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第23話
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[こちらの国では来月から花祭りが開催されます。
各地で様々な花が見頃を迎えそれは美しく、夫人にも見て頂きたい。
ブルージェ王国にご招待いたしますので、ぜひご検討ください]
サリンジャー氏から渡された手紙にはそう記されていた。
『ロージー嬢もぜひご一緒にとのことです』
旦那様とクラリス様の第二子は、ヘンリーと名付けられた。
クラリス様に似た赤い髪にグレーの瞳の整った顔立ちで将来が楽しみね。とみんな口々に言う。
夜会やお茶会で、二人は学園時代から恋人同士だった。そんな話を耳にしたのも大きな理由かもしれないが、いくら私が名門といわれるスタンリー伯爵家の出身でも、男児を二人出産したクラリス様が正妻になるのが自然なことのように思えた。
クラリス様もトンプソン男爵家出身だ。
決して正妻に相応しくないわけではない。
私は旦那様と話し合いの場を設けて、クラリス様を正妻として私とは離婚すべきだと思いを伝えたが、旦那様からは猛反対された。
『離婚はしない。いや、絶対にしたくない。
ミラだって、離婚はロージーが結婚後だと言ったじゃないか。
まだまだ先のはずだ。
陛下だって、もうクラリスを気遣うことはしない。
むしろ王女殿下がロージーを気に入っているから、ミラと離婚するなんて耳に入ったら苦言を呈される』
確かに、ロージーは今年にはいって王城で行われたお茶会で王女殿下に気に入られて、時折王城へ出向いて交流していた。
大人しく控えめな王女殿下がお転婆で元気なロージーといると、楽しそうで笑顔を見せると言われた。
ロージーも楽しそうだった。
それに、
旦那様もロージーと離れたいわけがなかった。
そんな時にもらった手紙だった。
旦那様に掛合い、ロージーと1ヶ月間ブルージェ王国へ行くことが決まった。
「お母様はブルージェ王国に行ったことあるの?」
「3歳の頃に一度だけ。
小さかったから、ほとんど覚えてなくてね、だから初めてみたいなものよ」
毎年ローリーが遊びに来ていたから。
ブルージェ王国へ行くことはなかった。
ローリーに、
投資家の貴方に、会えるのだろうか・・・。
ブルージェ王国は花祭り中とあり、どこへ行っても美しく可憐な様々な花が迎えてくれた。
ロージーは幼い頃と同じくピンクの花が好みらしく、ピンクの髪飾りを買ってあげると喜んで付けていた。
お母様も。と言われ、ロージーが選んでくれた赤い髪飾りをお揃いで付けた。
湖のある避暑地を訪れたり、山の景色を一望できるコテージという可愛らしい建物に泊まった夜は、ロージーは初めてのことに興奮して寝付けないようだった。
旅も3週間を過ぎた頃、王都でローリーに再会した。
「おっ、よく来たな。
ミラ、ロージー、元気だったか?」
宰相としと忙しいはずのローリーは合間を縫って、食事や子どもも楽しめる観劇に連れて行ってくれた。
ローリーおすすめの屋台で串焼きや甘いデザートを食べたロージーは、美味しい!と追加して食べていた。
初めてのロージーとの旅行は、毎日がただ楽しかった。
自分の気持ちもわからなくなり、惨めで情けなかった。
そんな時に、手を差し伸べてくれたのは貴方だった。
投資家の彼には会えなかったけれど・・・・・・
ローリーに会えた。
楽しそうに串焼きを追加で買いに行くローリーとロージーを見ていると、胸が温かくなった。
『王城では楽しく過ごしている?』
『うん!王女殿下は、可愛らしくて優しくて大好きなんだ。
一瞬にいると楽しいよ!』
この1ヶ月、新しい世界をロージーと見て周って、自分の中で何かが変わった。
何かは分からない。
でも、これだけは言える。
もう大丈夫ーー
