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第18話 アルフォンス
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「アルフォンス、久しいな。
息災であったか」
「はい、ご無沙汰しております」
「エリザベートも元気にしておるか?」
「はい、相変わらず父上と恋人同士のようで見ていられません」
「そうか、モンテ王国の王族は愛が重いと聞くが、いまだにとは驚きであるな。
アルフォンスは21歳か?
まだ婚約者はおらぬのか?」
「ええ、おりません」
「モンテ王国は美女が多いはずだが、満足いく者はおらぬか」
現在このサヴォイ王国の大学に留学中である薬師の令嬢が、とある貴族から狙われているとの話を聞いて、3年振りに王妃である母上の母国サヴォイ王国へ来た。
急を要する事態でもあったので、転移魔法で移動し、伯父である国王様に直接話すことで速やかにその貴族は捕らえられた。
思ったよりも短時間で解決したので時間が余り、何となく大学に足を運んだ。
優秀な薬師である令嬢を一目見てみたい。
僅かにそんな気持ちがあったのかも知れない。
その薬師、グレイ男爵令嬢の作る薬はどれも素晴らしく、なかでも回復薬は回復魔法よりも効果があると、以前より聞いていた。
そんな逸材は知られてしまえば狙われる恐れもあるので、保護も兼ねて王宮へ呼び寄せる話があがったが、次期辺境伯である令息と婚約を結び、その話は立ち消えた。
それから4、5年経つかーー
フンフン、フ~ン、
フフフ~、フンフフ~ン
楽しそうな鼻歌が聞こえてくる扉から中を覗くと、銀髪を揺らして大きなジョウロを持つ女性を見た瞬間に、雷にでも打たれたような衝撃を受けた。
ーー彼女だ。彼女が俺の・・・・・・
そんな気持ちがどこからともなく湧き上がって、知らず知らずのうちに一目見るだけだったはずの相手の前に向かっていた。
「あれ?君がモンテ王国からの留学生?」
モンテ王国の王都で薬師の卵として勉強中のアル。
変身魔法も使わずに、名前も本名のアルを名乗っていた。
それから時間を作っては転移魔法でアリソンの留学先である大学を訪れた。
アリソンの近くにいるだけで、今まで感じたことのない幸福感に包まれた。
そして、アリソンと親しくなるうちに、彼女をもっと知りたい。自分のことも知ってほしい。
そんな気持ちが生まれいった。
だが、アリソンには婚約者がいることも理解していた。
あまり本人からは口にしないものの、聞かれれば笑顔で婚約者の話をする姿を何度か目にして胸を痛めた。
女神様の祈りが込められている、危険から身を守ってくれるネックレスをお土産に買ったと、女神のような微笑みを浮かべて話すアリソンを見た時には、諦めなくてはいけないと自覚した。
ならばアリソンを、優秀な薬師である彼女を、王族として見守ろうと誓った。
辺境伯令息は文武両道の美丈夫で、次期辺境伯として申し分ないと悪い噂は聞かない。
それでも、本当にアリソンが幸せになれる相手であるか、王家の影を使って調査した。
[毒矢で負った怪我を治療した平民の女性治療師であるマリア嬢と数日前から親しくしている模様。
その後、辺境伯ご夫妻の指示のもとマリア嬢は辺境伯の城に滞在。
回復魔法に体質が合わなかったスペンサー伯爵令息に回復魔法が効くか、再度確認も兼ねてというのが表向きの理由である。
マリア嬢は勤務先の治療院では“聖女様”と呼ばれ、今回の令息の一件で領民からの人気が高まり、令息との結婚を望む声も多数聞かれる]
女性治療師を城に住まわせる?
何を考えたらそんなことが出来る!
アリソンに、今まで何度も回復薬で助けられておきながら!
彼女は今も留学先でお前の為に、お前達の領地の為に勉強しているというのに!
あまりの苛立ちに魔力が溢れて窓ガラスが割れそうになって、側近は焦り、筆頭魔術師が飛んでくるという、ちょっとした騒ぎになってしまった。
そんな時、夜会で辺境伯次男のジョー・スペンサーに出会い、彼に協力を求めることになる。
「まさか、兄上にかぎって」
そう話していたジョーから連絡が来た。
[両親と兄上は、グレイ男爵令嬢と婚約解消し、新たに治療師であるマリア嬢との婚約を考えています。
グレイ男爵令嬢は兄上とマリア嬢の不貞現場を目撃して・・・・・・]
そこまで読むと、窓ガラスが割れて筆頭魔術師が部屋へ飛んできた。
息災であったか」
「はい、ご無沙汰しております」
「エリザベートも元気にしておるか?」
「はい、相変わらず父上と恋人同士のようで見ていられません」
「そうか、モンテ王国の王族は愛が重いと聞くが、いまだにとは驚きであるな。
アルフォンスは21歳か?
まだ婚約者はおらぬのか?」
「ええ、おりません」
「モンテ王国は美女が多いはずだが、満足いく者はおらぬか」
現在このサヴォイ王国の大学に留学中である薬師の令嬢が、とある貴族から狙われているとの話を聞いて、3年振りに王妃である母上の母国サヴォイ王国へ来た。
急を要する事態でもあったので、転移魔法で移動し、伯父である国王様に直接話すことで速やかにその貴族は捕らえられた。
思ったよりも短時間で解決したので時間が余り、何となく大学に足を運んだ。
優秀な薬師である令嬢を一目見てみたい。
僅かにそんな気持ちがあったのかも知れない。
その薬師、グレイ男爵令嬢の作る薬はどれも素晴らしく、なかでも回復薬は回復魔法よりも効果があると、以前より聞いていた。
そんな逸材は知られてしまえば狙われる恐れもあるので、保護も兼ねて王宮へ呼び寄せる話があがったが、次期辺境伯である令息と婚約を結び、その話は立ち消えた。
それから4、5年経つかーー
フンフン、フ~ン、
フフフ~、フンフフ~ン
楽しそうな鼻歌が聞こえてくる扉から中を覗くと、銀髪を揺らして大きなジョウロを持つ女性を見た瞬間に、雷にでも打たれたような衝撃を受けた。
ーー彼女だ。彼女が俺の・・・・・・
そんな気持ちがどこからともなく湧き上がって、知らず知らずのうちに一目見るだけだったはずの相手の前に向かっていた。
「あれ?君がモンテ王国からの留学生?」
モンテ王国の王都で薬師の卵として勉強中のアル。
変身魔法も使わずに、名前も本名のアルを名乗っていた。
それから時間を作っては転移魔法でアリソンの留学先である大学を訪れた。
アリソンの近くにいるだけで、今まで感じたことのない幸福感に包まれた。
そして、アリソンと親しくなるうちに、彼女をもっと知りたい。自分のことも知ってほしい。
そんな気持ちが生まれいった。
だが、アリソンには婚約者がいることも理解していた。
あまり本人からは口にしないものの、聞かれれば笑顔で婚約者の話をする姿を何度か目にして胸を痛めた。
女神様の祈りが込められている、危険から身を守ってくれるネックレスをお土産に買ったと、女神のような微笑みを浮かべて話すアリソンを見た時には、諦めなくてはいけないと自覚した。
ならばアリソンを、優秀な薬師である彼女を、王族として見守ろうと誓った。
辺境伯令息は文武両道の美丈夫で、次期辺境伯として申し分ないと悪い噂は聞かない。
それでも、本当にアリソンが幸せになれる相手であるか、王家の影を使って調査した。
[毒矢で負った怪我を治療した平民の女性治療師であるマリア嬢と数日前から親しくしている模様。
その後、辺境伯ご夫妻の指示のもとマリア嬢は辺境伯の城に滞在。
回復魔法に体質が合わなかったスペンサー伯爵令息に回復魔法が効くか、再度確認も兼ねてというのが表向きの理由である。
マリア嬢は勤務先の治療院では“聖女様”と呼ばれ、今回の令息の一件で領民からの人気が高まり、令息との結婚を望む声も多数聞かれる]
女性治療師を城に住まわせる?
何を考えたらそんなことが出来る!
アリソンに、今まで何度も回復薬で助けられておきながら!
彼女は今も留学先でお前の為に、お前達の領地の為に勉強しているというのに!
あまりの苛立ちに魔力が溢れて窓ガラスが割れそうになって、側近は焦り、筆頭魔術師が飛んでくるという、ちょっとした騒ぎになってしまった。
そんな時、夜会で辺境伯次男のジョー・スペンサーに出会い、彼に協力を求めることになる。
「まさか、兄上にかぎって」
そう話していたジョーから連絡が来た。
[両親と兄上は、グレイ男爵令嬢と婚約解消し、新たに治療師であるマリア嬢との婚約を考えています。
グレイ男爵令嬢は兄上とマリア嬢の不貞現場を目撃して・・・・・・]
そこまで読むと、窓ガラスが割れて筆頭魔術師が部屋へ飛んできた。
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