64 / 156
寧々ちゃんまだまだ寵愛中
私の可愛い眼鏡ちゃん ◎
しおりを挟む
皆さんこんにちは! 尾台 絵夢です、営業二課で事務員さんをしてます。
お客さんと上手くいかない日もあるけれど、仕事はそれなりに充実しています。
好きな言葉は袴田です!
それでそれで、そんな私には後輩が二人いて一人はアルバイトの恵ちゃん。
アルバイト二年目でこないだ更新どうするのって聞いたら正社員登用試験受けてみようかなぁって言ってた、受けて受けて。
後もう一人は寧々ちゃんって眼鏡が可愛い女の子、今その寧々ちゃんに午後イチお願いしたい書類を届けに行く所です。
時刻はお昼休み中でして、前まで一緒にお昼食べていた日もあったけれど、今はさっぱりよ。
少し寂しいけど……子供はいつか親を離れて行くものだわって喜びましょう。
それで…………あ、いたいた、やっぱりあそこね。
寧々ちゃんの背中が見えたのでポンポンと叩けば伏せていた瞼がゆっくり開いた。
「寧ー々ーちゃんおーきーて」
「ん……尾台さ……?」
「ごめんね、せっかく寝てたのに」
「おはよう、angel」
辰巳さんが額の柔らかい髪を分けてキスして、寧々ちゃんは眠たそうに瞬きをしながら私を見る、そしたらハッと驚いて。
「わわわわ! そうだここ会社!」
「どんだけ二人の世界? まあいいや、これ目通しておいてって書類、さっき渡すの忘れてたから」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあまたね」
辰巳さんは寧々ちゃんを抱きながらPCを操作してたからこっちは見てなかったけど、一応頭を下げておいた。
いや、これ普通の会社じゃありえないと思うんだけど、寧々ちゃんが小さいせいか、辰巳さんの見た目のせいか皆あの状態でも気にせず接してる。
それは突然「お昼は辰巳さんの所に行ってきます」って言った日に寧々ちゃんがスタスタ部長席に向かって何か話した後辰巳さんに跨った時は、ええええぇぇえ??!! ってなったけど、直におにぎり食べだして、大声で話すでもない、いやらしいことするでもない、食べ終わっても静かにじっと胸にくっついてるだけで、時間になったら戻ってきたから。
ああ、うん、あれは座り心地のいい椅子みたんいなもんなのかなって謎の納得をしてしまった。
自席に戻って両手で頬杖をつきながら隣でスマホ片手にお菓子食べてるめぐちゃんに聞いてみる。
「ねえ私が会社で袴田君に跨ってお昼食べ」
「訴える」
「ですよね」
寧々ちゃんの方見たらさっきの書類読みながらパックのジュース飲ませてもらってた。
いいな、私も寧々ちゃんに何か飲ませたいな、餌付けたいな何この手のムズムズする感じ。
はあ、それにしても凄いな辰巳さんは本当に寧々ちゃんを射止めるなんて、とついこないだのことを思い出した。
それはある日の午後、私と桐生さんは辰巳さんに呼び出されていた。
理由は何となく予想はついてる、こないだ寧々ちゃんが取引先を怒らせてしまって危うく契約を中断されてしまう所だった。
それを私と桐生さんでお詫びに行ってトラブルは一旦収束した、担当はまた私に戻された。
相手が相当怒ってるから直に行こうって、辰巳さんには事後報告だった。
ミーティングルームに行く足が重くって部屋の前でうおおおおお……ってファイル抱き締めて震えてたら、肩を叩かれた。
「大丈夫だよ尾台、スケジュール調整できなかった僕の責任だから」
「そんなこと言ったら一番近くで見てたの私なのに……でもなんでしょう、寧々ちゃんずっと仕事してるのに進捗と日報に記載される仕事量と……何か違和感があって」
「そうなんだよね、仕事できるはずなのに上手く回せてないよね。相談してって言うんだけど大丈夫ですって返ってきちゃうし、でも容量だけ見るとできない仕事量じゃないし……」
「うん……それで気になって手出しちゃうと、謝らるから声掛けるのも難しいんです」
と、まさかその時は一課の仕事をやらされてるんて思わなくて、で、時間になったから入室したら辰巳さんは仕事中で私達の気付いてどうぞっと前の椅子を示した。
二人で席に着けば辰巳さんは左手に握ったペンを止めて言った。
「気付いていると思うから、率直に言いますね。なぜ八雲の担当を僕に断りもせず外したんですか。あれは僕が直接彼女に渡した仕事だったんですけど」
「それは先日お話した通り」
「桐生、僕は同じ話を二度聞きません時間の無駄だから。では結果、君達は何を得ましたか。はい尾台」
「結果……得た? んっと……」
「聞いて直に答えが出ないなら何も得られなかったってことだね。だって今から君の口から出てくる言葉は言い訳だから」
口を結んですみませんって言いそうになる、特に苛立った口調な訳じゃない、辰巳さんはいつだって怒らないし今も冷静に、間を置いて話してくれる。
