3 / 41
第3話
しおりを挟む
「本当にミラ様はエヴァンス小公爵様に愛されていらっしゃいますわね」
「まぁ、ご覧になって。
今も、ミラ様を見つめていますわ」
今夜は結婚後初めての夜会だ。
周りは次期公爵夫人となる私に近づきたいのか、いつの間にか女性陣に囲まれてしまった。
「ミラ様、エヴァンス小公爵様がお手を振っていらっしゃるわ」
「あら・・・・・・」
夫人の目線の先を見れば、確かにマークお兄様が手を上げて微笑んでいた。
軽く手を上げ返すと、お兄様はこちらに向かって来た。
「ミラ、向こうで少し涼もうか。
君の好きなシャンパンも見かけたよ」
「そうですわね」
「まぁ、お熱いですこと」
「羨ましいですわ」
「では、失礼」
素早くエスコートされて女性陣から少し離れると、お兄様は笑い出した。
「遠くから見ても、ミラの引き攣った顔がわかったよ」
「まだ、ああいった事に慣れなくて。
一応、笑顔を貼り付けていたつもりだったんですけど」
「う~ん、見る人が見れば分かるかな」
「・・・・・・そうですか。まだまだですわね」
「大丈夫。徐々に慣れていけば良いよ。
そういえば、母上がミラは優秀だとべた褒めしていたよ」
「お義母様はお優しいですから」
給仕からシャンパンをもらい、お兄様は微笑みながら私に渡してくれる。
「明日から、2週間隣国へ行くけど大丈夫かい?」
「ええ。お義母様に色々と教わることもありますし、後は孤児院で子ども達に刺繍を教えたりといったところでしょうか」
「あまり無理しないようにね」
お兄様は王太子殿下の側近として忙しくしている。
王城に泊まり込む日も何度かあった。
でも、それ以外でお屋敷に帰る日はいつも食事を共にとり、庭でお茶を飲み、私の大好きなマカロンを忘れずに準備してくれる。
目が合えば抱きしめて口づけをして・・・・・・
そして、
『ミラ、愛してる』
愛おしそうに何度もそう言って、私を優しく抱いてくれる。
「ミラ、踊ろうか」
空いたグラスを下げると、お兄様は手を差し伸べてきた。
ブルーの瞳は優しく私を見つめている。
「はい、マーク様」
私は、一度は離したはずのその手に、そっと自分の手を重ねた。
4年後
「また見てるのかい?」
「ええ、だってものすごく綺麗なんですもの」
4年前に隣国へ行ったお兄様からもらったブルーダイヤモンドの指輪は、私の2番目の宝物だ。
お兄様の瞳の色のその宝石は、私達の大切な娘ロージーの瞳の色でもあった。
1番の宝物、ロージーの。
ロージーは2年前に誕生した私達の娘で、ブロンドヘアにブルーの瞳はお兄様にそっくりだ。
ふっくらした真っ白の肌にバラ色の頬を持つロージーは天使のように愛らしい。
どこへ行ってもみんなを虜にして、実家であるスタンリー伯爵家へ帰ればお姫様の扱いだ。
12歳になった弟のチャーリーに懐いているロージーはチャーリーから離れずに、脚にしがみついては弟を困らせている。
「じゃあ、今度はもっと徳大サイズのブルーダイヤモンドを見つけて、愛しの妻に贈るとしよう」
私が笑うと、お兄様は少し熱を帯びた瞳でじっと見つめて、唇を重ねてくる。
「・・・・・・ミラ」
「マーク様・・・・・・」
「今度は、君に似た宝物が欲しい・・・・・・」
重なった唇は次第に濃厚なものへと変わっていき、私達は愛し合った。
その日は、急にお茶会が中止となりお屋敷でのんびり過ごしていた。
「かあしゃま、どーこ?」
ロージーが飽きずに何度も繰り返す隠れんぼが始まった。
本人は隠れているつもりでいるらしいが、カーテンの下から体がまる見えになっている。
「ロージー、どこ?」
「あら?ロージーがいなくなったわ」
探すふりをしていると、見つからないのが嬉しくてキャッキャしながらジャンプをしてカーテンが揺れている。
「ジャーン」
嬉しそうにカーテンを開けて、天使が抱きついてくる。
いつもなら、この後はきまって抱っこを強請るのに、この時は違った。
窓側を向いている私は気づかなかったが、ロージーが何かに反応して急に走り出した。
「にぃに!」
「ロージー、急に走ると危ないわ!」
慌ててロージーを追いかけようと立ち上がり、振り返ると・・・・・・
「ロージー!また遊びに来たよ!」
そこに居たのは・・・・・・
マークお兄様に生き写しの、
金髪碧眼の少年だった。
「まぁ、ご覧になって。
今も、ミラ様を見つめていますわ」
今夜は結婚後初めての夜会だ。
周りは次期公爵夫人となる私に近づきたいのか、いつの間にか女性陣に囲まれてしまった。
「ミラ様、エヴァンス小公爵様がお手を振っていらっしゃるわ」
「あら・・・・・・」
夫人の目線の先を見れば、確かにマークお兄様が手を上げて微笑んでいた。
軽く手を上げ返すと、お兄様はこちらに向かって来た。
「ミラ、向こうで少し涼もうか。
君の好きなシャンパンも見かけたよ」
「そうですわね」
「まぁ、お熱いですこと」
「羨ましいですわ」
「では、失礼」
素早くエスコートされて女性陣から少し離れると、お兄様は笑い出した。
「遠くから見ても、ミラの引き攣った顔がわかったよ」
「まだ、ああいった事に慣れなくて。
一応、笑顔を貼り付けていたつもりだったんですけど」
「う~ん、見る人が見れば分かるかな」
「・・・・・・そうですか。まだまだですわね」
「大丈夫。徐々に慣れていけば良いよ。
そういえば、母上がミラは優秀だとべた褒めしていたよ」
「お義母様はお優しいですから」
給仕からシャンパンをもらい、お兄様は微笑みながら私に渡してくれる。
「明日から、2週間隣国へ行くけど大丈夫かい?」
「ええ。お義母様に色々と教わることもありますし、後は孤児院で子ども達に刺繍を教えたりといったところでしょうか」
「あまり無理しないようにね」
お兄様は王太子殿下の側近として忙しくしている。
王城に泊まり込む日も何度かあった。
でも、それ以外でお屋敷に帰る日はいつも食事を共にとり、庭でお茶を飲み、私の大好きなマカロンを忘れずに準備してくれる。
目が合えば抱きしめて口づけをして・・・・・・
そして、
『ミラ、愛してる』
愛おしそうに何度もそう言って、私を優しく抱いてくれる。
「ミラ、踊ろうか」
空いたグラスを下げると、お兄様は手を差し伸べてきた。
ブルーの瞳は優しく私を見つめている。
「はい、マーク様」
私は、一度は離したはずのその手に、そっと自分の手を重ねた。
4年後
「また見てるのかい?」
「ええ、だってものすごく綺麗なんですもの」
4年前に隣国へ行ったお兄様からもらったブルーダイヤモンドの指輪は、私の2番目の宝物だ。
お兄様の瞳の色のその宝石は、私達の大切な娘ロージーの瞳の色でもあった。
1番の宝物、ロージーの。
ロージーは2年前に誕生した私達の娘で、ブロンドヘアにブルーの瞳はお兄様にそっくりだ。
ふっくらした真っ白の肌にバラ色の頬を持つロージーは天使のように愛らしい。
どこへ行ってもみんなを虜にして、実家であるスタンリー伯爵家へ帰ればお姫様の扱いだ。
12歳になった弟のチャーリーに懐いているロージーはチャーリーから離れずに、脚にしがみついては弟を困らせている。
「じゃあ、今度はもっと徳大サイズのブルーダイヤモンドを見つけて、愛しの妻に贈るとしよう」
私が笑うと、お兄様は少し熱を帯びた瞳でじっと見つめて、唇を重ねてくる。
「・・・・・・ミラ」
「マーク様・・・・・・」
「今度は、君に似た宝物が欲しい・・・・・・」
重なった唇は次第に濃厚なものへと変わっていき、私達は愛し合った。
その日は、急にお茶会が中止となりお屋敷でのんびり過ごしていた。
「かあしゃま、どーこ?」
ロージーが飽きずに何度も繰り返す隠れんぼが始まった。
本人は隠れているつもりでいるらしいが、カーテンの下から体がまる見えになっている。
「ロージー、どこ?」
「あら?ロージーがいなくなったわ」
探すふりをしていると、見つからないのが嬉しくてキャッキャしながらジャンプをしてカーテンが揺れている。
「ジャーン」
嬉しそうにカーテンを開けて、天使が抱きついてくる。
いつもなら、この後はきまって抱っこを強請るのに、この時は違った。
窓側を向いている私は気づかなかったが、ロージーが何かに反応して急に走り出した。
「にぃに!」
「ロージー、急に走ると危ないわ!」
慌ててロージーを追いかけようと立ち上がり、振り返ると・・・・・・
「ロージー!また遊びに来たよ!」
そこに居たのは・・・・・・
マークお兄様に生き写しの、
金髪碧眼の少年だった。
31
お気に入りに追加
4,951
あなたにおすすめの小説
【本編完結】記憶をなくしたあなたへ
ブラウン
恋愛
記憶をなくしたあなたへ。
私は誓約書通り、あなたとは会うことはありません。
あなたも誓約書通り私たちを探さないでください。
私には愛し合った記憶があるが、あなたにはないという事実。
もう一度信じることができるのか、愛せるのか。
2人の愛を紡いでいく。
本編は6話完結です。
それ以降は番外編で、カイルやその他の子供たちの状況などを投稿していきます
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる