3 / 24
第3話
しおりを挟む
その後は、留学先であったサヴォイ王国の話をして、そのまま誘われるがまま夕食をいただくことになった。
ルークのご両親であるスペンサー辺境伯ご夫妻にサヴォイ王国のお土産を渡そうと少し遅れて食堂へ向かうと、そこにはすでに席についた4人、スペンサー辺境伯ご夫妻、ルーク、そして、マリアさんが雑談をしていた。
マリアさんがこの場にいること、その様子がとても自然で馴染んでいることに驚きを隠せなかった。
辺境伯ご夫妻は久々の再会を懐かしんで、ここ1年間に起こった辺境の話をしてくれた。
ちなみに、ルークの弟であるジョーは夜会出席のために婚約者の住む王都に滞在中で、1週間後に戻るらしい。
向かいの席に座るルークをチラリと見ると、マリアさんと市井で流行っている食べ物の話で盛り上がっているようだった。
私の視線に気づいたルークは、『後で』と声に出さずに口元だけを動かすと、またマリアさんとの会話に戻った。
そのルークの表情は柔らかく、マリアさんは頬をピンク色に染めて、はにかんでいるように見えた。
今のは、何??
夕食をいただいた後、ルークに馬車で男爵家まで送ってもらうことになった。
馬車に乗る時のさり気ないエスコートも、私の手を自然に握ってくるのも、1年前と変わらない。
でも、気になっていたこと、いつもマリアさんと一緒に食事を取っているのか聞いてみると、
『マリアは弟や妹が4人いて、自宅では賑やかな食卓を囲んでいるから、ひとりで食事を取るのが寂しいみたいで誘うことにしたんだ』
食事をしながら、市井の話をしてもらうのが楽しいと教えてくれた。
また、“マリア”か・・・・・・。
次期辺境伯として、領民の生活に目を向けるのはもっともなこと。
そういえば、以前からよく騎士達に普段の生活を聞いていて、ルークと一緒に人気店といわれる食堂へ行ったこともあったっけ。
すっきりしない気がするのは、きっと1年ぶりに国へ帰って、少し過敏になってるだかけかも知れない。
ルークに回復魔法が効いたのは喜ばしいことで、マリアさんは期間限定の専属治療師のようなもの。
そう納得しようとしていたらーー
「お嬢様!不敬を承知で申し上げますけれど、スペンサー伯爵令息には大変失望いたしました。
お嬢様という素晴らしい婚約者がありながら、女性治療師の方とあのように親しげに振る舞うなんて、常識で考えてまずあり得ません!」
普段は穏やかな侍女のミリーが、ルークの乗った馬車が出発するやいなや、興奮した様子で早口にまくしたてた。
顔を赤くして、腕をプルプルさせながら怒っている姿を見るのは初めてで、最初は我慢していたもののお腹を抱えて笑ってしまった。
「お嬢様、笑うところじゃありませんっ。
それにですね、婚約者の前で何度も他の女性の名前を呼ぶのも・・・」
「・・・・・・フーッ、ごめんなさい。ミリー。
あなたが、あんな早口にまくしたてるのを見るのは初めてで、つい」
「いえ・・・・・・わたくしとした事が、感情的になってしまって」
「ううん、ありがとう。
私も、今日は色々と思うところがあったから」
ミリーの核心をついた言葉は私の心情を代弁してくれているようで、それだけで充分だった。
留学先から戻り、婚約者であるルークに会って、予想だにしない出来事があって正直疲れた。
眠って目が覚めたら、以前のように悩みとは無縁の日々に戻ってくれたら・・・・・・。
ベッドで目を瞑っていると、ルークにお土産を渡しそびれたことを思い出した。
赤い宝石がついた、剣をモチーフにしたネックレス。
宝石には女神様の祈りが込められていて、危険から身を守ってくれるらしい。
次に会った時に渡そう。
そう思いながら眠りについた。
ルークのご両親であるスペンサー辺境伯ご夫妻にサヴォイ王国のお土産を渡そうと少し遅れて食堂へ向かうと、そこにはすでに席についた4人、スペンサー辺境伯ご夫妻、ルーク、そして、マリアさんが雑談をしていた。
マリアさんがこの場にいること、その様子がとても自然で馴染んでいることに驚きを隠せなかった。
辺境伯ご夫妻は久々の再会を懐かしんで、ここ1年間に起こった辺境の話をしてくれた。
ちなみに、ルークの弟であるジョーは夜会出席のために婚約者の住む王都に滞在中で、1週間後に戻るらしい。
向かいの席に座るルークをチラリと見ると、マリアさんと市井で流行っている食べ物の話で盛り上がっているようだった。
私の視線に気づいたルークは、『後で』と声に出さずに口元だけを動かすと、またマリアさんとの会話に戻った。
そのルークの表情は柔らかく、マリアさんは頬をピンク色に染めて、はにかんでいるように見えた。
今のは、何??
夕食をいただいた後、ルークに馬車で男爵家まで送ってもらうことになった。
馬車に乗る時のさり気ないエスコートも、私の手を自然に握ってくるのも、1年前と変わらない。
でも、気になっていたこと、いつもマリアさんと一緒に食事を取っているのか聞いてみると、
『マリアは弟や妹が4人いて、自宅では賑やかな食卓を囲んでいるから、ひとりで食事を取るのが寂しいみたいで誘うことにしたんだ』
食事をしながら、市井の話をしてもらうのが楽しいと教えてくれた。
また、“マリア”か・・・・・・。
次期辺境伯として、領民の生活に目を向けるのはもっともなこと。
そういえば、以前からよく騎士達に普段の生活を聞いていて、ルークと一緒に人気店といわれる食堂へ行ったこともあったっけ。
すっきりしない気がするのは、きっと1年ぶりに国へ帰って、少し過敏になってるだかけかも知れない。
ルークに回復魔法が効いたのは喜ばしいことで、マリアさんは期間限定の専属治療師のようなもの。
そう納得しようとしていたらーー
「お嬢様!不敬を承知で申し上げますけれど、スペンサー伯爵令息には大変失望いたしました。
お嬢様という素晴らしい婚約者がありながら、女性治療師の方とあのように親しげに振る舞うなんて、常識で考えてまずあり得ません!」
普段は穏やかな侍女のミリーが、ルークの乗った馬車が出発するやいなや、興奮した様子で早口にまくしたてた。
顔を赤くして、腕をプルプルさせながら怒っている姿を見るのは初めてで、最初は我慢していたもののお腹を抱えて笑ってしまった。
「お嬢様、笑うところじゃありませんっ。
それにですね、婚約者の前で何度も他の女性の名前を呼ぶのも・・・」
「・・・・・・フーッ、ごめんなさい。ミリー。
あなたが、あんな早口にまくしたてるのを見るのは初めてで、つい」
「いえ・・・・・・わたくしとした事が、感情的になってしまって」
「ううん、ありがとう。
私も、今日は色々と思うところがあったから」
ミリーの核心をついた言葉は私の心情を代弁してくれているようで、それだけで充分だった。
留学先から戻り、婚約者であるルークに会って、予想だにしない出来事があって正直疲れた。
眠って目が覚めたら、以前のように悩みとは無縁の日々に戻ってくれたら・・・・・・。
ベッドで目を瞑っていると、ルークにお土産を渡しそびれたことを思い出した。
赤い宝石がついた、剣をモチーフにしたネックレス。
宝石には女神様の祈りが込められていて、危険から身を守ってくれるらしい。
次に会った時に渡そう。
そう思いながら眠りについた。
33
お気に入りに追加
2,701
あなたにおすすめの小説
王太子殿下が私を諦めない
風見ゆうみ
恋愛
公爵令嬢であるミア様の侍女である私、ルルア・ウィンスレットは伯爵家の次女として生まれた。父は姉だけをバカみたいに可愛がるし、姉は姉で私に婚約者が決まったと思ったら、婚約者に近付き、私から奪う事を繰り返していた。
今年でもう21歳。こうなったら、一生、ミア様の侍女として生きる、と決めたのに、幼なじみであり俺様系の王太子殿下、アーク・ミドラッドから結婚を申し込まれる。
きっぱりとお断りしたのに、アーク殿下はなぜか諦めてくれない。
どうせ、姉にとられるのだから、最初から姉に渡そうとしても、なぜか、アーク殿下は私以外に興味を示さない? 逆に自分に興味を示さない彼に姉が恋におちてしまい…。
※史実とは関係ない、異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
【完結】私より優先している相手が仮病だと、いい加減に気がついたらどうですか?〜病弱を訴えている婚約者の義妹は超が付くほど健康ですよ〜
よどら文鳥
恋愛
ジュリエル=ディラウは、生まれながらに婚約者が決まっていた。
ハーベスト=ドルチャと正式に結婚する前に、一度彼の実家で同居をすることも決まっている。
同居生活が始まり、最初は順調かとジュリエルは思っていたが、ハーベストの義理の妹、シャロン=ドルチャは病弱だった。
ドルチャ家の人間はシャロンのことを溺愛しているため、折角のデートも病気を理由に断られてしまう。それが例え僅かな微熱でもだ。
あることがキッカケでシャロンの病気は実は仮病だとわかり、ジュリエルは真実を訴えようとする。
だが、シャロンを溺愛しているドルチャ家の人間は聞く耳持たず、更にジュリエルを苦しめるようになってしまった。
ハーベストは、ジュリエルが意図的に苦しめられていることを知らなかった。
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
【完結】婚約相手は私を愛してくれてはいますが病弱の幼馴染を大事にするので、私も婚約者のことを改めて考えてみることにします
よどら文鳥
恋愛
私とバズドド様は政略結婚へ向けての婚約関係でありながら、恋愛結婚だとも思っています。それほどに愛し合っているのです。
このことは私たちが通う学園でも有名な話ではありますが、私に応援と同情をいただいてしまいます。この婚約を良く思ってはいないのでしょう。
ですが、バズドド様の幼馴染が遠くの地から王都へ帰ってきてからというもの、私たちの恋仲関係も変化してきました。
ある日、馬車内での出来事をきっかけに、私は本当にバズドド様のことを愛しているのか真剣に考えることになります。
その結果、私の考え方が大きく変わることになりました。
【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました
よどら文鳥
恋愛
ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。
ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。
ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。
更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。
再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。
ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。
後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。
ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。
【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる