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7、メシルとおかえり

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 家まで連れて行って、の言葉に俺は無言でコクコク頷いてたんだけど、電車が来て、メシルは「あ、電車」って俺の膝をピョコっと降りて、おい、お前寒くないのかよって突っ込みたくなるスケスケのワンピースでホームの白線まで駆け寄った。

 もちろん、電車が来たからそれなりに人もいるし、電車の中にも人はいる、メシルは電車に乗るの初めてーって乗り込んで、周りの人、え? 何だこいつってなってる、うん、僕もなってる。

 中吊りを見てフムフム、液晶パネルを見てフムフム、優先席のイラストを見て、
「ああ! なるほど! 言葉が分からなくても絵でこの席が必要な人が分かるようになっているんです? ほうほう」
 って止めてほしいんでけど、僕の服引っ張って言ってくる、胸の下の位置位で金髪が揺れて、女神……? なんて言ってたけど、少女のようにしか見えないし、服装も目立ちすぎてるんだよ! 僕が変な服装させてる人だって思われないかな!?

 それで、電車を降りて、メシルはホームから車掌さんに手を振るって言うから、そそくさとその場を立ち去ったのだ。
 人もたくさんいるし、上手い事紛れ込んでエスケープできないかなって、んで逃げてみたんだけど、まさかの人が一番多いい改札出た後で掴まってしまったのだ。


「急にいなくなったらメシル寂しいです!」
「ああ、ごめん……でもだって、そのまだ、心の準備が出来ていないと言うか、その」

 袖掴まれて、どうしようまた怒らせてしまったし、さっきよりもっと注目の的!!
 この手離してくれないかなって思って、手を解こうと思ったら、メシルがキッて下から僕を見上げてきて一際大きいな声で、



「どうせ頭の中おマンコの事しかない癖に!」


「え!??? 何何何何、何の話!!? 確かにそういう時期もあったかもしれないけど、今は一日の内4割程度に抑えてるよ!?」
「嘘です! お姉様達が言ってましたもん!」
「ちょっとその、お姉様達がいかなるお姉様達なのかわからないから、何とも言えないけど」
「どうせあなたも、私のおっぱいがないからヤル気がおきないのでしょう?! だから逃げたのね?! おっぱいがないから!!」
「やだ大きな声で止めて!」

 咄嗟にメシルの顔半分を掴んで卑猥な事言う口を止めたら、彼女はモゴモゴって怒ってるんだけど、僕の手の匂いを嗅ぐと、だんだん抵抗を止めて、止めるどころか中指を甘噛みされて小さな舌が隙間を辿った。

「ッ……!」
「んんっ……こたろーの匂いドキドキする」

 手引っ込めて擦る。やっべー! ゾワってするじゃん、何してくれてんだこんなとこで!
 で、

「あ、やっぱりついてくるの?」
「あなたが大丈夫って言うならここでお話ししますが?」
「わかんないけど、ダメな気がするから帰ろ?」
「うん!」

 じゃあ行きましょうってメシルは僕の手を握ってきて、驚いて顔を見れば、何です? ってにこってしてくる、え? 何の詐欺かな?
 これは、どこに振り込め詐欺なのだろうか、いや課金かな?

 駅から徒歩5分のどうでもいいマンション、どうでもいい住人しかいないし、どうでもいい管理人が駐在してて(いっつもゲームしてる)どうでもいい僕が住んでる。

 僕の居住地は9階でエレベーターに乗り込めばメシルは手をブンブン振った。

「なるほどね? だからあなた達日本人は天界に続く階段をちょっと上がらせただけでヒイヒイ言ってエレベーターないのかよおおっとかいうのね! こういう便利な乗り物があるのか~」
「ああ、君って日本に来るの初めてなの? その……女神? だっけ?」

 メシルはボタンに興味津々で一番目立つ非常通話ボタン押そうとするから指先を握って止める。

「もちろん何度も来てますが、転生のご案内なので町を見たりしませんからねえ」
「テンセイの……ご案内……?」

 いや、待てよ待てよ虎太郎君、うん、今日僕股間光ったし、この子変なとこから出てきたし、今日は摩訶不思議な一日だったけど、何かこうやって手繋いじゃってるから普通の女の子みたいで安心してたんだけど、もしかしてこの子、マジものなのか?
 テンセイって転生なのか? 僕がよく、