「ローリー、色々ありがとう。
とても楽しい1ヶ月だった」
私とロージーのひと月の旅は終わった。
各地で様々な花が見頃を迎えそれは美しく、夫人にも見て頂きたい。
ブルージェ王国にご招待いたしますので、ぜひご検討ください]
サリンジャー氏から渡された手紙にはそう記されていた。
『ロージー嬢もぜひご一緒にとのことです』
旦那様とクラリス様の第二子は、ヘンリーと名付けられた。
クラリス様に似た赤い髪にグレーの瞳の整った顔立ちで将来が楽しみね。とみんな口々に言う。
夜会やお茶会で、二人は学園時代から恋人同士だった。そんな話を耳にしたのも大きな理由かもしれないが、いくら私が名門といわれるスタンリー伯爵家の出身でも、男児を二人出産したクラリス様が正妻になるのが自然なことのように思えた。
クラリス様もトンプソン男爵家出身だ。
決して正妻に相応しくないわけではない。
私は旦那様と話し合いの場を設けて、クラリス様を正妻として私とは離婚すべきだと思いを伝えたが、旦那様からは猛反対された。
『離婚はしない。いや、絶対にしたくない。
ミラだって、離婚はロージーが結婚後だと言ったじゃないか。
まだまだ先のはずだ。
陛下だって、もうクラリスを気遣うことはしない。
むしろ王女殿下がロージーを気に入っているから、ミラと離婚するなんて耳に入ったら苦言を呈される』
確かに、ロージーは今年にはいって王城で行われたお茶会で王女殿下に気に入られて、時折王城へ出向いて交流していた。
大人しく控えめな王女殿下がお転婆で元気なロージーといると、楽しそうで笑顔を見せると言われた。
ロージーも楽しそうだった。
それに、
旦那様もロージーと離れたいわけがなかった。
そんな時にもらった手紙だった。
旦那様に掛合い、ロージーと1ヶ月間ブルージェ王国へ行くことが決まった。
「お母様はブルージェ王国に行ったことあるの?」
「3歳の頃に一度だけ。
小さかったから、ほとんど覚えてなくてね、だから初めてみたいなものよ」
毎年ローリーが遊びに来ていたから。
ブルージェ王国へ行くことはなかった。
ローリーに、
投資家の貴方に、会えるのだろうか・・・。
ブルージェ王国は花祭り中とあり、どこへ行っても美しく可憐な様々な花が迎えてくれた。
ロージーは幼い頃と同じくピンクの花が好みらしく、ピンクの髪飾りを買ってあげると喜んで付けていた。
お母様も。と言われ、ロージーが選んでくれた赤い髪飾りをお揃いで付けた。
湖のある避暑地を訪れたり、山の景色を一望できるコテージという可愛らしい建物に泊まった夜は、ロージーは初めてのことに興奮して寝付けないようだった。
旅も3週間を過ぎた頃、王都でローリーに再会した。
「おっ、よく来たな。
ミラ、ロージー、元気だったか?」
宰相としと忙しいはずのローリーは合間を縫って、食事や子どもも楽しめる観劇に連れて行ってくれた。
ローリーおすすめの屋台で串焼きや甘いデザートを食べたロージーは、美味しい!と追加して食べていた。
初めてのロージーとの旅行は、毎日がただ楽しかった。
自分の気持ちもわからなくなり、惨めで情けなかった。
そんな時に、手を差し伸べてくれたのは貴方だった。
投資家の彼には会えなかったけれど・・・・・・
ローリーに会えた。
楽しそうに串焼きを追加で買いに行くローリーとロージーを見ていると、胸が温かくなった。
『王城では楽しく過ごしている?』
『うん!王女殿下は、可愛らしくて優しくて大好きなんだ。
一瞬にいると楽しいよ!』
この1ヶ月、新しい世界をロージーと見て周って、自分の中で何かが変わった。
何かは分からない。
でも、これだけは言える。
もう大丈夫ーー
「ローリー、色々ありがとう。
とても楽しい1ヶ月だった」
私とロージーのひと月の旅は終わった。
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