というか最近はほぼ家の用事は私が出来るようになった。
一度、お城で暮らした事もあったんだけど、やる事なさ過ぎてすぐこっちに帰って来ちゃった。
私がのびのび寝転がってる所を、侍女さんにお姫様みたいに孔雀のうちわで扇がれるより、黒猫になって階段下の秘密基地に皆でぎゅうぎゅうになって寝ていた方が落ち着くんだもん。
目が覚めて誰かの頭があってペロペロしてあげる方が生きてる感じする。
憧れのはずだった綺麗なドレスは1日で飽きた、豪華な帽子は首を曲げるのに一苦労、踵の高いハイヒールは全然走れなかったし、キラキラな食器は緊張してご飯の味が分からなかった。食べるのに順番が合って好きな物美味しいね! ってできないのもの窮屈だった。
きっとあれは皆が望む贅沢な暮らしなんだろうけど、その価値が私には分からなかった。
だって戸棚の隅っこに隠れてタツミの帰りを待って見付けてもらったり、皆で座ってるソファでゴロゴロ言っちゃうの我慢しながら、ばんざいしてる体をいっぱい撫でられる方が好きなんだもん。
一番はあれだ、タツミとえっちしたいのに、大きいベッドが置かれた部屋の外にたくさん人が並んでて、エッチな声気にしながらイチャイチャするのが一番嫌だった。
だからやっぱここがマイホームなので、ご主人様がいない時間は私が全部やりますよ。
それでもうそろそろ、タツミが帰って来る時間かな。
夕飯はシチューとパンとサラダ、後チェリーパイね。
シチューは熱々で温める必要ないし、パンだけ切り分けて、サラダは魔法で冷やしてもらってる。
デザートはいつもその日獲ってきたフルーツだけど、今日は特別にチェリーパイだ。ご褒美を兼ねてね!
だってタツミと約束してるから!
そう、それがあって、私は朝からソワソワしてるんだ、いっっぱいいっぱい自分の尻尾追いかけてクルクルしちゃったし、お洋服もオール前後間違えて着た。そんくらい興奮してたよ。
それで、夕飯の支度ってコップを定位置に並べてたら、予想より早く鳩時計ちゃんが鳴って羽を広げた。見上げれば私にニコってしたから玄関に向かう。
エプロンの皺を伸ばして両頬叩いてしゃっきりさせれば、床に緑の文字が浮き上がった。
私の足元まで魔法陣が広がって、玄関が解読不能な文字と特殊な音で支配される。目の前に光の柱が出現すると、そこに人影が現れた。
「おかえりなさい」
って抱き着けば、軍服タツミが「ただいま」って抱き締めてくれた。
お首の鈴鳴らしてピョンピョンして猫様には珍しい嬉しいのアピール!!
お荷物持って、寝室に先導して上着を脱がしてあげた。いつも通りありがとうネネって笑うけど、それいつもの笑顔と違うな?!
首傾げて体中スンスンしたら、タツミがしなくていいって言う。やだ。
「猫になっていい?」
「ダメ」
隅々まで嗅ぎまわろうと思ったらご主人様からNOを貰ってしまったので、じっと睨む。
タツミは苦笑いしながらネクタイ外して、今日あったどーでもいーーー執務の内容を淡々と話してる。聞いてないけど。
それでわかった、お鼻が気付いてしまったんだ。
タツミの事引っ張ってこっち向かせて言った。
「ちゅ~る忘れたんだ?」
「…………」
目、逸らすから図星だな。
そう、約束してたのは、なんか未知のおいしさのあのおやつ。
鳩時計を買ったお店に遊びに行ったら、そこには異世界の商品も並んでて、どうやって仕入れているのか知らないけど、この世界じゃ読めない言語の本や食べ物も売ってたの。
店内で遊んでる間、猫耳メイドさんに小さくて長細い袋に入ったおやつを食べさせてもらって私はそれの虜になってしまった。そのおやつの名をちゅ~るといいます。
町には私一人じゃいけないから、今日タツミが買ってきてくれる約束だったのに、タツミってばどうしたんだろ?
いっぱい色んな角度から見上げても、ただかっこういいだけだなって思って。
曇りなき眼!! って自分の眼鏡を外して見つめてみれば、タツミの綺麗な顔の影が濃かった。
それは、言葉では言い表せないけど、影っていうのは単語でいう所の不安現れなのかな?
「タツミ……?」
「…………」
呼んだら、眼鏡を外した私に気が付いたタツミが瞼を伏せた。
おおお?! それは私に目を見せないぞ! みたいなそういう事か!? 何か目が理由で問題でもあったのかな。
わからないけど、でもそっか、帰るよって言ってた時間よりも全然早いもんな、いきなり鳩時計が鳴ったモノ。
いいよ、また嫌な思いするの可哀想だもん、何があったの? なんて聞かないよ。
タツミは大人だし、答えはもう出てるだろう。じゃなきゃ、先に私に相談してるよね、答えが欲しいなら。だから詮索はしない、私、超ぞんざいな存在。
でさ? じゃあさ、だったらさ? 答えは決まってて早く帰って来た意味って何よ。
ネネの顔見たかったんじゃないの?
辛くなったから、帰って来たのにさ、私を避けるって意味不明。
私は別に、その呪われた瞳とやらでこの瞬間に死んだって怖くも何もないのに、何を怖がっているのかいしら?!
とキレ気味に睨んで、タツミの眼鏡を額に上げて肩に手を回す。
反射的にタツミは腰を抱いてくれて私はジャンプして腰に足を巻き付けた。
いつもの抱っこポジションで、眼鏡のない目をこれでもかってじいいいいいいいいいいいって睨んでやった。
「オラオラ来いよ」
「ネネ、ピヨのまねしないでいいから」
「ふん? じゃあ呪いでも発動させてみたら?」
「もうとっくにしてる」
「え」
「よくわからないけど、死ぬやつはすでに死んでるよ。今何も自制してない、ネネには本当に効かない」
「あっそ」
距離が遠いからでは? って顔引っ張って、引っ張りすぎてチュウしながら見つめ合ってみたけど、タツミが大好きだなって思うだけだった。
「何だ、何でもないじゃんタツミは何も悪くないの」
「うん」
もうちょっと頭がよくなったら、逃げだしたくなるような仕事場にもネネが行きたい。力になりたい。
まあ? その前にちゅ~る買ってこいよだけど、とりあえず今日はタツミの不安も弱まったみたいだしお夕飯にしよう。
唇を離せば、鳩時計がまた鳴って、敵襲!!! って叫んでるから、多分黒豹さんが来るのだろう。
遠くでヒヨコが勝鬨を上げている。家を包むの魔力に熱が帯びて、ピヨが戦闘モードに入った合図だ。
私はタツミに抱っこされながら、見つめ合ってキスをした。
唇が離れたら、タツミは一戦あるんじゃ夕飯には時間かかるだろうし、少し気持ちいい事しようかって誘われて、フカフカなベッドに腰を降ろした。
目を瞑って嗅覚だけを頼りに近寄ってくる、嘴の上にあるお鼻をピクピクさせて、いい匂いがするうううう!!! って無事両肩に着地してきたよ。
おかしいなあ? さっきチェリーパイが焼けた時には見向きもせず庭でチョヤチョヤ剣術の練習してたじゃない?
「チェリーパイはいい匂いじゃないの?」
と、首を傾げて聞けば二人共黄色いヒヨコ羽をばたつかせて、色々言ってきた。
要約すると、いい匂いだったけど釣られて飛んできちゃうほどではないらいしい。
あまーいお菓子のいい匂いするけど、そんなのに気を取られていたんじゃ、あの片目の黒豹を子分にできないから稽古の続きだ!!! ってしてたのに、この匂いには勝てなくてでふわふわ来ちゃったって。
そーいえば、最近夕飯を一緒に食べる日が多くなった黒豹さんが見下し気味に二人に言ってたなあ。
「お前等、鶏肉なのに鶏肉が好物なのか」
その日はタツミがからあげ丼作ってくれて、美味しい美味しいって皆で食べてたんだ。
相変わらすお椀に首突っ込むスタイルで食事をしていた二人は、ご飯粒だらけな顔を上げると、
「は? 何しゃべってんだよこの片目野郎が、一丁前に斜め上から煽ってんじゃねえぞ。俺達をあげてからあげになる訳ねえだろ頭ぶっ壊れてんのか?」
って手羽先バサバサさせて威嚇して、隣で食べてるヒヨコも眼鏡にご飯粒つけながら「明日確実に殺してやります」って上手い事翼で中指立てるポーズして、ケンカ売ってた。
汚い言葉使わないのって一応叱っておいたけど、ああ、そうだ確か黒豹さんが家に来た時不意打ちして、返り討ちにあって庭の物干しに干物みたいに吊るされてたなあって思い出した。それを怒ってるのね。
それで、まあ、反論するんだから自分達がチキンだって気付いてないのかな。
視線をキッチンに戻して、フライバスケットをふーふ―しながら二人を見る。
アツアツだけど食べる? ってお箸であげたての鳥軟骨を一つ差し出したら嘴が摘まんで上向いて一飲みしてて、前向いた顔はうめええって頬染めてるんだけど、そんなんで味分かるのかな。丸呑みだったよね。
眼鏡のピヨにもくれくれされて、口に入れたら美味い、素材の味が生きてるう! とか言ってる。
二人はクルクル回って悶えてて震えながら、誰の何をあげたらこんなに美味しいものが作れるの? って聞いてくるけど、もれなく君達でいう所の胸の先と膝の部位なんだけどな。
本当に自分達が鳥だって気が付いてないのかな?
