【R18】黒猫彼女を溺愛中【著 CHIYONE】

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ネネの朝

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 美味しそうな匂いに意識が冴える、眩しい朝日が瞼を赤くさせて、ゆっくり目を開けた。
 ソファーの上に置かれたクッションで目が覚めて、キッチンに立つタツミの背中が見える。
 両肩にピヨを乗せて二人は同時に右に左に体を伸ばしたり縮めたりしながら歌ってる。
 たまに肩を払われて落とされてるけど、負けじとまた肩に戻ってきて歌ってる。

 昨日はいっぱい冒険したし、ちょっと寝すぎちゃったかも? あくびして顔洗ってブルブルしたらチリンって鈴が鳴ってタツミがこっちを向いた。

「おはようネネ」
「ミィ」
 伸び伸びしてジャンプして降りて、直ぐにタツミの足元にすり寄った、耳の後ろのとこいっぱいタツミの擦りつけるのが朝一番の私の仕事だ。
 ピヨは鳴きながら飛んできて、二人で私の体頭で押してきてゴメンゴメンっていっぱい謝ってくる、ピヨのせいじゃないよって私も頭で押し返して、涙目の二人のお顔をちょっと舐めてあげたらタツミに蹴り飛ばされていた。
 私のせいで仲違いしてたらどうしようって思ってたけど仲良しみたいで一安心。
 いつも通り差し出された手の平から肩に駆け上がって、タツミの顔いっぱい舐めにいく、タツミの襟足いい匂いするから、たくさん嗅いでふにゃってなる。好き好き、は絶対言わないけど勝手にグルグル鳴っちゃう。
「ネネ大好き。体は痛い?」
「にゃあ」
「良かった、昨日は無理させてごめん」
「にゃ!」
 タツミの耳下がってて、むしろ私が迷惑かけたし、わがまましたのにってほっぺにいっぱいスリスリして違うよって言う。
 目合ってキスして、昨日は黒い騎士の服だったから普通のお洋服着てるタツミ変な感じだ、制服のままでエッチしたの、思い出すだけでてへへってなる。

「スープはもう出来てる、今ベーコンと卵を焼く所だった。目玉焼き? オムレツ?」
「みゃあ!」
「じゃあ、チーズをたっぷり入れよう」
 片手鍋にはピヨ達の大好物のひよこ豆のトマトスープが湯気を立てていた、タツミはバケットに山積みにされている卵を2つ掴むとボールの縁で割って口の落として飲み込んだ。
「ミィ?」
「またうちの息子がすみませんでした!! って夜通し生んでくれて今日は卵がたくさん採れた」
 そっか、私も飲む! って口開けたけど、小さい子はお腹壊したら困るからってキスされて生卵食べさせてもらえなかった。

 熱々に熱したフライパンに厚切りのベーコンが音を立てながら跳ねて、その横のフライパンにバターを落とす。
 目が光れば火が点いて、高温の熱にじゅわじゅわバターが溶けていく、網で濾された生クリームと塩コショウ、少しメープルの入った卵液がフライパンに流し込まれて、ヘラが踊るみたいに卵を混ぜる。半熟になったら一旦濡れた布巾にフライパンを置いて、一掴みのチーズ。
 あまじょっぱいトロトロチーズのオムレツ大好きで体勝手にピョンピョンしちゃってニャーニャー喉鳴らしながらタツミの肩を右に左に行ったり来たりしてしまう。
 ツルツルに整形された綺麗なオムレツは芸術品だ。

 表面が香ばしく焼かれたベーコン、その横にぷるんとオムレツが添えられて手作りのトマトソースをたっぷりかける、朝採った野菜とトマトを飾れば、野菜以外大好きな朝食プレートができた、もう興奮で訳わからなくなって、うーうー言いながらタツミのお耳がじがじしてしまった、だって昨日夕飯食べてないしお腹ペコペコなんだ。
 お皿をテーブルに乗せれば、そこには既に、お口に入れたら溶けちゃうフレンチトーストが置かれててタツミは蜂蜜を回しかけてる。
「さくらんぼのジュースもある」
「ミイ!!」
「ミルクプリンも作った」
「ニャア!」
「それとネネに似合う可愛いワンピースを買ったから、まずはお着替え」
 ご飯食べたくてソワソワチラチラテーブル見ながらお洋服着せてもらって、終わったらイス叩いて早くタツミに座って座ってする。
 タツミ座らせて抱っこしてもらって、ちゅっちゅっていっぱいする。しゅきしゅき! 
 おっきな音でお手てばっちんしていただきます! それで待ちに待ったオムレツを口に運んでもらった。

「ふわ……おいしーの」
「よかった」
「次は?」
「フレンチトースト!!」
「うん」
 一晩寝かされたフレンチトーストはトロトロでスプーンですくう程だ、蜂蜜が良い香りで甘くって目の奥じわじわしてくる。
「とろけるぅ」
 お胸にスリスリしてゴロゴロしたら、タツミはキスして次の一口をすくう。
「口にあってよかった」
「人になった特権だね!」

 甘酸っぱいさくらんぼのジュースも甘々なフレンチトーストも、もし猫のままだったら、私達はこの魅惑の甘みを知らなかったんだ、人になったおかげでこの脳を焦がすもっと欲しくなる甘みを知った。
 ピヨ達は上手にスープ食べさせ合ってて出汁にもなってる鶏肉がウマイ! って言ってる。

「ネネ」
「う」
「ネネ」
「や」
「野菜食べて」
「や」
「いい子だから口開けて」
「ネネこのねばねばする葉っぱ嫌い」
「ダメ、栄養、食べて」
「や」
 こんなに豪華な朝食なのに、タツミはいつもこのねばねばするモロヘイヤの小鉢だしてくるの。
「ネネ」
「や」
「ネネ」
 緑のスプーン口まで持ってきて、体を反らせて逃げるけど背中タツミだし、逃げ場がなくて一口だけって観念して食べる。
 なんか体にいいんだって、いつもそう言って食べさせてくるんだからあ!
「葉酸がたくさん入ってる、赤ちゃん発育を支える大事な栄養素」
「赤ちゃんって……そんなの」
「いつできても可笑しくないから」
 なんて言ってるけど、今まで奥までしてくれなかったけどこれ食べさせてきてたよね?!

 タツミはベーコンを一口に切り分けて、それをさらに小さくすると、ピヨのお皿に乗せる、フレンチトーストもサラダも嘴で啄ばみやすい大きさにしてピヨのお皿に移してる、その上私のご飯もあげてるから自分は食べる暇がない。
 私の口拭いたり飲み物注いだり、ピヨが溢したスープ拭いたり、直ぐふざけ始める二人を注意したり、私に良く噛んでって言ってきたり…………お父さんかな。

 少しお腹が満たされて、今度は私がタツミにご飯をあげる番だ!! とスープ皿持って振り返った。

「ほら、しゅーぷでちゅよ豹ちゃん」
「…………」

 その顔は怒っているのか困っているのか、お口にスプーン近付けてもタツミは口を開けない。
「どちたの? あっちゅくないよ? ネーネがフーフーしたからあーんちて?」
「…………」
 下唇トントンすれば、薄く唇が開いて犬歯を避けてスープを飲ませたら、タツミは目を逸らしちゃった。
「豹たんおいち?」
「…………うん」
「いい子でちゅね、いっぱい食べておっきくなろうね? はい次もあーん」
「その…………」
「何でちゅか?」
「その話方何?」
「え?」
 またスープをすくって口に持って行けばタツミは口を開けてくれたけど、ちょっと顔赤い。
「ああ、何か……えっと赤ちゃんできたらこうやってご飯あげるのかな? ……て?」
「そう」
「ほら豹ちゃんいっちょにおいちおいちしよっか、あーんして?」
 何だか、抱っこくれてるタツミの体が心なしか体温一度上がっている気がする。同じようにパンやベーコン口に持っていってタツミは素直に食べてくれた。
 で、気付いたらピヨピヨピヨピヨ~って二人が私達の真似してて、ヨヨが顔を赤らめてるから、何で顔赤いの? って聞いたら、赤ちゃんプレーで興奮しているタツミを再現してるんだって。ピピは完全に一致! って言ってる。
「へえ、赤ちゃんプレー……」
「…………」
 緑の目が殺気を放ちながらベーコン切ってたナイフで黄色い体をギコギコ刻み始めて、二人は朝から食卓で悲鳴を上げていた。

 昨日はどうなるかと思ったけど、平和の朝が来て今日も幸せ。
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