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第11話
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『助かったわ、また開いてくれて。
ここが無くなったら、いちばん近い薬局でも乗り合い馬車を乗り継がないと行けないからね』
『あの胃薬良く効いたよ、ありがとう』
『いやぁ、腰を痛めてしまってね。
本当に助かるよ』
薬局を開店させて2週間になる。
薬を求める近隣住民はここが閉まったことに不安を抱いていたらしく、口々に感謝される。
そして、流石は王都。
辺境ではあまり需要の無かった薬も買い求めるので、大忙しだ。
中でも、手荒れによく効くクリームが驚く程に注目を浴びている。
このハンドクリームは、護衛騎士と薬師見習いからも絶賛された。
「魔法のハンドクリームをひとつお願いしたい」
この声は・・・・・・。
2、3日に1度ふらりと現れる、この国で最も忙しい方のひとり。
「手荒れに効くハンドクリームしかございませんが」
「じゃあ、そのハンドクリームをひとつ」
「かしこまりました。
1日3回、薄く伸ばしてお使いください」
使用方法の紙をクリームと一緒に紙袋に入れて渡すと、ありがとう。みんなで食べてくれ。と箱を手渡された。
箱からは甘い香りが漂ってくる。
お礼を述べると、茶色の瞳の高貴な方は微笑みを浮かべてはいるものの、その顔色は冴えず目の下には薄っすらクマも見られた。
今は、殿下以外にお客様は居ない。
「アル、良かったら、冷たい飲み物でもどう?」
疲労回復と睡眠不足に効く薬草を煎じて、レモン、ハチミツ、冷たい水で作る飲み物は、グレイ男爵家でよく飲むものだった。
勿論、殿下にこのまま飲ませる訳ではない。
いつも必ず側近と数名の護衛が近くで市民に紛れている。
私を含む4名の毒味の後に殿下が飲むと、ものすごく驚かれた。
「疲れが一気に取れたよ!」
側近や護衛騎士からも楽になった。と感謝され、それから殿下が薬局に顔を出す際には、毎回これを飲むのが習慣になっていった。
王宮で同じものをいただけるようにと、王宮専属薬師へ作り方の手紙を手渡すも、なぜか『ここで飲みたいんだ』と、返されてしまった。
そんな様子を見て、ミリーや薬師見習い、護衛騎士は、なぜかニヤニヤしていた。
そして、殿下からは疲れが解消されたお礼をしたいと食事に誘われて、庶民に人気の食堂へ出かけた。
「アリソン、ここのメニューはお任せランチのみなんだ」
「へぇー」
賑やかな店内では、みんなが今日のお任せランチであろうハンバーグを食べていた。
「注文に悩む手間もかからないうえに旨い!
最高だろ?」
確かにその通りかも知れない。
「そうね。アルはここによく来るの?」
「ああ」
学生時代から変身しては市井の生活を見に来ていて、偶然にこの食堂に入り、かれこれ5年になるらしい。
こうしてアルと話していると、サヴォイ王国にいた時を思い出す。
アルが殿下と知って、一時はかなり距離ができたけれど、最近はまた気さくに話すようになった。
『そんなに畏まって会話されると、周りに怪しまれるよ』
そう言われたからだけど。
ボサボサの黒髪を見るとなぜかホッとした。
学生時代に側近と護衛を撒いてあちこちに行った話を聞いていると、あっという間に楽しい時間は過ぎていった。
穏やかともいえる王都での生活が3か月過ぎた頃だった。
辺境伯が引退し、ルークへと代替わりする。
そして、今は伯爵令嬢となったマリア様との婚約報告の為に王宮を訪れるとのニュースが話題になった。
ここが無くなったら、いちばん近い薬局でも乗り合い馬車を乗り継がないと行けないからね』
『あの胃薬良く効いたよ、ありがとう』
『いやぁ、腰を痛めてしまってね。
本当に助かるよ』
薬局を開店させて2週間になる。
薬を求める近隣住民はここが閉まったことに不安を抱いていたらしく、口々に感謝される。
そして、流石は王都。
辺境ではあまり需要の無かった薬も買い求めるので、大忙しだ。
中でも、手荒れによく効くクリームが驚く程に注目を浴びている。
このハンドクリームは、護衛騎士と薬師見習いからも絶賛された。
「魔法のハンドクリームをひとつお願いしたい」
この声は・・・・・・。
2、3日に1度ふらりと現れる、この国で最も忙しい方のひとり。
「手荒れに効くハンドクリームしかございませんが」
「じゃあ、そのハンドクリームをひとつ」
「かしこまりました。
1日3回、薄く伸ばしてお使いください」
使用方法の紙をクリームと一緒に紙袋に入れて渡すと、ありがとう。みんなで食べてくれ。と箱を手渡された。
箱からは甘い香りが漂ってくる。
お礼を述べると、茶色の瞳の高貴な方は微笑みを浮かべてはいるものの、その顔色は冴えず目の下には薄っすらクマも見られた。
今は、殿下以外にお客様は居ない。
「アル、良かったら、冷たい飲み物でもどう?」
疲労回復と睡眠不足に効く薬草を煎じて、レモン、ハチミツ、冷たい水で作る飲み物は、グレイ男爵家でよく飲むものだった。
勿論、殿下にこのまま飲ませる訳ではない。
いつも必ず側近と数名の護衛が近くで市民に紛れている。
私を含む4名の毒味の後に殿下が飲むと、ものすごく驚かれた。
「疲れが一気に取れたよ!」
側近や護衛騎士からも楽になった。と感謝され、それから殿下が薬局に顔を出す際には、毎回これを飲むのが習慣になっていった。
王宮で同じものをいただけるようにと、王宮専属薬師へ作り方の手紙を手渡すも、なぜか『ここで飲みたいんだ』と、返されてしまった。
そんな様子を見て、ミリーや薬師見習い、護衛騎士は、なぜかニヤニヤしていた。
そして、殿下からは疲れが解消されたお礼をしたいと食事に誘われて、庶民に人気の食堂へ出かけた。
「アリソン、ここのメニューはお任せランチのみなんだ」
「へぇー」
賑やかな店内では、みんなが今日のお任せランチであろうハンバーグを食べていた。
「注文に悩む手間もかからないうえに旨い!
最高だろ?」
確かにその通りかも知れない。
「そうね。アルはここによく来るの?」
「ああ」
学生時代から変身しては市井の生活を見に来ていて、偶然にこの食堂に入り、かれこれ5年になるらしい。
こうしてアルと話していると、サヴォイ王国にいた時を思い出す。
アルが殿下と知って、一時はかなり距離ができたけれど、最近はまた気さくに話すようになった。
『そんなに畏まって会話されると、周りに怪しまれるよ』
そう言われたからだけど。
ボサボサの黒髪を見るとなぜかホッとした。
学生時代に側近と護衛を撒いてあちこちに行った話を聞いていると、あっという間に楽しい時間は過ぎていった。
穏やかともいえる王都での生活が3か月過ぎた頃だった。
辺境伯が引退し、ルークへと代替わりする。
そして、今は伯爵令嬢となったマリア様との婚約報告の為に王宮を訪れるとのニュースが話題になった。
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