総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

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おしまいの後

にゃんちゃんとデート

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 リビングのソファーで書類に目を通していたら、洗濯物を畳み終えた尾台さんがフラッとこっちにやってきて俺の横に座った。
「袴田君!」
「はい」
 尾台さんは口に手を当てコホンとやって長い人差し指を立てて言う。
「第一回、袴田君限定尾台さん今何考えてるんだろうな早押し当てクイズやりませんか」
「袴田君限定で早押しクイズなんですか俺誰と競うの」
「たまに私も参戦します」
「へえ出題者も回答者側に? 新しいですねやります」
 尾台さんニヤってしてるけど、楽しそうだからいいか、何ていうかその……左手に水族館のパンフレット持ってるのは見ない方がいいのかな。
 私の行きたいとこどーこだ? って出題されて直に水族館! って答えると「クイズ楽しもうって気持ちがないよねチミは!!」と言われそうだし外しても「私の事全然わかってくれないー」って拗ねそうだし……怒る方と拗ねる方……どっちが見たいかなぁと眼鏡持ちながら考えていたら、
「第一問!」
「お?」
「私の好きな人!」
「はい、袴田君」
 答えたら、尾台さんプププって悪戯に笑って目細めて、
「は袴田君ですが、最も長生きした魚類は何でしょうか、うふふふふふ」
 とパンフレットで口元を隠した。ああ何か魚の豆知識みたいのでも載ってたのかな。
「えっと……ニシオンデンザメじゃありませんでしたっけ、確か400歳位、セキツイ動物でも、世界一の記録だったはずです。小さい時気になって調べた記憶が……」
「むむむ! ピンポン押さなかったからハズレ!!」
「そっかごめんなさい」
 ピンポンないけど。
 尾台さんはあーあーあーあーってつまらないーって顔を振り出して、渾身の一問だったかな悪い事したな。
「ねえ尾台さん」
「第二問!!」
「はい」
「私の行きたい所はどこでしょうか、ピンポン、はい尾台さん! 水族館!!!」
「正解」
 目の前にパンフレット見せつけてきて、そのまま体を引き寄せる、なんだこの生き物は……。
 尾台さんはそのまま俺の膝に乗ってきて首に腕を回すと、見て見てってパンフレットを開いた。
「第三問~尾台さんとぉー袴田君のぉー初めてのデートはどこだったでしょうか!」
「ピンポン」
「はい、袴田君」
「明治神宮」
「え?! ああ!!」
 尾台さん、目見開いて瞬き凄いしてるんだけど…………。
「そ、そっかヨヨギ……」
「あ? 何? もしかして尾台さん素で初めてのデート水族館だったっと思ってたオチですか? ちょっと! 俺との初めてのデートはスケスケのティーバック履いて来た明治」
「うるさいよ」
 ぎゅうって口手で塞がれて、いやこれはちょっと、あんだけ記念日だなんだって言う癖に初デートの場所忘れてたって噛んでやらなきゃ、押し付けられた手の平噛み付いたら、尾台さんはビクってしてた。
「だ、だって! もちろん代々木公園も忘れてないけど、水族館は夜うちに来てくれて嬉しかったし一緒に行ってなんかこう、すっごいドキドキしたんだもん! ああ私本当に袴田君が好きなんだなって改めて思った所だったから、その印象が深…………………くはないし、正直今もあんまり好きじゃないんで今のナシ!! 同棲も迷惑だから!」
「はいはいツンツンツンツン」
 抱き付いて最後の方ブツブツ言ってくるの、何なんだろうな、どういう気持ちで言ってるんだろう。
 背中ポンポンしてあげたら、尾台さんは俺の首の後ろでパンフレット見てて、ここの水族館マグロがいっぱいいるんですよーと見どころを教えてくれた。
「行きたいんですか?」
「はい、観覧車もあるんです乗りたいです」
「じゃあ今日は明日に備えてこのままエッチしてソファー寝ます?」
「ダメ」
「どうして?」
「北枕」
「ああそう」
 尾台さんは相変わらず癖が強い。


 それで結局エッチはしたけど、ベッドに連れて行って就寝、朝は俺より早く起きてお弁当を作っていた。
「にゃんちゃんおはよ大好き」
「はい、私も! おはよちゅんちゅん」
 にゃんにゃんさんお家にいる幸せ~寝起きなのもあって、しっかりした俺! みたいの作れず可愛い頭にすり寄ってしまうんだけど、頭で押し返してきながら、尾台さんも俺にスリスリしてくれるの最高に満たされる。
「お昼はどこかお店で食べるのかと思ってました」
「それもいいんですけど、ピクニックできる所もあるので、サンドウィッチ持って行きましょう?」
「ん?」
 ね! ってボックスに入っていたのは、俺が生まれて初めて作ったスティックサンドのお弁当だった。
「尾台すわーーーーーーん!!!」
「わわ、何?!」
「セックスがしたいです!!」
「夜なッ!!!」