長い指が組んでる腕を叩いて、な、何か言わなきゃなんだけど、そう、きっとここで桐生さんが僕が……と続けても犯人探しはしてないてって言われるだろうし、少しの沈黙があって辰巳さんは頷いて眼鏡を直した。
「じゃあ別の観点から、尾台はさ……何で寧々ちゃんを叱ってあげないの」
「え?」
「自分で言ってたよね怒りたくないってそれはそうだよ、自分本位に感情に任せて利益と保身の為に相手を威圧する行為は何の意味もないよ。でもさ叱るのは違うでしょ、部下を思って相手本位になって成長する為のアドバイスして正しい方向に導いてあげること、それが叱るだよ。有能な彼氏がいるんだからもっと彼から学びなさい」
「はい」
「二歳児にさ、積木渡して一発で全部積み上がると思う? 失敗するでしょ何度も、どうしてその成功や達成に繋がる大切な失敗を君達が摘み取るのかな。手を出して積み上げるはもちろん何の為にもならないよ。だからって、できないと決めつけて積み木を取り上げることは、彼女を否定してると等しいって分からない? 結局君達の行動は穏便に済ませたいって自分達のことしか考えていないんだよ。桐生はさ管理職に就いたんだから、体動かしてないで頭動かしましょう」
「はい」
「教育っていうのは、作るのではなく育てることです。あの時上手く彼女を叱ってあげられたら、目の前で起きた事実だけじゃなくて、他の所に気付けたはずなんだ。どうしてこんなことになったのかって聞いてあげるべきでしたよ。このまま同じようなことが起こったら、また君達は彼女から理由も聞かずに仕事を取り上げますか。その結果彼女はどうなりますか、君達がしたことの恐ろしさにもっと気付いて下さい。主観的にならずに素直な気持ちを伝えて、双方が納得できるまで話し合う、それがコミュニケ―ションでしょう。もし今僕がした内容に納得できない部分があればいくらでも意見を下さい」
二人共首を横に振って、納得できないと言うか……。
「むしろ腑に落ちた感じで……トラブルは解決したのに、解決してないみたいな……毎日変な感覚なんです。そうですよね寧々ちゃんの中では何も解決してないですね」
「でも寧々ちゃんも怖い思いしただろうし、って触れられなくて僕も障りない態度を取ってました」
「まあ大丈夫、君達は素直で思いやりのある人間だから、この話をしっかり心に留めておけば、二度同じ失敗は繰り返さないでしょう。そうだな……でも彼女の教育はもう少し根幹の所で助けが必要そうだから僕に任せてもらっていいかな」
そんなこと聞かれても頷くだけだけど、
「辰巳さんが? 私の席に座って? ですか」
「それは別に構わないですけど、具体的に何をするんですか」
「まあ仕事に関わると言うより、少しお話ししようかな……と。ああ、明日にでも彼女呼び出しておいてよ」
「呼び出すって……な、何を理由にですか」
だって寧々ちゃんなんて一番辰巳さん苦手そうだし。
「んー? 何かないの? 桐生君」
「何か? 何か……ですか、うーん……ああ、こないだ寧々ちゃんメンタルヘルスの資格取ってたけど……」
言えば辰巳さんは指をパチンと鳴らした。
「よし、それで呼び出しといて。で、難しい話はここらでおしまいにしましょうか」
辰巳さんは、ふうと息を吐いて椅子に寄りかかると頭の後ろに手を回して天井を見て呟いた。
「寧々ちゃんってさぁ…………可愛いよねぇ……」
「ええええぇええぇえ……」
「辰巳さん、もしかしてそれ言いたくて僕達呼び出してとか言いませんよね」
「どう、尾台ちゃん恋って楽しい?」
「へ? 恋? 恋!! それはもう楽しいですよ!! 四六時中相手のこと考えてキャッキャってなります」
「う!!」
「いいなあいいなあ、僕も恋いしたいな、いやもうしてる気がするな」
辰巳さんは目瞑ってふふふふふふふってにんまりしてて、え? でもそれって。
「ん? その寧々ちゃんに恋してるってことですか」
「yes」
「犯罪じゃないですか!」
「何を言ってるんだよ桐生君彼女は成人した女性だろ。ああ、僕が十代に見えるって?」
「いや、全然見えませんけど」
「なんて言うかあの図柄が……辰巳さんと小さくて眼鏡で無垢な寧々ちゃんっていうのが」
「そんなことを言ったら僕だって童貞だから無垢ですよ」
「ええええぇえぇぇぇえ…………」
「あらかじめ言っておきますけど僕達協力はできませんからね」
「協力? そんなものは必要ないよ。もう僕達は神に導かれ運命を共有した、後はタイミングだけだ」
「タイミング……」
「そうだよ、チャンスとタイミング、人生はいつも駆け引きだって……桐生君は痛い程分かってるだろ? まあ黙って僕を見ていればいいさ。ああ、恋のキューピッドになりたいとか、もちろんそういうのは大歓迎だけれどね?」
「恋のキューピッド?!!!」
何それなりたい!! 人を幸せにするのいい!!!
