愛しのあなたにさよならを

MOMO-tank

文字の大きさ
上 下
1 / 28

第1話

しおりを挟む
「ちょっと胃がムカムカするのよ。だから、朝食は紅茶とフルーツとスープとパンを1つだけにするわ」

「畏まりました。・・・って奥様はいつもはパンを最低でも5つ、卵は3個に山盛りベーコンにソーセージ、チキンスープを2杯はいけるのに・・・。
まさか、これって・・・・・・」

私だって少食の日だってある。
それなのに、侍女のマヤときたら。
でも、こうして改めて聞くと私って大食い女だ。
シェフの料理が美味しいから、特に朝の鍛練後は幾らでも食べられてしまう。

私はジャスミン・アンダーソン。
一応は伯爵夫人。
夫はローガン・アンダーソン伯爵で、最近は英雄なんて呼ばれている。
早いもので、結婚して3年になる。

これ・・、って、なんの話だい?」

「旦那様、テーブルをご覧ください」

「・・・っ!これは!
これしか食べないのか?
ジャスミン、どうした!
熱か?まさか・・・病気なんじゃ。
ニック!医師の手配を頼む!」

ローガンは私の朝食の量を見て驚いて心配したのか、額を触り、脈まで測って、しまいには医者の手配までしてしまった。

「熱もありませんし、流行り病でもないですよ。
私だって、食欲不振の時くらいありますから。
朝の鍛練での私の身のこなし、ご覧になったでしょう。
病気でもないですからご心配なく」

「旦那様、そうなんです。
奥様が、これだけしかお召し上がりにならないなんて。
胃もムカムカするって仰っていたし・・・。
もしかして・・・」

「「もしかして?」」

「私の口から申し上げるのは憚られますので、その・・・」

マヤったら、また誤解してる。
月のものが終わったばかりなのに。
胃がムカムカするのは、昨夜ステーキを食べ過ぎただけなんだけど・・・。
言いにくい雰囲気だ。

「そうか!そういうことか!」

「いえ、そういうことじゃあないですよ。
食事中にする話しじゃありませんが、月のものも終わったばかりですし。
ちなみに、これは昨夜のステーキがあまりにも美味しくて食べ過ぎたからです」

私の食べ過ぎが原因で懐妊と誤解されるのは、もう3度目になる。 
二人もそれを思い出したのか、静かになった。

「今夜は夜会だが、ジャスミンは調子も悪いようだし医師の診察を受けてゆっくりと休んでくれ。
俺は騎士団から直接夜会へ向かうよ」

食事が終わると、過保護なローガンは私を抱きしめてそう言うと、仕事へ向かった。


でも、私は元気だった。
医師の診察結果は予想通りで、昼食を胃に優しいスープのみにすればすっかり良くなった。
だから、夜会に出席することにした。


夜会会場に到着したものの、なかなかローガンは見つけられなかった。
そんな時、学生時代の騎士仲間に声をかけられたので、お喋りをして時間を潰していた。

『もしかして、シガールームに行ったんじゃないか』

いつまで経ってもローガンは見つからないので、友人に言われたシガールームへ向かっていると、ローガンの侍従ダンを見つけた。
声をかけようと思ったが、ダンの立つ回廊の先の庭園に、ローガン本人を見つけた。

「・・・ローガン」

私に気づいたダンが焦った様子で近寄って来るのを手で制すも、声を上げそうなったダンの口元を咄嗟に押さえて、音を立てずに動きも封じ込める。

ローガンは、一人ではなかった。
ブロンドの華奢な女性の腰を抱いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

この恋に終止符(ピリオド)を

キムラましゅろう
恋愛
好きだから終わりにする。 好きだからサヨナラだ。 彼の心に彼女がいるのを知っていても、どうしても側にいたくて見て見ぬふりをしてきた。 だけど……そろそろ潮時かな。 彼の大切なあの人がフリーになったのを知り、 わたしはこの恋に終止符(ピリオド)をうつ事を決めた。 重度の誤字脱字病患者の書くお話です。 誤字脱字にぶつかる度にご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く恐れがあります。予めご了承くださいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 そして作者はモトサヤハピエン主義です。 そこのところもご理解頂き、合わないなと思われましたら回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんでも投稿します。

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

処理中です...