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第14話
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「ゔっっ」
何?うめき声・・・のような。
気のせい・・・だよね。
私を見て、また術にでも掛かった状態になったんだろうか。
こんなところ目撃されて、公爵家に私から接近したなんて思われたら堪らない。
いったいジェレミーさんは傍を離れて何してるんだろう。
はぁ~。
しょうがないか・・・・・・。
私は、ウッズ男爵令嬢。
ウッズ男爵令嬢。
「随分と立派な給仕係ですね。
あの、お料理頂けますか?」
「あ、あぁ」
「そのチキンのマリネに、魚のフライ、あとサラダをお願いします。
フライのソースは・・・白いもので」
本来なら飛びつくであろう茶色のソースは我慢した。
スティーブン様は手慣れた様子で3品を皿に均等に盛り付け、フライのソースも絶妙な量をかけた。
少し離れた窓際にソファとテーブルがある。
多分料理はあそこで頂くんだろう。
令嬢は自分で料理は、運ばないよね。
「あちらで頂きます」
この状況なら、スティーブン様に運んでもらうしかない。
本物の給仕係に料理に合う飲み物を頼み、休憩スペースへと先に歩くスティーブン様の後をついて行く。
その時、密かに恐れていた会話が耳に入った。
「まぁ、公爵様に料理を運ばせるなんて」
「先程アンドリュー様と踊っていたご令嬢ではなくて?」
「ウッズ男爵令嬢って聞きましたわ」
「まぁ、男爵令嬢ごときが」
“男爵令嬢ごときが”
“ごときが”
耳が痛い。
実際には男爵令嬢でもなくただのメイドと知れたら、囲まれて罵られて扇子で叩かれそうだ。
「・・・だ」
「はい?」
何か言いました?
正直、今は話さないでもらいたい。
っていうか、ジェレミーさんはどうした。
「ああいった噂話は、気にしなくて大丈夫だ」
小声でそう言うと私をソファに案内し、そして、自分も隣に腰を下ろした。
座るんですね。
チラリと隣を見ると、長い足を組んで、表情は笑顔でもなければ冷たいわけでもなく普通だった。
考えてみれば今まで見たスティーブン様って、蕩けるような笑顔か氷のような冷たさを帯びた顔とか、こう極端だった気がする。
今って、いったいどういう状態なんだろう。
周りはざわめいている。
見なくても、会場の人達の視線がここに集中しているのは想像できる。
こういう時は、食べよう。
私は頭の中で必死にマナーを思い出しながら、美しく盛り付けられた料理を食べ始めた。
ああ、美味しい。
ワインか果汁かよく分からない飲み物も運ばれて、幸せを感じていた時だった。
「ジョイ、
その・・・ドレス姿とても綺麗だ。
見た時からずっと言おうと思っていたが、タイミングを失ってしまった。
食事中にすまないが、今伝えなくてはと思って」
ゴッ、ゴホッ、ゴホッーー
ゴホッ、ゴホッ、ゴホッゴホッーー
と、止まらない。
いけない場所に野菜が入り込んでしまった。
差し出された飲み物を一気飲みして、やっと落ち着いてきた。
はーっ。
「ジョイ、大丈夫か?」
あれ?
何か?
ん?
背中に温かいものを感じるとともに、至近距離にスティーブン様の顔がーー
「近っ!」
な、な、何!この近さは。
食べてる最中に、とんでもないこと言うわ、そういえば咳き込んでる時、背中をさすられてたけど、もしかして。
恐る恐る顔を後ろに向けると、よりによって、ドレスの背中があいている部分にスティーブン様の手があった。
「すみませんが、背中の手を」
「あ、ああ、すまない」
スティーブン様は、ドレスの背中部分があいてることに今気づいたようで、バツが悪そうにしている。
私の方が、もっとバツが悪いけど。
2人とも下を向いてると、クスクス笑う声が聞こえた。
「ねぇ。君たちさぁ、会場の注目浴びてるよ」
顔を上げれば、腕を組んでこちらを見るアンドリュー様がいた。
何?うめき声・・・のような。
気のせい・・・だよね。
私を見て、また術にでも掛かった状態になったんだろうか。
こんなところ目撃されて、公爵家に私から接近したなんて思われたら堪らない。
いったいジェレミーさんは傍を離れて何してるんだろう。
はぁ~。
しょうがないか・・・・・・。
私は、ウッズ男爵令嬢。
ウッズ男爵令嬢。
「随分と立派な給仕係ですね。
あの、お料理頂けますか?」
「あ、あぁ」
「そのチキンのマリネに、魚のフライ、あとサラダをお願いします。
フライのソースは・・・白いもので」
本来なら飛びつくであろう茶色のソースは我慢した。
スティーブン様は手慣れた様子で3品を皿に均等に盛り付け、フライのソースも絶妙な量をかけた。
少し離れた窓際にソファとテーブルがある。
多分料理はあそこで頂くんだろう。
令嬢は自分で料理は、運ばないよね。
「あちらで頂きます」
この状況なら、スティーブン様に運んでもらうしかない。
本物の給仕係に料理に合う飲み物を頼み、休憩スペースへと先に歩くスティーブン様の後をついて行く。
その時、密かに恐れていた会話が耳に入った。
「まぁ、公爵様に料理を運ばせるなんて」
「先程アンドリュー様と踊っていたご令嬢ではなくて?」
「ウッズ男爵令嬢って聞きましたわ」
「まぁ、男爵令嬢ごときが」
“男爵令嬢ごときが”
“ごときが”
耳が痛い。
実際には男爵令嬢でもなくただのメイドと知れたら、囲まれて罵られて扇子で叩かれそうだ。
「・・・だ」
「はい?」
何か言いました?
正直、今は話さないでもらいたい。
っていうか、ジェレミーさんはどうした。
「ああいった噂話は、気にしなくて大丈夫だ」
小声でそう言うと私をソファに案内し、そして、自分も隣に腰を下ろした。
座るんですね。
チラリと隣を見ると、長い足を組んで、表情は笑顔でもなければ冷たいわけでもなく普通だった。
考えてみれば今まで見たスティーブン様って、蕩けるような笑顔か氷のような冷たさを帯びた顔とか、こう極端だった気がする。
今って、いったいどういう状態なんだろう。
周りはざわめいている。
見なくても、会場の人達の視線がここに集中しているのは想像できる。
こういう時は、食べよう。
私は頭の中で必死にマナーを思い出しながら、美しく盛り付けられた料理を食べ始めた。
ああ、美味しい。
ワインか果汁かよく分からない飲み物も運ばれて、幸せを感じていた時だった。
「ジョイ、
その・・・ドレス姿とても綺麗だ。
見た時からずっと言おうと思っていたが、タイミングを失ってしまった。
食事中にすまないが、今伝えなくてはと思って」
ゴッ、ゴホッ、ゴホッーー
ゴホッ、ゴホッ、ゴホッゴホッーー
と、止まらない。
いけない場所に野菜が入り込んでしまった。
差し出された飲み物を一気飲みして、やっと落ち着いてきた。
はーっ。
「ジョイ、大丈夫か?」
あれ?
何か?
ん?
背中に温かいものを感じるとともに、至近距離にスティーブン様の顔がーー
「近っ!」
な、な、何!この近さは。
食べてる最中に、とんでもないこと言うわ、そういえば咳き込んでる時、背中をさすられてたけど、もしかして。
恐る恐る顔を後ろに向けると、よりによって、ドレスの背中があいている部分にスティーブン様の手があった。
「すみませんが、背中の手を」
「あ、ああ、すまない」
スティーブン様は、ドレスの背中部分があいてることに今気づいたようで、バツが悪そうにしている。
私の方が、もっとバツが悪いけど。
2人とも下を向いてると、クスクス笑う声が聞こえた。
「ねぇ。君たちさぁ、会場の注目浴びてるよ」
顔を上げれば、腕を組んでこちらを見るアンドリュー様がいた。
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