【R18】モブキャラ喪女を寵愛中

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寧々ちゃんまだまだ寵愛中

辰巳 寧々

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 PCを目の前にして、私はいつも以上に煮詰まっていた。

 まず、背景の色からして決まらないのだ。
 急に気になった肩で跳ねる癖毛を、隣で本を読んでる辰巳さんに結んでもらって、眼鏡を正す。
 いいよなあ、辰巳さんは癖毛でもオシャレなフワフワヘアーでさ!
 しかも、いつのまにか裏編み込みまで習得してる、私はできないぞ、長かった時も一つに結んでただけだった。

 それで悩みに話を戻すと、私達の色って言ったら何かなあ? って辰巳さんをじっと見て考えて、やっぱり緑かなあ?
 指輪と髪が金色だし、黄色もいいけど……わぁああん! 決まらん!!
 イラストは決まってるんだ、やっぱり双子のさくらんぼがいいよね……いや、だったらさくらんぼを背景にして……? でもやっぱり背景に色味がほしいよねえ。

「薄いピンクの大きなハートを背景に、ここの真ん中にドーンと枠がきて、細かい文字は手書きがよくて」
「うん、可愛いねえ」
「それでこの右下に余白を作って、眼鏡掛けたさくらんぼを……うーーん、違うなぁあ」
「ふふふ、贅沢な悩みだね」

 キスされて、辰巳さんはまた本を読みだして、私はペンタブで頭をかいた。

 決してエッチな漫画の表紙を悩んでる訳ではないのです!
 あれよ! 


 婚姻届け作ってるの!



 辰巳さん曰く、「戸籍法施行規則」によると、婚姻届けの用紙は「用紙の大きさや形」と「記入しなければいけない内容」を守っていれば色やデザインなどは自由に決めていいんだって!
 だから自作する事にしたのだ!


 こないだ、辰巳さんが私より遅くに帰ってきて、何やらお薬屋さんの袋をゴソゴソしていた。
 薄い縦長の箱が出てきて、気になって近寄ったら箱の中からアルミの袋に梱包された棒みたいのが出てきて。
「何です?」
「妊娠検査薬」
「ほえ!!」

 あ、本当だ袋から出してみたら、青い箱には大きく妊娠検査薬って書いてある。
「辰巳さんが使うの?」
 見上げたら金髪を耳にかけながら、
「ふふふ、陽性って出たらどうしよう」
「あ、そっか私か!」
 辰巳さんは笑って頭にちゅうしてきて、何気に恥ずかしいぞ!
「いずれ使うでしょ? 見てみたくて」
「そう……ですね」

 長い指が私の手から箱を取って裏の説明書見ながら、箱指差して「ここにおしっこかけるんだって」ってウィンクしてきた。うう、絶対使う時はトイレまで運んできて、僕に持たせて下さいっておしっこかかるとこガン見しながら言いそう。
 それで、陽性反応でたら辰巳さんはどんな顔するんだろう? はあヤバイ、想像しただけでニヤニヤする! ってしてたんだけど、気付いたのだ。

「ねえ辰巳さん」
「なあに?」
「それで妊娠が分かったら、私達授かり婚になるんです?」
「まあそうだね。まだ籍いれてないしね」
「そっか! 私すっかりこのお家の子になってたので、忘れてました。こないだおじいちゃんにご挨拶したし! 40歳になる前に早く辰巳さんと結婚しなきゃ!」
「Okay, got it.僕と結婚してもらえるなんて光栄です、ぜひお願いします」
「こちらこそ、私でいいのって感じですが」
「僕は君としか結婚しないよ。カレンダーで大安探しましょう」

