総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

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恋の魔法

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 例えば、今から大阪に行こうと思ったとする。
 お金がかからない手段を取るなら、高速バスに乗ったり、中央線で新宿まで出て大船まで行って東海道線に乗ったり。
 これだと乗車時間八時間かかるけどお金は一番かからない。
 その他にも新幹線、飛行機、早く着きたいならそういう手段もある。



 つまりはそういう事なのだ。




 ここに行ってみたい、ああなりたい、こうなりたい。
 それが妄想なのか、実現できるものなのかって言うのは、そこまでのプロセスが明確に頭の中にあるかだと思う。


 有名になりたい、お金持ちになりたい、多くの人を救いたい。


 大きな夢を持つことは大事かもしれないけど、その足掛かりが全くなく漠然と夢だけをイメージしたってそんなのただの妄想で終わってしまうんだ。
 だから…………だから、そうなりたいなら、今どしたらいいのかって所が一番大事なんだ。

 そんな事分かっていながら、王子様現れないかなとか結婚したいくらい好きな人欲しいとか、言ってた。
 だったら何をしなきゃいけないのかって所に目を瞑って。
 いつもの生活続けてたんじゃそんな人に出会えないって分かってた癖に何も始めなかった。







 袴田君を横目で見た。




 うん、そうだ、こないだ私は袴田君がもし犯罪者だったらどうしようって怯えた。
 じゃあそれは何でって考えたら、うん、袴田君との関係を真剣に考えていたからだ。
 妄想や夢じゃない、現実を具体的に、このまま私達はどうなっていくんだろうって考えた。
 そうなった時にもし袴田君が犯罪者だったり怖い事してたら、それ以上先に進めないって思ったんだ。

 そっか、私は自分が思っていた以上に袴田君の事真剣に考えてた…………。



 袴田君はベッドで寝たままTシャツ袖を通す私をじっと見てて、やだ、嘘、格好いい……すっごい好き。
 でも絶対言いたくないから口隠して、Tシャツ着て………………また目合って……やっぱ抑えられなくなって飛びついたらそのまま抱き締めてくれた、ああやだやだ止めて口から出ちゃう。

「何尾台さんこういう可愛いの俺弱いんだから止めて? イカせていい? お腹の奥からとろとろになっちゃうヤツ」
「だーめ」
「でもごろごろ喉鳴らしにきてますよね、ほら首撫でられて気持ち良さそうにしてる」
「袴田君」
「はい」
「嫌いじゃないよ」
「ふふふ……」

 言ってキスしてベッドからまた降りた。

「俺の事本当に考えてくれてるんですね。真っ直ぐ気持ち伝えにきてくれたの初めてじゃないですか」
「知らんし」

 プイってしてジャージ履いてキッチンに向かった。

「袴田君お腹」
「食べます」

 食い気味に言われて、袴田君の方は向かないけど口元笑っちゃった。
 こないだ美味しいそうな厚切りベーコン大家さんから貰ったからチャーハン作りたかったんだ。

 そうしたら、後ろから袴田君がぎゅってしてきて、たまに頭にキスしたり手元見てきたり、

「座って待ってて下さい」
「たまには俺も作りたいし、尾台さんが具合悪い時や妊娠、出産して俺がキッチンに立つ場面もあるだろうから見ておかなきゃ」

 って…………。
 あの……その時も尾台さんって呼んでんのかなって気にいなったけど、じゃあ今から呼ぶ練習しますねって“絵夢”っなんてあの声で呼ばれたら腰抜けちゃうから言わないでおいた。

 炒める順番やその理由や味付け、袴田君真剣に聞いてくれるの、少し顔左に上げただけで顔あるの、格好いいの、ちょっと待ってくれ! 意識してからの袴田君の攻撃力強すぎィ!!

 もう顔を見るのも辛いのに、また一緒に食べるご飯は美味しくて楽しくて、いつか……お膝でご飯とかした…………いや全然したくないしッ!!

