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第22話
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近頃サリンジャー氏に会う機会が増えた。
「ものすごい数の予約が入ったと聞きましたよ」
「ええ、大変有難いお話です」
「皆さん、無理されていませんか?」
「ええ、今は予約受付は中止させていただきましたので。
今までと変わらず、全員お休みも週2回は取っています」
「もちろんです。
そうそう、あと以前お話していた皆さんの医療保障についてですが・・・・・・」
少しずつ注目を集めつつあった工房で作るスカーフや、ロンググローブ、試作中の子ども用のドレスに予約が殺到したのは、王城で開かれた第二王子殿下と王女殿下のお茶会の後のことだった。
お茶会でロージーの刺繍入りドレスが注目され、工房の作品を取り扱っているドレスメーカーで全ての作品が売り切れ、予約が殺到した。
3ヶ月は予約の品を作るのに手一杯となり、現在予約は中断してもらっている。
サリンジャー氏の主人は、孤児院の子どもやその他のお針子、すべての従業員人対しての衣食住、幼い子どもを預かるシステム、そして今回はそれに加えて医療保障と手厚い待遇を与えてくれる。
「こちらをどうぞ」
サリンジャー氏から手紙を受け取り、私も投資家であるサリンジャー氏の主人宛の手紙を渡す。
こうして、手紙のやり取りを続けている。
お茶会でも工房の作品は話題になるほどで、少しずつ認められ忙しくも充実した日々を送っていた。
時は流れ、ロージーは7歳になり一段と可憐さが増し誰もが振り返るほどの美少女になった。
でも、本人は今も剣術に夢中で『騎士になりたい』とどうやら本気でそう思っているらしかった。
12歳になったノアは学園入学と同時に寮に入った。
ノアが入寮すると思っていなかったクラリス様は落胆し、寂しさから旦那様に頼りきりになっていた。
旦那様はロージーに会う為に本邸に顔は出すものの、別邸が生活の基盤になりつつあった。
そんなある日ーー
「クラリスが、懐妊した」
旦那様から報告を受けた。
クラリス様が夜会に出席出来なくなったので、どうしても断れない夜会のみ旦那様と出席することになった。
でも、妊娠中の不安により旦那様がそばを離れることをクラリス様が嫌がり、どうしようもない日は一人で夜会に出席した。
「クラリス様をご心配されて、公爵様も付きっきりらしいですわ」
「いつもお二人は仲睦まじいですもの」
「学園時代から恋人同士でしたから」
「まぁ!それでは、引き裂かれて泣く泣くお別れになったと?」
「大きな声では言えませんけれどね」
エヴァンス公爵夫人として、毅然にーー
噂話好きの連中の話に動揺しないーー
これは、夜会やお茶会での信条。
そう自分で決めていた。
今までは、守れていた。
でも、ここへきて・・・・・・
揺らいでしまう。
これでいいのか。
これが正解なのか。
少し大きくなったクラリス様のお腹をそっと触り、幸せそうに微笑み合う二人を見て。
『マーク』
『クラリス』
そう呼び会う二人を見て。
10歳の頃に自分は邪魔者だと理解して、
今また、それを突きつけられた。
折れそうになっていた気持ちは、ロージーに会うとあっという間に修復され、でも、またしばらくすると自信を失いーー
その繰り返しだった。
そして、数ヶ月後ーー
クラリス様は男の子を出産された。
「ものすごい数の予約が入ったと聞きましたよ」
「ええ、大変有難いお話です」
「皆さん、無理されていませんか?」
「ええ、今は予約受付は中止させていただきましたので。
今までと変わらず、全員お休みも週2回は取っています」
「もちろんです。
そうそう、あと以前お話していた皆さんの医療保障についてですが・・・・・・」
少しずつ注目を集めつつあった工房で作るスカーフや、ロンググローブ、試作中の子ども用のドレスに予約が殺到したのは、王城で開かれた第二王子殿下と王女殿下のお茶会の後のことだった。
お茶会でロージーの刺繍入りドレスが注目され、工房の作品を取り扱っているドレスメーカーで全ての作品が売り切れ、予約が殺到した。
3ヶ月は予約の品を作るのに手一杯となり、現在予約は中断してもらっている。
サリンジャー氏の主人は、孤児院の子どもやその他のお針子、すべての従業員人対しての衣食住、幼い子どもを預かるシステム、そして今回はそれに加えて医療保障と手厚い待遇を与えてくれる。
「こちらをどうぞ」
サリンジャー氏から手紙を受け取り、私も投資家であるサリンジャー氏の主人宛の手紙を渡す。
こうして、手紙のやり取りを続けている。
お茶会でも工房の作品は話題になるほどで、少しずつ認められ忙しくも充実した日々を送っていた。
時は流れ、ロージーは7歳になり一段と可憐さが増し誰もが振り返るほどの美少女になった。
でも、本人は今も剣術に夢中で『騎士になりたい』とどうやら本気でそう思っているらしかった。
12歳になったノアは学園入学と同時に寮に入った。
ノアが入寮すると思っていなかったクラリス様は落胆し、寂しさから旦那様に頼りきりになっていた。
旦那様はロージーに会う為に本邸に顔は出すものの、別邸が生活の基盤になりつつあった。
そんなある日ーー
「クラリスが、懐妊した」
旦那様から報告を受けた。
クラリス様が夜会に出席出来なくなったので、どうしても断れない夜会のみ旦那様と出席することになった。
でも、妊娠中の不安により旦那様がそばを離れることをクラリス様が嫌がり、どうしようもない日は一人で夜会に出席した。
「クラリス様をご心配されて、公爵様も付きっきりらしいですわ」
「いつもお二人は仲睦まじいですもの」
「学園時代から恋人同士でしたから」
「まぁ!それでは、引き裂かれて泣く泣くお別れになったと?」
「大きな声では言えませんけれどね」
エヴァンス公爵夫人として、毅然にーー
噂話好きの連中の話に動揺しないーー
これは、夜会やお茶会での信条。
そう自分で決めていた。
今までは、守れていた。
でも、ここへきて・・・・・・
揺らいでしまう。
これでいいのか。
これが正解なのか。
少し大きくなったクラリス様のお腹をそっと触り、幸せそうに微笑み合う二人を見て。
『マーク』
『クラリス』
そう呼び会う二人を見て。
10歳の頃に自分は邪魔者だと理解して、
今また、それを突きつけられた。
折れそうになっていた気持ちは、ロージーに会うとあっという間に修復され、でも、またしばらくすると自信を失いーー
その繰り返しだった。
そして、数ヶ月後ーー
クラリス様は男の子を出産された。
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