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夢
しおりを挟む「…ッ……は……!………夢か…」
今日もまた悪夢を見てしまった。ここしばらく眠りにつこうとすると悪夢ばかりをみる羽目になっている。
様々なパターンがあったが、全てに共通しているのはルーイがどこかに消えてしまうという部分が全て同じであった。
予知夢ではないとは思っているが、人間の考えた夢占いなるものを好奇心からつい調べてしまったり、良い夢を見るための方法まで調べてしまった。
「ねえ、レヴァ」
「…なんだ」
「最近、ちゃんと眠れてる?」
「何も変わらないが」
「それにしては目の下真っ黒だけど」
「……ヴァンパイアだから、色白で黒が映えるだけだ」
「なにそれ。てか自分のコト、色白だと思ってたんだ?…かわいい……ふふっ…」
ルーイは笑いを堪えきれずに口を押さえながら笑っていた。彼の笑顔を見ると自然とこちらも笑顔になってしまう。
愛おしくてたまらない私の天使。
こんなに可愛いルーイを手放せるわけがない。
だからこそ彼がいなくなる夢は悪夢だし、現実には絶対にしたくない。
「ルーイは、どこかに行きたいとかあるか?」
「どこかって?」
「私の側から離れたいかと聞いている」
「え…なに…?な、なんでそんなこと言うの……?」
悲しそうな表情をして目を潤ませるルーイを見てハッとした。
「違う、そういう意味じゃない。出てけとか、そういうことじゃないから」
「……ホント…………?」
「本当だ。大丈夫だよ」
「うぅ…ッ…………」
泣き出した彼に慌てて駆け寄り抱きしめた。そして頭を撫でてやり落ち着かせる。
しばらくして落ち着いたルーイは私の腕の中で小さく呟いた。
「僕は、ずっとレヴァと一緒に居たい……離れたくない……ずっと………」
「私もだ。君と永遠に生きていくために契を交わしたのだからな」
「そうだよ。レヴァは僕を心の底から愛してくれてることも、側にいてくれることもわかってるの。……でもね、たまにレヴァはいつか僕の前から居なくなってしまう気がするんだ。それが怖くて仕方ない…置いていかれるくらいなら最初から一人で生きていきたいって、思っちゃうときもある……」
「私はどこにも行かないよ」
「…わかってる、…でも、…だから離れたいかって聞かれたときに泣いちゃった…ッ………ゴメン……」
不安になっていたのは私だけじゃないということに安堵を覚えるとともに、この苦しみを私なんかより遥かに賢く強いルーイが涙を流すほど思い詰めていたのかと思うと胸が苦しくなった。
それに私はつい最近不安を覚え、ルーイとこんな話になって、やっと初めて彼の気持ちを聞けたのだから、それまでにもルーイは何度も何度も何度も別れを想像してきたのかもしれない。
「最近、悪夢をよく見るようになってあんまり眠れてなかったんだ」
「…悪夢……?」
「そう、ルーイがいなくなる夢。私の側から君が離れていくんだ」
「そんなこと、あるわけ無い……」
「わかってるよ。それでも『もし予知夢なら?』と思うと不安で仕方なかった」
私がそう言うとルーイは私にキスをした。触れるだけの優しいキスだったが、とても幸せだった。
しかし、唇を離したルーイの目にはまた薄らと膜ができていて、今にもこぼれそうになっているのに気づいた。
「どうした?」
「レヴァ……大好きだよ……」
「ああ、私も大好きだ」
「…どこにも行かないから、どこにも行かないでね」
「どこにも行かないよ」
今度は私の方からルーイの額に優しく口付けた。すると彼は、いつもの天使のような笑顔を向けてくれた。
やはり彼はこの笑顔が一番似合う。
私の一番好きな表情だ。
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