 支度を済ませて電車に乗れば、尾台さんは車内で抱き付いてきて。
「ん? どうしました? 具合悪いんですか」
「違くて、ほら…私恋人いない歴=年齢だったから、彼氏ができた今こそ、爆発してもらいたい位のリア充カッポーになろうかと」
「ああ、じゃあキスでもします?」
「………………だ、だめ」
 と、満更でもない顔、だけど尾台さんキスだけで直ぐアンとか言うから止めておこう。
 案の定してほしそうだけど……。
「袴田君は」
「はい」
「その…………過去デートではどんな事してたんですか」
「ん? 俺は」
「隙あらば自分語りッ!!!!!!!!!!」
「ちょっと……何尾台さん、あなたが聞いてきたんでしょう?」
「き、聞いてないですう」
 ツンってしてぎゅうってしてきて、なんなら頬にキスしてきた。
「俺はにゃんにゃんさん一筋ですから」
「…………」
 頬染めながらしたり顔ってそんなの当り前なのになあ。

 尾台さんが行きたいと持ってきたパンフレットは葛西臨海公園だった、東京湾に面した大きな公園で、公園と言って水族館もあるしバーベキュー場も森も鳥類園も宿泊施設もあって、広い駐車場もついた複合施設のようなものだ。
 こういう休みの日には家族連れで賑わっている。

 駅に着いたら、水族館までのアーケードには子供が走り回っていた、向こうに見える大きな観覧車は夜になるとライトアップされるみたいで、尾台さんは絶対乗ろうね! って目を輝かせている。

 まずは少し公園を散策して、海を見たり花を見たり……芝生のエリアでレジャーシートを敷いて、落ち着けば、初めてのデートを思い出した。
 あの日を思い出して、ちょっと二人で恥ずかしくなってしまった。

 俺が作った弁当なんかより何倍も美味しいのに、尾台さんは俺が作ってきてくれたサンドウィッチの方が美味しかったと言っていた。
 膝枕してもらって、癖毛を優しく撫でられて、あの日と全く気持ちは変わらない。


「ナニコレ俺死んでもいいや」
「ダメです」

 見つめ合って笑ってゆっくり時間が流れて、柔らかい風に髪が揺れた。

「寒くないですか」
「全然ですよ」
「ならもう少しこのままでいたいです」


「うん、私も」
 少し目を瞑っていたら、尾台さんからキスしてくれた。


 休憩して、じゃあ水族館に行こうとなって手を繋ぐ、目の前に大きなドーム型のエントランスが現れて足を止めた。
 東京湾を背にした巨大なガラスドーム…………じっと見つめていたら、尾台さんがきゅっと手を強く握ってくる。
「なんだかワクワクしますね? 異世界に繋がっていそう私こういう所大好き」
「はい俺も大好きです、尾台さんも水族館も」
「嬉しい。それにしてもなんかこう……コスプレの撮影会もできそうですよねココ」
「いいですね、昔に遡ってにゃんにゃんさん撮りたいです」



 二人で笑って、水族館を楽しんだ。
 尾台さんがたくさん笑ってくれるから、俺も笑うし、尾台さんが私袴田君の笑った顔好きですって言うから、破顔しっぱなしだ。
 何でもないのに幸せだ、食べなかった甘いものも買わなかったお土産も、今じゃ、何をあげたら尾台さん喜んでくれるかなって興味が湧いてくる。

「はい、尾台さんアイス買ってきました」
「わーい、チョコ?」



「いえ、マグロアイス」
「?!」
「オススメ! とあったので」
「チャレンジャーだね?」
 ちなみにマグロの形をしたクッキーとマグロに似せたチョコクランチが乗っているバニラアイスだった。
 水族館を一通り見終えて、帰る前に観覧車を見上げた、もちろん乗るんだけど、尾台さんはトイレに行ってきますって帰ってきてから悩んでる。
 もう一回行こうかな……いやいやでも……ってしてて。
「何尾台さん頻尿?」
「違うよ!! いや、ちょっと気になる事があって……見間違えかもだけど……」
「ん?」
 うーんって口に手を当てた尾台さんは難しい顔で背伸びをすると俺の耳元で言う。
「あの……総務の二人に激似な人がいて、デート?……見間違えだとは思うんですが……」
「へえ」
 別に本物なのでは? と思ったけど、まあいい。せっかくのデートを彼らに邪魔されたくない。
 尾台さんの手を引いて夕日に光る観覧車を目指した、少し距離があってゆっくり歩く。
 目の前に着いた時だ、ちょうど観覧車がライトアップされて尾台さんはわあっと小さく驚いて俺の腕を抱き締めてきた。

 頭にキスして、顔を上げるから唇にもして、言葉にしなくてもキラキラした瞳が好きだって言ってくれた。


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