 と、話が進んだのである。ちなみに辰巳さんのお誕生日は3月31日なので、その前に出さないと。

「そっか……私、毎日楽しくて手つけてなかったけど、転居届とか……そういうの全然知らないです」
「ああ」
「やっぱり一度は家に」
 と言ったら、抱き締められて顎掴まれて、ふわって辰巳さんの匂いがしたと思ったらちゅーしてた。
 顔に金髪がかかってくすぐったい、深くて唇食まれて舌が入ってくる。
 待って、これ腰抜けるやつな気がするって後ろに顔を引いたら辰巳さんは唇舐めながらニヤッてした。

「直ぐ顔赤くなっちゃうね?」
「直ぐ激しくするからでしょ!」

 むうってすれば頬を親指が撫でてくる、顎にかかる指輪がひんやり冷たかった。

「大丈夫ですよ、そこら辺は僕とお兄さんで済ませてありますから」
「何を?」
「色々と? 寧々ちゃんは僕と結婚することだけ考えていればいいよ」
「でも」

 と眉を寄せたら、眉間にキスされて高い鼻がこめかみに潜り込む。辰巳さんはそのまま、

「もしかしたら今度こそお母さんも……って考えているのかもしれないけど、人ってそうそう変わらないからね」
「……」


「話さなかったけど一度寧々ちゃんのお母さんが会社に来たよ」


「??」
 顔上げたいけど、唇に押えられて向けない。
「受付に【八雲寧々に来客が来たら、必ず僕か、いなければ桐生か袴田を通すように】と話してある。もちろん僕が不在の時は連絡をいれるように言ってる」
「そうなんですか?」
「僕の目の届かない所で誰一人君に触れさせない。結論から言うとお母さんは同じだった。少し話したけど、帰ってしまったよ」
「…………」

 辰巳さん、なんて言われたのかな、きっと酷い事言われてる。緊張して変な汗が背中を流れた、跳ね上がった心拍が戻らなくって苦しい、ぎゅうって辰巳さんに回した腕に力を込めたら優しく髪を撫でてくれた。
「大丈夫だよ、もうこの話はおしまいです」
「…………はい」
「結婚するなら寧々の証人は俺がやる! ってお兄さん快諾してくれてるし、僕の証人は弟でも母でも祖父でも誰でもいいんだ。寧々ちゃんと結婚できるなら」
「はい」
 眉間から唇を離した辰巳さんは私の顔を見て頷いて。

「お母さんの話をしても泣かなくなったね」
「…………だって私だって今度お母さんになるんだから、いつまでも子供でいられないもん」
「うん、寧々ちゃんは本当に強くていい子」

 ちょっと強がってみたけど、でも本当の事だ。それに私の知らない所で辰巳さんいっぱい私を守ってくれてるのに、いつまでも怖がっていたら、信用してないみたいでやだもん。

 それで眼鏡キリってしたら、辰巳さんが教えてくれたんだ。
 婚姻届けって自作できるんですよって。



「うーん、なんだろう……尾台さんにあげるのなら、縁が眼鏡とか猫の柄とか? パッと思いつくんだけど、自分となるとあれもこれも入れたくて、たくさん思い出詰め込みすぎてゴチャゴチャしちゃう」
「いいんじゃないの? アルバム見ながら印象に残ってるアイテムをイラストにしてたくさん散りばめるの」



「ふぅん? っで? だったら俺のイラストはどこに入るの?」



 私の向かい側でコタツに足入れて寝っ転がっている義弟がスマホ弄りながらつぶやいて、お兄ちゃんは眼鏡直しながらそっちに視線を向けた。

「ドロ? これは僕達の思い出の話だから、申し訳ないけど弟が入るスペースはないんだよ」
「なんでだよ! 小さい時にーちゃんと結婚したい! って言ったらいいよって言ったろ?!」


 本当……こんな時もお兄ちゃんお兄ちゃんって、私達の話を邪魔してきて何なんだよ! これには私もムッときて、バンっと机を叩いてしまった、眼鏡を直してちょっと睨む。
「ドロ君!」
「あ?」
 大きな声でびしっと決めてやらないと!




「その話もっとkwskッ!!!」


 あ、これには私もムッじゃない、ムラッときての間違えだった。
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