総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

文字の大きさ
上 下
148 / 154
おしまいの後

えっちな写真

しおりを挟む
 わたくし尾台絵夢、只今悩める乙女発動中、仕事でもこんな悩んだ事あったかなーって眉間を擦る。

 擦って揉んで、耳に押し込んだイヤホンをもっとぎゅうううってして、PC画面の再生ボタンをクリックした。
 両耳から華やかな明るいサウンドと優しい女の人の歌声、今が幸せーとかあなたが大好き! 的な歌詞が永遠と続くお歌を拝聴中。
 少し聞いて中止、また眉間が寄っちゃうぜ。思わず溜息漏らしながら。

「この曲もいいんだよねえ」

 って独り言……そしてこれ言うの本日二十回目……そろそろ頭煮え滾ってきて、ゴンッてキーボードの横で倒れてしまったわよ。
 そしたら、顔から離れた所に富士山柄のカップが視界に映った、ふわっと甘いアップルティーの香りと、ほっぺにチュウも一緒に。

「今日も優柔不断が爆発してますね」
「まだ噴火してないよ? かなりマグマはぐらぐらしちゃってるけど」

 袴田君はサラッと私の髪を撫でた後に、PCの再生ボタンを押す。
 私の耳からイヤホンを抜いて顔近づけて自分の耳にインして音楽聞いてる……ち、近いよ……相も変わらずもっさい草食眼鏡に隠されたイケメン無防備に寄せてくるなよ。
 嗅ぎたいけど、変な声出てしまったら恥ずかしいから息止めてる私の謎の努力よ……!!
 もう脳内にイケメン入れるのだけでも止めておこうと瞼をシャットアウトだ! 呼吸を限界まで我慢してたら、袴田君の低い声がした。

「ふぅん、なるほど」
「あッ……どうだった?」

 未だ私は机に顔を乗せたままで離れていく顔を視線だけで追う、袴田君は頷きながらお揃いのカップに入った何かを飲みながら言った。

「ん? 別に」
「別に、とは?!」
「一時間前に尾台さんが悩んでいた曲調とあまり変わらないと言うか……」
「いい曲だった?」
「ああ……はい、そうですねそれでいいです」

 眼鏡直して首傾げられて、何か腑に落ちないぃいい!! けど、実際私ももうどれがいいのかわからなくなってきたんだよ!

 顔上げて、いい香りのするカップ持って一口飲んで、はああ……蜂蜜で甘くしてあるアップルティー最強に美味しいよお! きっと袴田君が淹れてくれたから美味しさも倍なんだな! 今できる最大限の笑顔でお礼しちゃお。

「美味しいよ、ありがとう」

 袴田君は視線を逸らして下を向いて、顔を手で覆いながら答える。

「喜んでもらえて嬉しいです」
「袴田君は? 美味しい?」
「え? ああ、俺のは水道水なんで無味です」
「だから何で一緒の飲まないんだよ」
「いや、尾台さん見ながら飲んでると水でも肉食ってるみたいに美味いです」
「…………」

 それはもう味覚がご病気よ。

 は言わないでおいた。深呼吸して、もう一度PC画面の縁に貼られたプログラムを確認する。袴田君はカップを置いて腕組みしながらプリント覗き込んで、私を悩ますCDアルバムを手に取って言った。

「BGMが必要なのは 1.迎賓(5~6曲)2.新郎新婦入場(1曲)3.乾杯(1曲)4.ケーキ入刀(1曲)5.お色直しの退場(1曲~2曲)6.食事・歓談(5~6曲)7.お色直しの再入場(1~2曲)8.テーブルラウンドなど(1~2曲 ※内容により変動)9.花嫁の手紙・花束贈呈(1~2曲)10.新郎新婦退場(1曲)11.お見送り(1曲)か……今どれの選曲中ですか」

「新郎新婦入場ッ!!!」

「ああ……一番重要な」
「でしょ」
「だから二週間も悩んでるんですね」

 そうなんだよ、袴田君の手にあるウェディングソング100! が私を悩ませているのだ。
 色々聞いてみたいなって曲数多いの選んだらどれも良くなってきて、このアルバムだけじゃない洋楽もJ-popもクラシックもオルゴールもロックもジャズ聞いてみたら全部いい気がしてきて頭噴火しそうなのだ。

 結婚しよう! となって、挙式はできるだけ手作りでしたいのってお願いしたら袴田君は眼鏡キラってしながら、「ぜひぜひ」と賛成してくれた。

 のだが、私とした事が「手伝いますよ」に対して「いえいえ、袴田君はお忙しいでしょうから私が全部やりますよ!」と宣言してしまったのだ。

 おおまかなものを決めたら、土日は式場巡りしませんかって話で雰囲気作りからしたいのに、BGMの一つさえ決まらない。
 招待状に席次表、まだまだ色んなもの作らなきゃいけないのに(ゼクシィ調べ)大丈夫か私。

