3 / 49
君。2
しおりを挟む
僕はそんなクラスの奴らが大嫌いになったし、スーパーマンだった桔平が委縮していく姿を見るのが苦しくて、帰り道では無理にでも明るくして色んな話を振ったよ。
それである日、いつもの帰り道でその日あったテストの話題になった。
案の定、桔平は満点取って僕は桔平のテストを頭上でヒラヒラさせながら自分の事のように得意気になってた。まぁ僕は30点だったんだけど、
「すげーすげーっ!!」って連呼したら桔平は「そうでもないよ」って愛想笑い。
「そんな事ないって!! だって抜き打ちだったじゃん! やっぱお前は天才だよ!」
「天才じゃないよ」
「お前は天才だって!」
「止めてよ」
「何でだよ、天才だろ」
「違う!」
突然風が吹く、桔平の体が強張って、
「俺は天才じゃないってばっ!!」
「なっ!?」
指先が震えた。
否定するからむきになったのは悪かった、でも間違ってないだろ、お前は頭いーじゃん天才じゃん。でもあの温厚な桔平が唐突に声を荒げたからビビった。黙っていると桔平は語気を強めたまま。
「だって……、だって! 高い塾行ってるんだからこんな点数、当たり前だ!!」
「……」
掲げたテストが渇いた風に靡く、茶化したつもりなんてなかったけど、謝らないといけないよな。桔平はランドセルの肩ひもを強く握って下を向いた。怒らせたかなって焦った、桔平を覗き込んで、
「あのさ…きっ」
「ってお母さんだったら言うと思う……」
顔を上げた桔平はいつもの苦笑いだった。
その顔に一時の安堵感を得たけど、なんだか僕は凄くムカついた。
あぁ、何に? って聞かれても具体的にはわからないんだけど、そう、わかんないからどうにかしたくて、そのまま答案用紙持って母さんがパートしてるスーパーに行ったんだ。
桔平は急に走り出した僕にどうしたの? と言いながら追いかけてきた。
息を切らして到着したスーパー、店内を見渡すと品出ししてる母さん発見、僕は一目散に駆け寄った。
「母さん!!」
「ん? あら梧、おかえりーと言いたいけど、なぁに? い! ま! 仕事中ッ!!」
「どうせ暇だろ?!」
「ちょっと、どうゆう意」
「これ見てよ! ほらッ! テスト! 満点ッ!」
「ん?」
言葉を遮ってテストを掲げると、母さんは屈んだ。桔平は僕の隣でビクッと体を反応させる。
「あれー? おぉ!! 凄い!! 凄いじゃん!! ……ってあれ? 凄いけど、これアンタのじゃないじゃん!!」
「わかってるよー! だけど、ヤバイだろ?」
「ヤバイて言葉は使っちゃダメって言ってるでしょうが」
「はいはいうるさいな、でもヤバいもんはヤバイんだって」
「ハハハ…」
興奮する僕の横で桔平はきっとまた苦笑いしてたと思う。母さんは呆れた目で、
「自慢するなら、自分のテスト自慢してよ、一瞬驚いちゃった」
フンっと大きく鼻息をついて、テストから視線を逸らすと桔平の頭に手を乗せた。
「ヤバイのはこっちの子か」
「え? あ、……ありがとう……ござい、ます?」
桔平は小さな声でそう言った気がする、母さんは優しく数回手を上下させると、その手を今度は僕の頭に置いて、ご利益ご利益って乱暴に擦ってきた。
「やめろよ!」
「はいはい、じゃあこれ」
恥ずかしくなって僕が手を振り払うと、母さんは首にかけたネームプレートの裏に忍ばせてあった500玉を握らせて笑う。
「次はあなたも自慢できる点数をお願いします」
「え? いいの?!!」
「お友達に感謝ね?」
「うん! 桔平ありがとー!!」
「え? べ、別に……」
500円玉と他人の満点のテストを振りかざし歓喜する僕を桔平は照れながら見ていた。そりゃそうだ、だって店中に響き渡る声で叫んでいた気がするもんな。
僕達はそのままスーパーで普段じゃ買えないようなお菓子を買って飛鳥山まで行くと二人で分け合って食べた、冗談をたくさん言った、好きな人の話もした、桔平は教えてくれなかった、怒った、笑った、恥ずかしくなって、また笑う、遊ぶ、走る、隠れて、話して、また走る、お菓子を食べる、手を繋いだりもした、また笑った。
すげえ楽しかった、きっと……桔平も楽しかったと思う。
それで、話を学校に戻すんだけど、相変わらず中山の体罰は続いていた。
少し整列が乱れただけで足蹴っ飛ばしてきて校庭10周とか、露骨に無視とか、給食食べさせてもらえなくて、最後の3分で全部食えって怒鳴って、チャイムが鳴ったら強制終了。もちろん食べきれるはずない、本当マジ意味わかんね……まぁ大半が桔平絡みだったけど。
