110 / 154
おしまいの後
尾台さんとお仕置き ◎
しおりを挟む
それは残業中、時刻は午後十時だ。
今日も僕に死ね死ね言ってきた袴田さんは結局悪態つきながらも一緒に残業してくれる。
そんで、隣で首がいてーって袴田さんが伸びをした時に気がついた。
「あれ? そんなとこに大きなばんそーこー貼ってたんッスね。剥がれそうですけど」
「ん? ああ……襟で擦れて痛かったから貼ったんだけど、もうあった方が煩わしいな」
袴田さんは大きめなばんそーこーをびりっと剥ぎ取って足元にあるゴミ箱に捨てた。
で、そに現れたのは……
「うわ! どうしたんッスかそれ!!」
首筋には赤黒い……紫色の鬱血痕と歯形にかさぶたに…………部分的にだけど軽くグロイぞ。
袴田さんは傷が痛むのか指先でそこを確認しながら言う。
「飼ってた猫に噛み付かれただけですよ」
「いや、アンタ動物とか飼えない人間でしょう。人や物に興味を示さず感情に自制も利かないし、暴力的だしこの世で一番動物飼っちゃいけない人! ご飯だって尾台さんと暮らすまで僕達が誘わなきゃ食うの面倒って食わなかった男だよ」
「随分わかった風に言うね。まあちょっと強めに躾をしたら、噛み付かれちゃったってだけですよ」
袴田さんは、かさぶたいじって血が出てないか指先を見てて。
ああ……えぇ? 飼ってるって尾台さんのことか?
言われて見れば、尾台さんが飲み会で少しでも男に詰め寄られると、遠目にいるのに目光らせて、
「殺す……」
って呟いて、その後にはしっかり躾けてやらないとな、なんて言ってるけど! これは黙ってられないぞ!
「袴田さん! 躾けとかお仕置きとか、それ何してるんスか?!!」
「あ? お前に関係ある?」
「ありますよ! その傷! 袴田さんがひどいことしたから反撃されたってことですか?! ボクそういうの上司がどうとかって関係ないんで!! 女の子にそういうの見過ごせないんで!!」
「……ああ……わかったよ、何興奮してるのハイジ、まず座りましょうか。君が思っているような展開にはなっていないです」
「でも……!」
思わず立ち上がったら座れと腰を叩かれて、残っている数人の目も気になるから席に着く。
袴田さんは傷を触りながら続けた。
「反撃……反撃じゃないな、どちらかと言うと、これはおねだりですね」
「お、おねだり……?」
嘘でもない真顔で言うからボクも突っ込めなくて、袴田さんは首をコキっと鳴らす。
「例えばだけど、新井君にとって…………というか一般的なお仕置きってなんですか。対象は誰でもいいですけど、なるべく彼女と仮定して」
袴田さんはPCをから完全に手を離して今度は指をパキパキ鳴らしてる。
「ん? お仕置き……なんだから、怒るとか、ああ……それしか思いつかないな、えっちなことで言うと、手錠とか? 拘束して謝らせるみたいな……もうしません! って感じで?」
すると袴田さんは眼鏡を押し込んで見下し気味に言ってきた。
「それ、ご褒美だから」
「は?」
「それは、俺の彼女、尾台さんにとってただのご褒美です。口悪く責めるのも怒るのも、拘束するのも、少し痛いのも、ただただ彼女を喜ばせるだけです。見てるだけだって悦を感じますからあの子は」
「ああ、そッスか」
うん、あの、なんか内臓引きずり出すって笑顔で書いてた尾台さん思い出して、急にボクは正気を取り戻してPCに向かった。
「気になります? 尾台さんへのお仕置き」
「ああ……うんっとなんッスか」
袴田さんは眼鏡に手を添えたまま言う。
「俺のワイシャツとパンツはかせてベッドに放置」
「?!!!」
サラッと言って袴田さんもキーボード叩き出して。
「以上です」
「え? あの……」
「ベッドの上で尾台さんに服を着せます。脱いでも嗅いでも触ってもいけない、何もするな黙って座ってろと彼女に命令して俺は背を向け仕事してました。見てると快感になりますから」
「……ほう」
「一歩でもそこから出たら二度と口利かないし。どこか体を弄ったら、もう死ぬまであなたには触れてあげないと言ったら尾台さん大号泣」
脳裏に必死になってる尾台さんが浮かんで……
「可哀想ですよ!!! 少しくらい罵ってあげてもいいじゃないですか!」
「は? お前自分で何言ってるか分かってる? 俺危害は加えてないですよ、黙ってそこにいろと言っただけです」
何とも言えないこの感じ、されてることは何でもないのに、どうしてボクは心はむずむずするの!
