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おそろい!
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「戦わないといけないのは、同族でも敵国でも人間でもない、いつだって勝たないといけないのは弱い自分。俺の敵は常に俺の中にいる」
「弱い自分……」
「力の小競り合いなんて一生終わらない。勝てばもっと強い敵と戦いたくなる、手に入ればもっと大きなものが欲しくなる。戦わないといけないのは、そんなくだらない所に固執している己の心。欲の向こうに幸せなんてないんだ。でも人はずっとそれに悩まされて生きていく生き物だから、まさに呪いだ」
タツミの手を握って、こんな強そうなタツミでも自分を弱いって思ってるんだ。
でも、
「わかるかも……ドロに襲われた時怖かった、でも守られてばかりの自分に負けたくないって思った。ドロに勝ちたいって思ったんじゃなくて、何の力もないけど、弱い自分はもう嫌だって思ったの」
「う」
ドロの頭がビクンってして、ああそっか兄様の前でこの話はしちゃいけなかったかな。
「ネネは強くて優しくて賢くていい子」
「タツミに褒めてもらえるの嬉しい、いっぱいいいこいいこして?」
喉掻かれて鈴を鳴らされて、頭なでなで気持ちいい。いっぱい好きって匂いに出しとく、手が口の所にきたから甘く噛んでお胸キュンキュン、タツミは向こうの手も動かしてて、金髪に黒い耳の生えた頭を撫でてる。
「ドロも優しくて賢くていい子、けれど少し強さが足りなかった。もちろん俺にも悪い所があったけれど、不安や疑いや嫉妬はお前自身が作り出したものだ。自分を苦しめないでくれ、俺の大事な弟、もっと兄好かれていると自分を信用して」
「はい」
「そしてピヨは」
「ピ?!!」
「ヨ?!!」
「特になし」
ボトボトって二人が肩から落ちてきて、地面でピクピク震えてるけど、べた褒めした方が恐いから、これで合っているんだと思う。
ドロは一回転して起き上がると黒豹になって、私にズイズイお菓子の入った小箱を鼻で押してきた、私とはあんまお口聞きたくないのね。
「うん、そうだお菓子食べよう? ドーナツも! ミルク持って来たから温めてタツミ」
「うん」
私も起き上がって、ミルクの入った水筒を渡せば、タツミは真っ白い表面を見つめて目を光らせた、水筒の底から一瞬でコポポっと沸騰の気泡が沸く。
紅茶の茶葉を水筒に入れれば、葉がゆっくり沈んで良い香りがして、少しづつ白が茶色に色づいていく。
巾着に入れてきた茶色い角砂糖をカップに転がして、いい頃合いに葉が蒸れたら、網で濾しながらカップに注げばロイヤルミルクティの出来上がり。
タツミがカップに唇を寄せて、湯気で揺れるまつ毛が格好良かった。
「美味しいネネ」
「ありがとう大好き」
キスして、黒豹ちゃんいい子にお座りして待ってるから、前に置かれたお皿に、とりあえずお星さまのお砂糖やチョコレートで飾り付けしたドーナツを置く。
それでドロが持って来た小箱を膝に乗せた。
「これ、ドロが持ってきてくれたんだよ」
「へえ、ドロが?」
「…………」
黒豹ちゃんじっと見てきて、ピアスがたまに揺れる。
「うん、手作りなんだって」
「ピピ!」
「ヨ?」
ピヨも気になるのか覗きこんできて、パカっと開ければ。
「あ、クッキーだ。美味しそう!」
「ああ……これは」
私がタツミと作る形が歪なのじゃなくて綺麗な艶々なクッキーが箱にいっぱい入っていた。
「私もクッキー作るよ! えっとー卵とバターと小麦粉で作れるんだよね?」
タツミは一つ摘まんでクッキーを見つめた。
「これはプニャーニキって豹の家庭の代表的なクッキー菓子、材料は強力粉、ライ麦粉、蜂蜜、スメタナ、ヨーグルト、バター、卵、シナモン、カルダモン、生姜、丁字、ナツメグ、重曹、レモン果汁、塩、砂糖、後好みでドライフルーツ」
「ネネ作るクッキーと全然違う!!」
これをクッキーと呼ぶなら、私のはもはや小麦粉焼いただけって名前に変更した方がいいんじゃないかってくらい手が込んでるよ! 私も一つ貰って観察! ああ、なんかちょっと私が作るクッキーより重みがあるかも? なんて思った。
とりあえず口に入れてふわって蜂蜜と色んな匂いがする、サクッと噛んだら口の中にスパイスの香りが広がって、凄い! 小麦粉焼いただけとは全然違う!!