そんな中、図工の時間に紙粘土で好きな物作るって授業があって僕は犬を作って桔平は手の模型を作った。
僕は図工が好きだった、そこだけは桔平にも負けない自信があった。
出来上がった作品を見てクラスの皆も上手いって褒めてくれたよ、桔平の作品はお世辞にも上手とは言えないけど、いつもの苦笑いを浮かべながら「ご利益あるかもよ?」なんて、作った手で僕の頭を撫でてきた。
唯一の僕の見せ場ってやつだな、それが勉強の必要のない図工なんて格好悪いかもしれないけどさ、でも桔平はバカにしたりしないで耳の形や色の塗り方を褒めてくるんで、逆にこっちが恥ずかしくなったくらいだ。
それで皆で笑って楽しい時間だったのに事件が起きたんだ。
握り込めないような大きな引き金が突然音もなく引かれた、それは掃除の時間だった。
出来上がった粘土の作品は教室の後ろにあるロッカーの上に置いてあったんだけど、ロッカーの上を掃除する時落としちゃったんだよ。
桔平の作品を……。
それである日、いつもの帰り道でその日あったテストの話題になった。
案の定、桔平は満点取って僕は桔平のテストを頭上でヒラヒラさせながら自分の事のように得意気になってた。まぁ僕は30点だったんだけど、
「すげーすげーっ!!」って連呼したら桔平は「そうでもないよ」って愛想笑い。
「そんな事ないって!! だって抜き打ちだったじゃん! やっぱお前は天才だよ!」
「天才じゃないよ」
「お前は天才だって!」
「止めてよ」
「何でだよ、天才だろ」
「違う!」
突然風が吹く、桔平の体が強張って、
「俺は天才じゃないってばっ!!」
「なっ!?」
指先が震えた。
否定するからむきになったのは悪かった、でも間違ってないだろ、お前は頭いーじゃん天才じゃん。でもあの温厚な桔平が唐突に声を荒げたからビビった。黙っていると桔平は語気を強めたまま。
「だって……、だって! 高い塾行ってるんだからこんな点数、当たり前だ!!」
「……」
掲げたテストが渇いた風に靡く、茶化したつもりなんてなかったけど、謝らないといけないよな。桔平はランドセルの肩ひもを強く握って下を向いた。怒らせたかなって焦った、桔平を覗き込んで、
「あのさ…きっ」
「ってお母さんだったら言うと思う……」
顔を上げた桔平はいつもの苦笑いだった。
その顔に一時の安堵感を得たけど、なんだか僕は凄くムカついた。
あぁ、何に? って聞かれても具体的にはわからないんだけど、そう、わかんないからどうにかしたくて、そのまま答案用紙持って母さんがパートしてるスーパーに行ったんだ。
桔平は急に走り出した僕にどうしたの? と言いながら追いかけてきた。
息を切らして到着したスーパー、店内を見渡すと品出ししてる母さん発見、僕は一目散に駆け寄った。
「母さん!!」
「ん? あら梧、おかえりーと言いたいけど、なぁに? い! ま! 仕事中ッ!!」
「どうせ暇だろ?!」
「ちょっと、どうゆう意」
「これ見てよ! ほらッ! テスト! 満点ッ!」
「ん?」
言葉を遮ってテストを掲げると、母さんは屈んだ。桔平は僕の隣でビクッと体を反応させる。
「あれー? おぉ!! 凄い!! 凄いじゃん!! ……ってあれ? 凄いけど、これアンタのじゃないじゃん!!」
「わかってるよー! だけど、ヤバイだろ?」
「ヤバイて言葉は使っちゃダメって言ってるでしょうが」
「はいはいうるさいな、でもヤバいもんはヤバイんだって」
「ハハハ…」
興奮する僕の横で桔平はきっとまた苦笑いしてたと思う。母さんは呆れた目で、
「自慢するなら、自分のテスト自慢してよ、一瞬驚いちゃった」
フンっと大きく鼻息をついて、テストから視線を逸らすと桔平の頭に手を乗せた。
「ヤバイのはこっちの子か」
「え? あ、……ありがとう……ござい、ます?」
桔平は小さな声でそう言った気がする、母さんは優しく数回手を上下させると、その手を今度は僕の頭に置いて、ご利益ご利益って乱暴に擦ってきた。
「やめろよ!」
「はいはい、じゃあこれ」
恥ずかしくなって僕が手を振り払うと、母さんは首にかけたネームプレートの裏に忍ばせてあった500玉を握らせて笑う。
「次はあなたも自慢できる点数をお願いします」
「え? いいの?!!」
「お友達に感謝ね?」
「うん! 桔平ありがとー!!」
「え? べ、別に……」