辰巳さんは口元を隠すように手を置いて。
「時はきた、神との契約は交わされた」
「え? 何て何て?」
「尾台も聞こえた? 辰巳さん今何て言ったんですか」
その答えに辰巳さんはぴっと人差し指を立てて、
「Where there is a will、there is a way. 一週間で彼女の全てを手に入れます」
自信たっぷりに言ってミーティングはお開きになった。
そして見事に翌週、寧々ちゃんは辰巳さんと結婚するのって言った…………しゅごい!!
ちなみにキューピッドになったのだから、役に立たないと! と思って辰巳さんに寧々ちゃんが下着欲しがってたよって教えてあげたのは私です。
それにしても、月曜日おはようって笑って言ってくれた私の眼鏡ちゃんは本当に可愛かったなあ。
お客さんと上手くいかない日もあるけれど、仕事はそれなりに充実しています。
好きな言葉は袴田です!
それでそれで、そんな私には後輩が二人いて一人はアルバイトの恵ちゃん。
アルバイト二年目でこないだ更新どうするのって聞いたら正社員登用試験受けてみようかなぁって言ってた、受けて受けて。
後もう一人は寧々ちゃんって眼鏡が可愛い女の子、今その寧々ちゃんに午後イチお願いしたい書類を届けに行く所です。
時刻はお昼休み中でして、前まで一緒にお昼食べていた日もあったけれど、今はさっぱりよ。
少し寂しいけど……子供はいつか親を離れて行くものだわって喜びましょう。
それで…………あ、いたいた、やっぱりあそこね。
寧々ちゃんの背中が見えたのでポンポンと叩けば伏せていた瞼がゆっくり開いた。
「寧ー々ーちゃんおーきーて」
「ん……尾台さ……?」
「ごめんね、せっかく寝てたのに」
「おはよう、angel」
辰巳さんが額の柔らかい髪を分けてキスして、寧々ちゃんは眠たそうに瞬きをしながら私を見る、そしたらハッと驚いて。
「わわわわ! そうだここ会社!」
「どんだけ二人の世界? まあいいや、これ目通しておいてって書類、さっき渡すの忘れてたから」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあまたね」
辰巳さんは寧々ちゃんを抱きながらPCを操作してたからこっちは見てなかったけど、一応頭を下げておいた。
いや、これ普通の会社じゃありえないと思うんだけど、寧々ちゃんが小さいせいか、辰巳さんの見た目のせいか皆あの状態でも気にせず接してる。
それは突然「お昼は辰巳さんの所に行ってきます」って言った日に寧々ちゃんがスタスタ部長席に向かって何か話した後辰巳さんに跨った時は、ええええぇぇえ??!! ってなったけど、直におにぎり食べだして、大声で話すでもない、いやらしいことするでもない、食べ終わっても静かにじっと胸にくっついてるだけで、時間になったら戻ってきたから。
ああ、うん、あれは座り心地のいい椅子みたんいなもんなのかなって謎の納得をしてしまった。
自席に戻って両手で頬杖をつきながら隣でスマホ片手にお菓子食べてるめぐちゃんに聞いてみる。
「ねえ私が会社で袴田君に跨ってお昼食べ」
「訴える」
「ですよね」
寧々ちゃんの方見たらさっきの書類読みながらパックのジュース飲ませてもらってた。
いいな、私も寧々ちゃんに何か飲ませたいな、餌付けたいな何この手のムズムズする感じ。
はあ、それにしても凄いな辰巳さんは本当に寧々ちゃんを射止めるなんて、とついこないだのことを思い出した。
それはある日の午後、私と桐生さんは辰巳さんに呼び出されていた。
理由は何となく予想はついてる、こないだ寧々ちゃんが取引先を怒らせてしまって危うく契約を中断されてしまう所だった。
それを私と桐生さんでお詫びに行ってトラブルは一旦収束した、担当はまた私に戻された。
相手が相当怒ってるから直に行こうって、辰巳さんには事後報告だった。
ミーティングルームに行く足が重くって部屋の前でうおおおおお……ってファイル抱き締めて震えてたら、肩を叩かれた。
「大丈夫だよ尾台、スケジュール調整できなかった僕の責任だから」
「そんなこと言ったら一番近くで見てたの私なのに……でもなんでしょう、寧々ちゃんずっと仕事してるのに進捗と日報に記載される仕事量と……何か違和感があって」
