総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

文字の大きさ
上 下
76 / 154
連載

煙草 ※

しおりを挟む
 



 絶対に自分を裏切らない。






 という存在を手に入れてからの尾台さんの成長は目まぐるしいものがあった。
 一番嬉しかったのは信頼しているからゆえに起こる俺への反発だった、誰にでも礼儀正しく優しい尾台さんが俺にだけ反抗期なのだ。
 いくら酷い言葉を投げかけたって俺は尾台さんを嫌いにならない全部受け止めてくれる、その自信が彼女の心を大きく動かしたと思う。
 あっちいってとかどっかいってとか触らないでとかもう嫌いとか直に言う、それでいてチラチラ見てくる可愛い以外に表現できない。
 好きだよって言えばふんってそっぽ向きながら抱き着いてくる、恥ずかしいのって襟足にキスしてきて押し倒してしまいそうになる。

 俺にだけ反抗して宥められて愛されて、新たな気持ちを理解したら視野の広がった彼女は一番近くにいる友人を心配して一歩踏み込もうとしていた、やっぱり人を大事にする子だ。
 でも嫌われたら、の怖気づく心にそっと肩に手を添えるだけで尾台さんは頷いて前進した。



 気を使い過ぎて孤立して、お酒依存して、私なんて……と停止していた思考がゆっくり動き出したように見えた。

 当たり前だった毎日が突然消えて、何もかもが無意味に見えて投げ出して殻に閉じこもって。
 そんな彼女が今また光を見るために顔を上げてくれた、俺に出来るのは絶対に手を離さないからと彼女の側に寄り添う事だと思った。
 だって、俺の言葉を押し付けて強制するのもおかしいし、かといって何も考えなくていいんだよなんてのは優しさじゃなくて放棄だろ。
 必要以上に詮索しないし、必要以上に甘やかさない(ちょっと無理)。
 そんな風に今度は俺が彼女の心の拠り所になって、自分の気持ちは素直に好きだ大好きだと言い続けた。


 根が真面目で真情で頑張り屋さんな尾台さんは、一生懸命俺に心を開く努力をしてくれた。
 初めてのデート、泣いてしまうと分かってたけど、少し付き放したら涙を流して引き止めてくれた、本当はこんな私じゃダメだってわかってるって一緒にいたいって抱き着いてきた。

俺の方が泣きそうになって苦しいくらいに体が震えた、そしたらまさかのティーバッグだったしスゲー萌えた。

 にゃんにゃんさんはこんなにも心が綺麗で素直で傷付きやすい人、それでいて人を癒してくれる。
 しかもエッチで可愛くて意地張ってツンツンする割に心の声はダダ漏れで一緒にいると胸の奥の奥の奥の方から好きってため息が出るんだ。
 ちょこちょこ意地悪して怒らせたりデレたり飽きる時間が一秒もない。
 大好き……本当に好き一生一緒にいたい。

 素直にそう、思うのにこの始まりが体の関係にある脅しからスタートしてしまった事。
 そしてもう少し遡れば、桐生さんがいなければ俺達は出会えなかったと思うと途端に弱気になって彼女の初めてを奪う事が出来なった。

 尾台さんに良く思われたくて、助けに来たなんて大見栄を切った、そして尾台さんは俺を待ってたなんて言ってくれた。
 でも俺をここに導いたのは他でもない桐生さんなのにやっぱりそれが言えなかった。

 俺のものにしたい、セックスしたい、一つになりたい、離れたくない。


 俺の感情は一方的な汚い欲のように思えて、これが最後だって決めたのに傷付いたっていいって言った癖に彼女の一生に一度しかないそれを突き破る事が出来なかった。


 それでも彼女は俺の話も聞いてくれると言ってくれた、私の話も聞いてほしいって。
 ああそうじゃないだろ、俺はまた尾台さんに救われようとしている。







 そして当たり前の事だが、眠っていたヒーローが目を覚ました。

 分かっていた事だ、桐生さんが黙っていられるはずがないって、そのタイミングは尾台さんが人との関わり合いをもう一度構築していこうと、人を受け入れる土台を取り戻した時に来るだろうと思っていた。

 尾台さんは開きかけた心に裸の感情をぶつけられて混乱していた。

 俺以外の男に流す涙、首に着いたキスマークに桐生さんの香水の匂い、嫉妬心に支配されかけたけれど冷静に声色を変えずに尾台さんを落ち着かせる事を優先した。
 大好きな笑顔が涙で滲んでいて舐め取りたいけどメイクしてるからハンカチで水滴を拭う、拭ってるのにまた今にも零れそうな顔をして唇を噛もうとするからキスで阻止した。





 そうか、分かってしまったんだ。




 自分が桐生さんを好きだったって。




 憧れとか、尊敬じゃない。



 好きだったって気付いてしまった。


 かき乱された心を制御できない尾台さんは暴走気味に俺の口を貪って、忘れたい、違う、そうじゃない、でも…………と気持ちを交錯させながら答えを求めていた。
 顎を掴んで俺も激しく彼女を攻め立てた、俺も欲が全身に回って血が熱くなる、そうしたら尾台さんは下半身を擦って言ったんだ「えっちしよ」って追いつめられたその先にあるのは俺への感情ではなくて、体の繋がりだった。

 もうこのまま妊娠したっていいから抱いてって…………。

 誰か、俺は間違った事をしていたんだろうか、間違っていたとしたらどこから直せばよかったんだろうか、いや、初めから勝ち目がないと、それ覚悟で卑怯な手を使った始まりだったじゃないか。

 どうしてそれで真正面から受け止めて貰えると思っていたんだよ、うぬぼれるなよ、わかっていたのに何だか泣けてきて……いや、尾台さんが俺を好きなのは分かってるけど。
 俺に出来るのはここで尾台さんとセックスしない事だ。
 してはいけない、彼女をこれで殺してはいけない。
 こんな場所で初めてを奪って血を垂らせて何の意味がある、幸いにも尾台さんは俺ので達する快楽を知らないからいつもの場所を擦りあげて後は舌で誤魔化した、罪悪感でいっぱいのはずなのに上も下も蕩けさせた尾台さんの体はすげーエロくて心臓が破裂するかと思った。
 尾台さんの味も匂いも全部好きすぎて舐めても舐めても欲しくなる、そんで彼女もされたらされた分だけ奥から溢れ出してくるからエンドレスなんだよな。

 こんな時にダメだってわかってんのに尾台さんが言う所のドエスが出てしまって困った。
 運よく古い建物のせいで給湯室の換気扇がうるさくてここの音が掻き消される、それくらい掻き消してもらわないと困るくらい俺は尾台さん舐め回してるって事だ。

 セックスしたいって尾台さん思った時、一瞬でもその頭に桐生さんが浮かんだとしたらとんでもねー位胸が疼いたんだ。
 自分から誘った手前抵抗しない彼女に乗じてこっちを向かせて片足の下着とストッキングを下げる、その足をシンクに乗せて足首を掴んで見せつけるように目を合わせたままグチャグチャに濡れた入り口を舐め上げた。
 舌を奥まで突っ込んで体液を掻き出して、桐生さんで濡れた分は全部飲み込みたいんだ。
 吸い出して啜る音と舌が動く音が響いて尾台さんは手の甲を噛んで必死に声を抑えていた。

「またイキたくなってるね素直になって? 俺の口でイキたいの?」

 理性の飛び掛かった尾台さんがこくこく頷いて、何がしたいんだよって自問自答も答えがでず、俺は執拗に彼女を言葉で虐めて勃った所を舐め擦って彼女を性で黙らせた。

 なんてくだらない男なんだと落胆する。

 正面から向き合っていないのは俺の方だ。









 少し落ち着いて後日、尾台さんがお昼一緒に食べませんかと誘てくれた。
 もちろんイエス!! 以外の答えはないのだが、残念な事にいらない二人が合流した。
 それでも俺的には穏便に昼食を済ませた、つもりだったのに店を出て桐生さんが俺の肩を叩いた。


「袴田君~一服してから行こうよ~」
「結構です、俺尾台さんと二人で飯食いに行けると思ってたんで煙草持って来てないんです」
「ああ、煙草は僕のあげるよ」
「桐生さんって」
「セッター」

桐生さんは内ポケットから煙草を取り出して振った。

「俺甘い煙草嫌いなんですよね」
「怖い?」
「は?」

茶色い瞳が細くなって口角を上げて続ける。

「あのまま有沢に尾台連れてかれて袴田君に都合悪い事言われるのも、ここで僕に何か言われるのも」
「…………一本貰います」
しおりを挟む
感想 360

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

溺愛社長の欲求からは逃れられない

鳴宮鶉子
恋愛
溺愛社長の欲求からは逃れられない

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

勘違いで別れを告げた日から豹変した婚約者が毎晩迫ってきて困っています

Adria
恋愛
詩音は怪我をして実家の病院に診察に行った時に、婚約者のある噂を耳にした。その噂を聞いて、今まで彼が自分に触れなかった理由に気づく。 意を決して彼を解放してあげるつもりで別れを告げると、その日から穏やかだった彼はいなくなり、執着を剥き出しにしたSな彼になってしまった。 戸惑う反面、毎日激愛を注がれ次第に溺れていく―― イラスト:らぎ様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。