「一時間で根を上げて泣きついてきたので、「そこにいなさい」と叱ったら、三十分後に噛み付かれました」
「おう……」
「おねだりでしょう? これは」
袴田さんは傷を指差して頷いてしまった。
「そッスね」
「可愛いもんですよ」
くすっと笑って営業の方を見た袴田さんは何かを見付けて手を止めた。
「あっ……尾台さんも残業でコピー焼いてる会いに行こう」
「うッス」
「残りは全部やっといたから、それ終わったらお前も上がりな」
「えぁ!? わあ、ありがとう袴田さん愛してる」
「触るんじゃねぇよゴミが、さっさと消えろ」
僕の手を振り払って袴田さんは立ち上がって、なんて大きな背中……!
ごめんなさい尾台さん、短気でドエスで無慈悲な上司だけど、あなたには袴田さんしかいないと思います。
今日も僕に死ね死ね言ってきた袴田さんは結局悪態つきながらも一緒に残業してくれる。
そんで、隣で首がいてーって袴田さんが伸びをした時に気がついた。
「あれ? そんなとこに大きなばんそーこー貼ってたんッスね。剥がれそうですけど」
「ん? ああ……襟で擦れて痛かったから貼ったんだけど、もうあった方が煩わしいな」
袴田さんは大きめなばんそーこーをびりっと剥ぎ取って足元にあるゴミ箱に捨てた。
で、そに現れたのは……
「うわ! どうしたんッスかそれ!!」
首筋には赤黒い……紫色の鬱血痕と歯形にかさぶたに…………部分的にだけど軽くグロイぞ。
袴田さんは傷が痛むのか指先でそこを確認しながら言う。
「飼ってた猫に噛み付かれただけですよ」
「いや、アンタ動物とか飼えない人間でしょう。人や物に興味を示さず感情に自制も利かないし、暴力的だしこの世で一番動物飼っちゃいけない人! ご飯だって尾台さんと暮らすまで僕達が誘わなきゃ食うの面倒って食わなかった男だよ」
「随分わかった風に言うね。まあちょっと強めに躾をしたら、噛み付かれちゃったってだけですよ」
袴田さんは、かさぶたいじって血が出てないか指先を見てて。
ああ……えぇ? 飼ってるって尾台さんのことか?
言われて見れば、尾台さんが飲み会で少しでも男に詰め寄られると、遠目にいるのに目光らせて、
「殺す……」
って呟いて、その後にはしっかり躾けてやらないとな、なんて言ってるけど! これは黙ってられないぞ!
「袴田さん! 躾けとかお仕置きとか、それ何してるんスか?!!」
「あ? お前に関係ある?」
「ありますよ! その傷! 袴田さんがひどいことしたから反撃されたってことですか?! ボクそういうの上司がどうとかって関係ないんで!! 女の子にそういうの見過ごせないんで!!」
「……ああ……わかったよ、何興奮してるのハイジ、まず座りましょうか。君が思っているような展開にはなっていないです」
「でも……!」
思わず立ち上がったら座れと腰を叩かれて、残っている数人の目も気になるから席に着く。
袴田さんは傷を触りながら続けた。
「反撃……反撃じゃないな、どちらかと言うと、これはおねだりですね」
「お、おねだり……?」
嘘でもない真顔で言うからボクも突っ込めなくて、袴田さんは首をコキっと鳴らす。
「例えばだけど、新井君にとって…………というか一般的なお仕置きってなんですか。対象は誰でもいいですけど、なるべく彼女と仮定して」
袴田さんはPCをから完全に手を離して今度は指をパキパキ鳴らしてる。
「ん? お仕置き……なんだから、怒るとか、ああ……それしか思いつかないな、えっちなことで言うと、手錠とか? 拘束して謝らせるみたいな……もうしません! って感じで?」
すると袴田さんは眼鏡を押し込んで見下し気味に言ってきた。
「それ、ご褒美だから」
「は?」
「それは、俺の彼女、尾台さんにとってただのご褒美です。口悪く責めるのも怒るのも、拘束するのも、少し痛いのも、ただただ彼女を喜ばせるだけです。見てるだけだって悦を感じますからあの子は」
「ああ、そッスか」
うん、あの、なんか内臓引きずり出すって笑顔で書いてた尾台さん思い出して、急にボクは正気を取り戻してPCに向かった。
「気になります? 尾台さんへのお仕置き」
「ああ……うんっとなんッスか」
袴田さんは眼鏡に手を添えたまま言う。
「俺のワイシャツとパンツはかせてベッドに放置」
「?!!!」
サラッと言って袴田さんもキーボード叩き出して。
「以上です」
「え? あの……」
「ベッドの上で尾台さんに服を着せます。脱いでも嗅いでも触ってもいけない、何もするな黙って座ってろと彼女に命令して俺は背を向け仕事してました。見てると快感になりますから」
「……ほう」
「一歩でもそこから出たら二度と口利かないし。どこか体を弄ったら、もう死ぬまであなたには触れてあげないと言ったら尾台さん大号泣」
脳裏に必死になってる尾台さんが浮かんで……
「可哀想ですよ!!! 少しくらい罵ってあげてもいいじゃないですか!」
「は? お前自分で何言ってるか分かってる? 俺危害は加えてないですよ、黙ってそこにいろと言っただけです」
何とも言えないこの感じ、されてることは何でもないのに、どうしてボクは心はむずむずするの!
「一時間で根を上げて泣きついてきたので、「そこにいなさい」と叱ったら、三十分後に噛み付かれました」
「おう……」
「おねだりでしょう? これは」
袴田さんは傷を指差して頷いてしまった。
「そッスね」
「可愛いもんですよ」
くすっと笑って営業の方を見た袴田さんは何かを見付けて手を止めた。
「あっ……尾台さんも残業でコピー焼いてる会いに行こう」
「うッス」
「残りは全部やっといたから、それ終わったらお前も上がりな」
「えぁ!? わあ、ありがとう袴田さん愛してる」
「触るんじゃねぇよゴミが、さっさと消えろ」
僕の手を振り払って袴田さんは立ち上がって、なんて大きな背中……!
ごめんなさい尾台さん、短気でドエスで無慈悲な上司だけど、あなたには袴田さんしかいないと思います。
0
お気に入りに追加
1,826
あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

勘違いで別れを告げた日から豹変した婚約者が毎晩迫ってきて困っています
Adria
恋愛
詩音は怪我をして実家の病院に診察に行った時に、婚約者のある噂を耳にした。その噂を聞いて、今まで彼が自分に触れなかった理由に気づく。
意を決して彼を解放してあげるつもりで別れを告げると、その日から穏やかだった彼はいなくなり、執着を剥き出しにしたSな彼になってしまった。
戸惑う反面、毎日激愛を注がれ次第に溺れていく――
イラスト:らぎ様
《エブリスタとムーンにも投稿しています》
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。