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第1話
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実家であるグレイ男爵家は代々薬師として、遠縁にあたるスペンサー辺境伯を陰ながら支えてきた。
その男爵家の娘である私、アリソン・グレイも幼い頃から薬草について学び、一人前の薬師となるため、17歳から医療、薬学が我が国よりも格段に進歩している隣国サヴォイ王国に留学し、この度1年間の留学を終えモンテ王国へ戻ることとなった。
「お嬢様、スペンサー伯爵令息にお会いするの楽しみですね」
「そうね。
こんな長い期間会わなかったことなんて無かったから」
次期スペンサー辺境伯となるルークと私は、ルークが15歳、私が13歳の頃に婚約が結ばている。
年が近いこともあり、幼い頃からルークと彼の弟であるジョーと3人で遊んでいた私達は仲が良く、当時まだ一人っ子だった私は2人を兄のように慕っていた。
ルークとジョーは辺境伯の令息ということもあり、幼少期から剣術を学んでいた。
剣を握れば時には怪我を負う。
そんな時は、もちろん怪我の程度にもよるが、回復魔法を使う治療師に治療を受ける。
ただ、ルークは回復魔法での治療を受けると、何日も寝込むほどに具合悪くなってしまい、周囲はそんな体質を心から心配した。
グレイ男爵家では、そんなルークのために回復薬の開発に力を注いだ。
当然ながら、私も。
『あれ?この治療薬、すごく効く』
ルークが剣で深い傷を負った時、私の作った回復薬が効果を発揮し、傷はほとんど塞がり痛みまで緩和された。
そんなことが数回続いた後に、スペンサー辺境伯とルークから婚約の申し込みを受け、私達は婚約者となった。
婚約者となって最初のうちは、今までと変わらず兄妹のようだった。
いつ頃からだろう。
徐々にその関係が変化し、ルークは私に今までとは違う顔を見せるようになった。
優しく、距離が近くなり、『可愛い』『似合うよ』と会う度にとろけるような笑顔を向け、私はルークの顔を見るだけでドキドキした。
私が16歳の誕生日を迎える頃には、抱きしめられるようになり、『大好きだよ』と頬に口づけされるようになった。
見た目には細身のルークは普段から鍛えているだけあり、密着すれば筋肉がついていて引き締まっているのがよくわかり、赤面しては笑われた。
金髪をゆるく結び、ブルーの瞳の整った顔立ちの王子様のようなルークは女性たちから絶大な人気を誇っているが、異性にはそっけない。
『隣にいて欲しいのは、アリソンだけだよ』
兄のようだった存在に好意を抱いてしまうのに、そう時間はかからなかった。
でもーー
グレイ男爵であるお母様から『薬師としてスペンサー辺境伯をお支えしましょう』と幼い頃から言われていた言葉は、ルークへの気持ちにブレーキをかける。
ーー婚約が決まったのは、私の作る回復薬が次期辺境伯となるルークに必要だから。
「お嬢様のお話を聞いたら、きっとお喜びになりますよ」
「だといいわ」
そうだと良い。
ひと月前に、私が作る回復薬にいくつかの成分が含まれていることが発見された。
「アリソン!会いたかった!」
1年ぶりのルークは変わらずに、笑顔で私を強く抱きしめてきた。
ただ、違ったのは、今までルークが座っていたと思われるソファの隣には、淡いピンクブロンドの清楚な女性が居て、彼女の視線はルークに注がれていた。
その男爵家の娘である私、アリソン・グレイも幼い頃から薬草について学び、一人前の薬師となるため、17歳から医療、薬学が我が国よりも格段に進歩している隣国サヴォイ王国に留学し、この度1年間の留学を終えモンテ王国へ戻ることとなった。
「お嬢様、スペンサー伯爵令息にお会いするの楽しみですね」
「そうね。
こんな長い期間会わなかったことなんて無かったから」
次期スペンサー辺境伯となるルークと私は、ルークが15歳、私が13歳の頃に婚約が結ばている。
年が近いこともあり、幼い頃からルークと彼の弟であるジョーと3人で遊んでいた私達は仲が良く、当時まだ一人っ子だった私は2人を兄のように慕っていた。
ルークとジョーは辺境伯の令息ということもあり、幼少期から剣術を学んでいた。
剣を握れば時には怪我を負う。
そんな時は、もちろん怪我の程度にもよるが、回復魔法を使う治療師に治療を受ける。
ただ、ルークは回復魔法での治療を受けると、何日も寝込むほどに具合悪くなってしまい、周囲はそんな体質を心から心配した。
グレイ男爵家では、そんなルークのために回復薬の開発に力を注いだ。
当然ながら、私も。
『あれ?この治療薬、すごく効く』
ルークが剣で深い傷を負った時、私の作った回復薬が効果を発揮し、傷はほとんど塞がり痛みまで緩和された。
そんなことが数回続いた後に、スペンサー辺境伯とルークから婚約の申し込みを受け、私達は婚約者となった。
婚約者となって最初のうちは、今までと変わらず兄妹のようだった。
いつ頃からだろう。
徐々にその関係が変化し、ルークは私に今までとは違う顔を見せるようになった。
優しく、距離が近くなり、『可愛い』『似合うよ』と会う度にとろけるような笑顔を向け、私はルークの顔を見るだけでドキドキした。
私が16歳の誕生日を迎える頃には、抱きしめられるようになり、『大好きだよ』と頬に口づけされるようになった。
見た目には細身のルークは普段から鍛えているだけあり、密着すれば筋肉がついていて引き締まっているのがよくわかり、赤面しては笑われた。
金髪をゆるく結び、ブルーの瞳の整った顔立ちの王子様のようなルークは女性たちから絶大な人気を誇っているが、異性にはそっけない。
『隣にいて欲しいのは、アリソンだけだよ』
兄のようだった存在に好意を抱いてしまうのに、そう時間はかからなかった。
でもーー
グレイ男爵であるお母様から『薬師としてスペンサー辺境伯をお支えしましょう』と幼い頃から言われていた言葉は、ルークへの気持ちにブレーキをかける。
ーー婚約が決まったのは、私の作る回復薬が次期辺境伯となるルークに必要だから。
「お嬢様のお話を聞いたら、きっとお喜びになりますよ」
「だといいわ」
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1年ぶりのルークは変わらずに、笑顔で私を強く抱きしめてきた。
ただ、違ったのは、今までルークが座っていたと思われるソファの隣には、淡いピンクブロンドの清楚な女性が居て、彼女の視線はルークに注がれていた。
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