 頭の中ゴチャゴチャになりながら悩んでたら長い指に眉間を押されてしまった。

「可愛い顔に似合わないです」
「あん、だって」
「俺とする結婚式のBGMに悩んでくれてるって最強に嬉しいから口挟めなかったんですけど、そのせいで新郎を蔑ろにするなんて本末転倒な気がします」
「う」
「もちろん理解してますよ、一生に一度の大事な時間なのだから、最高の曲でスタートさせたいってその気持ちは痛い程分かってます。俺を気遣ってくれてるのも知ってます」
「…………うん」
「でも今ここにいるこの瞬間だって一生に一度しかないんだよ」
「わかってるけどお」

 眼鏡至近距離にきて、唇触れて離れて、目瞑ったらもっと深いキスしてくれた。
 不満とかイライラとか不安とか、ぜーーーんぶ持っていってくれるやつ。
 首の後ろに手を回して抱き締めてってしたら、そのまま椅子から抱きかかえられてしまったんだけど?

「え? 何? エッチするんですか?」
「うん? してもいいけど、尾台さんしたら寝ちゃうから夜にしましょう。ちょっと見せたいものあります」
「見せたいモノ?」
「さっき宅急便来てたんですよ。気が付かなかった?」
「はい」

 そのまま抱っこでちゅっちゅしながら、リビングの抜けて寝室へ、床には段ボールが開いた状態で置かれてた。ベッドに降ろされて、袴田君は段ボールの中から赤いアルバムを出して渡してくれた。

「しっかりしたアルバム……」
「欲しかったんでしょ? 俺の小さい時の写真」
「おおおおおおおおおッ!!!」

 そうそう!! 結婚式のムービーに使うから、写真お願いしてたんだった。

「スライドショーみたいにするんでしたっけ? またそれにもBGM選ぶんですよね」
「うん、あ、そうだね。うわ!! やることたくさん……なのはいいから! 今は写真見たい見たい!!」
「どうぞ」

 真っ赤なアルバムの表紙には【雄太 0歳から1歳】と書かれてて、袴田君は私を抱っこしながら一ページ目を捲ってくれた。

「はい、生まれて1時間後の俺」
「ひゃあああ!! 嘘、可愛いッ!! 赤ちゃん! 袴田君って赤ちゃんだった時あったんだ?!!」
「どういう意味? この状態で生まれてきたと思ってる?」
「わかんない」

 うん、何か可愛いがすぎて変な感想出ちゃった! え?! だって何?!! 眼鏡かけてない(当然)しバブバブしてッ…………!!

 一枚目から刺激強すぎて、思わずアルバム閉じちゃう、顔を上げれば、何か? みたいないつものすかした袴田君ッ!! 

「やだ、どうしようどっちも愛しすぎるぅ!」
「いや、これの進化系が眼鏡なんだから俺のが愛しすぎるでしょ」
「全然分かってないな、お前は!!」

 キスされて、二回目のキスは断って続きのお写真見させて頂きましたが、もう……だめえぇ……可愛いくて可愛くて……どうしよう、もう。

「無垢で愛くるしい意地悪言わないこっちと結婚したい」
「よしアルバム沖縄に送り返そう」
「いやよ!!」

 強制的にアルバム閉じられて、抵抗してこじ開けて、何が嫌なのよ君が好きには変わりないのにぃ。
 とっさに開けた一ページ、アルバムの上には【雄太一歳、初めてのたっち。上手だね】のコメントと、柱につかまり立ちする、ぽよぽよした全裸の雄太ぁ。

「無理無理無理無理無理!!! エモすぎッ!」
「へえ、ちょっとそこで雄太二十八歳全力のつかまり立ち見ます?」
「見ます!」

 そしたら、突然インターホンが鳴った。袴田君は舌打ちして嫌な顔したけど、直に何か思い出したようにニコってした。

「そうだ、そんな皮被ってるつまらない雄太よりもっとエモイのありますよ」
「えええ?! 何?」

 袴田君後ろからいったい位抱き締めてきてキスして耳元で言ってくる。



「ゆっくり服脱がせながら見ましょうね」

「ぎゃ!」
「想像以上なリアクション最高。あのねえ尾台さん、俺もお姉さんに頼んでたんですよアルバム」
「え?」


 夜の強めの甘い声で


「涎垂らしてる絵夢のおむつ姿いっぱい見せて下さいって」
「言い方ぁッ!!」

※袴田君の第三話が公開中です。
https://www.alphapolis.co.jp/manga/official/809000362/4630
しおりを挟む
感想 360

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

溺愛社長の欲求からは逃れられない

鳴宮鶉子
恋愛
溺愛社長の欲求からは逃れられない

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

勘違いで別れを告げた日から豹変した婚約者が毎晩迫ってきて困っています

Adria
恋愛
詩音は怪我をして実家の病院に診察に行った時に、婚約者のある噂を耳にした。その噂を聞いて、今まで彼が自分に触れなかった理由に気づく。 意を決して彼を解放してあげるつもりで別れを告げると、その日から穏やかだった彼はいなくなり、執着を剥き出しにしたSな彼になってしまった。 戸惑う反面、毎日激愛を注がれ次第に溺れていく―― イラスト:らぎ様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。