いや、知ってるのかな? そして大人になったらそのうちどっかいっちゃうのかな? ってじっと見てたけど、タツミ曰く、そういう成長の変化を魔力と理性の維持に回してるから、急に翼が大きくなって飛んでいっちゃう事はないんだって。
ピピとヨヨは特殊なヒヨコみたいだから過去の例がなく育てにくい、成長させてしまうと自我が保てなくなるかもしれなくて、この形に留めているって。
毎晩私がほっぺにちゅうして今日できた傷を癒やしてあげるの。ボロボロになった黄色い羽根が艶々になって、これで明日も力いっぱい遊べるね? そしたら今度はお腹の上に二人を乗せて、タツミがいいこいいこしてあげてる。場所は寝室でヒヨコが眠る八時前。
タツミの温かさと匂いにうっとりして目を瞑りながら薄く開いた嘴に、指先から緑色の炎を纏わせると呼吸と一緒にゆっくり吸わせてた。
魔力の補給だって言ってるけど、それが二人にどう作用しているのか、私は知らない。
寝かしつけてる帝王様が寝息を漏らす鶏冠を撫でながら言ってた。
「情けないけど、我が帝国の一小隊程度なら簡単に倒せてしまう戦力がこの二人にはあるんだ」
「?!」
「鍛え過ぎちゃったかな? 近隣に散らばる小国なら半日で堕とせるだろうね」
「へえ? ネネとどっちが強い?」
「ネネ」
らしいけど、私は剣も魔法も使えないので、彼らをぞんざいには扱えませんね。
「が、しかしそのぞんざいを自在に操るネネの姿を恐れるがいい! ぞんざいは我が手にあり! いっぱいタツミが持ってる本読んでぞんざいも自在も使えるようになったぞよ! 賢きかな!!!」
「ああ……もうちょっとぞんざいの使用例見ておこうか」
ちょっと間違えてるっぽけど、まあいいか。
それで、キッチンに場面が戻るよ?
今日の夕飯は私が作ってるの、というか最近はほぼ家の用事は私が出来るようになった。
一度、お城で暮らした事もあったんだけど、やる事なさ過ぎてすぐこっちに帰って来ちゃった。
私がのびのび寝転がってる所を、侍女さんにお姫様みたいに孔雀のうちわで扇がれるより、黒猫になって階段下の秘密基地に皆でぎゅうぎゅうになって寝ていた方が落ち着くんだもん。
目が覚めて誰かの頭があってペロペロしてあげる方が生きてる感じする。
憧れのはずだった綺麗なドレスは1日で飽きた、豪華な帽子は首を曲げるのに一苦労、踵の高いハイヒールは全然走れなかったし、キラキラな食器は緊張してご飯の味が分からなかった。食べるのに順番が合って好きな物美味しいね! ってできないのもの窮屈だった。
きっとあれは皆が望む贅沢な暮らしなんだろうけど、その価値が私には分からなかった。
だって戸棚の隅っこに隠れてタツミの帰りを待って見付けてもらったり、皆で座ってるソファでゴロゴロ言っちゃうの我慢しながら、ばんざいしてる体をいっぱい撫でられる方が好きなんだもん。
一番はあれだ、タツミとえっちしたいのに、大きいベッドが置かれた部屋の外にたくさん人が並んでて、エッチな声気にしながらイチャイチャするのが一番嫌だった。
だからやっぱここがマイホームなので、ご主人様がいない時間は私が全部やりますよ。
それでもうそろそろ、タツミが帰って来る時間かな。
夕飯はシチューとパンとサラダ、後チェリーパイね。
シチューは熱々で温める必要ないし、パンだけ切り分けて、サラダは魔法で冷やしてもらってる。
デザートはいつもその日獲ってきたフルーツだけど、今日は特別にチェリーパイだ。ご褒美を兼ねてね!
だってタツミと約束してるから!
そう、それがあって、私は朝からソワソワしてるんだ、いっっぱいいっぱい自分の尻尾追いかけてクルクルしちゃったし、お洋服もオール前後間違えて着た。そんくらい興奮してたよ。
それで、夕飯の支度ってコップを定位置に並べてたら、予想より早く鳩時計ちゃんが鳴って羽を広げた。見上げれば私にニコってしたから玄関に向かう。
エプロンの皺を伸ばして両頬叩いてしゃっきりさせれば、床に緑の文字が浮き上がった。
私の足元まで魔法陣が広がって、玄関が解読不能な文字と特殊な音で支配される。目の前に光の柱が出現すると、そこに人影が現れた。
「おかえりなさい」
って抱き着けば、軍服タツミが「ただいま」って抱き締めてくれた。
お首の鈴鳴らしてピョンピョンして猫様には珍しい嬉しいのアピール!!