 ああああーーー異世界で居酒屋でも開いてモンスターや妖精、魔王なんかも魅了しちゃうご馳走にお酒を出して皆で仲良くワイワイするようなとこいきてえ、
「それ、こないだやられてマジムカついたんで止めてもらえます?!」
「脳内に……直接?!!」
 あ、マジ女神なのこの子! 目線を下げれば、口ぷっくーってなってるし。

「あ、何か嫌な思い出だった?」
「せっかくの私が与えた女神の祝福を【世界の水を浄化する】なんて意味不明な使い方して、何もせずに世界が聖水に包まれて平和になっちゃたんですよ! 魔王も直ぐ心を聖水で洗われて優しくなっちゃって、今でもお友達仲良しごっこ異世界で続けちゃって、あああああー面白くない!!!」
「そっか……」

 平和である事が必ずしも女神様にとってハッピーエンドではないんだって知った。

 9階について、玄関の前でメシルは私が鍵開けたい~!! って言う。
 どうでもいい鍵を渡せば。

「盗賊の鍵!」

 って振りかざしてきて、それ一番難易度低い鍵なのに、ドアに差し込んで開ける時は、
「アバカム! (アバン、バーンパレスの正門開扉!)」
 とか、言ってる。

「楽しい? よく知ってるね」
「はい! お姉様達が勇者が戦って時につまんねえから暇つぶしってゲームしてて、私もお膝で見てるんですよ。最近じゃ大神様に見つかると取り上げられますけど」
「へえ、神様にも大きい小さいがあるんだ」
「うーん……よくわからないですが、メシルは大神様の「最近退屈だのー」から生まれた女神です! 絶対の力みたいなのがあって逆らえないのです。普通の神様のその上にいるのでそう呼んでます」
「へえ」

 よく分からんが、何かあの……人と出生の成り立ちが違うのは理解したけど、ちょっと引っ掛かるんだが……。
 玄関に入って、夕方もあって薄暗い、メシルはここが人間の住処! って僕の胸の下でしてる、顎を掴まえて上を向かせたら抵抗なく見上げてくる。

「何です? こたろー首痛いです」
「じゃあ、君ってその大神様とやらが退屈しのぎにならなかったら消されてしまったりするの?」
「…………?」
「だってその理屈、つまらないから作られたんでしょ? なら君がもしつまらない存在になったらいらないって言われてしまうのかなって」
「…………ああ」

 メシルは蒼い瞳を光らせて一瞬目を逸らして、また僕を見る、にこってちょっと苦しそうに笑って。

「正直言うと、ダメダメ続きで飽きられてます。私上手に異世界創生できないし……頑張ってるけど……自分が思うようにいきません、皆やりたい放題です。でも皆最後には私にありがとうって言ってくれるから、私もその世界を温かい光のまま包んで終焉させてしまうの。本当は起承転結ないといけないのだろうけど、ね? ダメダメ女神でせっかくアイテムまでもらったのに、また……失敗しちゃった」
「メシル……」
「あッ、名前呼んじゃダメって言ったよ?」

 アイテムって何の事だか分からない、でもメシルが泣きそうだったのは分かって細い肩を抱き寄せたら、メシルはきゅうっと服を掴んで胸に顔を埋めてきた。
 肩がドクドクって脈打ってるのがわかる、そして僕も便乗して体温が上がる。

 生唾飲み込んで、何だよコレ、正常じゃない、痛い位の動悸だ。唇噛みしめて、止まらない血が沸騰して、目の前のさっき会ったばかりの少女を滅茶苦茶にしたくなるような変な衝動に駆られる、必死になって抑えてるのに、涙目のメシルが胸にすり寄ってくる。

「こたろ? 次どうする? 教えて? 苦しい恐い」
「……キスしていい?」
「キス?」
「こっち向いて」
 顎を指先で叩いたら、メシルの濡れた蒼い瞳と目が合って、心の奥の、頭の奥の、神経の奥の奥の奥まで痺れた。
 ああ、何コレ、知らない、こんなの、知らない。何かに支配されて無理矢理体が動いていてしまう。

「こたッ」
「ごめん」

 気付いたら、メシルの後頭部を掴んで、小さな口に舌をねじ込んでいた。
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