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第7話
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「お姉さま・・・ルークお兄様と何かあったの?」
あれから3日が経った。
ルークは男爵家に来て私の名前を大声で呼んでは、後を追ってきたジョーに連れ戻されている。
門番にはルークが来ても中へ入れないで欲しい。そうお願いしているけれど、男爵家の門番が次期辺境伯を追い返すなんて無理な話なので、連れ帰ってくれるジョーには助けられている。
「・・・・・・ええ」
「ルークお兄様、お姉さまに何度も謝ってるみたい」
「・・・・・・」
「話を、聞いてあげないの?」
「・・・・・・難しいかな」
あの日、男爵家に戻って数時間後にジョーが来た。
あれから城では、ジョー、ルーク、ご両親である辺境伯ご夫妻と話し合いが行われた。
ジョーは、ルークの不貞行為をご両親に告げたが、ふたりはルークを叱るわけでも取り乱すわけでもなかった。
おかしいと思ったジョーがどういうことか問いただすと、ご両親はマリアさんを新たな婚約者に迎えたい旨を話し始めた。
回復魔法を受けられずに苦しむルークに、優れた薬師であるグレイ男爵家のアリソンを婚約者にした。
勿論アリソンに何ら不満があるわけではない。
でも、マリアさんの回復魔法が効くとわかった今、次期辺境伯であるルークには何かあった時に治療薬ではなく回復魔法での治療を受けさせたい。
辺境伯当主は、代々専属治療師を持つ。
しかも、マリアさんは治療院では“聖女様”と患者達から慕われ、次期辺境伯であるルークを救ったことから領民の中で人気が一層高まり、ルークとマリアさんの結婚を望む声も多く挙がっているらしい。
ルークを救ったお礼を兼ねて、マリアさんを夕食に招待した。
ふたりを観察すれば、お互いに好感を持っているように見える。
領民からの支持が高い、聖女と呼ばれる治療師。
知り合いの伯爵家の養女になれば婚姻も可能。
マリアさんには治療師としてルークの側、つまりは城に滞在することを、ルークにはマリアさんとの婚約を考えてはどうか提案した。
最初ルークは婚約者であるアリソンに対して不誠実はできない姿勢を見せたが、マリアと接するうちに変化を見せていった。
『アリソン、本当に申し訳ない』
ジョーは、そんなのおかしい。
今まで支えてくれたアリソンに対して酷過ぎる!
考え直すように説得を試みたが、両親に関しては聞く耳を持たなかった。
でも、ルークは違ったらしい。
『兄貴はここへ来るかも知れない』
今更、何を話すのか。
あの日、ルークの部屋であんな場面を目撃して、ショックだった。
自室にふたりきりで居たこと、
私とはしたことのない、唇への口づけも。
急用なんて嘘をつかれたことも。
ルークのことが好きだった。
「大好きだよ』という言葉を信じていたし、抱きしめてくるのも好意の表れだと思っていた。
ただの、婚約者というものへのアピールだったのに。
今となっては、ルークも私のことを好いてくれてるものとばかり思っていた自分が恥ずかしくなる。
幼い頃から私に優しかった辺境伯ご夫妻も、それは上辺だけのものだった。
慕っていた人達だからこそ、悲しかった。
だけど、
婚約が決まったのは、私の作る回復薬が次期辺境伯となるルークに必要だから。
その通りだっただけだ。
その1週間後、ルークとの婚約解消されることが決まった。
あれから3日が経った。
ルークは男爵家に来て私の名前を大声で呼んでは、後を追ってきたジョーに連れ戻されている。
門番にはルークが来ても中へ入れないで欲しい。そうお願いしているけれど、男爵家の門番が次期辺境伯を追い返すなんて無理な話なので、連れ帰ってくれるジョーには助けられている。
「・・・・・・ええ」
「ルークお兄様、お姉さまに何度も謝ってるみたい」
「・・・・・・」
「話を、聞いてあげないの?」
「・・・・・・難しいかな」
あの日、男爵家に戻って数時間後にジョーが来た。
あれから城では、ジョー、ルーク、ご両親である辺境伯ご夫妻と話し合いが行われた。
ジョーは、ルークの不貞行為をご両親に告げたが、ふたりはルークを叱るわけでも取り乱すわけでもなかった。
おかしいと思ったジョーがどういうことか問いただすと、ご両親はマリアさんを新たな婚約者に迎えたい旨を話し始めた。
回復魔法を受けられずに苦しむルークに、優れた薬師であるグレイ男爵家のアリソンを婚約者にした。
勿論アリソンに何ら不満があるわけではない。
でも、マリアさんの回復魔法が効くとわかった今、次期辺境伯であるルークには何かあった時に治療薬ではなく回復魔法での治療を受けさせたい。
辺境伯当主は、代々専属治療師を持つ。
しかも、マリアさんは治療院では“聖女様”と患者達から慕われ、次期辺境伯であるルークを救ったことから領民の中で人気が一層高まり、ルークとマリアさんの結婚を望む声も多く挙がっているらしい。
ルークを救ったお礼を兼ねて、マリアさんを夕食に招待した。
ふたりを観察すれば、お互いに好感を持っているように見える。
領民からの支持が高い、聖女と呼ばれる治療師。
知り合いの伯爵家の養女になれば婚姻も可能。
マリアさんには治療師としてルークの側、つまりは城に滞在することを、ルークにはマリアさんとの婚約を考えてはどうか提案した。
最初ルークは婚約者であるアリソンに対して不誠実はできない姿勢を見せたが、マリアと接するうちに変化を見せていった。
『アリソン、本当に申し訳ない』
ジョーは、そんなのおかしい。
今まで支えてくれたアリソンに対して酷過ぎる!
考え直すように説得を試みたが、両親に関しては聞く耳を持たなかった。
でも、ルークは違ったらしい。
『兄貴はここへ来るかも知れない』
今更、何を話すのか。
あの日、ルークの部屋であんな場面を目撃して、ショックだった。
自室にふたりきりで居たこと、
私とはしたことのない、唇への口づけも。
急用なんて嘘をつかれたことも。
ルークのことが好きだった。
「大好きだよ』という言葉を信じていたし、抱きしめてくるのも好意の表れだと思っていた。
ただの、婚約者というものへのアピールだったのに。
今となっては、ルークも私のことを好いてくれてるものとばかり思っていた自分が恥ずかしくなる。
幼い頃から私に優しかった辺境伯ご夫妻も、それは上辺だけのものだった。
慕っていた人達だからこそ、悲しかった。
だけど、
婚約が決まったのは、私の作る回復薬が次期辺境伯となるルークに必要だから。
その通りだっただけだ。
その1週間後、ルークとの婚約解消されることが決まった。
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