【R18】モブキャラ喪女を寵愛中

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寧々ちゃんまだまだ寵愛中

すないぱーねね

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 時刻は夜十時、場所は迎賓館としても使われる一流ホテル、私のいる場所はパーティー会場に面したフラワーガーデンだ。美しく算定された庭の茂みに潜んで、その時間が来るまで私は息を殺す。

 普段はこんなもの着ないけれど、誰かに見つかった時に怪しまれないように、今日は肩の開いた真紅のタイトドレスに身を包んでいた。
 動きにくいからと片側を引き裂いてスリットに改造したけれど、きっと私の姿なんて誰も見ないだろう。
 いや、見られる前に仕留めるのが、私達始末屋の流儀なのだ。
 顔なんてバレたが最後、我が身、命一つで償えない位の人を私はこの手で殺してきている。
 神様なんていないのだと思いながら、それでも最期には神への鎮魂の言葉を心の中で呟いた。

 変装の一環と施された化粧のせいで唇がべとつく、早く顔を洗うにはターゲットを狩るのが一番速いだろう、とドレスなのも気にしないで地面に伏せた。
 両肘を地面に立てて、スコープを覗いてレティクルを調整する。これが私の相棒のスナイパーライフル、SVLK-14S、肩にずっしりと感じる慣れ親しんだこの感触が心地いい。
 銃口に向かって銃身を撫でて、この子だけが私の味方だとキスをした、なんの取り柄のない私が持って生まれた才能として買われたのが、この長距離射撃だ。
 標的が何百メートル先にいようと風が吹こうと、一度銃口が熱を持てばその先は死に繋がっていた。

 ライフルには二種類ある、ボルトアクションタイプとセミオートタイプ。
 私の子はボトルアクション、弾薬の補充をスナイパー自身が行う必要があるので、連射したくても射撃間隔が長く、必然的に隙ができる。その為戦場ではあまり使われていない。
 しかし構造が単純でメンテナンスが容易なのだ、そして銃は構造が単純であればあるほど、命中精度は向上する、そう、、こっちの方が有利なのだ。
 足止めや致命傷なんて生温い言葉はいらない、狙うのは脳漿一撃、だってその方が苦しまずに済むでしょう。

 そして今日もまた、生活の為に私はスコープに目を凝らしながら獲物を捕らえる。

 狙った先は豪華絢爛なホテルのパーティ会場だ、視界に数十メートル先の宴が鮮明に映って、そこには仮面つけた男女がひしめいている、ダンスに、薬に、酒にとパーティーは盛り上がっているようだ。


 不意に、その中に一人の男が入って来て大半の人間がそちらに視線を向けた、拍手している人もいる。

 来た、っと私はそいつを目で追った、以来された写真通りの男だった。
金髪、長身、光沢のある漆黒のエレガントなスーツ、そして光に反射する眼鏡、禁煙会場の中で彼だけ許された高級H.アップマン マグナム56 EL 2015
 コイツか、と唾を嚥下した瞬間、ゾワっと全身が粟立って、体が凍り付くようだった。
 だって、ありえない……そいつと一瞬目があったような気がしたからだ。
 しかも、私を見て、笑って……?

 慌てて、ライフルから顔を背けて、異様に噴き出た背汗と動悸を呼吸で抑える……怖い。
 こんなの、初めての感情だ、怖い……。
 指先が震えて、なんだっけ、普段なら感情をもっていかれないように、ターゲットの素性も聞かないし依頼に内容も詳しくは聞かない。
 私はただ、報酬の対価に標的を打つだけ、それだけだったのに、数日前の記憶を必死に蘇らせて、初めて感じた動揺を落ち着かせようとた。
 確か、ターゲットはそうだ、タツミ ロドニーノヴィチ エロメチカ、ここ日本で海外の不動産売買に貿易、人材派遣会社を経営していると見せて、裏の顔はロシアマフィアのボス、色々ヤバイ事してるって噂だったのだ。
 この国に来てからは温厚派で通っていて、だからまさかこの銃口に気が付くはずなんて……。

 深呼吸して、もう一度スコープを覗けば彼はこっちに警戒する様子もなく、談笑していた。
 照準を定めて、彼の表情を見ようとして…………って何をしてるんだ私は、でも胸がざわついて引き金に触れる指が、どうしても震える。

 こんなんじゃダメだって顔を振って時計を見る、そろそろ合図が出る時間だ、ターゲットが会場中央で挨拶をするって聞いている。
 目を瞑って、合図の瞬間にあの眉間に銃弾を穿って即死させる、眉間に銃弾を穿って即死させる、呪文のように唱えて何度も自分に言い聞かせた。

 そして会場が暗くなる、スポットライトが当たって、ああ、来たか、とイヤホンから通信のノイズが聞こえた瞬間だった。
 まだ合図が出されていないのに、どこからともなく一発の銃声が聞こえて、無意識に舌打ちをした。
 クソ、私の他にもスナイパーを雇っていやがったかと、必死に会場を覗く、そしてまたさっきとは違う発砲音、慌てた同業者が我先にと獲物を狩りたいのだろう、煙渦巻く会場に連射している。
 これじゃあ打ちたくても……それでも目を凝らせば、金髪が光って、いた! と一発打ち込むも、まさかヤツはこの距離の狙撃を半身で避けたのだ、信じられない、それはまるで打たれる事を予期しているかのような動きで、でも冷静を欠くには速い、私には奴を殺す任務があると、大きくなる息を鎮めながら獲物を探した。
 真っ暗な会場は煙包まれ、こっちにまで阿鼻叫喚の悲鳴が響き渡ってくる。
 無駄な殺しをする余裕はないと、スコープを覗いていたら、ふわっと風に舞う嗅ぎ慣れない葉巻の匂いに背筋が凍った。



 いる、




奴が背後にいる、と振り返れば散りばめられた星空を背景に葉巻を燻らす標的が立っていた、どうやって? だってさっきまであの会場で。
 眼鏡の奥で翡翠の瞳を動かしながら全身舐め回すよに見下されて鳥肌が立つ、いつ、どうやってここまで? なんてそんなのは今更どうでもいい。
高価な葉巻を投げ捨ててヤツは嬉しそうに笑った。
「僕を狙っているのが、こんな愛くるしい東洋の天使だったは驚きだね?」
「…………」
 パキッとさっきまで聞こえなかった小枝を踏んで一歩近寄られて、座ったままの体勢からどう反撃しようと、思考を巡らせる。
 ヤツは自分を狙っていたスナイパーに臆する様子もなく近付いてきて、私の相棒を見てフッと鼻を鳴らした。
「ロバエフ・アームズSVLK-14S、ロシア製最高位のライフルだね。全長1,430mm、重量10キログラム女の子が持つ得物にしてはちょっと大きすぎないかな」
「………」
「僕の得物も見るかい?」
 と、場に相応しくないその呑気とも言える声色に動揺して隙を与えてしまった自分を呪った、だって待っていたのは、もう死でしかない事を悟ってしまったから。


 先に抜かれてしまったのだ。銃を。


 会話の一瞬の隙に、小指に光る金色に指輪が煌めいて気を取られていたら、ホルスターにあった拳銃が抜かれていたのだ、息を吐いた時には大きな手にしっかりと銃が握られていた、もちろん私を殺す為にしっかり銃口はこちらを向いている。
 ここで私が隠している銃を抜こうとしても、間に合わない、先に引き金を引かれるだけだ。
数秒沈黙して、彼が低い声で言う。





「立ちなさい」



 親指がカチッと撃鉄を起こして、喉に向けられた銃口に唇を噛んで立ち上がった、そして。
「蹴って?」
「…………」
 お前のライフルを、と顎で催促されてギリっと下唇に歯が擦れる、この子だけだと愛を誓った相棒を自ら後ろに追いやって、前を向けばひんやり冷たい銃口が喉に宛がわれた。
 至近距離で目が合って、息を飲む…………恐怖と、美貌と……ここが修羅場だと忘れてしまう程の色気と綺麗な顔、生きててこんな人と話した経験なんてなくて声も出ない。
 銃口がつつっと胸に下がって、谷間に潜り込んで息が可笑しくなる、彼は鉄がぶつかる音に頷いてそこから私が隠し持っていたベレッタを引き抜いた、足元に雑に投げると、もういいかなっと銃をホルスターに戻した。
 そして、軽々私の体を抱き上げて笑う。

「君に会いたくて罠を仕掛けてみました」

 なんて言われて、私も微笑んだ、だってやっと隙ができたんだもの。太腿に仕込まれたナイフホルダーからダガーを引き抜いて、喉めがけて突き立てれば。
「いけない子、まだ抵抗するんだ?」
「あ! いやだめ」
「可愛い声だね。でも目が合った瞬間に君の負けだって気付いていたでしょう?」
 顔に触れる寸前で刀身を躊躇なく手で握られて、グリップに真っ赤な血が滲む、温かい彼の液体が手に触れて力が抜けてしまった、そのままダガーを奪われて投げ捨てられて……怯んだ声が漏れた瞬間強く体を抱き寄せらえて唇を塞がれてしまった、みるみる体が硬直して。

「ん、んんんッ……!」
「こういうの初めて? 甘い声漏れてるけど」

 唇が密着して気持ち悪かったグロスを舐め取られて、舌が入ってくる。口内を蹂躙され交差する息も体も熱くて可笑しくなりそうで、大きな体にしがみ付くしかなった。
 押し返したくても全然離してくれなくて舌が絡まって擦られて、こんなの何も知らなくて、下半身に何かが溢れてくる。
 血液で滑る手で頬を擦られて、怖いのに殺されるかもしれないのに、少し気持ちよくて……。

 唾液が絡む距離で緑の瞳に見つめられて胸苦しい。
「ねえ君はもう僕に七回殺されてるんだよ」
されてないって首を振るけど、キスされて言えない。
「一回目、依頼を受けた時、二回目、目があった時、三回目、背後を取られた時、四回目、銃を抜いた時、五回目、喉に銃を当てた時、六回目、最後のナイフも通用しなかった時、七回目、こうして僕に体許してる時」
「…………はい」

 返事はそれしか答えられかった、それより八回目、九回目って耳や首を愛撫されて、感じた事ない抗えない快感に体の震えが止まらない。
 顔についた血が乾く頃に、十回目、と舌を出されて自分から口を開けてしまって、ああ、もうここから抜け出せないのだと思った。














「と、いう話を書いてみました」
「ブラボー愛のスナイパー」

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