「そうなんだよね、仕事できるはずなのに上手く回せてないよね。相談してって言うんだけど大丈夫ですって返ってきちゃうし、でも容量だけ見るとできない仕事量じゃないし……」
「うん……それで気になって手出しちゃうと、謝らるから声掛けるのも難しいんです」
と、まさかその時は一課の仕事をやらされてるんて思わなくて、で、時間になったから入室したら辰巳さんは仕事中で私達の気付いてどうぞっと前の椅子を示した。
二人で席に着けば辰巳さんは左手に握ったペンを止めて言った。
「気付いていると思うから、率直に言いますね。なぜ八雲の担当を僕に断りもせず外したんですか。あれは僕が直接彼女に渡した仕事だったんですけど」
「それは先日お話した通り」
「桐生、僕は同じ話を二度聞きません時間の無駄だから。では結果、君達は何を得ましたか。はい尾台」
「結果……得た? んっと……」
「聞いて直に答えが出ないなら何も得られなかったってことだね。だって今から君の口から出てくる言葉は言い訳だから」
口を結んですみませんって言いそうになる、特に苛立った口調な訳じゃない、辰巳さんはいつだって怒らないし今も冷静に、間を置いて話してくれる。
長い指が組んでる腕を叩いて、な、何か言わなきゃなんだけど、そう、きっとここで桐生さんが僕が……と続けても犯人探しはしてないてって言われるだろうし、少しの沈黙があって辰巳さんは頷いて眼鏡を直した。
「じゃあ別の観点から、尾台はさ……何で寧々ちゃんを叱ってあげないの」
「え?」
「自分で言ってたよね怒りたくないってそれはそうだよ、自分本位に感情に任せて利益と保身の為に相手を威圧する行為は何の意味もないよ。でもさ叱るのは違うでしょ、部下を思って相手本位になって成長する為のアドバイスして正しい方向に導いてあげること、それが叱るだよ。有能な彼氏がいるんだからもっと彼から学びなさい」
「はい」
「二歳児にさ、積木渡して一発で全部積み上がると思う? 失敗するでしょ何度も、どうしてその成功や達成に繋がる大切な失敗を君達が摘み取るのかな。手を出して積み上げるはもちろん何の為にもならないよ。だからって、できないと決めつけて積み木を取り上げることは、彼女を否定してると等しいって分からない? 結局君達の行動は穏便に済ませたいって自分達のことしか考えていないんだよ。桐生はさ管理職に就いたんだから、体動かしてないで頭動かしましょう」
「はい」
「教育っていうのは、作るのではなく育てることです。あの時上手く彼女を叱ってあげられたら、目の前で起きた事実だけじゃなくて、他の所に気付けたはずなんだ。どうしてこんなことになったのかって聞いてあげるべきでしたよ。このまま同じようなことが起こったら、また君達は彼女から理由も聞かずに仕事を取り上げますか。その結果彼女はどうなりますか、君達がしたことの恐ろしさにもっと気付いて下さい。主観的にならずに素直な気持ちを伝えて、双方が納得できるまで話し合う、それがコミュニケ―ションでしょう。もし今僕がした内容に納得できない部分があればいくらでも意見を下さい」
二人共首を横に振って、納得できないと言うか……。
「むしろ腑に落ちた感じで……トラブルは解決したのに、解決してないみたいな……毎日変な感覚なんです。そうですよね寧々ちゃんの中では何も解決してないですね」
「でも寧々ちゃんも怖い思いしただろうし、って触れられなくて僕も障りない態度を取ってました」
「まあ大丈夫、君達は素直で思いやりのある人間だから、この話をしっかり心に留めておけば、二度同じ失敗は繰り返さないでしょう。そうだな……でも彼女の教育はもう少し根幹の所で助けが必要そうだから僕に任せてもらっていいかな」
そんなこと聞かれても頷くだけだけど、
「辰巳さんが? 私の席に座って? ですか」
「それは別に構わないですけど、具体的に何をするんですか」
「まあ仕事に関わると言うより、少しお話ししようかな……と。ああ、明日にでも彼女呼び出しておいてよ」
「呼び出すって……な、何を理由にですか」
だって寧々ちゃんなんて一番辰巳さん苦手そうだし。
「んー? 何かないの? 桐生君」
「何か? 何か……ですか、うーん……ああ、こないだ寧々ちゃんメンタルヘルスの資格取ってたけど……」
言えば辰巳さんは指をパチンと鳴らした。
