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アフター6
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お、落ち着け……落ち着くのよ寧々……。
何でも言って下さいねって本気かよ! って言いたいけど、彼らは厚意で来てくれたのよ! そしてここは会社なの。
変な事考えちゃいけないわ! 止めなさい寧々!! 仕事中よ!
冷静沈着を装って震えた手で眼鏡を直した。
「なななななな何でもって? え? 私はたたたたただイベントに参加するだけなのでででで頭下げられるような事は……」
「だーから! そのイベントってアダルトなイベントじゃないッスか、ちょっと試写会に行くとは訳が違うでしょ僕達手繋いで行け、とか言われてて困ってたんスよ」
「?!!!!!!!!」
「っで、そんなんキモくて死ねる!! って時に八雲さんと辰巳さんが行ってくれるって聞いたんで、お礼したいなって」
手ちゅないで行ったら良かったんとちゃうんか!
よっしゃ今から熱振り返したフリして倒れたろ!
って、そんな場合じゃない、そうなんだそんなラブラブなカップルイベントなんだ! 大丈夫か!
いや心配しなくても私辰巳さんの腕にしがみ付いてスリスリちゅっちゅしながら行く予定だから平気か、いや、むしろそれはやりすぎか!
「で、何か欲しい物あります? 土地や車は無理だけどコンビニで買える程度ならお礼したいんスけど、お菓子好きッスか?」
「甘い物好きですか?」
お菓子も好きです、甘い物も好きです、でもBでLがもぉおっと好きです。
「いりません」
「「え」」
「食べ物は入りませんのでお二人で向き合ってもらっていいですか」
「は? 向き合う?」
「こうですか」
ちょうど、新井さんは沖田さんの方を向いていて、沖田さんも少し体を傾ける。
「何もしなくていいです、変な意味ではありません。ただ一言もらえれば私はもう満足なので」
「ん? 何ですか」
「一言って?」
頭を下げて真剣にお願いした。
「新井さん、沖田さんに向かってちょっと切なそうな声で「ほら翔電気消したぞ、顔隠すなよ……」って言ってもらっていいですか」
「「は?!!」」
「はい、3、2……」
「やだやだやだやだやだ! ぜってーやだ!!!! 言わねー!」
「甘い物!! 甘い物にしましょう八雲さんんん!!!!」
「具体的な言葉はなかったと思うのですが」
「だからですよ!! その個々の想像力に訴えかけたセリフ! 逆に卑猥ッ!!」
「なんなんですか、オレどういう状況でハイジの前で顔隠してるの?!! 恥ずかしいの? 恥ずかしい状態なの?」
「止めろ翔!」
「お前何電気消してんだボケ! 明るくしとけよハゲ! 何だ? お前の部屋のアレか? サッカーボールのライトを消したんか?」
「考えるんじゃない! 相手思う壺だぞ!」
そしたら、バンッ!! って隣で机を叩かれて三人でビク! ってなる。
「寧々ちゃん!!」
それは尾台さんで、ちょっと怒った顔だ……わあ、どうしよう、そりゃそうだよな、これ昼休みじゃないし、やり過ぎちゃった……。
「すいません! 仕事中にふざけて……」
頭を下げたら、尾台さんはキリって顔しながら私の頬を掠めるボブを耳掛けてゴニョゴニョ耳元で何か言ってきた。
「え? 何スか尾台さん」
「目怖いんですけど」
私は尾台さんの言葉に深く頷いて、今度は上司の後ろ盾もあるんだから二人に諭すように言った。
「新井さんさっきの変更で沖田さんにはにかんで「もう痛くないだろ」って肩を」
「だから言わねーって言ってんだろ! こっちまで腐りを侵食させてくんなよ!」
「おいハイジ! 話が違うぞ!! 何が、【あんなのどーせ「人とは違う感性の私格好イイ☆」とか思ってるにわか腐女子だろ】だよ! ガチ勢の本気のお方じゃねえか!! どうしてくれる! 営業部に餌付けて恩売っとこうぜってオレは勝手に大事な物が奪われそうだぞ!!!」
「私の意見ではないです尾台さんの意見です」
「「う!!!」」
尾台さんはキラキラした目で二人を見詰めてて、これは言わないと帰れない、と察知したのか新井さんは、おい翔!! って肩を掴んだ。
その瞬間、私達以外にもいたであろう、隠れ腐った人達とも意識が共鳴した気がした。
時間が止まって皆二人を見ていた気がする。
エモ……。
胸に刻まれるのはその言葉だけ。
新井さんは言った。
「痛くしないから」
「ッせーんだよ調子乗んなクズ」
ジーザス…………。
言い終えて新井さんがぐーで沖田さんの肩を殴れば沖田さんもぐーで新井さんのお腹を殴っていた。
「これが限界ですよ!! 事実前!!!」
「昼食ったもん出るかと思った」
っつか何でオレが下? とか二人はケンカ始めたけど、
何とも……何ともリアリティがあって最高の高ですよ!!