「へえ!! 私甘いだけのクッキーしか知らなかったから、初めての味! 美味しい」
「うん美味しいドロ。懐かしい味、ありがとう」
黒豹ちゃんはタツミの周りウロウロソワソワしてたけど、兄様が笑うと肩にグリグリ額擦りつけて、顔撫でてもらってクッキー貰って、嬉しそう。
クッキーを小さくして手の平に乗せればピヨはパクパク啄ばんでた。
変な味するけどウマイ! って言ってて、ひよこの口にはスパイスはまだ早かったらしい。
流星を眺めながら、ドーナツも食べて、ドロはタツミが作ったドーナツだから喜んでた、食べ終わればピヨは流星そっちのけで、ドロ追いかけて遊びだして、あ、いいな! 私も混ざりたい!
って思ったけど今日は流星を見に来たのよネネ! と首を振る。む、むしろもう私トゲトゲ経験済みの大人のレディだし? そういう子供みたいなのは? 止めたのよ。うん、全然面白そうじゃないんだから! ってタツミの隣でじっとする。
真っ黒なフリフリ尻尾追いかけて、飛び付いて、逃げて、噛み付いてチョヤチョヤってして追いかけてパンチパンチして…………。
「行っていいよ」
「う?」
「尻尾パタパタしてる」
「うう……」
「ここは俺が片付けておくから」
「全然楽しそうではないけど、ちょっとだけ様子見てくる!! ちょっとだけ!!! 別に遊んだりはしないから」
「うん」
エイッ! って黒猫になって特攻だ、流星が降り注ぐ空の下で思いっ切り走って遊んで、超楽しい!!!
ただドロはタツミと違って喉噛ませたりとか、もちろん手は抜いてくれてるけど勝たせてはくれないから、こっちも結構マジになってスピードが上がる魔法とかかけてもらって本気モード。
ピヨが応戦してる間にピアスに噛み付いたら、顔ブンブンされて振り落とされるぅ!! ってなって、耐えきれなくて体が吹っ飛んだ、あ、受け身……って間に合いそうになくて目を瞑ったら大きな手が受け止めてくれた。
「ちょっと激しいなドロ、ケガする。相手は子供」
「…………」
「出して」
ドロが口を開けば泣きながら涎まみれのピヨが出て来て、食べられるとこだったぁ! ってタツミの肩に飛んでった、ドロはごめんなさいって耳を下げてる。
せっかく遊んでたのにしょんぼりしちゃったから空気を変えないと! あ! そうだ!! 私さっき大発見しちゃったんだ!! って抱っこされてたタツミの腕から抜け出た。
シュタッ! って着地して見て見て!! ってタツミの足元クルクルしてドロの隣に並んだ。
ほら! お揃い!!!
私とドロ、二人で真っ黒お揃いだよ! 仲良し真っ黒!!
どう? ってしたのに、タツミは瞳孔開いちゃって、ドロはお前止めろよ! 何兄様煽ってんだ!! 僕は嬉しくないし! って拒否ってる、ピヨは慌てながら、豹柄と黒猫の方があってるよ!! って。
あ…………え? だって、ドロって弟だし……え? 嘘、タツミこれもヤキモチ焼いちゃうの?
ってとりあえず、ミィって鳴いて、何でもないよ、今の嘘! って足引っ掻きに行ったらタツミは片手で抱き上げてくれた。
「そうだよ、ネネを見た時可愛いな、いいなって思ったのはドロが黒豹でその姿が美しく好きだったから。そういう所で黒がスッと俺に入ってきたんだと思う」
「ニイ」
何だ、別にタツミ怒ってなかった、それでドロに。
「家系に黒はいなかったから、仲間ができて良かったなドロ。嬉しいか? ん? ん?」
あ、やっぱちょっと気にしてる? ドロは全然嬉しくないぃい! って激しく左右に首を振ってる。
なんてしてたら、頭上の流星は止んでいた。
「そろそろ帰ろうか」
タツミが言えば、黒豹はまた一回転して、軍服に戻った、帽子を被ってマントを靡かせる。
「じゃあ僕は町のパトロールに行ってきます」
「え? こんな時間から?」
「あ? こんな時間だから大切なんだろ、誰もやっていない廃下層のパトロールは」
「…………」
そっか、初めてあった時も、ドロはパトロールしてたのかななんて思い出して、最後にドロは指先から眩ゆい光を豹座に向かって放った。
キラッと一番強く輝いて散って、ドロは腰に携えた二本の剣を引き抜くと真っ暗な空を切り裂いて、その中に飛び込む、裂かれた切り口が閉じて、暗闇の彼方に姿を消した。
「弱い自分……」
「力の小競り合いなんて一生終わらない。勝てばもっと強い敵と戦いたくなる、手に入ればもっと大きなものが欲しくなる。戦わないといけないのは、そんなくだらない所に固執している己の心。欲の向こうに幸せなんてないんだ。でも人はずっとそれに悩まされて生きていく生き物だから、まさに呪いだ」
タツミの手を握って、こんな強そうなタツミでも自分を弱いって思ってるんだ。
でも、
「わかるかも……ドロに襲われた時怖かった、でも守られてばかりの自分に負けたくないって思った。ドロに勝ちたいって思ったんじゃなくて、何の力もないけど、弱い自分はもう嫌だって思ったの」
「う」
ドロの頭がビクンってして、ああそっか兄様の前でこの話はしちゃいけなかったかな。
「ネネは強くて優しくて賢くていい子」
「タツミに褒めてもらえるの嬉しい、いっぱいいいこいいこして?」
喉掻かれて鈴を鳴らされて、頭なでなで気持ちいい。いっぱい好きって匂いに出しとく、手が口の所にきたから甘く噛んでお胸キュンキュン、タツミは向こうの手も動かしてて、金髪に黒い耳の生えた頭を撫でてる。
「ドロも優しくて賢くていい子、けれど少し強さが足りなかった。もちろん俺にも悪い所があったけれど、不安や疑いや嫉妬はお前自身が作り出したものだ。自分を苦しめないでくれ、俺の大事な弟、もっと兄好かれていると自分を信用して」
「はい」
「そしてピヨは」
「ピ?!!」
「ヨ?!!」
「特になし」
ボトボトって二人が肩から落ちてきて、地面でピクピク震えてるけど、べた褒めした方が恐いから、これで合っているんだと思う。
ドロは一回転して起き上がると黒豹になって、私にズイズイお菓子の入った小箱を鼻で押してきた、私とはあんまお口聞きたくないのね。
「うん、そうだお菓子食べよう? ドーナツも! ミルク持って来たから温めてタツミ」
「うん」
私も起き上がって、ミルクの入った水筒を渡せば、タツミは真っ白い表面を見つめて目を光らせた、水筒の底から一瞬でコポポっと沸騰の気泡が沸く。
紅茶の茶葉を水筒に入れれば、葉がゆっくり沈んで良い香りがして、少しづつ白が茶色に色づいていく。
巾着に入れてきた茶色い角砂糖をカップに転がして、いい頃合いに葉が蒸れたら、網で濾しながらカップに注げばロイヤルミルクティの出来上がり。
タツミがカップに唇を寄せて、湯気で揺れるまつ毛が格好良かった。
「美味しいネネ」
「ありがとう大好き」
キスして、黒豹ちゃんいい子にお座りして待ってるから、前に置かれたお皿に、とりあえずお星さまのお砂糖やチョコレートで飾り付けしたドーナツを置く。
それでドロが持って来た小箱を膝に乗せた。
「これ、ドロが持ってきてくれたんだよ」
「へえ、ドロが?」
「…………」
黒豹ちゃんじっと見てきて、ピアスがたまに揺れる。
「うん、手作りなんだって」
「ピピ!」
「ヨ?」
ピヨも気になるのか覗きこんできて、パカっと開ければ。
「あ、クッキーだ。美味しそう!」
「ああ……これは」
私がタツミと作る形が歪なのじゃなくて綺麗な艶々なクッキーが箱にいっぱい入っていた。
「私もクッキー作るよ! えっとー卵とバターと小麦粉で作れるんだよね?」
タツミは一つ摘まんでクッキーを見つめた。
「これはプニャーニキって豹の家庭の代表的なクッキー菓子、材料は強力粉、ライ麦粉、蜂蜜、スメタナ、ヨーグルト、バター、卵、シナモン、カルダモン、生姜、丁字、ナツメグ、重曹、レモン果汁、塩、砂糖、後好みでドライフルーツ」
「ネネ作るクッキーと全然違う!!」
これをクッキーと呼ぶなら、私のはもはや小麦粉焼いただけって名前に変更した方がいいんじゃないかってくらい手が込んでるよ! 私も一つ貰って観察! ああ、なんかちょっと私が作るクッキーより重みがあるかも? なんて思った。
とりあえず口に入れてふわって蜂蜜と色んな匂いがする、サクッと噛んだら口の中にスパイスの香りが広がって、凄い! 小麦粉焼いただけとは全然違う!!
「へえ!! 私甘いだけのクッキーしか知らなかったから、初めての味! 美味しい」
「うん美味しいドロ。懐かしい味、ありがとう」
黒豹ちゃんはタツミの周りウロウロソワソワしてたけど、兄様が笑うと肩にグリグリ額擦りつけて、顔撫でてもらってクッキー貰って、嬉しそう。
クッキーを小さくして手の平に乗せればピヨはパクパク啄ばんでた。
変な味するけどウマイ! って言ってて、ひよこの口にはスパイスはまだ早かったらしい。
流星を眺めながら、ドーナツも食べて、ドロはタツミが作ったドーナツだから喜んでた、食べ終わればピヨは流星そっちのけで、ドロ追いかけて遊びだして、あ、いいな! 私も混ざりたい!
って思ったけど今日は流星を見に来たのよネネ! と首を振る。む、むしろもう私トゲトゲ経験済みの大人のレディだし? そういう子供みたいなのは? 止めたのよ。うん、全然面白そうじゃないんだから! ってタツミの隣でじっとする。
真っ黒なフリフリ尻尾追いかけて、飛び付いて、逃げて、噛み付いてチョヤチョヤってして追いかけてパンチパンチして…………。
「行っていいよ」
「う?」
「尻尾パタパタしてる」
「うう……」
「ここは俺が片付けておくから」
「全然楽しそうではないけど、ちょっとだけ様子見てくる!! ちょっとだけ!!! 別に遊んだりはしないから」
「うん」
エイッ! って黒猫になって特攻だ、流星が降り注ぐ空の下で思いっ切り走って遊んで、超楽しい!!!
ただドロはタツミと違って喉噛ませたりとか、もちろん手は抜いてくれてるけど勝たせてはくれないから、こっちも結構マジになってスピードが上がる魔法とかかけてもらって本気モード。
ピヨが応戦してる間にピアスに噛み付いたら、顔ブンブンされて振り落とされるぅ!! ってなって、耐えきれなくて体が吹っ飛んだ、あ、受け身……って間に合いそうになくて目を瞑ったら大きな手が受け止めてくれた。
「ちょっと激しいなドロ、ケガする。相手は子供」
「…………」
「出して」
ドロが口を開けば泣きながら涎まみれのピヨが出て来て、食べられるとこだったぁ! ってタツミの肩に飛んでった、ドロはごめんなさいって耳を下げてる。
せっかく遊んでたのにしょんぼりしちゃったから空気を変えないと! あ! そうだ!! 私さっき大発見しちゃったんだ!! って抱っこされてたタツミの腕から抜け出た。
シュタッ! って着地して見て見て!! ってタツミの足元クルクルしてドロの隣に並んだ。
ほら! お揃い!!!
私とドロ、二人で真っ黒お揃いだよ! 仲良し真っ黒!!
どう? ってしたのに、タツミは瞳孔開いちゃって、ドロはお前止めろよ! 何兄様煽ってんだ!! 僕は嬉しくないし! って拒否ってる、ピヨは慌てながら、豹柄と黒猫の方があってるよ!! って。
あ…………え? だって、ドロって弟だし……え? 嘘、タツミこれもヤキモチ焼いちゃうの?
ってとりあえず、ミィって鳴いて、何でもないよ、今の嘘! って足引っ掻きに行ったらタツミは片手で抱き上げてくれた。
「そうだよ、ネネを見た時可愛いな、いいなって思ったのはドロが黒豹でその姿が美しく好きだったから。そういう所で黒がスッと俺に入ってきたんだと思う」
「ニイ」
何だ、別にタツミ怒ってなかった、それでドロに。
「家系に黒はいなかったから、仲間ができて良かったなドロ。嬉しいか? ん? ん?」
あ、やっぱちょっと気にしてる? ドロは全然嬉しくないぃい! って激しく左右に首を振ってる。
なんてしてたら、頭上の流星は止んでいた。
「そろそろ帰ろうか」
タツミが言えば、黒豹はまた一回転して、軍服に戻った、帽子を被ってマントを靡かせる。
「じゃあ僕は町のパトロールに行ってきます」
「え? こんな時間から?」
「あ? こんな時間だから大切なんだろ、誰もやっていない廃下層のパトロールは」
「…………」
そっか、初めてあった時も、ドロはパトロールしてたのかななんて思い出して、最後にドロは指先から眩ゆい光を豹座に向かって放った。
キラッと一番強く輝いて散って、ドロは腰に携えた二本の剣を引き抜くと真っ暗な空を切り裂いて、その中に飛び込む、裂かれた切り口が閉じて、暗闇の彼方に姿を消した。
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