 もうちょっとやだ…………死ぬ……二十七年貯めに貯めた、なんかこうカップル見たり漫画読んでて、ええなぁって思ってたアレやソレ噴出してくる。
 いつか私もしてみたいな、みたいのあるじゃん。

 え? 言ってみる? 一つくらいなら言ってみる? 
 袴田君ならしてくれるよね。

 ええ……何から言おう。

「どうしたんですか尾台さんもじもじしておしっこ?」
「違いますよ!! 食事中」
「だってご飯食べてないじゃないですか」
「えっとあの……美味しいですか?」
「もちろんですよ、さっきから美味しいですって言ってるでしょう聞こえてませんでした?」
「ええっと……あの聞こえてました、その……袴田君」
「はい」
「罵ってもらっていいですか」
「雌豚」
「ヒッ!!!!」

 スプーン咥えて後ろに倒れてしもたがな!! ちょっと待って何でそれチョイスしてしまったの。

「ちょっと尾台さんどうしたんですか、美味しいではなくてそういう褒め方が好きなんですか」
「何でもないですさようなら」
「まだごちそうさまもしてませんよ」
「だったら起こして!!」
「はいはい」

 もう食べにくいから、袴田君の隣にいって寄りかかって食べる!!

「テーブルも良いですけど、こういうローテーブルって言うんですか? 床に座って食べるのだと距離が近くていいですね」
「本当だね、美味しいですね。袴田君に作るって考えたら今まで一番上手にできました」
「尾台さん…………マジ何なの? ……そんな上目使いで言ってきて……ええ? 抱いていいの? 頭おかしくなるまで愛撫して精子枯れるまでハメ潰していいの?」
「もう一声!」
「ブチ犯して俺専用の体にして失神するまで優しく嬲ってあげる」
「ちぬ……」
「おっと」

 倒れた体を受け止めてくれた。

「袴田君何これ、私が想像してた理想のカップルの会話と全然違うんだけど」
「でも尾台さん凄く満足そうな顔してますよ」
「南無……」

 袴田君の膝に滑り落ちて、膝枕で口開ける。
 目が合ってスプーンを口に運んでくれてうふふふっふふふふっふふふふってめっちゃ気持ち悪い感じになっていた。
 起き上がってお返し! って袴田君にも食べさせたりして、何これ……カップルってご飯だけでもこんな楽しいのかよ、これは爆発しろ!! って言われても仕方ないよ!


 そんなんで、ご馳走さましてちょっと化粧してる間に袴田君が洗いものしてくれて、こんな服どうですかってピンクのスカート見せてみたら、袴田君は間髪入れずに好きって答えてくれた。
 ああ、そうですか、お前のために買ってきた訳じゃないし着ないけどねって台詞を背中にくっ付きながら言う。


 準備して着替えて家を出た。
 袴田君が私を上から下まで見て、

「やっぱり尾台さんはピンク似合いますね」
「そーですか」
「スタイルが良いのでスーツや制服のビシッとしてるのももちろん素敵ですけど、そういう柔らかい色合いの服の方が優しい尾台さんの温かい人柄と調和していて和みます」
「う………………そう、かなアリガト」

 真面目に褒められて挙動不審になっちゃって袴田君に隠れよう。

「あ、こんにちは大家さん」
「え?」
「あら、絵夢ちゃんと会社の眼鏡君! なあに? デート?」

 袴田君が会話を始めて、背中から顔出したら大家さんが玄関前掃いていた。

「はい、水族館に」
「あら~いいわね~気を付けてね」
「はい、行ってきます」
「いっ、行ってきます、ああ! 大家さんベーコン美味しかったです! ありがとう」
「いいのよ~貰い物だから。じゃあまたね」

 お尻叩かれて、袴田君いつの間に大家さんと仲良くなったんだよ。

「朝出る所見られなければ、泊まった事にはなりませんよね。と夜中に迷いに迷って行ったんですけど正解でした」

 とか言ってきて、ちょっとぉ! それ袴田童君ご本人濃厚説!! ってなったけど恥ずかしすぎてもう言わないです。

 私は繋ぎたくないけどどうしてもというなら手繋いだっていいんだからね! って言ったら繋いでくれるし、キスしてくるし、はあ好きだこれ。


 電車の中だって些細な話題で延々と会話が続いてしまう。
 ちょっと見つめ合ったらキスしちゃって、胸がじわじわ焼けてくる。

 恋って好きってこういう時間なんだ。
 知らなかった、世界にはこんな時間があったんだ。
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