ヴァンパイアと永久に

おもち

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永久に

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「おはよ~~ッ!」
「…ねかせろ……」

初めて出会った日から20年近く経った今も昔と変わらないところもあるが変わったところもたくさんある。
あんなに静かで大人しかったのに、騒々しいと思うほど元気である。一番変わったのは私への態度だろう。大切という気持ちは変わらないようだが、愛の重さが何十倍にもなった気がする。それにスキンシップが過激なのである。私のせいではない、と言い切れはしないが。

「何度も言うが、私は夜行性だ……」
「俺がヒマなのー!」

そう言ってベッドの中に入ろうとしてくる。必死に抵抗したが負けてしまいベッドに入られた。入るとほぼ同時に私のことを正面から抱きしめて、離されたと思ったら唇を重ねてきた。

「つけるなといっただろう?」
「好かれたいんだもん……」

はぁ、小さなため息をつく。

「そんなことをしなくても好きだ」

媚薬というか惚れ薬というか。どこで見つけたのかわからないが、そのヴァンパイア用を見つけたという。そこまでの効果は得らしないだろうと思っていたが、私への効果は絶大だった。その日の内に彼は追加購入して、時々つしけるようになった。
たまには教えてあげないといけない(我慢するのが面倒くさかったとも言うが)と思って足を絡めて逃さないようにする。

「……ルーイが誘ってるんだもんな?」

背中に手を回し首筋を舐める。ん、と声を漏らしながらビクッと反応する。ゆるっと首元の空いた服だから首元に触れやすい。これも作戦なんだろうか。それならまんまと引っかかってやろう。

「吸われたい?」
「うん……」

少し乗りかかる形になってもう一度首筋を舐めキスをした。私達の間ではココに今から牙を立てるという合図だ。
肌に牙を突き刺すと赤い液体が流れ出してくる。一滴もこぼさないようにじゅ、じゅ、と吸い付く。痛いのか気持ちいいのか。どちらとも取れる彼の声にまたそそられる。
浅い呼吸の合間に彼は何度も好きと伝えてくる。そんなこと嫌なほどわかっているのに。

こんな時間が永遠に続けばいいと思うが、後々、貧血で倒れられても困るので適当なところでやめておく。人間の血を吸いたいわけでもないがやはり愛している人は特別だ。抱きしめ合い、血を譲り受け、共に同じ時間を過ごす。なんて幸せなのだろう。

「満足か?」

ベッドに座らせキズ薬を塗りながら話しかける。傷跡は消えるが吸いついた跡は消えない。そのせいで真っ白だった肌には何個も跡が残っている。後から確認するためだとか何とか言って跡をつけて?とねだってくる。私はただ言うことを聞いているだけだ。

「…今は……」
「言いたいことは言え。そう教えてきただろう?」
「……すっごく幸せだけど、ずっと満足できないの。ワガママだけど」

前髪を上げ額に軽く唇を当てる。

「ワガママに育てたのは私だ。今夜、少し出かけようか」

クシャッと頭をなでて立ち上がった。彼は切なそうに笑う。でも彼の気持ちは分からなくもない。想いを充分に伝えられる言葉も行動もこの世界にはない。そんなの永遠に現れないこともわかっている。私だって彼に伝えられている愛なんてほんの0.001%にも満ちていない。
だけど少しでも知ってほしくて、もっともっと愛してほしい。私達はそういう生き物なのだ。

日も沈み始め私のメイン活動時間となった。食事を済ませた頃には日は完全に落ち、外に出ても私の本来の力が発揮できるだろう。
彼を抱きかかえ空を飛んだ。暗い上に少し山の方へ行くからきっと誰にも気づかれない。

「どこ行くの?」
「ヒミツだが、いいところだ」

数分空を飛んだところで目的地に到着した。木に囲まれて小さな池があるだけの小さな土地。ココは私の思い出の特別な場所だ。
草の上に寝転がり無数の星たちが輝く空を眺めた。

「ルーイも来てみろ」

右隣に寝転がらせ、どちらからともなく手を繋いだ。

「キレイだけどさ、なんでここに連れてきたの」
「キレイだから」

私が悩んだときに来ていた場所だ。ここに来たら星をみながらずっと考えていられたし、逆にすべてを忘れる事ができた。だから彼も何かを与えられないかと思って連れてきた。
思っていた通り、しばらく続いた沈黙は彼が破った。

「レヴァは俺が死んだら一人で生きていくことになるの?」

何も言い返せない。きっと私は永遠に一人で生きていくことになるのだろう。死にたくても死ねずに苦しみからも逃れられずに。

「俺も永遠に生きられないのかな」
「……方法としてはある」

上体を起こしポケットから小さな箱を取り出した。

「コレはいわゆる呪いの指輪とでも言おうか……」

これを付ければ望むように不老不死の存在にはなれる。ただ付けてしまえば永遠に外すことができない。どう足掻いても死ねないのだ。たとえ地球上からすべての人類が滅んだとしても。その覚悟があるのかを彼に伝えた。

「それでも付けて欲しい。でも、一生一緒にいてくれる?」
「それは私の台詞だ。何百年も何千年も永遠に君の隣にいることを誓おう」

誓いのキスを交わし、左手の薬指に指輪を通した。私も同じデザインの指輪をつけようとしたら彼が「俺にもさせてよ」というのでつけてもらった。
こんな事で浮かれてしまう自分がバカみたいに思えるがやっぱり嬉しい。

「帰ろうか」
「うん」

彼を抱きかかえ再び夜の空へと飛び立った。
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