「よし、それで呼び出しといて。で、難しい話はここらでおしまいにしましょうか」
辰巳さんは、ふうと息を吐いて椅子に寄りかかると頭の後ろに手を回して天井を見て呟いた。
「寧々ちゃんってさぁ…………可愛いよねぇ……」
「ええええぇええぇえ……」
「辰巳さん、もしかしてそれ言いたくて僕達呼び出してとか言いませんよね」
「どう、尾台ちゃん恋って楽しい?」
「へ? 恋? 恋!! それはもう楽しいですよ!! 四六時中相手のこと考えてキャッキャってなります」
「う!!」
「いいなあいいなあ、僕も恋いしたいな、いやもうしてる気がするな」
辰巳さんは目瞑ってふふふふふふふってにんまりしてて、え? でもそれって。
「ん? その寧々ちゃんに恋してるってことですか」
「yes」
「犯罪じゃないですか!」
「何を言ってるんだよ桐生君彼女は成人した女性だろ。ああ、僕が十代に見えるって?」
「いや、全然見えませんけど」
「なんて言うかあの図柄が……辰巳さんと小さくて眼鏡で無垢な寧々ちゃんっていうのが」
「そんなことを言ったら僕だって童貞だから無垢ですよ」
「ええええぇえぇぇぇえ…………」
「あらかじめ言っておきますけど僕達協力はできませんからね」
「協力? そんなものは必要ないよ。もう僕達は神に導かれ運命を共有した、後はタイミングだけだ」
「タイミング……」
「そうだよ、チャンスとタイミング、人生はいつも駆け引きだって……桐生君は痛い程分かってるだろ? まあ黙って僕を見ていればいいさ。ああ、恋のキューピッドになりたいとか、もちろんそういうのは大歓迎だけれどね?」
「恋のキューピッド?!!!」
何それなりたい!! 人を幸せにするのいい!!!
辰巳さんは口元を隠すように手を置いて。
「時はきた、神との契約は交わされた」
「え? 何て何て?」
「尾台も聞こえた? 辰巳さん今何て言ったんですか」
その答えに辰巳さんはぴっと人差し指を立てて、
「Where there is a will、there is a way. 一週間で彼女の全てを手に入れます」
自信たっぷりに言ってミーティングはお開きになった。
そして見事に翌週、寧々ちゃんは辰巳さんと結婚するのって言った…………しゅごい!!
ちなみにキューピッドになったのだから、役に立たないと! と思って辰巳さんに寧々ちゃんが下着欲しがってたよって教えてあげたのは私です。
それにしても、月曜日おはようって笑って言ってくれた私の眼鏡ちゃんは本当に可愛かったなあ。
0
お気に入りに追加
1,062
あなたにおすすめの小説
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※完結済み、手直ししながら随時upしていきます
※サムネにAI生成画像を使用しています
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
婚姻届の罠に落ちたら
神原オホカミ【書籍発売中】
恋愛
年下の彼は有無を言わさず強引に追い詰めてきて――
中途採用で就社した『杏子(きょうこ)』の前に突如現れた海外帰りの営業職。
そのうちの一人は、高校まで杏子をいじめていた年下の幼馴染だった。
幼馴染の『晴(はる)』は過去に書いた婚姻届をちらつかせ
彼氏ができたら破棄するが、そうじゃなきゃ俺のものになれと迫ってきて……。
恋愛下手な地味女子×ぐいぐいせまってくる幼馴染
オフィスで繰り広げられる
溺愛系じれじれこじらせラブコメ。
内容が無理な人はそっと閉じてネガティヴコメントは控えてください、お願いしますm(_ _)m
◆レーティングマークは念のためです。
◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。
◆無断転写や内容の模倣はご遠慮ください。
◆文章をAI学習に使うことは絶対にしないでください。
◆アルファポリスさん/エブリスタさん/カクヨムさん/なろうさんで掲載してます。
〇構想執筆:2020年、改稿投稿:2024年
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~
真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる