銀のオノ、金のオノ

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8、きーちゃんの初めては

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 私がアウルの代わりなるとか、そういう意味はなかったし、その首輪を着ける趣旨も言っていません。
 だって私もよくわかっていないもの。
 でも、何でだか、もっと一緒にいたいというか……うん、言葉には言い表せない。
 でも伸ばした首に首輪を宛がわれて、何も言わずに淡々と首輪を巻いてくる銀君に感じた事ない緊張と胸のバクバクが止まらなくて、キュッてベルトの穴を閉められた時、心臓が止まりそうで、目から涙が零れ落ちそうで、我慢して息を吐けば頭を撫でてくれた。
「いいこだね」
 優しい低い声に心の奥から凄く落ち着いたんだ。アウルにもよく言ってた。

 自分の首に真っ赤な首輪がかかって自分で掴んで、ドキドキした変な感じ。
 眼鏡がなくてまともに銀君の顔も見られないでいたら、銀君はソファーに座り直して私を膝の上に乗せた。

 昔からだけど銀君はおっきくて、見下されるとちょっと震えてしまう。
 体が強張ってたらスルッと背中に温かい手が滑って、セーラー服を撫でくれてゾクゾクしました。
 唇をきゅうって噛みしめて、ホクロのある切れ長の目を一所懸命見つめる、顔が寄って怖くて思わず目を瞑る。
 銀君の顔は私とぶつからずにすれ違って、耳に吐息が当たった。

「キコ」
「ひゃ」

 ぶるって全身粟立って、耳に唇がくっついてきて力が抜けてしまった。
 何かされた訳じゃない、その後も体撫でられながら名前呼ばれただけ、湿った甘い声が響いてくるから、もう頭の中可笑しくなって、従わないとって無意識に脳が反応してしまう。きっとこの時ご主人様の声を刷り込まれたのです。

 ヌルって何かが耳の中に入ってきて体に力が入らなくて、銀君の大きな手に顔を支えられながらされるがままで、優しく私を呼んでくれる声に脳の奥まで蕩けてしまって自分がどんな声を出していたのか覚えていません。
 無抵抗に銀君のネクタイを引っ掻いて、感じた事ない快感に体を捩らせていたら首輪の内側に中指を差し込まれてグイッと顔を連れて行かれました。
 目を合わせた瞬間に唇が重なって、私のファーストキスはディープキスでした。
 口全部食まれて、ついてけなくて私が犬なはずなのにビクビクしちゃってなにもできません。
 必死に制服を掴んで体勢を整えたいけど、頬にあった大きな手がいつの間にか後頭部を押してて喉の奥まで犯されそうな濃いディープキスでした。
 舌が絡んで、こんなの知らないのに嫌じゃなくて、顔の角度を変える度に部屋に響く銀君のかすれ声が心地いい。
 初めてなのに、なぜか緊張よりも心も体も安心して、今までの涙なんて忘れてしまいそうで、私も必死に幼馴染の舌を追った。



 ガチャッ。




 って音がしたのは私が銀君の名前を呼ぼうした時だった。
 胸とか下半身とかジンジンしてて、はしたないけどもっと触って欲しくなってた。
 でも玄関が鳴って、真希子さんが帰ってきた事に気が付いて私達はいつものお隣さんに戻った。




 それでまあ、現状までくるのに色々ありましたが、その話は機会があれば話します。

 あの日、真希子さんに顔赤いけどきーちゃん大丈夫? って聞かれて銀君が先に大丈夫だよって答えたんだ。



 まあ、そんな回想です。

 今はベッドで首輪眺めている所です。
 これも卒業しなきゃいけないだって自分に問いかけてます。

 だって、出会いは幼馴染。
 きっかけは両親の押し付け。
 そして家族の死を介しての絆。

 ざっくり言ってますよ? もっと細かい話あるけど、未練がましいじゃないですか。あれがどうとかこうとかって。
 だから、大まかに言えばこういう事でしょ? 私達の間柄って。
 隣に生まれたから出会ったし、銀君が一個年上だったからお世話役だった。時にこの世を去った家族の繋がりで色々してしまった。
 それで漫画の世界では両想いハッピーエンド展開きそうですが、私達は違うんです。


 だって



 だって





 だって、銀君好きな人、ブロンド長身ミラクルパーフェクトボディです。知ってますか、ライザップって痩せられてもおっぱいは大きくならないんです。知らないでしょう? YES、高須はお胸おっきくできても潜在的な骨格までは変えられないんです。

 だから、この首輪の時間も私が辛いとか銀君が寂しいとか……そういう為の埋められている時間だんだと思います。

 いやいや、好きでもない人にそんな事しないっしょって意見もあるかと思いますが、現に銀君とセックスしてません。

 隠しても仕方ないから言います。

 そういう関係なんです。
 何か、やっぱりそういう一線は越えない、私達はそういう関係なんでしょうね? だから……。
 だっていつでも銀君がしたいなら、出来る状況だけどしないんだから、そういう事なんです。

 ので、そろそろ舵を切らないといけないかなって思ってます。
 それは、真希子さんがアウルが旅立ってもう10年も経つんだってお盆の野菜を作ってる時言ってたからです。

 そして、私達ももう子供じゃない。

 進まないといけないんだって思って、思って、決意して、できなくて。
 結局首輪をしてしまうけど、でもこんな曖昧な関係をアウルの望んでいないだろうから、どうにかしないとね?
 だって銀君は無口だけど優しいから、なよなよしている私を前にハッキリ言えないんだ、ここは私が先に彼氏を作るとか? しないと。
 できるのか? 正直いらないけど……でも、それもそうだ、銀君がいて辛い事あっても慰めてくれちゃうから必要ない、になっちゃってるだけで、もし一人だったら心の支えになってくれる人が欲しいはずなんだ。

 そっか、そう考えたら銀君の心の支えってなんだろう………うわ、やだ、最悪じゃないですか。
 自分の気持ちばっかり温めてもらって銀君が辛かった時に何にもできてない。
 お部屋においで? って言われたらただただ気持ち良くなってただけだった。
 そう考えたら、銀君の為にも自立しなきゃって強く頷いた。



 のに、やっぱり今日は首輪を抱いて寝てしまった。
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