「アドリブまでありがとうございました、向こう六年間は食べるものに困らないです」
頭を下げても二人はまだケンカしてた、ふふふ仲良し。
「本当にお二人は仲がいいですね」
「良くないでしょう! 僕世界で一番こいつが嫌いなんスよ!!」
「オレだってお前なんか視界に入れたくもないわ!! 本気でやだ!」
いがみ合ってる二人に幸せになって下さいと私達は心から祈りを奉げるのでした、今度何かプレゼントしますね。
それからはもう指先が踊って、気付いたらチャイムが鳴っていた。
尾台さんと久瀬さんは金曜日だからもうちょっと頑張っちゃうーって言っている。
私はどうしようかな、するならまだ仕事はある、たまたま携帯を見たら久々にお母さんからメッセージが着ていた。
【話したい事があります】
急に気分が沈んで、お母さんからのメッセージなんて前の飲み会でお父さんが心配してるって時以来だ。
ズキンズキンって痛む鼓動が響く、ソワソワする。
尾台さんにどうしたの寧々ちゃんって優しく聞かれて、その後ろで久瀬さんの真っ直ぐな射貫くような冷えた視線、どっちも耐え難くて何でもないと苦笑いで答えた。
残業……しようかな、お家帰りたくない。
無意識に爪を噛んでてもう一度キーボードに触れようとしたらその手を取られた、指先に柔らかい唇が当たって。
「チャイムの音聞こえなかった? アフターシックスは僕との先約があったはずだけど? もうこの手は僕のモノだよ、princess」
「!!」
「ぷ、ぷりんせしゅ……!!」
「わーおイケメンキター(棒」
「お迎えに上がりました、帰りましょう」
「は、はい」
辰巳さんは好きだけど! ちょっともうこれは恥かしいのの極みなので早く離席しないと!! 尾台さんは王子様カコいいって言ってたけど辰巳さん帰りましょうの後に小さな声で宇宙のその先へとか意味わかんない事言ってたんだぞ。
PCの電源切ってオフィスを出れば辰巳さんはタバコ吸って外で待ってますだって。
企画部に寄ってつくしちゃんから昨日買った服を受け取って更衣室で着替えていたら、話した事ない事務の子達に声をかけられた。
うん、今風? 明るい髪にネイルもメイクもバッチリな私とは違う人種の子達、何の前振りもなく。
「あのぉー本当に辰巳さんと付き合ってるんですかぁ?」
唐突に聞かれて、その威圧感にたじろぐ。
そしたらスイスイと久瀬さんが携帯いじりながらいつもの我関せずな無表情で更衣室に入ってきた。
「…………」
「どうなんですか、付き合ってるんですかぁ」
「え、っとはぃ……あのお付き合ぃしてます」
「ぇえーまっじでー?」
でー? の後にちょっと草が付いてる気がする、ジロジロ見られて怖い、それは少しは成長したけどこういう場面は……何ていうか……うん、怖くて……やっぱり暗示掛けたってそりゃ周りから見たら私達ってそんな反応されちゃうようなカップルだよね。
急に明日二人で歩くのだって億劫になってしまう、何も言い返せずに胸元を握り込んで下を向いてたら。
「あっれれー? 寧々たんまた胸大きくなったぁ?」
「?!」
後ろから手を取られてブラウスの前全開にされて、
「なななななな何するんですか!! 久瀬さん!!」
「いやぁ悩殺される惚れ惚れしたおっぱいだなって思っただけデース」
下から持ち上げられてムニムニ揉んできて、ちょっとヤダ!! 胸にも首にもいっぱいキスマーク着いてるのに!!
