総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

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泊めて下さい

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「…………待って、待ってよそんなのいきなり言われても」
「絵夢ちゃんだって分かってたはずだ、家を出た理由……表向きじゃ仕事って言ってたけど」

 あ、ヤバイ! 
 って思った時には体引き寄せられて、や、やだ! 足に変なの当たってる!!

「オレがこうなってるの見ちゃってもうだめだって思ったんでしょ? オレは男として意識してほしくてやってたんだけど」
「らいちゃん止めて! 本当に怒るよ!?」
「何で? オレ達結婚するって約束したじゃん、ねえ絵夢ちゃん実家帰って来てよ。母さんまた家出るみたいだし部屋あるよ。こんな狭いアパートで毎日酒飲んで寝落ちしてたら人生腐っちゃうよ? オレさマジ頭いー高校だからこのまま成績落とさずにいけば普通に国立のいいとこ行けるし、ちゃんと働くしさ。絶対絵夢ちゃんに不自由させないから、童貞もとっておいてあるし毎日エッチしよ」
「ど! ちょっと! 何言ってんの?!!!」
「オレのはじめて貰って?」

 体押し返そうと思ったら手掴まれて唇塞がれて、乱暴な舌が潜り込んでくる。

「んん……っ!! らいちゃッ」
「ファーストキスなんかとは全然違うね、すっげー気持ちいコレ。絵夢ちゃんの味」
「ちょっとマジで無理!!」

 閉じた唇舐め回されて頬とか耳キスされて、酔ってるしゾクゾクは力抜けちゃうからやだぁ。
 ぎゅうって目を閉じたら床に置いてあった携帯が震えた、スローリングに振動が響いてらいちゃんの動きが止まる。

「袴田君……」
「あ? 袴田君?」

 携帯を取ったらやっぱり袴田君からで大好きですってメッセージがきていた。

「ら、らいちゃん! ほら見て! この人総務のすっごい人だから! 私の事大好きなんだよ! 今から来てって言ったら直ぐ家まで来てくれる人だからね!!」
「だから何?」
「いや、だから大人しく寝てよ」

 スマホ振りかざしたら、らいちゃんは半眼を光らせさて私に迫ってくる、怖くてぎゅううっと目を閉じた。
 しんっとして……額にちゅっと温かい唇があたる、らいちゃんはそのまま私を通り越してベッドを降りた。

「オレ、こっちで寝る」
「ん?」
「ベッドにいたんじゃ何が何でも童貞卒業したくなるから、なんつーの? オレがこっちで寝る事でオレが本気なんだって理解してくんない? ただのヤリ目じゃないって」
「本気……なの?」
「じゃあ今から孕ませていい? すげー予習とイメトレしてきたからめっちゃイカせて気持ちよくしてあげる」
「ばっかじゃないの!!」



 らいちゃんは私に背を向けてバスタオル丸めて首の下に入れると羽毛を肩まで被った。

「絵夢ちゃんさ」
「何?」
「今のでオレがビビると思ったら大間違いだから。袴田君だっけ? 絶対認めないから、とりあえず土曜日にここに引っ越し業者来るように手配するわ」
「え? ちょっとらいちゃん! 反抗期すぎるよ! 何言ってんの!!」
「拒否権なんて与えない。うちにここの家のスペアキーあるし、勝手に入って荷物全部実家に持ってく」
「そんなの許される訳ないで」
「金曜日の夜!」
「え」
「迎えに行くから、準備しとけよな」

 ちょっと待って! ここにきて反抗期の甥っ子の暴走が止まらない!!!

 以後は叔母の話を完全無視し、なんならヘッドホン装着して寝てしまった、今時の若者ヤバくねぇか本当自分の正面にあるものしか見えないんだからアリエナイ!

 甥に超イライラして気持ちを固める時間もなくふて寝状態で夢の中に落ちた。




 それで目が覚めたら、らいちゃんはもう制服着てて鞄も肩に掛けていた。

「らいちゃ……? おはよ、え? 何時?」
「おはよ七時前、昨日勉強できなかったから朝学したくてさ。オレ先に学校行くわ」
「そう……なんだ、ごめん起きるの遅くて、朝ご飯」
「は、もう適当に作ったから後でゆっくり食べて」
「マジで」

 起き上がったら、テーブルには目玉焼きとウィンナー焼いたお皿があった。

「じゃあ金曜日来るから宜しくね。絵夢ちゃん」

 らいちゃんは私の前で屈むとちゅっと唇を重ねて顔を上げた。

「ちょっと! 何すんの?! え! それ本気で言ってんの?! 本気の本気の本気のヤツ?」
「うん本気の本気の本気のヤツ。遊びなら味見程度に小学生の時から抱きまくってるから、手出さなかっただろ、察して? オレ絵夢ちゃんの事死ぬまでクッソ大事にしてあげるよ、金曜日からいやいやしてもヤリまくるから。じゃ行ってきます」

 すげー上からなんだけど!!

「やだ、待ってよ無理無理! 絶対無理!!」
「はいはい、そういいながら縛られて無理矢理事に及ぶ漫画絵夢ちゃん好きだったよね。オレそういうのも知ってるから、そしてオレ責めるの大好きだから相性ピッタリだね」
「ヒィイ!」
「確かエロ本の隠し場所は枕元にあった」
「早く行け!!」

 服引っ張ったら変な事言われて背中を突き飛ばした、らいちゃんは振り返って垂れ目をにやってすると、そのまま部屋を出ていった。






 ちょっと待ってよ……今週の金曜日ヤバくないですか……?!!

 そもそも金曜日は金曜ロードショーでもののけ姫やるから絶対出掛けない! 直帰!!
 って思ってたのに、でも…………ふーん? 週末に袴田君と旅行ね? へえ、別に楽しみじゃないけど金曜日からお家行ったっていいんだからね、って密かに思ってたんだよ。
 それが桐生さんの飲み会ってなって、次はらいちゃん?

 絶対もののけ姫見れないやんけ!!


 もう、なんかもう頭痛い……朝から頭溶けそう。
 何の着地点も見出せない。
 袴田君に会いたい会えない会いたい会いたい!
 ヤバイ会いたくて震えてきた西野カナ現象!

 とりあえず袴田君にライン。
「お」
【食べます】
「な」
【尾台さんと同じものでいいです】
「りょ」
【眼鏡が円陣組んで喜んでるスタンプ】

 朝から有能眼鏡君は、おにぎり食べますか中身は何がいいですかをエスパーしてくれた。

 なぜ握るのかは謎、でも少しでも袴田君に触れていたいんです。
 らいちゃんが作ってくれた朝ご飯は目玉焼きの半熟具合もウィンナーの焼き目も香ばしくて、美味しかった。

 でも美味しかったよって素直に伝えたのに、じゃあ明日の朝も作ってあげるって返ってきて叔母ちゃんゲンナリしちゃった。















「は、袴田君これ……」
「わあ……本当に作ってきてくれたんで」
「拾った!」
「はいわかりました、そうだろうと思ってました」
「そこに落ちてたから拾っただけ、あげる!」
「ありがとうございます泣きながら食べます」
「じゃあの!」





 な、何にも出来なかった…………!

 本人目の前にしたら、格好良くて緊張して何にも出来なかった!



 震える程会いたかったのにぃ!!!



 朝イチどこにいますかってラインしたら、居場所を教えてくれた。
 そこには死角になってる廊下に一人佇む袴田君がいて目が合ったら、



「袴田のここ空いてますよ」



 って広げた腕指差してきたのだ、むむむむッ! 
  空気に爪先が引っ掛かって転びそうになったから、仕方なくその腕に収まっておく。
 深呼吸して袴田君袴田君! 

 だがしかし、会えて嬉しかったのに何にも出来なかった!!

「尾台さんおはよ可愛い」
「…………うん」


 お弁当袋押し付けて抱き付いてネクタイ引っ張ってちゅうして首のとこクンクンして抱き付いて、もっかいほっぺにちゅうしてワイシャツ嗅いでスリスリしてもっともっとって体いっぱい触ってもらっておしまいってちゅうしてぎゅうってしてまたちゅうして好き好きっていっぱい言ってもらって私はそうでもないですって言ってちゅうして手繋いでもらってやだやだ離れたくないってして見つめあって結局好きって言っちゃってもういいからハグハグ! ってして頭たくさん撫でてもらって力一杯抱き締めてお口にちゅ……。















 それしか出来なかった……!!




 何にも出来なかったぁ! もっとしたかったぁ!!
 せっかく会えたのにどういう事だコレハ! 全然毛ほども何もしてない! なんなら、アレ? 今袴田氏とすれ違ったかな? 位のレベルだぞコレハ!  














「はい、えったんおはよ、朝から機嫌悪いじゃんどうしたの? 第三の男でも現れた?」
「すわっ!! 何? 何何何? 何なの! 何か見たの?」
「ふ、ふ、ふ」

 不敵な笑みでコーヒー傾けるめぐちゃんは今日も可愛いかった。
 話ながら鞄にスマホしまおうとしたら震えて、おお……らいちゃんからメッセージだ。



【今日も家行ってい?】


「げっ……」
「どった?」

 絶対来ないで! って言いたいけど、そうかヤツにはいざとなったらスペアキーというものがあるのか!
 って事は強く出ないで穏便にお断りする返信を……って考えてたら。




「おはよう、尾台」



「ひゃっ」

 頬に温かいカップが触れて、見上げたら桐生さんが立ってる……気まずい。

「あ、あ、あ……おはようございます……」
「これ、また給湯室に忘れてあったぞ、昨日から? ほらココア」
「あ、ありがとう、ございます」
「イライラしてたから甘いものきて良かったね、えったん」
「うん」

 ってもう昨日の今日で何も言えなくて、とりあえず話さなくて済むからココア飲む。

「はぁ……美味しいです」

 って言ったら桐生さんは良かった良かったって頭撫でてくるよ……うあ、やだぁ……わしわしじゃなくて優しい撫で方、そしたらたまたま通り掛かった事務の子達が言った。

「いいなぁ~尾台さん~」
「私もほしー」

 朝から体くねらせて桐生さんに超アピールしてる、ひゃぁだ! 一番見られたくない状況! 
 そしたら桐生さんは頭を撫でてた手を顎に滑らせて、喉こちょこちょしてきた。





「ごめんねー? 僕もう好きな子にしかこういう事しないって決めたんだ」






 しーんってなっちゃって……。






 え、何今の……。




 体固まって動かないんだけど、そして桐生さんは何事もなかったみたいに、さあ皆今日も頑張ろうな! って手を叩いて私の席を離れた。


「めめめめぐたん!!!」

「ん? なあに?」
「今晩泊めて下さいッ!!」 
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