お荷物持って、寝室に先導して上着を脱がしてあげた。いつも通りありがとうネネって笑うけど、それいつもの笑顔と違うな?!
首傾げて体中スンスンしたら、タツミがしなくていいって言う。やだ。
「猫になっていい?」
「ダメ」
隅々まで嗅ぎまわろうと思ったらご主人様からNOを貰ってしまったので、じっと睨む。
タツミは苦笑いしながらネクタイ外して、今日あったどーでもいーーー執務の内容を淡々と話してる。聞いてないけど。
それでわかった、お鼻が気付いてしまったんだ。
タツミの事引っ張ってこっち向かせて言った。
「ちゅ~る忘れたんだ?」
「…………」
目、逸らすから図星だな。
そう、約束してたのは、なんか未知のおいしさのあのおやつ。
鳩時計を買ったお店に遊びに行ったら、そこには異世界の商品も並んでて、どうやって仕入れているのか知らないけど、この世界じゃ読めない言語の本や食べ物も売ってたの。
店内で遊んでる間、猫耳メイドさんに小さくて長細い袋に入ったおやつを食べさせてもらって私はそれの虜になってしまった。そのおやつの名をちゅ~るといいます。
町には私一人じゃいけないから、今日タツミが買ってきてくれる約束だったのに、タツミってばどうしたんだろ?
いっぱい色んな角度から見上げても、ただかっこういいだけだなって思って。
曇りなき眼!! って自分の眼鏡を外して見つめてみれば、タツミの綺麗な顔の影が濃かった。
それは、言葉では言い表せないけど、影っていうのは単語でいう所の不安現れなのかな?
「タツミ……?」
「…………」
呼んだら、眼鏡を外した私に気が付いたタツミが瞼を伏せた。
おおお?! それは私に目を見せないぞ! みたいなそういう事か!? 何か目が理由で問題でもあったのかな。
わからないけど、でもそっか、帰るよって言ってた時間よりも全然早いもんな、いきなり鳩時計が鳴ったモノ。
いいよ、また嫌な思いするの可哀想だもん、何があったの? なんて聞かないよ。
タツミは大人だし、答えはもう出てるだろう。じゃなきゃ、先に私に相談してるよね、答えが欲しいなら。だから詮索はしない、私、超ぞんざいな存在。
でさ? じゃあさ、だったらさ? 答えは決まってて早く帰って来た意味って何よ。
ネネの顔見たかったんじゃないの?
辛くなったから、帰って来たのにさ、私を避けるって意味不明。
私は別に、その呪われた瞳とやらでこの瞬間に死んだって怖くも何もないのに、何を怖がっているのかいしら?!
とキレ気味に睨んで、タツミの眼鏡を額に上げて肩に手を回す。
反射的にタツミは腰を抱いてくれて私はジャンプして腰に足を巻き付けた。
いつもの抱っこポジションで、眼鏡のない目をこれでもかってじいいいいいいいいいいいって睨んでやった。
「オラオラ来いよ」
「ネネ、ピヨのまねしないでいいから」
「ふん? じゃあ呪いでも発動させてみたら?」
「もうとっくにしてる」
「え」
「よくわからないけど、死ぬやつはすでに死んでるよ。今何も自制してない、ネネには本当に効かない」
「あっそ」
距離が遠いからでは? って顔引っ張って、引っ張りすぎてチュウしながら見つめ合ってみたけど、タツミが大好きだなって思うだけだった。
「何だ、何でもないじゃんタツミは何も悪くないの」
「うん」
もうちょっと頭がよくなったら、逃げだしたくなるような仕事場にもネネが行きたい。力になりたい。
まあ? その前にちゅ~る買ってこいよだけど、とりあえず今日はタツミの不安も弱まったみたいだしお夕飯にしよう。
唇を離せば、鳩時計がまた鳴って、敵襲!!! って叫んでるから、多分黒豹さんが来るのだろう。
遠くでヒヨコが勝鬨を上げている。家を包むの魔力に熱が帯びて、ピヨが戦闘モードに入った合図だ。
私はタツミに抱っこされながら、見つめ合ってキスをした。
唇が離れたら、タツミは一戦あるんじゃ夕飯には時間かかるだろうし、少し気持ちいい事しようかって誘われて、フカフカなベッドに腰を降ろした。
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