「止めて下さっ……ぁんッ……」
「小柄で謙虚でいじらしくって守ってあげたくなっちゃう性格でぇ」
「揉まな……で」
「そんでもって脱がしたら、こーんな扇情的な体が待ってるんじゃ辰巳さんもメロメロですねぇ?」
にこって前の子達に共感を求めて、彼女達は気まずそうに私から離れていった。
「散れ散れ僻みおって、みっともない奴らめ!」と久瀬さんは小声で背中に投げて私を解放すると尾台さんのロッカーを開けてる。
「あの……ありがとうございました」
「別に? 先輩に紅茶持って来てってパシられて更衣室来たらいい乳があったので揉んだだけですよ」
「でも……」
久瀬さんは紅茶の箱を出すとロッカーを閉めてクスっと笑った、鍵をかけて。
「いいですね、辰巳さん。いつでもどこでも回りの目気にしないで真っ直ぐ気持ちを伝えてくれて、いじいじしてるヘタレ男なんかより何倍も格好いいじゃないですか。恥ずかしいからって逃げちゃダメですよ? 明日も辰巳さんがいるとは限らないんだから、今日嬉しかった事は今日嬉しかったって伝えられたら、八雲さんはもっと素敵になれると思います。もっと自分に自信持って下さい」
「…………はい」
「んじゃ、まーたね寧々たん! 月曜日、イベントで盛り上がってエッチしまくった話聞かせて下さいね~☆」
「!!!」
私の肩を叩いて久瀬さんは出て行った、嵐が去ったようにしんっとして。
私も知ってる、当たり前の明日が本当はどれだけ奇跡かを。
臆病な私が直せたらもっと素直になれるかな、辰巳さんもっと笑ってくれるかな。
深呼吸してもう一度背筋を伸ばして袖に手を通す、ロッカーに付いている鏡で初めてメイクを直して更衣室を出た。
輝く黄色に異国の美貌、すらりとした長身が暗い町で目を惹いた。
私と目が合うと綺麗な唇の端をゆっくりと上げる。
「それじゃあ帰ろうか、precious」
何でも言って下さいねって本気かよ! って言いたいけど、彼らは厚意で来てくれたのよ! そしてここは会社なの。
変な事考えちゃいけないわ! 止めなさい寧々!! 仕事中よ!
冷静沈着を装って震えた手で眼鏡を直した。
「なななななな何でもって? え? 私はたたたたただイベントに参加するだけなのでででで頭下げられるような事は……」
「だーから! そのイベントってアダルトなイベントじゃないッスか、ちょっと試写会に行くとは訳が違うでしょ僕達手繋いで行け、とか言われてて困ってたんスよ」
「?!!!!!!!!」
「っで、そんなんキモくて死ねる!! って時に八雲さんと辰巳さんが行ってくれるって聞いたんで、お礼したいなって」
手ちゅないで行ったら良かったんとちゃうんか!
よっしゃ今から熱振り返したフリして倒れたろ!
って、そんな場合じゃない、そうなんだそんなラブラブなカップルイベントなんだ! 大丈夫か!
いや心配しなくても私辰巳さんの腕にしがみ付いてスリスリちゅっちゅしながら行く予定だから平気か、いや、むしろそれはやりすぎか!
「で、何か欲しい物あります? 土地や車は無理だけどコンビニで買える程度ならお礼したいんスけど、お菓子好きッスか?」
「甘い物好きですか?」
お菓子も好きです、甘い物も好きです、でもBでLがもぉおっと好きです。
「いりません」
「「え」」
「食べ物は入りませんのでお二人で向き合ってもらっていいですか」
「は? 向き合う?」
「こうですか」
ちょうど、新井さんは沖田さんの方を向いていて、沖田さんも少し体を傾ける。
「何もしなくていいです、変な意味ではありません。ただ一言もらえれば私はもう満足なので」
「ん? 何ですか」
「一言って?」
頭を下げて真剣にお願いした。
「新井さん、沖田さんに向かってちょっと切なそうな声で「ほら翔電気消したぞ、顔隠すなよ……」って言ってもらっていいですか」
「「は?!!」」
「はい、3、2……」
「やだやだやだやだやだ! ぜってーやだ!!!! 言わねー!」
「甘い物!! 甘い物にしましょう八雲さんんん!!!!」
「具体的な言葉はなかったと思うのですが」
「だからですよ!! その個々の想像力に訴えかけたセリフ! 逆に卑猥ッ!!」
「なんなんですか、オレどういう状況でハイジの前で顔隠してるの?!! 恥ずかしいの? 恥ずかしい状態なの?」
「止めろ翔!」
「お前何電気消してんだボケ! 明るくしとけよハゲ! 何だ? お前の部屋のアレか? サッカーボールのライトを消したんか?」
「考えるんじゃない! 相手思う壺だぞ!」
そしたら、バンッ!! って隣で机を叩かれて三人でビク! ってなる。
「寧々ちゃん!!」
それは尾台さんで、ちょっと怒った顔だ……わあ、どうしよう、そりゃそうだよな、これ昼休みじゃないし、やり過ぎちゃった……。
「すいません! 仕事中にふざけて……」
頭を下げたら、尾台さんはキリって顔しながら私の頬を掠めるボブを耳掛けてゴニョゴニョ耳元で何か言ってきた。
「え? 何スか尾台さん」
「目怖いんですけど」
私は尾台さんの言葉に深く頷いて、今度は上司の後ろ盾もあるんだから二人に諭すように言った。
「新井さんさっきの変更で沖田さんにはにかんで「もう痛くないだろ」って肩を」
「だから言わねーって言ってんだろ! こっちまで腐りを侵食させてくんなよ!」
「おいハイジ! 話が違うぞ!! 何が、【あんなのどーせ「人とは違う感性の私格好イイ☆」とか思ってるにわか腐女子だろ】だよ! ガチ勢の本気のお方じゃねえか!! どうしてくれる! 営業部に餌付けて恩売っとこうぜってオレは勝手に大事な物が奪われそうだぞ!!!」
「私の意見ではないです尾台さんの意見です」
「「う!!!」」
尾台さんはキラキラした目で二人を見詰めてて、これは言わないと帰れない、と察知したのか新井さんは、おい翔!! って肩を掴んだ。
その瞬間、私達以外にもいたであろう、隠れ腐った人達とも意識が共鳴した気がした。
時間が止まって皆二人を見ていた気がする。
エモ……。
胸に刻まれるのはその言葉だけ。
新井さんは言った。
「痛くしないから」
「ッせーんだよ調子乗んなクズ」
ジーザス…………。
言い終えて新井さんがぐーで沖田さんの肩を殴れば沖田さんもぐーで新井さんのお腹を殴っていた。
「これが限界ですよ!! 事実前!!!」
「昼食ったもん出るかと思った」
っつか何でオレが下? とか二人はケンカ始めたけど、
何とも……何ともリアリティがあって最高の高ですよ!!
「アドリブまでありがとうございました、向こう六年間は食べるものに困らないです」
頭を下げても二人はまだケンカしてた、ふふふ仲良し。
「本当にお二人は仲がいいですね」
「良くないでしょう! 僕世界で一番こいつが嫌いなんスよ!!」
「オレだってお前なんか視界に入れたくもないわ!! 本気でやだ!」
いがみ合ってる二人に幸せになって下さいと私達は心から祈りを奉げるのでした、今度何かプレゼントしますね。
それからはもう指先が踊って、気付いたらチャイムが鳴っていた。
尾台さんと久瀬さんは金曜日だからもうちょっと頑張っちゃうーって言っている。
私はどうしようかな、するならまだ仕事はある、たまたま携帯を見たら久々にお母さんからメッセージが着ていた。
【話したい事があります】
急に気分が沈んで、お母さんからのメッセージなんて前の飲み会でお父さんが心配してるって時以来だ。
ズキンズキンって痛む鼓動が響く、ソワソワする。
尾台さんにどうしたの寧々ちゃんって優しく聞かれて、その後ろで久瀬さんの真っ直ぐな射貫くような冷えた視線、どっちも耐え難くて何でもないと苦笑いで答えた。
残業……しようかな、お家帰りたくない。
無意識に爪を噛んでてもう一度キーボードに触れようとしたらその手を取られた、指先に柔らかい唇が当たって。
「チャイムの音聞こえなかった? アフターシックスは僕との先約があったはずだけど? もうこの手は僕のモノだよ、princess」
「!!」
「ぷ、ぷりんせしゅ……!!」
「わーおイケメンキター(棒」
「お迎えに上がりました、帰りましょう」
「は、はい」
辰巳さんは好きだけど! ちょっともうこれは恥かしいのの極みなので早く離席しないと!! 尾台さんは王子様カコいいって言ってたけど辰巳さん帰りましょうの後に小さな声で宇宙のその先へとか意味わかんない事言ってたんだぞ。
PCの電源切ってオフィスを出れば辰巳さんはタバコ吸って外で待ってますだって。
企画部に寄ってつくしちゃんから昨日買った服を受け取って更衣室で着替えていたら、話した事ない事務の子達に声をかけられた。
うん、今風? 明るい髪にネイルもメイクもバッチリな私とは違う人種の子達、何の前振りもなく。
「あのぉー本当に辰巳さんと付き合ってるんですかぁ?」
唐突に聞かれて、その威圧感にたじろぐ。
そしたらスイスイと久瀬さんが携帯いじりながらいつもの我関せずな無表情で更衣室に入ってきた。
「…………」
「どうなんですか、付き合ってるんですかぁ」
「え、っとはぃ……あのお付き合ぃしてます」
「ぇえーまっじでー?」
でー? の後にちょっと草が付いてる気がする、ジロジロ見られて怖い、それは少しは成長したけどこういう場面は……何ていうか……うん、怖くて……やっぱり暗示掛けたってそりゃ周りから見たら私達ってそんな反応されちゃうようなカップルだよね。
急に明日二人で歩くのだって億劫になってしまう、何も言い返せずに胸元を握り込んで下を向いてたら。
「あっれれー? 寧々たんまた胸大きくなったぁ?」
「?!」
後ろから手を取られてブラウスの前全開にされて、
「なななななな何するんですか!! 久瀬さん!!」
「いやぁ悩殺される惚れ惚れしたおっぱいだなって思っただけデース」
下から持ち上げられてムニムニ揉んできて、ちょっとヤダ!! 胸にも首にもいっぱいキスマーク着いてるのに!!
「止めて下さっ……ぁんッ……」
「小柄で謙虚でいじらしくって守ってあげたくなっちゃう性格でぇ」
「揉まな……で」
「そんでもって脱がしたら、こーんな扇情的な体が待ってるんじゃ辰巳さんもメロメロですねぇ?」
にこって前の子達に共感を求めて、彼女達は気まずそうに私から離れていった。
「散れ散れ僻みおって、みっともない奴らめ!」と久瀬さんは小声で背中に投げて私を解放すると尾台さんのロッカーを開けてる。
「あの……ありがとうございました」
「別に? 先輩に紅茶持って来てってパシられて更衣室来たらいい乳があったので揉んだだけですよ」
「でも……」
久瀬さんは紅茶の箱を出すとロッカーを閉めてクスっと笑った、鍵をかけて。
「いいですね、辰巳さん。いつでもどこでも回りの目気にしないで真っ直ぐ気持ちを伝えてくれて、いじいじしてるヘタレ男なんかより何倍も格好いいじゃないですか。恥ずかしいからって逃げちゃダメですよ? 明日も辰巳さんがいるとは限らないんだから、今日嬉しかった事は今日嬉しかったって伝えられたら、八雲さんはもっと素敵になれると思います。もっと自分に自信持って下さい」
「…………はい」
「んじゃ、まーたね寧々たん! 月曜日、イベントで盛り上がってエッチしまくった話聞かせて下さいね~☆」
「!!!」
私の肩を叩いて久瀬さんは出て行った、嵐が去ったようにしんっとして。
私も知ってる、当たり前の明日が本当はどれだけ奇跡かを。
臆病な私が直せたらもっと素直になれるかな、辰巳さんもっと笑ってくれるかな。
深呼吸してもう一度背筋を伸ばして袖に手を通す、ロッカーに付いている鏡で初めてメイクを直して更衣室を出た。
輝く黄色に異国の美貌、すらりとした長身が暗い町で目を惹いた。
私と目が合うと綺麗な唇の端をゆっくりと上げる。
「それじゃあ帰ろうか、precious」
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