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第3話

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その後は、留学先であったサヴォイ王国の話をして、そのまま誘われるがまま夕食をいただくことになった。

ルークのご両親であるスペンサー辺境伯ご夫妻にサヴォイ王国のお土産を渡そうと少し遅れて食堂へ向かうと、そこにはすでに席についた4人、スペンサー辺境伯ご夫妻、ルーク、そして、マリアさんが雑談をしていた。

マリアさんがこの場にいること、その様子がとても自然で馴染んでいることに驚きを隠せなかった。

辺境伯ご夫妻は久々の再会を懐かしんで、ここ1年間に起こった辺境の話をしてくれた。
ちなみに、ルークの弟であるジョーは夜会出席のために婚約者の住む王都に滞在中で、1週間後に戻るらしい。

向かいの席に座るルークをチラリと見ると、マリアさんと市井で流行っている食べ物の話で盛り上がっているようだった。

私の視線に気づいたルークは、『後で』と声に出さずに口元だけを動かすと、またマリアさんとの会話に戻った。

そのルークの表情は柔らかく、マリアさんは頬をピンク色に染めて、はにかんでいるように見えた。


今のは、何??




夕食をいただいた後、ルークに馬車で男爵家まで送ってもらうことになった。
馬車に乗る時のさり気ないエスコートも、私の手を自然に握ってくるのも、1年前と変わらない。

でも、気になっていたこと、いつもマリアさんと一緒に食事を取っているのか聞いてみると、

『マリアは弟や妹が4人いて、自宅では賑やかな食卓を囲んでいるから、ひとりで食事を取るのが寂しいみたいで誘うことにしたんだ』

食事をしながら、市井の話をしてもらうのが楽しいと教えてくれた。

また、“マリア”か・・・・・・。

次期辺境伯として、領民の生活に目を向けるのはもっともなこと。
そういえば、以前からよく騎士達に普段の生活を聞いていて、ルークと一緒に人気店といわれる食堂へ行ったこともあったっけ。

すっきりしない気がするのは、きっと1年ぶりに国へ帰って、少し過敏になってるだかけかも知れない。
ルークに回復魔法が効いたのは喜ばしいことで、マリアさんは期間限定の専属治療師のようなもの。
そう納得しようとしていたらーー

「お嬢様!不敬を承知で申し上げますけれど、スペンサー伯爵令息には大変失望いたしました。
お嬢様という素晴らしい婚約者がありながら、女性治療師の方とあのように親しげに振る舞うなんて、常識で考えてまずあり得ません!」

普段は穏やかな侍女のミリーが、ルークの乗った馬車が出発するやいなや、興奮した様子で早口にまくしたてた。

顔を赤くして、腕をプルプルさせながら怒っている姿を見るのは初めてで、最初は我慢していたもののお腹を抱えて笑ってしまった。

「お嬢様、笑うところじゃありませんっ。
それにですね、婚約者の前で何度も他の女性の名前を呼ぶのも・・・」

「・・・・・・フーッ、ごめんなさい。ミリー。
あなたが、あんな早口にまくしたてるのを見るのは初めてで、つい」

「いえ・・・・・・わたくしとした事が、感情的になってしまって」

「ううん、ありがとう。
私も、今日は色々と思うところがあったから」

ミリーの核心をついた言葉は私の心情を代弁してくれているようで、それだけで充分だった。
留学先から戻り、婚約者であるルークに会って、予想だにしない出来事があって正直疲れた。


眠って目が覚めたら、以前のように悩みとは無縁の日々に戻ってくれたら・・・・・・。

ベッドで目を瞑っていると、ルークにお土産を渡しそびれたことを思い出した。

赤い宝石がついた、剣をモチーフにしたネックレス。
宝石には女神様の祈りが込められていて、危険から身を守ってくれるらしい。

次に会った時に渡そう。
そう思いながら眠りについた。




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