500円玉と他人の満点のテストを振りかざし歓喜する僕を桔平は照れながら見ていた。そりゃそうだ、だって店中に響き渡る声で叫んでいた気がするもんな。
僕達はそのままスーパーで普段じゃ買えないようなお菓子を買って飛鳥山まで行くと二人で分け合って食べた、冗談をたくさん言った、好きな人の話もした、桔平は教えてくれなかった、怒った、笑った、恥ずかしくなって、また笑う、遊ぶ、走る、隠れて、話して、また走る、お菓子を食べる、手を繋いだりもした、また笑った。
すげえ楽しかった、きっと……桔平も楽しかったと思う。
それで、話を学校に戻すんだけど、相変わらず中山の体罰は続いていた。
少し整列が乱れただけで足蹴っ飛ばしてきて校庭10周とか、露骨に無視とか、給食食べさせてもらえなくて、最後の3分で全部食えって怒鳴って、チャイムが鳴ったら強制終了。もちろん食べきれるはずない、本当マジ意味わかんね……まぁ大半が桔平絡みだったけど。
そんな中、図工の時間に紙粘土で好きな物作るって授業があって僕は犬を作って桔平は手の模型を作った。
僕は図工が好きだった、そこだけは桔平にも負けない自信があった。
出来上がった作品を見てクラスの皆も上手いって褒めてくれたよ、桔平の作品はお世辞にも上手とは言えないけど、いつもの苦笑いを浮かべながら「ご利益あるかもよ?」なんて、作った手で僕の頭を撫でてきた。
唯一の僕の見せ場ってやつだな、それが勉強の必要のない図工なんて格好悪いかもしれないけどさ、でも桔平はバカにしたりしないで耳の形や色の塗り方を褒めてくるんで、逆にこっちが恥ずかしくなったくらいだ。
それで皆で笑って楽しい時間だったのに事件が起きたんだ。
握り込めないような大きな引き金が突然音もなく引かれた、それは掃除の時間だった。
出来上がった粘土の作品は教室の後ろにあるロッカーの上に置いてあったんだけど、ロッカーの上を掃除する時落としちゃったんだよ。
桔平の作品を……。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
死後の世界が科学的に証明された世界で。
智恵 理侘
ミステリー
二〇二五年九月七日。日本の研究者・橘紀之氏により、死後の世界――天国が科学的に証明された。
天国と繋がる事のできる装置――天国交信装置が発表されたのだ。その装置は世界中に広がりを見せた。
天国交信装置は天国と繋がった時点で、言葉に出来ないほどの開放感と快感を得られ、天国にいる者達との会話も可能である。亡くなった親しい友人や家族を呼ぶ者もいれば、中には過去の偉人を呼び出したり、宗教で名立たる者を呼んで話を聞いた者もいたもののいずれも彼らはその後に、自殺している。
世界中で自殺という死の連鎖が広がりつつあった。各国の政府は早々に動き出し、天国教団と名乗る団体との衝突も見られた。
この事件は天国事件と呼ばれ、その日から世界での最も多い死因は自殺となった。
そんな中、日本では特務という天国関連について担当する組織が実に早い段階で結成された。
事件から四年後、特務に所属する多比良圭介は部下と共にとある集団自殺事件の現場へと出向いた。
その現場で『heaven』という文字を発見し、天国交信装置にも同じ文字が書かれていた事から、彼は平輪市で何かが起きる気配を感じる。
すると現場の近くでは不審人物が保護されたとの報告がされる。その人物は、天国事件以降、否定される存在となった霊能力者であった。彼女曰く、集団自殺事件がこの近くで起こり、その幽霊が見えるという――
Springs -ハルタチ-
ささゆき細雪
ミステリー
――恋した少女は、呪われた人殺しの魔女。
ロシアからの帰国子女、上城春咲(かみじょうすざく)は謎めいた眠り姫に恋をした。真夏の学園の裏庭で。
金木犀咲き誇る秋、上城はあのときの少女、鈴代泉観(すずしろいずみ)と邂逅する。だが、彼女は眠り姫ではなく、クラスメイトたちに畏怖されている魔女だった。
ある放課後。上城は豊(ゆたか)という少女から、半年前に起きた転落事故の現場に鈴代が居合わせたことを知る。彼女は人殺しだから関わるなと憎らしげに言われ、上城は余計に鈴代のことが気になってしまう。
そして、鈴代の目の前で、父親の殺人未遂事件が起こる……
――呪いを解くのと、謎を解くのは似ている?
初々しく危うい恋人たちによる謎解きの物語、ここに開幕――!
復讐の旋律
北川 悠
ミステリー
昨年、特別賞を頂きました【嗜食】は現在、非公開とさせていただいておりますが、改稿を加え、近いうち再搭載させていただきますので、よろしくお願いします。
復讐の旋律 あらすじ
田代香苗の目の前で、彼女の元恋人で無職のチンピラ、入谷健吾が無残に殺されるという事件が起きる。犯人からの通報によって田代は保護され、警察病院に入院した。
県警本部の北川警部が率いるチームが、その事件を担当するが、圧力がかかって捜査本部は解散。そんな時、川島という医師が、田代香苗の元同級生である三枝京子を連れて、面会にやってくる。
事件に進展がないまま、時が過ぎていくが、ある暴力団組長からホワイト興産という、謎の団体の噂を聞く。犯人は誰なのか? ホワイト興産とははたして何者なのか?
まあ、なんというか古典的な復讐ミステリーです……
よかったら読んでみてください。
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
四次元残響の檻(おり)
葉羽
ミステリー
音響学の権威である変わり者の学者、阿座河燐太郎(あざかわ りんたろう)博士が、古びた洋館を改装した音響研究所の地下実験室で謎の死を遂げた。密室状態の実験室から博士の身体は消失し、物証は一切残されていない。警察は超常現象として捜査を打ち切ろうとするが、事件の報を聞きつけた神藤葉羽は、そこに論理的なトリックが隠されていると確信する。葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、奇妙な音響装置が残された地下実験室を訪れる。そこで葉羽は、博士が四次元空間と共鳴現象を利用した前代未聞の殺人トリックを仕掛けた可能性に気づく。しかし、謎を解き明かそうとする葉羽と彩由美の周囲で、不可解な現象が次々と発生し、二人は見えない恐怖に追い詰められていく。四次元残響が引き起こす恐怖と、天才高校生・葉羽の推理が交錯する中、事件は想像を絶する結末へと向かっていく。
マクデブルクの半球
ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。
高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。
電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう───
「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」
自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。
アナグラム
七海美桜
ミステリー
26歳で警視になった一条櫻子は、大阪の曽根崎警察署に新たに設立された「特別心理犯罪課」の課長として警視庁から転属してくる。彼女の目的は、関西に秘かに収監されている犯罪者「桐生蒼馬」に会う為だった。櫻子と蒼馬に隠された秘密、彼の助言により難解な事件を解決する。櫻子を助ける蒼馬の狙いとは?
※この作品はフィクションであり、登場する地名や団体や組織、全て事実とは異なる事をご理解よろしくお願いします。また、犯罪の内容がショッキングな場合があります。セルフレイティングに気を付けて下さい。
イラスト:カリカリ様
背景:由羅様(pixiv)
10年後の君へ
ざこぴぃ。
ミステリー
2020年8月。千家春彦はある事がきっかけで、2010年8月にタイムリープする。
そこで自殺したはずの同級生、南小夜子から連絡が入る。それは春彦の人生を狂わせていく事になる……。
………
……
…
――無邪気に笑う真弓を見て、なぜか懐かしさを感じる。僕の元いた世界は2020年。今から10年後だ。でももうほとんど覚えていない。今いるこの世界に元から産まれ育った感覚さえある。
車椅子を握る手に力が入る。この世界でも真弓と2人で歩んで行きたい……。
「あっ!いたいた!おぉい!真弓!春彦!」
「美緒!遅い!どこまでトイレ行ってたの!もう!」
「ごめんごめん!あまりに混んでたから道路向かいのコンビニまで行ってた!」
「おかげで私達はめでたく結婚しましたぁ!」
「え!?ちょっと!何その指輪!!春彦!もうプロポーズしたの!早くない?」
「してないしてない。それはくじ引きの景品だ」
「あぁ、そうなんだ。はいはい良かったでちゅねぇ、真弓ちゃん。よちよち」
「春彦君!何でバラすの!もう!」
「えぇぇぇ……」
「ぷっ!あははは!」
こんなに笑う真弓を見るのはいつぶりだろう。胸の奥で熱くなるものがある。
………
……
…
「手を!!手を伸ばせ!!もう少し!」
「もう駄目……私の事はもういいから……春彦君だけでも……お願い――」
「うるさい!!もう少し――!!」
「うぅ……!!」
彼女はもう助からない。そんな気はした。それでも僕は必死で手を伸ばしている。
それは罪滅ぼしなのか、自己満足なのか……?
――そして彼女は最後に笑って言った。
「ありがとう……」
と。
「いやだ……いやだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
いつか夢で見た風景がデジャブとなり目の前で起きている。「夢なら覚めてくれ!」そう願うがそんな奇跡も起こることは……無かった。
◆◇◆◇◆
執筆2023.11.17〜12.25
公開2023.12.31
本編
『10年後の君へ』
著・雑魚ぴぃ
番外編
『10年前のあなたへ』
著・桜井明日香
挿入歌
『Akaneiro』『光が見えるとき』
著・桜井明日香
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる