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第5話
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『・・・・・・リリー』
結婚式で、触れるだけの誓いの口づけをした。
夜は殿下が寝室に来てくれるか分からないのに、侍女達に磨かれ、オイルマッサージというものを受け、いつもと違う夜着を着せられた。
期待なんて、していなかった。
でも、殿下は現れた。
私達は口づけを交わし、そして、肌を合わせた。
『リリー』
殿下は何度も私の名前を呼んだ。
優しく呼んだ。
『リリー・・・・・・リリー』
・・・・・・ん?
誰?
「・・・・・・か?リリー」
殿下?
「リリー」
うっすら開いた瞼に光が差し込む。
その向こうに、ぼんやりと人影が見えた。
「大丈夫か?」
少しかすれた、よく知っている声。
エリオット様?
・・・・・・えっと、
「・・・・・・ここは?」
「寝室だ。昨夜倒れた」
倒れた?
ええと、確か、報告書に目を通して。
そうだった・・・目が回って。
「今は何時ですか?」
「朝の7時だ」
「あの、侍女を呼んでいただけますか?」
喉がカラカラで水が飲みたかった。
それに7時ならば、準備も始めなくてはいけない。
「今日は仕事する必要はないし、このまま休んでくれて構わない」
「そう、ですか」
でも、水が飲みたいので侍女をお願いすると、私がやろう。と言って体を起こすのを支えてくれ、水がはいったグラスを渡された。
なぜエリオット様が寝室にいるのか。
ボーっとする頭で、ベッド脇の椅子に座るエリオット様を不思議に思って見ていると、どこか居心地が悪そうに、倒れる寸前で護衛が体を抱きとめてくれたこと、医師の診察では倒れた原因は疲労とのこと。
数日は仕事を休み、安静に過ごすよう話していたと教えてくれた。
「では、私はそろそろ行くよ。
仕事は心配せず休んでくれ」
立ち上がると、そのまま背を向けて歩き出したが、扉の前で足を止めると振り返った。
「・・・・・・きちんと、きちんと食事をとって、ゆっくり休んでくれ」
その表情は、まるで私を心配しているかのように見えた。
「王妃様、大変お似合いでございます」
倒れてから十日が経った。
数日は仕事を休んで安静に過ごし、デザートメインになりつつあった食事の改善に努めた。
以前と比べるといまだに細っそりしているものの、血色も良く、化粧のおかげか健康的にすら見えた。
「ありがとう」
夜会前に控え室でエリオット様と落ち合い、エスコートされ会場へ向かった。
笑顔を貼り付けてファーストダンスを踊る。
この時ばかりはエリオット様の表情も幾分柔らかい。
ダンスが終われば、挨拶に来る貴族への対応。
そして、一旦控え室へ下がり休憩となる。
以前はエリオット様とこの場所でおしゃべりをしたり、時にはチェスをした。
でも、ある時を境にここへ姿を見せなくなった。
なのに、物音がすると扉が開いてエリオット様が来るんじゃないか。
いまだに期待してしまう。
果実水を口にしながら、そんな自分を自嘲していると、侍女が私の近くへ来て、一枚のカードを差し出した。
「こちら国王様からです」
[話をしたい。
エーデルワイスの間に来て欲しい。
エリオット]
何の疑いも持たなかった。
歩み寄りを見せてくれたんだと、嬉しく思った。
私も話したいことがある。
友人だと言い張るフランチェスカ様との関係。
節度を持って、せめて喪が明けてからにして欲しい。
避けて欲しくないし、以前のように何でも話し合いたい。
先日倒れた時に心配する顔を見せてくれたエリオット様を思い出して、カードを手に足を進めた。
廊下を真っ直ぐ進んで行くと、小ホールであるエーデルワイスの間からワルツが聴こえてきた。
楽団の、演奏?
不思議に感じながら進んで行くと、大きな扉は開かれていて中の様子が窺えた。
誰か、踊っている?
まさか、そんなことないはず。
自分に言い聞かせるように一歩一歩足を進めていくと、一組の男女の踊っている姿が見が目に入った。
プラチナブロンドに黒いドレス姿の女性をリードし、笑顔を見せて踊る男性を見た瞬間、息が止まった。
エリオット様・・・・・・。
愛おしそうにフランチェスカ様を見つめる眼差しに、胸が苦しくなる。
そして、フランチェスカ様の額に、頬に口づけを落とし、見つめ合うと、二人の唇はゆっくりと重なった。
結婚式で、触れるだけの誓いの口づけをした。
夜は殿下が寝室に来てくれるか分からないのに、侍女達に磨かれ、オイルマッサージというものを受け、いつもと違う夜着を着せられた。
期待なんて、していなかった。
でも、殿下は現れた。
私達は口づけを交わし、そして、肌を合わせた。
『リリー』
殿下は何度も私の名前を呼んだ。
優しく呼んだ。
『リリー・・・・・・リリー』
・・・・・・ん?
誰?
「・・・・・・か?リリー」
殿下?
「リリー」
うっすら開いた瞼に光が差し込む。
その向こうに、ぼんやりと人影が見えた。
「大丈夫か?」
少しかすれた、よく知っている声。
エリオット様?
・・・・・・えっと、
「・・・・・・ここは?」
「寝室だ。昨夜倒れた」
倒れた?
ええと、確か、報告書に目を通して。
そうだった・・・目が回って。
「今は何時ですか?」
「朝の7時だ」
「あの、侍女を呼んでいただけますか?」
喉がカラカラで水が飲みたかった。
それに7時ならば、準備も始めなくてはいけない。
「今日は仕事する必要はないし、このまま休んでくれて構わない」
「そう、ですか」
でも、水が飲みたいので侍女をお願いすると、私がやろう。と言って体を起こすのを支えてくれ、水がはいったグラスを渡された。
なぜエリオット様が寝室にいるのか。
ボーっとする頭で、ベッド脇の椅子に座るエリオット様を不思議に思って見ていると、どこか居心地が悪そうに、倒れる寸前で護衛が体を抱きとめてくれたこと、医師の診察では倒れた原因は疲労とのこと。
数日は仕事を休み、安静に過ごすよう話していたと教えてくれた。
「では、私はそろそろ行くよ。
仕事は心配せず休んでくれ」
立ち上がると、そのまま背を向けて歩き出したが、扉の前で足を止めると振り返った。
「・・・・・・きちんと、きちんと食事をとって、ゆっくり休んでくれ」
その表情は、まるで私を心配しているかのように見えた。
「王妃様、大変お似合いでございます」
倒れてから十日が経った。
数日は仕事を休んで安静に過ごし、デザートメインになりつつあった食事の改善に努めた。
以前と比べるといまだに細っそりしているものの、血色も良く、化粧のおかげか健康的にすら見えた。
「ありがとう」
夜会前に控え室でエリオット様と落ち合い、エスコートされ会場へ向かった。
笑顔を貼り付けてファーストダンスを踊る。
この時ばかりはエリオット様の表情も幾分柔らかい。
ダンスが終われば、挨拶に来る貴族への対応。
そして、一旦控え室へ下がり休憩となる。
以前はエリオット様とこの場所でおしゃべりをしたり、時にはチェスをした。
でも、ある時を境にここへ姿を見せなくなった。
なのに、物音がすると扉が開いてエリオット様が来るんじゃないか。
いまだに期待してしまう。
果実水を口にしながら、そんな自分を自嘲していると、侍女が私の近くへ来て、一枚のカードを差し出した。
「こちら国王様からです」
[話をしたい。
エーデルワイスの間に来て欲しい。
エリオット]
何の疑いも持たなかった。
歩み寄りを見せてくれたんだと、嬉しく思った。
私も話したいことがある。
友人だと言い張るフランチェスカ様との関係。
節度を持って、せめて喪が明けてからにして欲しい。
避けて欲しくないし、以前のように何でも話し合いたい。
先日倒れた時に心配する顔を見せてくれたエリオット様を思い出して、カードを手に足を進めた。
廊下を真っ直ぐ進んで行くと、小ホールであるエーデルワイスの間からワルツが聴こえてきた。
楽団の、演奏?
不思議に感じながら進んで行くと、大きな扉は開かれていて中の様子が窺えた。
誰か、踊っている?
まさか、そんなことないはず。
自分に言い聞かせるように一歩一歩足を進めていくと、一組の男女の踊っている姿が見が目に入った。
プラチナブロンドに黒いドレス姿の女性をリードし、笑顔を見せて踊る男性を見た瞬間、息が止まった。
エリオット様・・・・・・。
愛おしそうにフランチェスカ様を見つめる眼差しに、胸が苦しくなる。
そして、フランチェスカ様の額に、頬に口づけを落とし、見つめ合うと、二人の唇はゆっくりと重なった。
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